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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
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214 恩謝と新入生


「ごめんください〜い。」

俺たちが孤児院での生活に慣れて来た頃、朝の孤児院の中に聞きなれない声が響く。声の発生源はどうやら玄関の外からみたいなので、来客ということだろう。


「はいはい。どなたかしら?」

それを察知したグレースさんがいち早く対応に向かう。

俺たちみたいなその他大勢は警戒だけして見ているだけだ。


「それにしても客なんて珍しいな。今まで来たのって・・・勇者パーティくらいだよな?」

ここで暮らし始めて2ヶ月弱経過してはいるが、客という客はほとんど来ない。

来るとしたら身寄りのない子供達を見つけた大人が預けに来るくらいだった。


ちなみになのだが、この2ヶ月で孤児院の人数が2人ほど増えた。

どちらも7〜9才くらいの女の子だ。

俺たちがここに来た時点では男女比はほぼ1対1だったのだが、これでバランスが崩れてしまったな。

まぁ、そんなことはどうでもいいけど・・・・


それと、2人とも冒険者組ではなく農業組に行ってしまった。この前なんか地面から顔を出したミミズに腰を抜かすほど驚いていたな。

と、話が逸れた。ともあれ、来客だ。



「えっと、、タクミさんいますか?」

あれ?また俺?

かすかに聞こえて来た来客の声を聞き、俺は密かに首をかしげる。

はて?この世界の俺の知り合いでここに来そうなやつと言ったら・・・勇者パーティは違うだろう?だとすれば利益に目ざといあの商人か?


