240 占術と欠員
ダルクの訪問から少し経ち、俺たちは案内人の案内に従って闘技場の舞台の方に案内される。
なんでも、ここで開会式のようなことをやるんだと。
本当にこれは「戦い」なのだろうか?と疑問に思う。戦争等名前は運動会に変えたらもっとしっくりきそうだ。
まぁ、こんな疑問を持って居るのは俺くらいだった。
律識はこの世界の風習なんだろうと思い受け入れて居るし、そもそもこの世界の人間には疑問に思うところはないらしい。
俺もその場に流されて開会式に出席する。
そこでは今日矛を交える敵国の兵士、ちゃんとダルクのやつもいた。
現在は中央で偉そうな人が何か偉そうなことを言って居るのを軽く聞き流しながら俺たちは舞台に立って居るだけだ。かれこれ30分くらいこのままだ。
「では!!これより我がアーカイブ王国と隣国であるエリクシル帝国の試合を始める!!今回の戦争には特別に王国王である我、ディオニスと帝国の女皇帝であるリリシーラ陛下、そしてユージリア獣王国からマルコ陛下が観戦することになって居る!!皆の者、己が武を全力で奮え!!みっともない戦いを見せることは許さんぞ!!」
うちの王様であるディオニス国王が堂々と宣言する。
それと同時に、入場口から大々的に2人の人物が現れる。
1人は白い肌の女性。
肌に同化するような白のドレスを身に纏っている。特徴的なのはドレスの右腕の部分が黒い手袋に覆われて居るところだろうか?
そこだけがどこか異質な雰囲気を醸し出していた。
あれが帝国の皇帝様か。
また、それとは逆側からは1人の獣が入場する。
獅子面を存分に見せ、悠々とした足取りでディオニスの下まで歩く。
開かれた衣服の前方がなんとも魅力的だ。
ふっさふさだな獣王国王様。
2人の登場に会場は湧き上がる。
もはや特定の音を聞き取るのが難しいいほどだ。
対する王様連中は言葉を発しない。3人肩を並べて仁王立ちをして居るだけだった。
というかあれだな。王様達こんなところにいていいのだろうか?
確か小国を除けばあと1つ、神国ありそこのトップはきてないみたいだけど・・・ハブられている?
いや、俺からしたらそっちの方が普通だな。
なんで小競り合いみたいな戦争に王様連中が来て居るのか謎でしかない。
そんなことを考えていると、開会式がやっとの事で終幕になった。
これから先はそれぞれのパーティが各々で決めた順番に舞台に入り、敵国との戦闘を開始するという感じだ。
この順番はディオニス王より先に決められている。
先鋒がエリック率いるチーム『剛貫』
次鋒が荒くれ者がおおい『銀爪』
中堅がエルネス達の『国家の剣』
そして副将が俺たちで
大将がライガの『地平の彼方』
らしい。
・・・・知らなかっただけで他のパーティはチーム名を持ってたんだなと、そのオーダー表を見て思ったものだ。
俺たちの何か考えた方がいいかな?とリリスに聞いて見たら「リリスファミリーとかどうかしら?」と言われたので却下した。
あんまりそういうことを気にする俺ではないが、あまりに恥ずかしいのは却下だし何よりその時はノアが大反対した。
そして今、俺たちは特別席のような場所で舞台に入場してくるエリック達を見守っている。
王様達はこことは別の一番高い席に座っているみたいだ。あれなら戦場がさぞ見渡しやすかろう。
「エリック達、大丈夫だろうか・・・・」
「う〜ん、なんやかんや選ばれて居るから最低限でも戦えるんじゃないの?ほら、『銀爪』の人たちも一応最低限の実力はあるって言ってたじゃん。」
「それはそうだけど、一度戦ってるのを見た身としてはなぁ・・・心配というかなんというか。」
「言っても仕方ないさ。それより匠、俺1つ気になることがあるんだけどさ。」
「おっ、奇遇だな。俺も気になってたことがあったんだ。」
俺と律識は入場をすでに済ませてあとは開始の合図を待つだけになった舞台を見下ろしながら意見を交わし合う。
俺たちが共通して気になっていること、それは他のみんなも同じことを思っているだろうと思えた。
「ねえねえタクミ!!?なんか向こう人が少ない気がするんだけど、気のせいかな!!?」
