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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
195/293

195 ノアとデート?

激甘注意報


今回の話には甘味成分が含まれています。

耐性のない方は、覚悟してお読みください。

俺はノアと手を繋いで街中を歩いている。

いや、少し違うな。正確に言うなら、ノアは俺の腕に組みつくようにして歩いている。

今日のノアはとってもご機嫌のようで、自らこうして来ているのだ。

笑顔で俺の腕に組みつく彼女を見ていると、少しだけ俺も照れくさくなってくる。


「えへへ〜、えっと、、、どこに行こっか?」

彼女は辺りを見回しながらそんなことを口にする。どこに行くかは決まっておらず、とりあえず歩いている感じだ。


今の俺たちの現在地は商業区、その名の通り店がいっぱい配置されている区画だ。

その形式は店舗だけに限らず、屋台なども道の端などに見受けられる。


「そうだな・・・丁度昼時だし、何か食べられるところがいいんじゃないか?」

朝早く出て来て、実はまだ昼というには早いのだが、こうしてぶらぶら歩いていても仕方はないし俺は目的を提示した。


「あ、それいいね!!何食べよっか?何食べたい?」


「俺は何でも・・・それよりノアは何か食べたいものはないのか?」


「うん?ボク?う・・・う〜〜んん」

ノアの希望を聞くと、彼女は迷うように唸り始めた。

見ている感じ、食べたいものはある。だけどそれを言っていいのかと迷っているみたいだ。


「ほら、何かあるなら言ってみろよ。」


「えっと、、ボク実はあそこにあるお店にずっと入って見たいって思ってたんだ・・・」

彼女は呟くようにそう言った。そしてある一点を指差す。

その方向には1つの喫茶店のような店が建っていた。

っというか、ただの喫茶店に見える。


「あの店?」


「う、うん・・・だめ、、だよね?」

ノアは俯きながら声を小さくしていく。どうしてそんなに自信がなさげなのだろうか?

あ、もしかしてメニューがバカ高いとか?


それなら心配しなくてもいい。みんなへのプレゼントで減ったとはいえ、俺にはまだ使いきれないだけの金はある。

多少、いや、かなり高価でも食品であるならば俺の資産を超えることはないだろう。


「ダメなんかじゃないさ。よし、あの店に行こうか。」


「あ、ありがとうタクミ!!」

彼女は顔に花を咲かせたと誤認するくらいの笑顔を見せてくれた。

お、おおう、そんなに感謝されるとは思ってもいなかった。







ーーーーカランカラン

そんな音とともに扉が開く。

その音に反応したのか、店員の視線が一瞬だけこちらに集まり、そのうちの1人が対応に出てくる。


「いらっしゃませ。では、席にご案内しますね。」

ウェイトレスの女性、彼女は人数の確認も取ることはなく俺たちを見てすぐに窓際の席へと案内してくれた。


「ご注文がお決まりになられましたら、こちらのベルでお知らせください。では、ごゆっくりどうぞ。」

俺たちを案内し終わった後、彼女はそう言ってすぐに他の仕事に向かった。

それを見届けてから俺は向かいの席に座るノアの様子を見てみる。


「えへへ、、、なんだか、ドキドキするね!!」

俺の視線を感じ取ったのか、彼女はそう言って頬を紅潮させた。


・・・えっと?誰ですかあなたは?


どうしてノアはこんな初恋の女子みたいな反応をしているのだろうか?

その原因を探るべく、俺は脳をフル回転させる。


まずはいつから?


多分、この店に入ることを提案したときから・・・いや、もしかしたら町に入る前の可能性もある。


そもそも腕に組みついてくるのも少しだけおかしいような気がして来た。


では、なぜ?

今日会ったことといえばエスリシアさんとの戦闘、あとは仲間意識の再確認だ。

多分、原因はその辺りにーーーーいや、前の質問の答えが前者なら、この店の方に原因があると考える必要も出てくる。



俺は他の客を見てみる。


・・・・ーーーー!!?ま、まさかこれは!!?


