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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第6章 偽の正義と熾烈な戦い
232/293

232 連携と編成


ヴィクレアの提案を呑み、俺たちは冒険者ギルドの方へ向かった。

どうやら聞いた話によればここのギルドは闘技を重んじている街のため、ギルド員は平時で使用できる訓練所のような場所が併設されているらしい。


宿屋からギルドまでの道のりは先ほどの朝の探索で割れているので、俺たちが道に迷うことはない。


それでなくても、ヴィクレア側のパーティリーダーであるエルネスが普通に知っていたため、そこらへんは問題にはならなかった。


軽快な足取りで俺たちはギルドの訓練所まで赴く。

そこには取れるだけスペースを取りましたと言わんばかりの建物が存在していた。

ちなみにこの建物はギルドの中を経由しないと入れない上、通りの内側に存在しているため外からはぱっと見気づかれにくい。


「さてと、そういえばパーティ戦をするっていう話だったけどどんな感じに別れようか。」

歩いている間にでも決めればよかったな。


「そうだね〜。これはリアーゼちゃんとエレナちゃんの能力を見る戦いだから、ボク達の戦力はなるべく均等にした方がいいよね?」

ノアの言う通りだ。これでもし戦力に偏りが出てしまったら意味がない。


「戦力を均等に・・・ヴィクレア、そっちのパーティからは誰を貸してもらえるんだ?」


「ふむ、うちのパーティからは・・・」

「知らない相手より知っている人が1人でも多い方がいいだろう。ヴィクレア、手伝ってやってくれ。もう1人は私が手助けすることにしよう。」

思案するようなヴィクレアに、フルフェイスで身を固めているがために篭った声のエルネスが答える。


知っている相手、というのは単に知り合いということではなく、戦力的な話もあるだろう。

だが、生憎だが俺たちはヴィクレアの戦闘能力を知らない。

彼女は一緒にいた頃はずっと首から従業員カードを下げて木箱を運んでいる姿くらいしか見てなかったからな。



「あ、そうだ。この際だからパーティ決めも2人にやってもらおう。2人とも、ちょっとじゃんけんしてもらえるか?」


「・・・・ん」

「はい、わかりました。」

リアーゼとエレナが小さな手を前に出してじゃんけんを始める。

それは2度のあいこの後、リアーゼの勝ちで終幕した。


「タクミお兄ちゃん、勝ったけど・・・」


「そうか、じゃあ勝った方から交互に1人ずつ選んでもらえるだろうか?」

この際戦力差とかはどうでもいいと仮定し、俺は彼女達の自主性にパーティ編成を任せることにした。


「わかりました!えっとじゃあ、、、ノアお姉ちゃん、いいかな?」


「うん!!選んでくれてありがとねリアーゼちゃん!」

リアーゼはまずはじめにノアを指名した。

いつ見てもあの2人は仲がいいな。真っ先に確保しに行った。


「・・・リリスおかあさん、いい?」

「もちろんよ!!」

対するエレナはリリスを呼ぶ。リリスは感涙を見せながらエレナに飛びついた。

エレナ、リリスを呼ぶときにさりげなく服の裾をつまむのがあざといと思います。


「えっと、じゃあ次はーーーータクミお兄ちゃんでいいかな?」

「ん、わかった。」

リリスを取られてから俺を取ったって感じかな?

