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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第6章 偽の正義と熾烈な戦い
241/293

241 貫くものとつきあい

えー、現在戦争は激化の一途を辿っており、王国軍は早くも2つの隊が壊滅しております。


それに対して敵軍の被害はごくわずかなもの、戦えなくなったものはいないと言っても過言ではありません。


ええっと、つまりどういうことかというと・・・


エリックたちと『銀爪』は惨敗したということだ。

特にこれといっていうことはない。戦略とか、そういうのは一切なしに実力でねじ伏せられた。


エリックたちは爆走する『戦車』の猛攻を抑え切ることができずに敗北。

『銀爪』は『月』に動きを縛られ『力』に投げ飛ばされていた。

まさかここまで圧倒的とはな。

ここに車でも王国軍と帝国軍の力の差は漠然と理解していたと思うのだが、正直予想外だ。



「で、ここからは敵の数が1人増えると。」

今から始まるのはエルネス率いる冒険者パーティの試合だ。

相手方には『正義』『運命』『愚者』が出てくる。つまり先の二試合とは違い3人相手にしなければならないのだ。


多分だけど、エルネスたちも負けるんだろうな。

相手方の人員の裂き方を見るに、こちらの戦力は完全に把握しているみたいだ。

それでいて確実に勝てるメンバーを選出している。


先の負けっぷりを見るに、ステータスだけではなく相性的にも優位を取られているような気がした。

・・・・あれ?なんで相手はこっちの選出を知っているのだ?


偶然・・・?嫌、それだと勇者に向けてピンポイントで『世界』をぶつけるとかはできないだろうし、ある意味不穏分子に見えなくもない俺たちだけフルメンバーというのもおかしな話だ。


何か、見落としているような・・・?


「タクミ?何を考えているのかは知らないけど、始まるみたいだよ。」

思考の海にとらわれそうになった俺をノアが引き戻す。それがいいことなのかはおいておいて、今は目の前の試合に集中したほうがいいだろう。


今、試合開始の鐘がなった。










【ヴィクレア視点】

試合開始の鐘がなった。ここまでの戦績は0勝2敗。

つまりここで自分たちが負ければ王国軍に勝利はない。


敵の数は自分たちの4人に比べて3人、数の上では優位になっていると言えるが、私はそれに油断をすることはない。


何せ先ほどの試合でその力を見せつけられているし、自分自身戦争に参加するのはこれが初めてではないため、帝国軍の強さははっきりと理解している。

帝国には時折、特殊な力を持って生まれる人間がいる。


血統や身分などは関係なく、降って湧いたかのようにその力が宿るのだという。

現在帝国にはそのようなものを探し、そして集めた集団が存在する。その集団にはそれぞれその力に沿った名前が与えられ、それを名乗ることを許される。


今、自分の前にいる『正義』『運命』『愚者』この3人もそうだ。

しかし前回の戦争ではそう言った名を持つ奴はほとんどいなかったはずなのだが・・・


今回はなぜか全ての枠が名前持ちである上に、枠に空きまである始末だ。

舐められている?否、おそらく今回の戦争で我が国を完膚なきまで叩き潰すつもりであろう。


私は一度呼吸を整え、敵を見る。


敵は金色の鎧を纏った槍士が1、胡散臭いーーー開会式前にこちらの待合室に来ていた男が1。

そして手ぶらの男が1だ。


どいつが一番強いかはぱっと見ではわからないが、ひとまずは武器を持っている槍士を警戒するのが普通だろう。


「ヴィクレア、槍を抑えろ!ロミオはヴィクレアをサポートしながら側面を叩け!!ヴィルは補助だ!まずは戦場を隔離しろ!!」

エルネスの指示が飛ぶ。

私は言われた通りに、槍とぶつかる。


私の剣は以前購入した竜爪の剣ではなく、家から持ち出したエストックだ。

通常の剣も使えないことはない、しかし全力でやるなら手に馴染んだものの方がよかったし、人間相手だとショートソードよりかはエストックの方が適している。


私の刺突が『正義』ーーーライトレイに向かう。

一切の油断はしない。ここで決める。そのくらいの気持ちを込めて私は腕を伸ばす。



「ふむ、いい突きだ。迷いがない。」

だがそれは軽くいなされてしまう。それどころかお返しと言わんばかりに突きが返される。


私はそれを大きく避ける。

向こうは余裕がある回避だったが、こっちには一切の余裕はない。

攻撃後の後で体制が崩れていたし、万が一に読み違えて食らえば後がない。


槍を回避し、私が距離を取った後今度はロミオが突貫した。

彼の主武器はロングソードであり、その突きは体重を乗せた強力なものだ。

しかし横合いから伸びてくる剣先を見たライトレイはつまらないものを見るような目をロミオに向けた。


「が、これはダメだな。全くもって『正義』が感じられない。意志が足りない。気持ちがこもり切っていない。」


ライトレイは体を後ろに引いてロミオの突きを避け、そして槍を回してロミオの体を打った。

洗練された動きではあった。


だが、その動作はどこか「お前にはこれで十分だ」と言っているような気さえした。

ロミオはライトレイの攻撃を避けれはしなかったものの、なんとか剣を盾にして防御はできていた。


それを見た私はほっと胸をなでおろす。

私は次の動作に移る。

先の動きを見てわかった。普通にやったんじゃあ絶対に当たらない。

なら、まずは末端から攻める!!


