20 夜襲?とケモ耳少女
商人ギルドでのごたごたがあった夜、俺は暗い中一人でステータスチェックをしていた。
本当は寝てしまいたかったが、そういうわけにもいかない為、そうしていたのだ。
ちなみに、今日のマタンゴ狩りで俺のステータスはこうなっていた。
名前 天川 匠
クラス 戦士
レベル 19
HP 602/602
MP 25/25
力 61
魔力 22
体力 72
物理防御力 88
魔法防御力 23
敏捷 35
スキルポイント 23
状態 正常
敵の数が数だったので、かなりレベルが上がっている。HPと物理防御の値が結構伸びており、ちょっとやそっとじゃ死にそうにはない・・・ように見える。
スキルポイントも大量に手に入ったため、新しいスキルを覚えてみるのもいいだろう。
それなら何を覚えるのがいいかな?
俺はウキウキしながら、ステータスウィンドウの次のページを開こうとした。
しかしその時、部屋の外から何か物音が聞こえる。物音・・・というよりは話し声だな。
俺はそれを聞き逃さないように耳を澄ませる。
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「お頭、ここが奴が寝泊まりしているという部屋です。」
「よし、じゃあ早速踏み入るぞ・・・って鍵がかかってるじゃねえか・・おい何とかしろ。」
「了解です・・・」
ガチャガチャ・・・と俺の泊っている部屋の扉の鍵を開けようと試みる音が鳴る。
これはあと数秒後には扉が開くだろう。そう思った俺はひとまず武器を構えておこうと考える、しかし昼間に木の剣は折れてしまい補充をしていなかったため、俺が使えそうな武器はない。
ノアは隣の部屋に泊まっているため、彼女の武器を借りるということもできない。
あれ?これってある意味ピンチなのでは?
一応警戒はしながらも、その扉がいつ開くのかと彼らがたてる物音を聞き逃さないようにする。
ガチャ・・・カチャ・・・パキッ・・・
先ほどのものとは少しだけ違う、何かが外れるような音がした。
もしかして、開いたのか?
「お頭!!大変です。ピッキング用の針金が折れてしまいました!!それに、いくらやっても開く様子はありません!!」
・・・ん?思っていたのと違う展開だ。
おい、開かねえのかよ!!
「そうか、それなら仕方ねえな。おい、扉の隙間からこれを中に入れておけ!!」
「了解でさあ!!」
その言葉のすぐあとに、部屋の扉の下から、一枚の紙きれが入ってくるのが確認できる。
「よし、これでいいだろう。今日はもう引き上げるぞ。」
「らじゃー」
俺はその紙切れを、この部屋に来た男たちがどこかに行ったことを確認してからゆっくりと確認する。
そこには、短い文章が書かれていた。
『森のダンジョンまで来い!!』
たった一文、これだけだ。
先ほどの男たちは本当にこれだけで俺が出向くと思っているのだろうか?
少し馬鹿らしくなった俺は、中断されていたスキルの取得を再開した。
◇
「タクミーーー!!朝だよ!!早く起きて!!冒険に行くよ!!」
次の日の朝、その日もノアが俺を起こしに来ていた。
ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!
扉を強くたたくような音がする。朝から元気な奴だな。
俺は眠い目をこすりながら、ゆっくりと扉の鍵を開けた。そして同時にノアが部屋の中に飛び込んでくる。
「ほら、早く起きて!!そして着替える!!」
俺は彼女に言われるがまま、防具を身に着ける。
今日はいつもの布の服ではなく、昨日購入した冒険家の服だ。
見た目はさほど変わらないが、昨日とは違った安心感に包まれているような気がする。
着替え終わった俺はそのまま、ノアのほうに向きなおる。
すると彼女は、手に何か持って真剣にそれを見ていた。
あれは――――――昨日の紙切れだ。
俺が着替え終わったことに気が付いたのだろう。彼女はすごく明るい表情でこちらを向き、言葉を投げかける。
「ねえ!!今日は森のダンジョンに行くんだね?やったあ!!」
違う、といってやりたかったが、彼女の嬉しそうな表所を見ると、そういうことを言う気分にならない。
それに、少しは行ってあげてもいいかな?という気持ちはあったのだ。
今日は森のダンジョンなる場所に行くことにしよう。
「そうだな。ちなみに、どこにあるか知っているか?」
「うん!!昨日行った森の中心にあるやつだね!!」
あの森、そんなものもあったんだな。昨日はマタンゴ狩りに夢中で気が付かなかった。
「よし、じゃあ、行こうか。」
準備を終えた俺たちは、宿を後にして件のダンジョンに向かうことにした。
◇
「あの、待ってください・・・」
街を出ようとしたとき、そんな声が俺たちを呼び止めた。
反射的に後ろを振り返った俺が見たのは、ひとりの少女だった。見た目は大体中学生くらいか?
奴隷が着るようなみすぼらしい服を着ていた少女には、獣のような耳が生えているのが特徴的だ。おそらく、獣人と呼ばれる類の種族なのだろう。
この世界に来て初めて見る存在だった。
「何この子、タクミの知り合い?」
ノアがそう聞いてくる。出会った当初から思っているのだが、こいつはどうやら何も考えていないらしい。
「知り合いも何も、昨日商人ギルドで見ただろう?あの男たちに囲まれていた人だよ・・・だよな?」
自信満々に言ってはみたが、あの時は遠目から見ただけなので、俺も自信はない。
「は、はい。あってます・・・」
うん、あっていたみたいだな。
「それで?その子がタクミに何の用なの?」
俺が聞きたいことは、基本的にノアが先に聞いてくれる。こういう意味では、彼女は本当に優秀だ。
「あ、あの、お二人は今から冒険に出られるんですよね?」
「うん、そうだね!!今日はダンジョンに行くんだー」
「あの、、、でしたら・・・・私もつれていってくれませんか?」
遠慮しがちに、その少女はそう言った。
「だってさ、どうするタクミ?ボクは別にどっちでもいいんだけど・・・危なくないかな?」
「それもそうだが、今日の冒険には連れていこうと思う。彼女も、俺たちが連れていかないと仕事がなさそうだしな。」
その言葉に、その少女は驚いたような表情を見せる。
少し考えれば当然の意見なのだが、自分の心の内を見透かされたようでばつが悪そうだ。
おそらく、ここで俺たちが拒めば俺たちのせいで仕事がなくなったとか言って無理やりにでもついてきたはずだ。
いや、理由は何でもいいのだろう。
彼女にとっては、ついてくることがたいせつなのだから・・・・