「なあノア、1つ聞いていいか?」


「うん?何かな?」


「えっと、この店ってまさか・・・」


「うん、カップル専用のお店だね!!」


Oh、そういうことだったか。周りを見て見て少しだけおかしいと思ってたんだよね。

俺たち以外にも客はいた。それもそこそこの数。

だが、そのどれもが男女1人ずつだった。


そしてそのどれもが甘い雰囲気を漂わせている。


それに加えて、よく見て見たら席がどれも2人で座ることを想定しているかのように配置されていた。


「えっとタクミ?・・・や、やっぱりダメだった?」

不安そうな顔でこっちを見てくるノア。

若干泣きそうだ。

彼女は俺がこの店のことを知らないのを知っていた。だからこそ、ここに連れ込むのは気が引けたのかもしれない。


「いや、ダメじゃないさ。それよりノア、早く何か注文してしまおうぜ。ここをわざわざ選んだってことは、何か食べたいものがあったんじゃないか?」


「えっ、!!?ー当ーー緒にーーかっただー・・・ええっと、、そうだね。ちょっとまってね。」

前半分は残念ながらほとんど聞き取ることはできなかった。だが、それだけ聞こえれば十分だった。


あとは脳内で勝手に補完しよう。

リアーゼの時もだったが、俺はこういうのは得意なんだ。


そしてその言葉を聞いて、ノアがここに連れて来てくれた理由を理解した。

ノアはーーーー少なからず俺に好意を抱いてくれているらしい。


どのくらいものかはわからない。でも、こういった店に誘ってくれるくらいには、よく思ってくれているのだろう。





・・・なんだこれ、すっごい嬉しいな。


そんなことを思っていると、ノアが呼び鈴を鳴らした。

決めているという名目上、長々と選んでいる事ができなかったのかもしれない。

そう思うと、少し微笑ましいがーーー俺はまだ決めてないどころかメニューすら見てないんだけど?



