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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第6章 偽の正義と熾烈な戦い
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233 油断と抜け


さて、一度だけぶつかってみた感じ思っていたより厄介な手合いみたいだ。

一番問題になのはリリスの存在そのものだ。


彼女の膂力は凄まじい。

それこそ、あの模擬戦用の槍ですら常人なら当たれば命が危うい。

俺でも直撃を食らえば動きが止まるくらいのことはあるだろう。


相手方もそれをよくわかっているのだ。

エレナはリリスのオートガードとして、律識はそれ以外の援助として立ち回っている。

そしてその状態で俺を叩きにくるのだ。

ヴィクレアはエルネスの相手で手一杯で、こちらを助けにくることはできない。


前衛を抜かれたらそのままやられてしまいそうな手合いなだけに、俺も引くことができない。


ノアの援護射撃はあるが、今のところ余裕を持って回避されている。

リアーゼはまだ行動を起こしていない。伏せられた状態だ。

リアーゼが動かない以上、俺たちは数の不利を抱えた状態で戦うことになる。


「まあでも、数の不利はいつものこと、だよなノア。」


「そうだね!人手が足りないならお友達を呼べばいいだけだよね!ということで、シルフちゃん!おいで!!」

ノアはシルフを3体同時に召喚した。

通常なら1体ずつしか召喚できないそれを、一度に召喚できたのは『ソロモンの指輪』のおかげだ。


同時召喚、これを手にしたノアが手数で負けることはない。

まぁ、MPを大量に使うという欠点もあるから楽観視はできないけどな。


ともあれ、これでこちらはシルフ3、ウンディーネ1、俺、ノア、ヴィクレアと数の上ではぱっと見有利になった。


正直シルフは脆弱なため1とカウントしづらいんだけどな。


「これ以上仲間を呼ばせたらダメだ!!ここは強行突破してでもノアちゃんから潰しに行こう!!」

焦った声で律識が叫ぶ。

うんうん、仲間を呼ぶ系の敵と回復役は先に潰す。

基本中の基本だ。

だからこそそうくることは予測がしやすい。


「後衛を守るのが前衛の役目だ!あまり俺を無視すると痛い目見るぞ!!」

なんとか俺を突破してノアを仕留めようと動くリリスとそれに追従する2人の前には俺が立ちふさがる。

今日の『白闘気』は膂力重視ステロイドシフトだ。


俺は力任せに両手で握った剣を大きく横薙ぎに振り払う。

その一撃は突撃してくるリリスに完璧に合わせられており、前のめりになっている彼女に回避するのは難しい。


かといって、防御行動をとったらその先が続かないだろう。


「・・・おかあさん。任せて!」

途端つぶやき声のようなものが聞こえ、リリスと俺の剣の間に二つの短剣が割って入る。

流石のオートガードだなエレナ。だが、それをやるならもっと別の武器を使うべきだ。


「・・・っ!!?ご、ごめん!」

交差した俺とエレナの剣は、俺の剣が一方的にエレナのものを弾き飛ばす結果に終わる。

そしてそのまま、リリスの元へ


「エレナちゃん!!?いや、あなたの働きを無駄にはしないわ!!行くわよタクミ!!」

リリスはそのまま前進、それ以外の選択肢はない。

リリスは防御を一切考えず、槍を突き出してくる。


俺の剣が届く間合い、ということは当然リリスの槍も届く。だが、槍は所詮は点の攻撃だ。

注意してれば回避くらいはなんとかなる。


振りの早い俺の剣の方が早くにリリスの元にたどり着いた。だが、彼女は揺れない。

その勢いのまま俺に攻撃を続ける。


「おらぁ!まだ動きが色々と雑だぞリリス。」

腹に向けられたその槍は、塚本を蹴り揺らされたことによって軌道がずれる。

そして俺はその逆方向に身を翻してその槍を回避する。


服の一部にかすった音がしたが、逆に言えば体には当たっていない。

俺はリリスが離れるように前蹴りを喰らわせようとした。


「あら、お母さんに足を向けるなんて、悪い子ね!!」


「ふっ、反抗期ってやつかもしれないな。」

流石にこれは当たらない。

突き出された腕によって止められた。俺は足を掴まれでもしたら面倒なので即座に足を引っ込めた。

そして体を倒す。


直後、俺の頭の上を暴風が吹き荒れた。


「むっ、、これはイドルの風ね?シルフを出したのは陽動かしら?まぁ、あの子の攻撃は当たらないんだけど。」

チッ、イドルはリリスの子っていう話を聞いていたが、それでも攻撃が当たらない理由になってないだろう。


俺は悪態を吐く。

だが、それが効かないのはリリスだけだ。後ろにいる律識やエレナ、引いてはエルネスはどうかな?


