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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
194/293

194 ノアの心と少年の言葉

今回はノア視点で見た物語の初めから、家出騒動終了までの話です。


物語の進行はないので、「あ〜ね。」くらいの気持ちで気楽に読んでいってください。

ボクはずっと箱の中にいた。

大きな箱。生活をするには不自由のない箱だった。

その箱の中にはボクの他に、2人の人がいた。


言うまでもなく、それはボクの両親だった。

2人とも、とってもボクに優しくしてくれた。甘やかしてくれた。


わがままを言えば、困ったような顔をしながら最後は笑って許してくれた。

そこはボクの安住の地だった。





それとは裏腹に、箱の外は魔境だった。

一度外に出ればどこからともなくやってきたボクと同じくらいの子供に石を投げられる。

そして彼らは決まって言う。

「や〜い、この穢れた血め!!」

心底楽しそうだった。見下した目だった。


ボクはそれに対して怒った。

自分は悪くないのに、そう思って反論した。

大人たちが出てきた。そうなった場合、なぜか責められるのはボクの方だった。

どうして?わからない。


外に出て、いじめられ、耐えきれなくなったボクは決まって箱の中に戻る。

そしてその中の安らぎに身を委ねる。


そして少し待ったら、、、また外に出た。



外の世界に憧れていた。

きっかけは些細なことだった。お母さんが聞かせてくれた冒険の物語。


仲間と一緒に世界のいろいろなところを旅して廻る物語。

そんな話に憧れて、ボクは外に憧れていた。

その話の中で、ボクは特にダンジョンに入った時の話が好きだったなぁ・・・・



今日こそは、そう思いボクは外に出ていた。だが、外の世界に踏み出した時、いつもボクに襲いかかってくるのは非情な現実だけだった。


お父さんとお母さんがボクのために怒ってくれたことを知っている。

近所のボクをいじめる子供たち。彼らの家にお母さんが行っているのを知っている。

お母さんは力が強かった。


家に帰ってきた時、お父さんは真っ先にボクを迎えてくれた。

お父さんは優しかった。

こんなボクにも、味方はいるのだ。こんなに身近に、味方がいるのだ。


当然ボクが虐げられている理由が、両親の種族にあることも知っていた。

初めはそれを恨んだリモした。だけど、やめた。


唯一の味方。

お父さんとお母さん。その好意を、思いやりを無下にすることはできない。

優しく差し伸べられている手を、振り払うことはできない。


そんな生活が続き、ボクは大きくなった。

ほとんどの時間は家の中で過ごした。あまり好きではないが、本を読んだ。

いろいろなことが書いてあった。それがまた、ボクの憧れを強くして行った。




そしてついに・・・・ボクはそれを抑えきれなくなった。

「お母さん、ボク、外に行くよ。」


「いってらっしゃい。いつ帰ってくるん?」


「ボク、今日は帰らない。一人前になって、信頼できる人を見つけて、そしたら帰ってくるよ。」


「・・・・そう、曲げてでも、気にせんでええからいつでも帰ってき。あと、信頼できる人を捕まえたら、うちのところまで連れてくるんやよ?見定めたる。」

お母さんは心底心配そうに、苦笑しながらいった。


「イリノアちゃん・・・・お父さんがこんなんだから、、、ごめんな。」

お父さんはまだ、自分を責めているようだった。

こうしてボクは、箱の中から外に出た。









家を出てから、街を出た。

まずは仲間を探すところから、誰かと一緒になるところから始めよう。

そのためには、あの街は都合が悪かった。


お父さんからもらったお小遣い。

それのほぼ全てを使って、知り合いがいなさそうな田舎の方に馬車を走らせてもらった。


馬車の御者もボクのことを知っていたみたいで、少しだけ微妙な表情をしていた。

なんだよ!ボクがそんなに珍しいか!!


・・・心の中で叫んでも虚しいだけだったからやめた。

馬車の中ではついたら何をしようかという妄想をして過ごした。

まずはやっぱり友達を作ることからだよね!!?