「およびでしょうか?」


「えーっと、これと、これ、あとこれもください!!」

そんな俺の不満はよそに、ノアは矢継ぎ早に注文を済ませてしまった。


店員さんはノアの注文だけ聞いてすぐに奥に行ってしまった。

「あ、安心して!!タクミの分もちゃんと頼んでおいたから!!」


あ、そうですかありがとうございます。








少しして運ばれて来たのはこれでもかというくらいクリームの乗ったパンケーキ、それと大きめのグラスに注がれたジュース。

あと、フレンチトーストのようなものとコーヒーのようなものだった。


コーヒーはそれぞれに、それ以外は2人で1つだった。

・・・ずっとこの世界は食は充実していると思ってたけど、コーヒーとかパンケーキとか、普通に存在するんだな。



「じゃあ、いっただきまーす!!」

ノアは並べられたフォークを使い、クリームパンケーキの上のクリームを掬い取る。

そしてそれを自分の口に運んだ。


「う〜ん、すっごい甘い!!」

美味しかったのだろう。目を見開いて喜んでいる。

どれ、俺も一口・・・・うわ、マジだこれ。すんげえ甘い。


だが、甘党な俺的にはばっちぐーだ。


「結構うまいな。でも、これ多分1人じゃ食べきれないだろうな。」

クリームパンケーキ、と称しはしたがこれは巨大なクリームと見たほうがいいだろう。

パンケーキなんてしたの少しだけだ。


これを食べるのは1人では骨が折れる。

今はまだ一口だから余裕だが、クリームというのは大量に食べると具合が悪くなるタイプの甘味なのだ。

完全に2人プレー用のアイテムだ。


「でも、ボク達は1人じゃないから余裕だね!!」

ノアは笑顔でフレンチトーストに手をかけた。

そっちは完全にお一人用らしい。

さほど大きくもないトーストは、次々とノアの口の中に吸い込まれていく。


俺はそれを見ながら、コーヒーを楽しむ。


甘いものと苦いもの、これが結構あうのだ。

元の世界では和食と洋食、和菓子と洋菓子は別物だった。


だが、ケーキに合うコーヒー、餡子に合う緑茶。

甘味と苦味がお友達なのはどこの世界も変わらない。


俺はそんなことを思いながら、目の前の山を切り崩していた。







そんな時、ノアが唐突にグラスを机の真ん中付近においた。

真ん中には山があって置けなかったみたいだ。


「ね、ねえタクミ。これ、一緒に飲もう?」

彼女は顔を赤らめてそう提案した。そしてそのグラスにストローを差し込む。

ラブコメとかでよく見る、カップル用のアレだ。



・・・・・あのさぁ、なんでいまだに馬車で移動とかしているこの時代にそんなものばっかり充実しているんだよ!!


本当に、この世界の食関連の充実っぷりには感嘆の声しかない。

だってさ、全くの別世界からきた俺がなんの違和感なく過ごせるんだぜ?


・・・逆に違和感しかねえよ!!

「タクミ?だめ、なの?」


「はっ、いや、ダメじゃないぞ。むしろ大歓迎だ。」

実は知られていない事 (この世界ではの話だが)なのだが匠くんこと俺には彼女ができた事がない。

最後に自分に行為を抱いてくれた人がいたのは・・・確か中学一年の時告白された事があったっけか?