「くっ、、、え、エレナちゃんこれを!!」


律識はとっさに鎖をエレナの方へ投げる。

エレナはそれを有無も言わずに掴む。そしていつの間にか鎖によって絡め取られて回収され、そこに巻き付けられていた短剣を受け取った。


鎖は打ち込むように地面に刺さっており、一時の暴風では吹き飛ばせない。

なんとか耐えきられた。


そしてエルネスはその足腰と思い鎧を存分に使い踏ん張った。


「誰も飛ばされねえか。軽いエレナくらいなら飛ばせると思ったんだけどな。」


「タクミ!!次行くよ!!」

俺は後ろに跳びのき、ノアの隣まで引いた。

直後、リリスたちの周りに竜巻が発生する。それは相手パーティの全員を飲み込むほどには大きかった。


「ちょっ、タクミ殿!!?私も巻き込まれているのだが!!?あ、ちょっとっ!!?1対4なんて卑怯・・・うわああああああ!!」

あ、ヴィクレアが回避しそこなった。そして敵と一緒に隔離してしまったために、やられてしまったらしい。断末魔が聞こえてきた。


やっぱりここら辺はいつも戦い慣れている仲ではないからだろうな。

連携にすこしズレがある。


そもそも、さっきまでも俺、ノアVSリリス、エレナ、律識みたいな構図になってたしな。

律識の方は律儀にエルネス側にも援護を飛ばしていたけど。



「ふん、どれほどのものかと思ったら、見た目だけか。風の密度は凄いが、それだけだ。攻撃性はほとんどない。ハッタリだな。」

エルネスは自分たちの周りを囲むそれをそう評価した。

たしかに、見た目の割に威力はない。

紙切れを投じても切れるということはなく、ただただ強い風が渦巻いているだけの竜巻だ。


だが、その判断はすこし早計だぞ?

