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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第6章 偽の正義と熾烈な戦い
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227 食の大切さと相乗り


結局あの後、床に頭を擦り付ける男が地面に落ちて踏みにじられたハムサンドを口にしたことでひとまずの場は治った。


俺の気持ちはまだ晴れないが、そこはどうでもいいだろう。


「ね、ねえタクミ?ちょっとやりすぎたんじゃないかな?」

ノアが心配そうな目で向かい側に並んで座る男たちをみている。

こちら側とは違い向こう側は本当に微妙な空気が流れていた。


「やりすぎ?ああ、地面に落としただけならまだしも踏みつけるのはやりすぎだよな。」

食べ物に対する冒涜としか思えない。


「そうじゃなくて、、、うぅ、会話ができない。」

ノアはどこか諦めた顔をしている。

あの、一応言っておくけどさっきの一連の流れの責任はあいつらにあるからな?

俺は断じて悪くない。

俺は心の中でそう主張した。


「あはは、、匠は相変わらずだね。」

そんな俺たちをみて律識が笑う。

そこに活路を見出したのか、ノアが律識に声をかけた。


「ねえ、確か君ってタクミと同郷って言ってたよね?」


「うん?そうだね。」


「じゃあなんでタクミがあんなに怒ったのか、教えてもらってもいいかな?じゃないとうっかりボクもそれに触れちゃいそうだよ。」

当人が目の前にいるのに、別の人にそれを聞きますか。

なんだろう?聞きにくい雰囲気でもで出るのかな?