リリスを捌けない奴がいるとあいつの突撃だけで勝負がつきそうだからな。


「・・・消去法、律識。」

「お、おぅ、、もっと積極的に指名してくれてもいいんだけど?まぁ、それでも最後じゃない分嬉しいけどね?」

戦闘能力的に最後まで残される可能性があった律識、ここで指名が入る。

エレナは消去法と言っていたが、彼も彼で捨てたものじゃない。

真正面から戦うなら中の下かそのくらいしかない律識だが、ことサポート技能はその限りではないはずだ。


「じゃあ、、ヴィクレアさん、、いいですか?」

「おう、今回もよろしくなリアーゼちゃん。」


「じゃあ最後は・・・え、え、、える?」

「エルネスだ。よろしく。」

名前を覚えてもらえていないエルネスはそれに怒ることなくエレナ側についた。

結果的に


リアーゼ軍


俺、ノア、リアーゼ、ヴィクレア。


エレナ軍


リリス、エルネス、律識、エレナ。


という感じになった。

好きに選ばせて見たが、案外バランスがいいのかもしれない。

少なくとも、俺たちのパーティ内の戦力だけを見ればバランスはいい。

問題はヴィクレア、エルネスの2人がどれくらいの力を持っているかだな。




「じゃあ早速始めようか。えっとリアーゼ、模擬戦用の武器を取り出してもらってもいいかな?」


「はい、剣でいいんだよね?あ、皆さんの分はこちらになります。好きな武器を持って取ってください。」

リアーゼは魔法の鞄から次々と木でできた武器を取り出して並べていく。

仲間内で使う武器は把握しているので、彼女は俺には剣、リリスには槍と言った風にわかっているところに対しては次々と渡してくれる。


ちなみに、ノアと律識は素手だ。

律識の武器は鎖であるし、ノアはそもそも武器を持たないスタイルだからな。


そしてヴィクレアとエルネスも剣を持った。

ただ、その形質は違う。

ヴィクレアが動きやすさ重視といった細めのものを手にしたのに対し、エルネスの方はでかでかとした大剣を手にした。


全員が武器を持ったところで、俺たちはそれぞれ別れてある程度距離を取る。

「ふぉっふぉっふぉ、お前さんはどちらが勝つと思うかの?」


「はっ、俺にはどっちが勝とうが関係ないね。」

おぉ!!?あの爺さん素でふぉっふぉっふぉとかいっているぞ。見た目に準じた完璧な言動だ。


そしてもう1人は俺達の勝敗には興味はないらしい。まあ、普通興味ないわな。


「さて、あの者達の実力を見極めさせてもらうかの。」

爺さんの方はそう言って俺たちがよく見える少し高い観客席のような場所に腰を下ろした。

そしてそれ以上の動きを見せなかったため、俺は前に向き直る。



「さて、こっちは準備オッケーだ。いつでもいけるぞ。」


「うぅ、タクミと戦わないといけないのはちょっとだけ心苦しいけど、お兄ちゃんなら妹のために戦うお母さんを許してね?」

ちゃんと真剣勝負になるんだろうな?俺はリリスを見ながらそう思ったが、となりに立つエルネスを見てその思いを振り切った。


兜の上からで表情はわからないが、とてつもない緊迫感を感じさせる、殺気のようなものを感じたからだ。

ちらりと見るとエレナも律識も真剣そのものだ。


ふざけていたのは俺とリリスだけらしい。


「じゃあ、そろそろいくわね。」

そしてそのリリスも、そう言うとすぐに意識を切り替えて前に進み始めた。

それが開始の合図だった。


リリスに合わせるようにエルネス、エレナが進撃してくる。

そしてその少し後を律識がーーーーって、あいつらパーティ組んでいる最中には気づかなかったけど全員近接攻撃じゃねえか。


「ヴィクレア、絶対に後ろに手を出させないように抑えるぞ!!」


「お、おぅ!!」


「ノアとリアーゼは好きに動け!守りにくい場所に行かなければ大丈夫だ!!」

勝手に大回りして相手の後ろに回り込もうとするとかならちょっと相談してほしいが、大体の行動は許容できるので後ろに飛ばす指示は適当だ。


「後、リリスは俺が抑える。だからエルネス側は抑えてくれないか!!?」


「知っている相手をマークということだな?承知した。」

突出してくるリリスに俺がぶつかる。

そしてそのすぐ後にヴィクレアがエルネスと向き合った。

リリスは戦うことにもうためらいはないらしく、俺を間合いに入れるとその槍を突き出してきた。


いくら木製とはいえ、直撃を受けていいものではない。

俺は横に逸れてそれをかわす。

そしてお返しとばかりに中段の一撃をお見舞いした。


「・・・おかあさんは、私が守る。」

だがそれはリリスの脇の下をくぐり抜けてきたエレナが二本の短剣を使って受け止めた。

俺の剣は弾かれ、そしてその結果体制を少し崩す。


「ごめんねタクミ、痛くないようにするから。」

そこに引き戻された槍による殴打が迫る。

俺は大きく後ろに飛んだ。


「リリス、流石に手加減してたら倒せるものも倒せないぞ。」

なんとか回避を成功させた俺は挑発的に言った。不敵な感じを演出できていると思うが、俺の内心はヒヤヒヤだ。


さっきの攻撃、なんとか避けれたがタイミング的にギリギリだった。

やはりというべきか、2対1は少しだけ面倒だ。エレナがリリスの隙を埋めるのが一番厄介、それがなければリリスはまだなんとか無力化できそうなのだが・・・

兎に角、あの息のあった連携は厄介になるだろう。


いつの間に仕上げていたんだか。

まぁでも連携はそっちだけってわけでもないしな。

「タクミ、ちょっとそこを避けて!!」

俺は右に軽く飛ぶ。

すると先ほどまで俺の体のあった位置を、激流が通り抜けた。

ウンディーネによる射撃か。


リリスとエレナはそれを一瞬遅れて回避した。

なんとか避けることができたみたいだが、死角から急に現れたウンディーネにびっくりはしているみたいだ。


「・・・体で隠すなんて、タクミにぃ、卑怯。」


「卑怯って、」

言ってくれるな。このくらいのことならやってしかるべしと思うんだけどなあ。


「ふふっ、リリス!ここでボクは君に勝って完全勝利を収めるんだよ!!」

ノアは楽しそうだ。


「お、お前えええ!!エレナちゃんに『にぃ』って、いつの間によんでもらえるようになったんじゃわれええええええ!!」

律識は恨めしそうだ。

彼の方向から金属片のようなものが飛んでくる。


お得意の鎖を砕いたものだろうか?


小さな礫ではあるが、勢いが乗ったそれは当たると微妙に痛そうだ。

俺は下がってそれを避ける。そしてそれでもなお飛んでくるものは剣で切り払った。

バチバチと音を立てたそれは地面に落ちる。


危ねえ、あいつさらっと帯電させてやがった。


そして一合目がひと段落ついたため、一度俺たちは距離をとった。


「ヴィクレア、大丈夫そうか?」


「ちょっときついかもしれないな。エルネスは知っての通りリーダー、相応の実力があり私より強いからな。1人で抑えるのには限界がある。」

苦い顔をするヴィクレア。模擬戦であっても、戦いにおけるその姿勢は真剣だ。


「じゃああいつは俺が抑えようか?」


「それも手だが、その間リリス嬢たちはどうする?流石に私ではあの3人を同時に相手取ってはどのくらい持つか・・・」


「リリスだけなら、エレナだけなら、律識だけならともかく、3人同時はやっぱりきついよなあ。」


「そうだな。結局のところ前衛の数で負けているのだ、後衛がどのくらい働けるかによって、戦局が左右されるだろう。」


「問題はその戦局を変えてくれるまでの時間を俺たちが稼げるかということ。」


案外厳しい戦いになってきたな。

ただ少し、楽しくもなってきた。相手の陣形をどうやって崩すか。

俺はそれを思索し始めた。




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