「ふっ!!」

息を吐き出す声とともにライトレイに肉薄する私の体。槍は間合いに入り切って仕舞えば怖い武器ではない。


「なればこそ、ロミオへの攻撃後の隙を利用して潜り込む!!」


「やっぱりあんたは真っ直ぐに俺を倒しにくるんだな。仲間の安否確認は最低限で十分か。」


「私たちは勝つために来たのだ!負けないために来たのではない!!」

雄叫びを上げ、私はライトレイとの距離を詰める。

詰めると言ってもそもそもそこまで距離はない。伸ばせは槍は届く距離だ。

それゆえ、私がライトレイの懐に入り込むのも一瞬だ。それこそ、こちらの動きを察知していても対応が難しいくらいにーーーーー



気づけば私たちの戦場は砂嵐に覆われていた。

ヴィルが戦場を隔離してくれたのだろう。彼らは私たちがすぐに『正義』を落とすことを信じている。

だからこそ、防御能力が高いエルネスが外に残り時間を稼ぐつもりなのだ。


「あーーー、今お前、俺を倒す以外のことを考えたな。」

間の抜けた声だった。この高速戦闘においては、発する暇すらないような・・・


「ぐっ!!?」

突然横腹に衝撃が走る。私は飛ばされ、そして砂嵐の壁にぶち当たりそこで落ちた。

何気にこれに直接触れるのは初めてだが、本当に壁としての役割を果たしているらしい。


「途中まではよかったんだがな。まああれだ。戦闘中に雑念があるとろくなことねえよな。」


「ぐっ、何が・・?」

起こったのかは分からなかった。

敵の懐に入った私の体が吹き飛ばされたのだ。おそらくだがーーーー蹴られた?


もう既に直立しているライトレイの姿からは確認は取れないが、それ以外には考えられなかった。


ともあれ、私の突貫は失敗したみたいだ。


「チッ、さすが帝国の名前持ちだな。強さが半端じゃない。」

そこでロミオが立ち上がる。当然だ。あのくらいで倒れるやつなら私たちと一緒に行動していない。


「ロミオ、1人ずつじゃあ相手にならない。同時に仕掛けるぞ。」


「鼻っからそのつもりだよ。」

同時と言ったのに、ロミオは合図を待たずに我先にと駆けてしまった。

一瞬遅れて私も後を追う。


「お前らは・・・バラバラだな。」

ロミオは再び突きを放った。それに対するライトレイの回答はというとーーーーー 同じく突きであった。

それも、ロミオの体を狙ったものではなかった。


ライトレイの槍はロミオの剣と正面衝突をする。

そしてーーーーロミオの剣を粉々に砕いた。


「くそっ、、化け物が!」

ロミオの剣は安物ではなかった。それどころか王都一の鍛冶屋作ってもらった彼専用の特注品だ。

素材もミスリルでできており、耐久性は通常の金属を軽く凌駕する。


それが今、たったの一撃で粉々に砕け散ったのだ。


「化け物・・・心外だな。」

ライトレイはロミオに追撃を加えようとする。だが、それを許す私ではない。

出足こそ遅れたが、二合目には間に合った。


ロミオの体を払い飛ばそうとするライトレイの槍ーーーその間に私は体をねじ込み剣を横に向ける。

そして脚を開いて踏ん張った。



尋常でない衝撃が腕に響く。

エストックは受け太刀には圧倒的に向かない。だからあくまで体との間に挟んだだけ、その衝撃のほとんどは鎧と自身の体で吸収した。


直接衝撃を受けた左腕は折れ、添えていた右腕は大きく痺れこそしたがなんとか耐えきった。


「ヴィクレア嬢!!?何を、、、!!?」


「ロミオ!!呆けていないで早く敵を打て!エルネス隊長がいくら防御に秀でていても、弱点がないわけじゃない。おととい彼女が無様に倒されたことを忘れたのか!!?」

エルネスが装備している鎧は『竜鎧ウロボロス』という。


大昔に姿を現し、世界を大混乱の渦に巻き込んだ『魔竜ウロボロス』という魔物の鱗をメインの素材に作られた鎧だ。


人類が全力で抵抗した際、幾度とない猛攻を耐えきったと言われるその竜の鱗を用いた鎧は、着用者に傷を癒す力と高い防御力を与えてくれる。


だが先に言った通り、弱点もある。


いくら竜の鎧が強くても、中にいるのは人間だ。

一昨日のように鎧の隙間から毒を入れられたりすれば案外簡単に転げてしまう。


エルネス自身はその鎧をつけている安心感なのか、鎧の力を過信しており防御が甘い部分がある。

故に、いつやられてもおかしくはないのだ。


「っ、、、俺が抑える!!ヴィクレア嬢は攻撃を!!」

メイン武器を失い、予備の武器である短剣しか持たないロミオは攻撃役を辞退した。

そして相手の意識を奪うように前に出る。

言葉通り、攻撃は私に任せるみたいだ。


「ましにはなったがまだまだだ。足りない。」

ライトレイの槍がロミオの横腹に突き刺さった。


致命傷ーーーではないだろうが、深手を負ったことには変わりない。


「ぁああああああああ!!」

ロミオ、ありがとう。君の頑張りを無駄にしないためにも、この一撃で決める!!