「あーごめん、あいにくだけど詳しい理由は知らない。ただ、以前匠が言ってたあのセリフが関係しているのかも。」


「あのセリフ?」


「うん確かこいつ以前3週間ほど顔を出さなかったことがあってね。心配してたんだけどひょっこり顔を出したと思ったらあらびっくりだ。」


「ど、どうなったの!!?」

ノアが興味深そうに目を見開く。

そうかい、そんなに俺の過去を掘り返すのが楽しいのかい。

俺は咎めることもなく律識の言葉を聞いている。


「やつれまくってゾンビみたいになった匠が現れて一言言ったんだ。『人って食わないと本当に死ぬんだな』ってね。多分、食べ物に関することで何かあったんじゃないかな?」

律識はそう締めくくった。

ふむ、まぁ俺が食べ物の廃棄に関して異常に反応するようになったのはその出来事が原因であっている。


確かあの時は父が死んで少し経ってからのこと、母が働き始めた時のことだった。

はじめの数ヶ月は問題なかったのだが、母が仕事で出張することになった。

その間俺は家でお留守番、母からは「お腹が空いたら何か買って食べてね」という言葉はもらっていた。


だが、そこで問題が発生した。


金が使えないのだ。父が死に、これからは収入が安定するまでは家計を厳しく管理しようとした母はほとんどの金を銀行に預けていた。

それに加えて、俺の小遣いも銀行行きだ。


何か欲しいものがあったら報告して買ってもらう、そんな日々が二年くらい続いたんだが、今回はそれが問題になった。


銀行に金を預けている、ということは俺が勝手に使える金はないのだ。

それに気がついた時は焦った。

冷蔵庫を開けてもほとんど何も入っていない。出張前に食材は使い切られていた。


水だけは蛇口をひねればいくらでも出てきた。

だから俺は母が帰ってくるまでの間、水を飲みまくって暮らしていたものだ。

その時の食べ物の大切さを理解したと言っていいだろう。


全く、後数日母さんが帰ってくるのが遅かったら俺は死んでいたかもしれない。

そのくらい危なかった自覚はある。

長期休暇も災いしていたな。


今思えば、近くの家に食べ物をせがみに行けばよかったなと思うが、その時は父を亡くしたショックもまだ残っており正常な判断ができていなかった。


なんとも、懐かしい思い出だ。


その裏の話までは知らないが、ある程度何が起こったのかを理解したノアは悲しいものを見るような目つきでこっちを見てくる。


そして俺の手元のバスケットからレタスサンドを掴み俺の口の中に押し込んだ。


「そうだったんだねタクミ、今はいっぱいごはんがあるから、たくさん食べてね。」

なんとも優しさに満ち溢れた声だ。

俺は口に押し込まれたそれを咀嚼する。ふむ、レタスのシャキシャキ感がいいな。


「そうだったのねタクミ、、、ほら、これもお食べなさい。」

今度はリリスからだ。彼女もノアと同じように俺の口にサンドイッチを・・・ちょっと待って。

入らない入らない。

そんなにいっぺんに食えないって。


そう言おうとしたが、俺の口は塞がっておりうめき声をあげるだけで精一杯だった。

リリスはそんな俺の様子に気づかず、そのまま口の中に押し込めようとしてくる。


結果。。。。。喉を詰まらせた。













「げほっ、げほっ、、あー、死ぬかと思った。」

俺は息を整えながらそう口にする。

本当、ここで死んだら笑い者もいいところだなという意味がよくこもった言葉だ。

孤児院の子供たちに向けてかっこいい感じに出発したのに、死んだ原因が戦争関係なく窒息死とか、それももらったサンドイッチで、、、笑えないな。


俺はため息をついた。


「ご、ごめんなさい。あんなにいっぺんには無理よね?」

リリスが申し訳ないと言った様子で顔をのぞかせた。


「あー、気にしてねえよ。ちょっと苦しかったけどすぐに助けてくれたのもリリスだろ?」

喉に詰まらせたのも、それを解消したのもリリスだ。

まあ、その解消方法はなんとも原始的で俺の胸部をぶっ叩くと言う方法で素直に感謝の言葉を述べづらい。

これがノアあたりだったらよかったんだが、リリスは割と強目に叩いてきやがったからな。

その衝撃でなんとか詰まったものは取れたが、別の意味で咳き込むことになった。


「そう、大丈夫ならいいんだけど、きつかったらいつでも言ってね?」

そんなやりとりをしていると、俺たちの馬車がゆっくりと減速して止まった。

どうやら休憩時間みたいだ。


これの後、一緒の馬車に乗るパーティを入れ換えるんだと。

よかった。正直途中からずっと目の前の奴らが親の仇のような目で俺の方を見るから、変わって欲しいと思ってたんだよな。















そして休憩も終わり、俺たちが相乗りすることになったのはヴィクレアが所属するパーティだった。

例によって向かい合うように座る。



ヴィクレアがいるパーティは例によって4人パーティだ。

と言うか俺たち以外はみんな4人だけで来ている。

もともとこの数しかいないのか、それとも合わせているのかはわからない。


パーティリーダーはまだ若い女性だった。騎士鎧でガチガチに身を固め、兜をかぶっているため声はくぐもっていて聞き取りづらい。

ヴィクレア曰く、恥ずかしがり屋だから兜は外さいし肌も晒さないのだと。


「それにしても驚いたよ、タクミ殿がここに呼ばれるなんて。」

ヴィクレアは馬車が動き出してからそんなことを言い始めた。


「ああ、俺もびっくりだよ。本当なら誰かに変わってもらいたんだけどな。」


「そんなこと言っちゃいけないよ。戦争に参加するのは誉だ。選ばれたからには行く義務がある。」

名誉とか言われても俺は一切そんなことを感じないからなあ。

その名誉は別の人にーーーー、まあもう無理だが。そう思わずに入られない。


「というかヴィクレアの方も選ばれたんだな。・・・正確にはパーティか。」


「ふむ、そうなのだ。私自身はそこまで強くはないが、みんなとても優秀な仲間で助かってるよ。特にリーダーは別格だ。」

彼女は俺のつぶやきに誇らしげに答えた。

俺はその言葉を聞き、軽く彼女の仲間を確認する。


まずはリーダー。

これはさっきも言った通り全身甲冑状態。良くも悪くもそれ以上は読み取れない。

ただ、全身鎧・・・強そう(小並感)


次にヴィクレア。

彼女は未だに首からプレートを下げていた頃のイメージが拭えないため、それほど強そうには見えない。

ただ、まあ充実した装備を見るに強いんだろう。


そしてその後ろに控えるのが年寄りの男。

格好は完全に魔法使い。黒いローブを身に纏い、長く伸びた白いひげを揺らしている。

ふむふむ、、、老齢の魔術師、、、弱いはずがない。



最後はイケメンだ。

さきほどから俺に痛いほど視線を突き刺してくるやつでもある。

何か恨みでも買っただろうか?

ちょっと怖いから睨みつけるのはやめて欲しい。




俺はそんな奴らと情報交換程度に話をしながら、次の休憩時間までの間を過ごした。

後、イケメンから何故かヴィクレアとの関係を根掘り葉掘り聞かれた。

なんだったんだろうあれ。






そして次の休憩を挟み、別のものが馬車に乗り込んで来た。

次はどうやら、ライガたち勇者一行みたいだ。


いい機会だ。これを機にちょっと気になることを聞いて見ることにしよう。

馬車内でのやり取り、前のとこれ1話で終わらせるつもりだったのですが、、、諸事情により分割します。

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