幸い、ボクの見た目は奇跡的にただの人間と相違ない。だから黙っていればバレないはず!!


そしてその人と一緒にパーティを組んで、それでね。ダンジョンに入ってお宝を見つけるんだ!!


そしたらね、大きなお家を建ててね!!ええっと、それで・・・・


その時間は楽しかったが、すぐに終わってしまった。

目的地に着いた。

妄想してるのは楽しかった。それを中断されても、全く気にも留めなかった。



だって、その妄想は今から現実にして行くんだから!!


ボクは知らない街に足を踏み入れた。

まずはじめに、冒険者ギルドに行った。そして登録を済ませた。

これで晴れてボクも冒険者だ!!



気分が乗ったボクは近くにいた人に話しかけた。


「ねえ、君ボクとパーティ組んでよ!!」

今思えば、随分と上から目線だったなと反省するしかない言葉だ。


「はぁ?」

当然のごとく、断られた。何を言ってるんだ?そんな顔で見られた。

ボクはカッとなった。頼んでいるのに、相手にされなかったからだ。


でも、それ以上踏み込むことはしなかった。

踏み込むことが、怖かった。もしかしてボクのことを知っている人がいて、そしてボクに気づいて、あの街にいる時みたいになるのが嫌だった。


だけどボクはこれくらいじゃくじけないよ!

あれから建物内にいる人みんなに頼み込んで、それで断られたけどね!!


多分ボクが弱いのがいけないんだ。ボクが強いんだぞ、ってところを見せればきっと誰か・・・・



ボクは1人でゴブリンの討伐をすることにした。

オークを倒そうとしたけど、それは受付の人に止められてしまった。

そもそも普通は薬草採取から始めるのだと言う。


でもそれじゃあボクの強さは示せない。


ボクは依頼を受け、ゴブリンがいると言うところに行った。


・・・・ゴブリンは4匹いた。

いや、今なら言える。4匹しかいなかった。だけど、ボクは1人しかいない。

数だけで言えば4倍だ。ボクは焦って魔法を使った。

使いすぎた。


もう少し考えて魔法を使えればよかったと後悔した。

ボクの発動した魔法はゴブリンを2匹仕留めることに成功したけど・・・MPがきれてしまった。

もうこれ以上、戦えなかった。


戦えなくなったら、途端にゴブリンが怖くなってきた。

顔を歪ませて笑みを浮かべるそいつらが、ボクに何をするかを想像して、震えが出てきた。

そのうち、ゴブリンが近づいてきてボクに向かって錆びた剣を叩きつけた。


鈍い痛みが体に走った。痛かった。でも、それ以上に怖かった。


ボクは逃げ出した。

逃げた。逃げた。逃げた。ゴブリンはボクを追いかけてきた。だからさらに逃げた。

ボクはあまり外に出ることはなく、運動はほとんどしてこなかった。

だからだろうか?ゴブリンとあまり足の速さは変わらない。


ボクの後ろをずっとゴブリンが追いかけてくる。


逃げている途中、ボクは何も変わっていないなって思って笑えてきた。

このまま走って、疲れ果てて捕まってしまうのだろうか?

そう思っていたところで、街が見えた。まだかなり距離がある。


あそこまで逃げられれば、助かる。


ボクは必死に走った。生き残ることだけを考えて走った。

まだ街との距離が結構あるのに、ゴブリンとの距離はかなり縮まっていた。


人が見えた。

いかにもボクと同じ、駆け出し冒険者の格好をしていた。その人の腰についている袋から、薬草の顔が見え隠れしていた。



ああ、あの人はボクと違って堅実なんだなと思った。

ボクと違って命を大切にしている、無茶なことはしない人だと一目見てわかった。

ボクはこともあろうことか、その人を盾にしてしまった。


今でもあの迷惑そうな表情は忘れられない。

何をしてくれたんだ。と困ったような表情だった。


ボクはその人を囮にして逃げた。

ボクはもう戦えなくて、だから足手まといで、いない方が邪魔にならなくて。

ゴブリンを押し付け、逃げている最中にそんな言い訳ばかりが頭をよぎった。


いや、わかっている。



ボクは自分可愛さに彼を見捨てたのだ。


どう見ても駆け出しの冒険者。彼の持っている剣は新品同然だった。

そんな状態でいきなり予期せぬ形で魔物を2体も擦り付けられたら?