この竜巻の恐ろしいところはその威力にない。

この技の強みは砂塵なども巻き上げることで一時的に視界を妨げることにある。


エルネスは竜巻の内側から大剣を振って竜巻を切りつけた。

それだけで巻き起こる風は弱くなり、やがては消え去る。


だが、いつの時代も安易な行動は死に直結するものだ。

「むっ、小癪な。」

竜巻を切り裂き、開いた窓のような穴からシルフが『ウィンドシザー』を投じる。


今度は正真正銘攻撃のための風。

切断力を持った空気の塊が、ハサミのように口を開けながらエルネスを襲う。


しかしこれはなんとか防がれてしまう。

驚かれはしたみたいだが、通用を与えることはできなかった。

三体のシルフが次々と投じた風の刃は、全て打ち払われtしまった。


そしてエルネスが笑ったーーーーような気がするが顔が隠されているため確証はない。


「だから、その油断が命取りだって。攻撃を防ぎきった時、その瞬間にどうしても人の気は緩む。俺にはできなくても、お前なら決めるだろう?」

俺は戦闘が開始してから、いつのまにか視界に入らなくなっている人物に話しかけた。


「鎧の中って、蒸れそうですよね?」

可愛らしい声がエルネスのところから聞こえてくる。

そして直後、エルネスの動きがぎこちないものに変わった。

まるで関節が錆びついたロボットのように、全身骨折のリハビリ患者のように動きが悪くなる。


「ありゃ?麻痺耐性持ちでしたか。でもちょっとは効いてる見たい。」

リアーゼはそれを確認して、再び俺たちの元に戻ってきた。


「さすがリアーゼ。まさかさらっと自分も竜巻の中にいるとは、思ってもいなかったぜ。」


「あはは・・・いつもならリリスさんの『周辺探知』に引っかかっちゃうけど、この前クラスチェンジして『探知避け』のスキルとったから、、、案外いけるもんだね。」

リアーゼは苦笑いを見せる。失敗する可能性の方が大きかったかも、と言いたげだ。

あの密集地にいればリリスの探知に引っかかるのも無理はなさそうだが、いつのまにか探知をすり抜ける技能を入手していたらしい。


・・・・なんかリアーゼ、アサシンみたいになっていくな。


ちなみにリアーゼがやった攻撃自体はいたって単純、麻痺毒を鎧の隙間から流し込んだだけみたいだ。



ちょっとの雑談ののち、風が晴れる。


リリスたちが自力で脱出しなかったのは、先程のエルネスを見ていたのと、律識が脱出の際を俺が狙うとリリスに教えたからだったらしい。

あいつ、よくわかってるじゃないか。


ともあれこれで双方1人ずつ落ちる結果になった。

奇しくも、助っ人が最初に全滅という結果だ。


「さてノア、時間稼ぎの間どのくらいできた?」


「ウンディーネが最大数。あとシルフちゃん5とイドルちゃん、ウィルくんが10ってところだね。」

よし、竜巻が晴れるまでの時間を有効活用してくれたらしい。

一気に戦力が増強した。


あとは俺は攻撃とサポートをノアに任せてリリスたちを抑えていればいい。

俺は『白闘気』の調整を耐久重視バイタルシフトへと変更した。

俺に火力はもういらない。


「ここからは消耗戦だけど、ノアがいるから圧倒的にこっち有利だ。降参するならこのタイミングだぞ?」

下手に続けて怪我したりしてもいけないので、相手に降参の意思があるのか問いかけてみる。


「・・・続ける。まだ、勝てる。」


「そうよ。私は娘に勝利をプレゼントしないといけないもの。それに、消耗戦になればそっちは勝つでしょうけど、短期決戦になればまだこっちの方が有利よ?」

ふふっ、そうだよな。まだ諦めるわけがねえよな。

「そういうわけで、タクミ?悪いけどちょっとそこでじっとしててもらうわよ?」


「はっ、耐久特化にした俺を簡単に抜けるものと思わないで欲しいな。」


「それはどうかしら?そうやって油断してると、そこで痺れてうまく動けない人みたいになるわよ?」


「ーーー?何を・・・・?」

相手のパーティ編成は脳筋もいいところだ。それならば防御に特化させた俺が足を止め、その間に後ろから魔法攻撃を加えれば勝てる。

直接攻撃以外の攻撃は律識ができるが、あいつの能力は足止めや牽制の意味合いの強い。


それらを組み合わせても生存能力全開の俺を一瞬で落とすなんてできないはずだが・・・


何かリアーゼみたいに新しいスキルでも・・・ん?

リリスの忠告を聞き、少しでも警戒しようと思考を巡らせたところで、俺の両足は突如として地面から生えてきた腕にガッチリと掴まれてしまった。


その腕はひどく荒れていて、ところどころ皮膚はむき出し、指なんかは骨と皮でできているんじゃないかというものが多い。


・・・・あっ、、、『醜悪カイツール』かぁ


突如として足首をつかんだそれを見て俺はそのスキルのことを思い出した。


「ふふっ、捕まえたわよ?」

勝ち誇ったリリスの笑み。しかし俺は冷静に指示を出す。


「ちょっと忘れてたわ。ノア、助けてくれ。」


「わかった任せて!ほほいのほいっとさ。」

軽い掛け声ととともに俺の居場所が先程いた場所とは別の場所に移動する。

それに伴い、俺の足の拘束されている感覚が消え失せた。


「ありがとうノア、今度はもっと警戒して動くとするよ。」


「何度捕まっても助けてあげるから安心してていいよ!でも、そのかわり。」


「ああ、お前は俺が守る。それでいいんだろ?」


「うん!!期待してるよタクミ!!」

どうやら、まだ簡単に決着をつけさせてもらえないようだ。

リリスは思ったより本気で挑んできている。

元魔王の能力であった『醜悪カイツール』まで持ち出してくるとはちょっと予想外だったな。


これならスライムも出てくるか?

なんにせよ、まだ楽しめそうだ。

『醜悪な兵士』


地面の中を潜ることができる醜悪シリーズの魔物。醜悪シリーズでは一番オーソドックスな魔物でもある。

1体地上で見かけたら、30体は地面にいると思え!!

生命樹のダンジョン、第五階層に棲息している。


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