当時好きな人がいて断ったけど、考えてみればバカなことをしたものだ。



だから実はこういうシチュエーション、密かに憧れがあった。

「そう!!?えへへ、、じゃあそっちよろしくね!!」

何をどうよろしくすればいいのかわからないが、とりあえずストローに口をつけて息を吸い込む。


「えいっ!!」

ノアも少し遅れて、ストローに食いついた。

同じグラス、半ば繋がっているストローを使用しているせいで、俺たちの顔はもう少ししたらぶつかってしまう程に近い。

ノアもチラチラとこっちに視線をやってくるので、集中してジュースをすすることも難しかった。


そして気づけば・・・・


「あ、もうなくなっちゃったね。」

グラスの中のジュースは無くなっていた。

それに気づいた俺はストローから口を話して元の姿勢に戻る。


「そうだな、、、もう一本頼むか?」

自分でも驚きだが、少しだけ残念そうな顔をしていたノアを見たらそんな提案をしていた。

我ながら甘いと思う。


「えっ、、っと、えっと、、、うん。タクミがいいならもう一回やりたいかな?」


「そうか。」

俺は呼び鈴を鳴らし、それに呼び出された店員に追加注文をする。

そして注文の品が届くまで、山崩しをしていることにした。


ノアも途中からフレンチトーストを食べ終わりその作業を手伝ってくれる。


「うきゅぅ〜、、、これすっごく甘いよぉ。」

弱音のようなものをはいている。


「そう思うならコーヒー飲んで口直しすればいいのに・・・・」


「だってこれ苦いんだもん!!僕は苦いのは好きじゃないの!!」


「あ、ならピーマンとか、ゴーヤとか嫌いなやつ?」


「うっ、その通りだけど・・・・」


「じゃあ好きな食べ物はカレー&ハンバーグだな?」


「な、なんでわかるのかな?」

ノアは少しだけ俺から視線を逸らした。

どうやら当たっていたみたい。そして結論も出た。

ノア、子供舌。



「お待たせいたしました。」

その結論が出たところで、追加のジュースが投入される。

ノアは一も二もなく飛びついた。


そして視線で俺に早く早くと催促してくる。


俺はストローを加える。

・・・・・・う〜ん、さっきはあんまり味わう余裕はなかったけど、こうして味わうと結構うまいよな。


入っているジュースはオレンジジュース的なものだ。

これもこれで甘いのだが、山のような甘ったるいような甘さではなく、柑橘系の爽やかさがあって飲みやすい。


甘さに飽きたノアも、こっちに文句を言う様子はなく一度もストロー辛口を離さずに完飲した。


「ぷはぁ・・・も、もぅい、、、いやいや、」

飲み終わり、何かを言いかけて思いとどまるノア。

もう1本、別に頼んでもいいのだが彼女がそれ以上追加する様子はなかった。


そして、

「あ、タクミがんばれ !!」




結局、山のほとんどは俺が処理した。

コーヒーは一杯じゃ足りなく、苦いからいらないと言ったノアの分までもらった。








「あ!!ど、どうしよう!!?」

立ち上がり店から出ようとしたところでノアの顔が青ざめる。

何か重要なことを思い出した様子だ。

「どうしたんだノア?」


「お、お金お家に忘れてきちゃった」

成る程、なんだそんなことか。


「ああ、それなら大丈夫だ。いつものように食事代は俺が払うよ。いや、今日の買い物代も俺が払うから安心してくれ。」

俺は基本的にお金は持って歩いている。不慮の事態に巻き込まれた時、金の有無が生死を分けるとか事実ありそうだからだ。


それが今回はプラスに働いたのだろう。



「そ、そう?えっと、じゃあお願いしてもいいのかな?」

俺の財布事情を心配しているのだろうか?少し申し訳なさそうにしているノア。


「お前らしくないな。いつもならこういう時、「うん!!ありがとねタクミ!!」とかで済ませそうなのにな。」


「う〜、それ、僕のマネのつもり!!?少しだけ、少ぉぉぉぉしだけ似てたけど、・・・・まあ、ありがとねタクミ。」

なんか感謝の言葉より俺のモノマネに対する攻撃が先に入った。

あれ?結構渾身のモノマネで声色も結構本物に寄せれたと思ったんだけど、本人的にはそれは少しだけみたいだ。


まあいいや。


ともかく、今日の金は全て俺の財布から出ることになった。












「お会計、65万Gになります。」


・・・・うん?高くない?

「あ、今タクミ高くない?とか思ったでしょ?」

内心を言い当てられて少しだけビクッとする。うん、思った。


「うん、思った。だって俺たち食べたのパンケーキとコーヒーとフレンチトースト、あとジュース二杯だっけ?それでここまで行くとは・・・」


ノアのせいで俺はメニュー表を一度も見ていないので、ここまで高いとは思わなかった。


「仕方ないよタクミ、今日食べたのは貴族たちが食べるような嗜好品ばっかりだったし、このくらいしてもおかしくないって・・・」

ちくしょう、そんな落とし穴が。

っていうかじゃあ何か?今日ここにきてたのは金持ちのカップルだけか?


・・・そりゃあ金落とすだろうよ。ふっかけてもパートナーにかっこ悪いところを見せたくないだろうし払うだろうよ。

くっ、これが需要と供給ってやつか!!



「えっと、お客様?お財布の方は大丈夫なのですか?」

心配したような声で店員さんが遠回しに「お前払えるの?」と言ってくる。


「あ、いえ値段について全く知らなかっただけなので、支払い自体は余裕でできます。」

俺は10万G札を7枚手渡した。


「はい。確かに、こちらはお釣りになります。」

するとさっきまでの心配そうな表情とは打って変わって笑顔の対応。

やっぱりお金って大切だわ。


「ごめんねタクミ、ボクがお財布忘れちゃったばっかりに・・・」


「いいっていいって。俺たちの稼ぎはいつも分割してるだろ?お前がそれだけ金を持ってるってことは、俺も同じくらい持ってるってことだからな。」


「そっか、、、ありがとね。」

会計を済ませた俺たちは店の外に出た。


そして俺は決意した。


よし、今日はこのままノアを甘やかしまくってやる!!





本日観測された甘味ですが、未だ止む気配はありません。

次回もこのまま続くことでしょう。


ということで、次回はノアとデート後編です。

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