私は無事な右腕に全ての力を込め、防御なんてものは一切考えずにエストックを突き出した。


これは素早い刺突を目的とした武器、それゆえに、防御を考えずに全力で放たれた私の突きは最速の動きでライトレイに迫った。

そしてーーーーーー


「ふむ、、、見事だ。」

私の体は伸びた状態のまま蹴り飛ばされた。

力なく顔をあげて見てみると、私の手から離れたエストックがライトレイの肩に突き刺さっている。


体の中央を狙ったつもりだったのだが、すんでのところで逸らされたのか。

確かに私の刃は届きはしたが、思ったような結果を得ることはできなかったらしい。


「気落ちすることはない。今の一撃は君の意志を感じられるものだった。だからこそ、俺に届いたのだ。」

誇れ。とライトレイは態度を柔らかくして言った。


時を同じくして、砂嵐が晴れる。

ヴィル爺に何かあったのだろうか?なんとか動く首をひねり、戦場を確認する。


そこにはまだ立っているエルネスとヴィルの姿。ヴィルが自重をせずに全力で魔法を打ちまくったのだろう。


戦場となっていたであろう場所は凸凹になっていた。うちのパーティメンバーなら見慣れた光景だ。

ならば、外での戦闘は勝っていたのか?

そう思った時、ヴィルがゆっくりと地面に倒れ伏した。


その体の影から、『愚者』が顔を見せる。

「なんとか、俺の度胸が勝ったみたいだな。」

『愚者』はどこかスッキリした表情だった。ヴィルは必死に戦ったのだろう。

『愚者』の格好は砂まみれになっていた。


「え、エルネスは!!?『運命』のやつは、、、?」

どうなったのだろうか?最悪、エルネスだけでも健在なら手負いのライトレイやボロボロの見た目の『愚者』を倒してくれるかもしれない。


彼女はまだ立っている。

王国はまだ負けていない。そう信じて私はエルネスの方を見た。



「おっと、、あちらさんたち終わったか。じゃあそろそろ、こっちも終わらせるとするかね。」

『運命』ーーーダルクは手に持っている奇妙な武器に尖った鉄の塊をひとつ入れた。

そしてなにかをカラカラと回し始める。


そして無作為にその回転を見るまでもなく止め、それをエルネスの方に向けて構えた。


「みんな、、、くっ、舐めるなあああ!!」

エルネスが巨剣を振りかぶりダルクに向かって振り下ろした。

棒立ちのダルクはそれを回避することはできない。

エルネスの怪力によって振るわれるその剣はダルクの体を真っ二つにーーーーーすることはなく、すり抜けた。


幻覚か!!?と一瞬思ったが、今感じているダルクの気配は幻覚のものとは思えず、それはずっと同じ位置にあった。


「すまねえな。運命の女神さん、こっちに微笑んだみたいだぜ。」

ダルクは向けたそれの引き金を引いた。

すると高速で先ほど込めた鉄の塊が射出される。



それはエルネスの鎧に触れると、彼女を後方に吹き飛ばした。

「エルネス!!」

私は叫んでいた。あの程度の攻撃で、エルネスの竜鎧ウロボロスがどうこうなるはずはない。


どうこうなるはずはない、、、はずだった。


エルネスは狙いすましたかのように私の方に落下した。

私は痛む体に無理やり指示を出し、エルネスを受け止める。

その時見たそれに絶句した。


「エルネス!!?大丈夫か!!?」


「あ・・・あぁ?ヴィクレア?私はどうなった?」

エルネスの鎧は無残にも破壊されていた。

たったひとつ、小さな鉄の塊が当たっただけで、ボロボロになっていた。

手の内のエルネスは私の支えを使い立ち上がろうとする。まだ戦える。そう言いたいのだろうか?


だがもう無理だろう。

幾らか手傷を与えたとはいえ、『正義』も『愚者も』戦える。『運命』に至っては無傷ときた。


審判も私たちの負けが決定したと判断した。


すぐ後に、試合終了の合図が成されて私たちは闘技場内にある治療院に運ばれた。




エルネス隊長は噛ませキャラみたいなポジションですが、普通に戦えば強いはずです。

『愚者』となら一騎打ちで勝てる!『運命』には絶対に勝てない!『正義』にも勝てない。


・・・本当に強いんだよ?


ヴィル爺も普通に強いキャラ設定してたはずなんですけどね。


ロミオ?強いよね。

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