23 野蛮集団とそれとの戦闘
ダンジョンの入り口にて屯するそいつらのうちの三人は、昨日商人ギルドで俺たちがぼこぼこにしてやった奴らだ。
そして見知らぬ二人は、昨日の夜宿に侵入していた奴だろう。
「あいつら・・・来ませんね。」
「いや、あれに気づいていないはずはない。絶対に来るはずだ。」
「でもお頭、あれを見たからこそ怖気づいてこないっていうことは考えられないですか?」
「あ、、、いや、奴は必ず来るはずだ。なんたって俺たちに喧嘩を売ったんだからな。」
「お頭、今、あ、って・・・」
近づいてみるとその会話がよく聞こえてくる。馬鹿丸出しの会話内容だ。
そこら辺の悪ガキでももっと考えているような会話をするぞ!!と思わなくもなかったが、そこは世界観の違いのせいだろう。
俺はゆっくりとそいつらに近づく。
彼らはダンジョンの入り口に背を向けて円を作るように座っているため、俺が物音を立てたりしなければ気づかれることはない。
俺は彼らにかなり近づいて、声を上げる。
「お、お頭、来ましたよ!!」
声色はできるだけ変えるように努めてみた。・・・・意味があるかはわからないが・・・
「何!?どこだ!?どの方向だ!?」
「お頭、後ろであります!!」
――――ゴスッ・・・
「がふっ、、!?」
俺は自分の位置を知らせると同時に、近くにいた男に向かって木の剣を振り下ろした。それは鈍い音を立て、その男を気絶させる。
昨日の時点で手斧を持っていた男だ。
彼には俺の木の剣を叩きおられた恨みがある。完全に逆恨みな気がするが、そこはどうでもいいだろう。
ちなみに、先ほど拾った骨の魔剣ではなく、木の剣を使っているのは相手を殺してしまわないためだ。
そして俺が一人気絶させたと同時に、俺の後方からノアの水球が放たれる。それは狙いたがわず、昨日と同じ対象に直撃する。
それを受けた男は、そのまま吹き飛ばされ近くにあった気に向かってたたきつけられた。
「ちょ!?またかよぉ、、、」
彼はいきなりであったが、意外にも何が起こったか理解したようだ。そんな声をこぼしながら気絶する。
「お前ら!!やっちまえ!!」
お頭と呼ばれていた男が怒号を上げる。思ったより対応が早かった。
彼らはその声に従うように、俺たちから一度距離をとり戦闘態勢をとった。どうしてあの命令でここまで統率の取れた動きで態勢の立て直しができるのかが若干謎だ。
「へへへ、昨日はよくもやってくれたな。今日は油断はしねえ、覚悟するんだな。」
初めに動いたの昨日兄貴と呼ばれていた男だ。彼は昨日とは違う金属の剣を持っている。その質は昨日のものと劣るように見える。
新しいものを買う金が足りなかったのだろうか?昨日より弱体化している奴に対して、昨日と同等以上の力を持つ俺が負けるはずはない。
俺は昨日と同様にその剣に俺の剣を合わせるようにする。そして俺たちの剣がぶつかり合う。
それと同時に、俺は《斬鉄》を発動させる。これで昨日の再現だ。
そう思い俺は剣を振りぬいた・・・・が、手ごたえをあまり感じない。空振りしたときとあまり変わらない感じだ。
見ると俺に斬りかかって来ていた男は、その剣をぶつかる直前に手放していた。
そして自由になったその手を今は俺のほうに伸ばしてきている。
「はぁ!!昨日と同じようにはいかないぜ!!」
彼なりに学習しているということだろうか?彼は勝ち誇った顔で俺に手を伸ばしつかみかかろうとしている。
体格的に、掴んで力勝負に持ち込めば勝てるとでも思ったのだろう。確かに、俺の見た目はただの大学生のものだからな。
俺はその勝負に乗ったといわんがばかりに持っていた木の剣を手放し、即座に男の手をつかんだ。
そしてその手に力を籠める。
「よし、これで・・・って、あだだだだだだだだああああ!!」
「今度は人の見た目ではなく、ステータスをみて行動できるようにしような!!」
俺はそういうとその手に力を込めたまま、その男を背負い投げ風に投げつける。そのまま宙に放ってもよかったのだが、下手に投げて首でも骨折されたら後味が悪いからな。
気絶だけにとどめてもらおう。
1人目を倒した俺は、残りの2人がどうなっているのかを確認するべく、後ろのほうに目を向けた。
「うわああああああん、タクミーーーー、早くこいつを何とかしてよーーー!!」
「ッチ、すばしっこい奴め、ちょっとお前そこにとまれ!!」
そこでは、昨日俺の部屋をピッキングで開けようとして失敗したと思われる盗賊風の男と戦うノアの姿。
彼女の魔法は詠唱が最低でも5秒程度かかるため、ああやって距離を詰められたらつらいのだろう。
俺はノアを助けるべく、走ろうとして、やめる。
――――そういえば、頭はどこに行った?
俺の戦闘にもノアの戦闘にも参加していない。彼は最初に命令を飛ばしただけで自身では何もしていないように思える。
しかし、そんなことはないだろう。
このタイミングでこの野蛮集団の頭の姿が消える理由、それは―――
「おまえらああああああああああああああああああああ!!こいつがどうなってもいいのかあああああああああああああああ!?」
当然、人質を取ることだった。