「うん、、、なんか2人しかいないね。」
そう、こちらが4人なのに対して相手はたった2人で戦場に立っているのだ。
舐められているしか思えない。
思えば、開会式にいた人数が圧倒的に少なかったように思える。多分だがこの試合だけでなく、他の戦場でも同じようなことがあるのだろう。
俺たちの会話を聞いていたのか、後ろの席からライガが話しかけてくる。
「えっと、向こうの参加者一覧表、さっき届いたんだけど見るかい?」
そんなものがあるならもっと早く見せて欲しかった。
どうして対策の時間が取れなくなってから渡すのか・・・まぁ、先に一方的に相手の戦力だけ知るというのは不公平だから仕方ないんだけどさ。
「ありがとう。ちょっと見せてもらうよ。」
俺はライガが持っていた紙切れを受け取る。
そこにはこれからの試合、誰が出てくるのかの記載がされていた。
第1試合
『戦車』のアルドステロン・イスカル
『塔』のヘルモラン・シャット
第2試合
『力』のカバネル・フォーシリア
『月』のグレイス・ラン
第三試合
『運命』のダルク
『正義』のライトレイ・パーフィット
『愚者』のフルール・エスカリエ
第四試合
『隠者』のジャックスワイル
『魔術師』のハーミネルバ・ライラット
『悪魔』のバアル・ゼブル
『死』のエバナ・グリーン
第五試合
『世界』のエンドルシア・ライフフォールン
・・・ふむ、、これが相手方の情報ですか。
俺が上からそれを確認していくと、両サイドに座っているノアと律識がそれぞれ覗き込むように見てくる。
俺はある程度それを見たあと、後ろにその紙を返した。
「まさか大将戦にたった1人しか出してこないってことは、相手さんもかなり自信があるんだろうな。」
「ははっ、、今回は完全勝利を狙いに来ているみたいだ。まさか『世界』が出てくるなんてね。」
メモを渡す時、そんなやりとりがあった。
ここに車での馬車内でのやり取りでは、いつもはライガ達は勝利を収めているという感じだったはずだが、今回はもう負けたと言った雰囲気だ。
たった1人で大将戦を戦うということもあり、『世界』のエンドルシア・ライフフォールンはそれほどの強者ということだろう。
それよりも気づいたことがある。
「なあ、律識。これって、、」
「そうだね匠の予想通り、大アルカナだね。」
確認を取るように律識の方を向くと、彼は俺の考えを肯定する。
そう、先ほどの名前の横についていた称号のようなもの。
それは全て俺たちが元いた世界の大アルカナーーータロットカードのものと完全に一致していた。
リアーゼが以前『運命』はある騎士団に所属しているという話をしており、その騎士団員一部しか表舞台に立っておらず詳細は不明と言っていたが、思わぬところで数だけは露呈した。
おそらく数は全部で22人。つまりこの戦争には10人ほど来ていないということになる。
「足りないのは『女教皇』『女帝』『皇帝』『法王』『恋人』『吊るし人』『節制』『星』『太陽』『審判』かな?なんか統治者やらそれっぽいのが並んでいるし、案外国の仕事で忙しくて来れなかったりしてね。」
律識は空いている部分を順番に言い出していき、そしてそんなことを言って笑った。
さすが律識、カードを使った遊びになれば誰よりも記憶力がいい。
確かだが、こいつはタロットの意味も覚えていたと思うが、ここで聞いても仕方ないのでスルーした。
「それよりタクミ!!ほらっ、もう始まるよ!!」
ノアが舞台を指差す。
そこには一触触発の雰囲気で対峙する両国の戦士たちの姿。
合図があればいつでもいけるという構えでどちらも待機していた。
それを見越した会場職員が全力で鐘を鳴らす。
ガラ〜ン、っと低めの男が辺りに鳴り響いた。
あれが試合開始の合図らしい。
音と同時にエリックたちは動き出した。
キャラの名前がこの話で大量に出て来ました。
読み終わった時、どれだけの数見ずに言えるだろうか?
少なくとも、作者は半分くらいしか覚えていません。
・・・ひ、必要になったらメモ見ながら書くから大丈夫だし。