「タクミさんですか?もちろんいらっしゃいますけど、、、どう言ったご用事で?」


「ああ!!いるんですね。遅くなったからもういないのかと、実は今日はお礼を言いに来たんです!」

はて?お礼とな。


「あ、先生。多分この前一緒に街を歩きに言った時の・・・」

俺の隣に座っているシャオリが何かに気がついたようにそこまで言ったところで、来訪者が姿を現した。

そこにはどこかで見たような風貌ーーーーいかにも一般市民ですよと言った感じの男女が一組。

あ、思い出した。こいつらいつの日か無理やり路地裏に引き込まれたとか言ってた奴らだ。


「お久しぶりです。タクミさん。この度は以前のお礼ということで訪問させていただきました。」


「おー、わざわざこれはご丁寧に、あ、先に言っておくけど敬語とかは使う必要ないからな?」


「そうですか?じゃあ楽にさせてもらいますね。でも、言葉遣いは割とこれが自然なところがあるのでご容赦ください。」

そういってその男は一度息を吐いた。張り詰めるために溜め込んだものを吐き出した感じだ。


「じゃあ、まずはこの前は助けてもらってありがとうございました。」


「ああ、何もされてなかったみたいでよかったよ。あそこにいるのは妹さん?」


「はい、あの時一緒に助けてもらった妹です。ほら、ルリア。挨拶を。」


「ハイデルの妹のルリアです。この前は駆けつけてくださりありがとうございました。」

ルリアと名乗った女性は小さく頭を下げる。

そうやって感謝されると助けた甲斐があったってもんだな。


「やっぱ助けた後に好意的に接して貰えると素直に嬉しいものだな。」

そう思った俺はそんなつぶやきを思わずこぼしてしまった。

「うん、そうだね先生。助けられた身なのにいつまでも牙を剥くレオンは強く言い聞かせたほうがいいよね?」

隣にいたシャオリには聞こえていたみたいだ。

彼女はこの施設内で俺に懐いてくれている数少ない子供の1人だ。特に以前2人で出かけた後からは今みたいにぴったり横について来ている。

正直、あの日は好感度だだ下がりを覚悟してたんだけど、人の気持ちってわからないものだな。

「やめとけシャオリ、俺は別に気にしてないから変に突っかかってお前たち2人の関係が悪化したらそっちの方が困る。」


「はーい、わかりました。」


ちなみに補足的な情報なのだが、ここ2ヶ月過ごしてみて誰がどのくらい懐かれているのかちょっと前に気になって聞いて見たことがある。

質問内容は誰が好きかどこが好きかと言った感じだ。


そしてその結果はリリスが一番懐かれていた。

理由としてはちょっと騒がしいけど一緒にいると安心するのだと。

ここに居着くようになってからリリスはずっと暴走モードだが、それは一重に子供達が可愛いからなのだろう。

そしてそのついでに聞いた情報なのだが、俺は子供達から考えてることがよくわからないやつという評価をもらっている。

人気順で言えば下から二番目、一番下はそもそも子供達と全く会話をしていないシュラウドなので実質最下位だ。

後、リリスから下はリアーゼ、ノア、エレナ、律識、俺、シュラウドの順だ。



「それで今日なんですけど、お二方にお礼をと思って色々持って来ました。」

ちょっと脱線したことを考えていたら、ハイデルが肩にかけた少し膨れたカバンから何かを取り出そうとしている。

俺はそれを黙ってみる。


そして少しして取り出されたのは保存食だった。

「兄は色々悩んだみたいですけど、孤児院なら食べ物が嬉しいに違いないって言いまして、」

とルリアが注釈をくれる。

食料、確かに人がいっぱいいる施設では嬉しい。

ハイデルが持って来た保存食は大きめのカバンの容量を余すことなく使用し、大量に持ち込まれていた。

これならみんなで食べても1食分丸々ありそうだ。

「おいおい、確かに嬉しいけどこんないっぱい大丈夫なのか?そっちもそんなに余裕がありそうに見えないんだけど?」

言ったら悪いがこいつらはお金持ちには見えない。こんなにたくさんもらっても大丈夫なのだろうか?


「大丈夫です。事情を説明したら父がお小遣いを多めにくれたので、それを使いました。」

それでいいならいいんだけどさ・・・


「そうか、ありがとうな。」


「いえいえ、感謝の言葉なんて必要ありません。何せこれはこちらの感謝の気持ちなのですから。」


「それで?2人はこれからどうするんだ?何か用事があるなら引き止めたりはしないけど、、、」


「そうですね。今日は予定はないので、ご迷惑でなければ何か手伝いでもさせていただけたらと思っています。」

俺の質問にハイデルはそう答えた。即答だったので最初からそのつもりだった感じだな。


「そっか。ちょっと俺は今から子供達に授業をしなけりゃいけないから、何かしたいならあっちにいるグレースさんに聞いて見たら良いかもな。」

いくら人数がいるとは言え働いているのは子供達だから見た目よりは労働力が少ない。

その分はリリスやグレースさんと言った年長組が頑張って補えているみたいだが、それでも労働力が増えることは助かるはずだ。


「そうして見ます・・・ところで、授業?そういえばタクミさんは以前僕たちを助けてくれた時、教師をやっていると言っていましたよね?何を教えているんですか?」

ハイデルは少し興味深い物を見るような目でこっちを見てくる。


「俺がいつもやっているのは自衛手段、自分の身を守るための授業だな。最低限、街の外に薬草を採取しに行って無傷で帰ってこれるのようにならないといけないからな。」

最初の目標はそれだった気がする。最近では子供達は意外に物覚えが良いので、ゴブリンくらいなら真正面から戦っても勝てるくらいの戦闘力がある。


リタに至っては多分だがオークとかが出ても逃げるだけならなんとかなりそうだ。

他の子はまだレベルが一桁だが、リタだけもう既に19だ。多分と言うか確実にノアと一緒に外に出た時のやつが原因だな。

これから先、どんどんレベルの上がりが遅くなるとはいえ、数値的にはクラスチェンジへの折り返し地点は過ぎている。


「そうですか。すごいんですね。」


「そうでもないよ。別に竜を狩れる戦士を鍛えているわけじゃないんだ。あくまで自衛術がメイン、それ以外は時間が余ったから教えているおまけみたいなものだな。」

最近はおまけの方が多いが、そこは黙っておこう。


「あ、あのっ!!」

話の途中で、ルリアが突然声を上げる。何かあったのだろうか?


「何かありましたか?」


「あの、もしよかったら私もその授業、受けさせてもらえないでしょうか?私、この前見たく守られてばっかりは嫌なのです。少なくとも、自分の身を守れるようになりたいのです!」


「おいルリア!!何を言っているんだ!助けてもらった上に鍛えてもらおうなんて虫のいい話にもほどがあるぞ!!」

ルリアは自分が讃えないことを嘆いているらしい。

確かに、守られてばっかりで何も役に立てないのは心苦しいよな。分かる分かる。


MMOに新規で参入した時に古参の人と一緒に協力プレイして、古参の人はバンバン敵を倒すけど俺はついて行っているだけ。その上何かあって死んでしまっても優しい声がかかってくる・・・・。

彼女が感じているものはこれとはまた違うものだろうが、本質は同じはずだ。

なら、どう感じているのかは少しは分かる。

だから俺の答えは決まっている。

「先生・・・」

だからシャオリ、微妙に不安そうな目でこっちを見るんじゃない。


「別に構わないよ。これからよろしくルリアさん。」


生徒が1人増えた。







魔物紹介その2『醜悪な魔王』


醜悪カイツール』のスキルによって呼び出される魔物。耐久力が高い他の『醜悪』シリーズの魔物とは打って変わって超攻撃型。

その手の鎌は全てを切り裂き、その触手は鉄をも穿つ。

高い再生能力を持っているが、耐久力自体には難があり超火力にさらされると一瞬で蒸発してしまうこともしばしば。


ただ、これを倒してしまうと中から別の恐怖がーーーーーー


普段は生命樹のダンジョンの第4層目に生息している。


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