無事では済まない可能性が高い。



ボクは街に入ってはじめにやったのはちゃんと自分が生きているかの確認だった。

薄情だ。生きているに決まっている。1人、犠牲にしてきたのだから。

死んではいないだろうけど、大怪我をして帰ってくるかもしれない。

そう思って街の入り口で待機していた。










その人は何食わぬ顔で帰ってきた。そしてボクを見つけた。

笑顔でこちらに近づいてきている。。。つもりだろうけど、顔が怖い。

絶対に怒ってるよこれ!!?


話しかけてきた。


丁寧な言葉遣いが逆に怖い。


でも、、、でも、、、ボクは逃げるわけにはいかない。

気づけばその人はボクの方をじっと見ていた。

値踏みするような目だ。

まさか・・・・?


ないとは思うが、こうしてじっと観察されれば、ボクのことがバレちゃうかもしれない。


「あれ?もしかして、ボクの魅力にメロメロになっちゃったのかな~?」

僕はそう言って話をそらそうとした。視線をそらそうとした。

そんなこと思われていないなんて理解はしている。でも今は早急に、その追求する化のような目を逸らして欲しかった。










無理やり宿まで押し入った。

お礼をすると言った。

そしてお礼は、ボク自身だと言った。お礼と言ったのに、お願いをしていた。

彼は今日の朝方に冒険者ギルドにはいなかった。

ということはまだ誘っていなかった。


だからもしかしたら、そんな淡い期待のつもりだった。



彼は全く迷うことなくボクの頼みを承諾した。


お父さん、お母さん、今日初めて、ボクに友達ができたよ

その人の名前は『タクミ』っていうよ!!

頭の中でそれを反芻し、なんども嬉しい気持ちになった。













それから一緒に冒険した。

前の日の10倍以上のゴブリンを見て逃げたくなった。

でも臆することはない!!ボク今日もボクは1人じゃないのだ!!

ボクがダメでも、タクミがなんとかしてくれるはず!!

若干駄目元だったけど、実際なんとかしてくれた。

あの数のゴブリン相手に、楽な作業でもこなすこのように戦っている。

ボクのサポートもまずまずだ。



でも、オークが出た。

タクミが逃げろと言って、オークと対峙した。



タクミはオークに吹き飛ばされた。

ゴブリンも近づいていた。このままじゃあ、タクミが死んじゃう!!

でも、ボクじゃあのオークは倒せそうになかった。

タクミはまだ、戦っていた。

諦めていなかった。でも、状況が悪かった。

ゴブリンがどんどん近づいて、直ぐにでもタクミが飲み込まれてしまうことは想像できた。



だから、ボクはタクミの指示通りに逃げることにした。

ただし、ゴブリンの群れを率いて!!











妹ができた。

リアーゼちゃんっていうらしい。お友達に続き妹まで、、、

タクミと出会ってからいろいろなことがいい方向に向かっているっぽい!!













どうしよう・・・女悪魔にタクミが連れ去られちゃったよ!!

しかも一瞬しか見えなかったけど、あの悪魔はかなり強そうだよ。

少なくとも、今のボクじゃ勝てないよ。


うぅ〜、その人はボクのなんだからね!!


それから少しして、タクミと再会した。

こともあろうことか、リリスと一緒に歩いていた。

その手には今日購入したであろう食材が・・・・何!!?タクミったらボクがこんなにも心配していたのに楽しそうに暮らしていたの!!?

そう思うと、苛立ちばかりが先に出て来た。

本当は喜ぶべきだった。

タクミは無事だったのだ。


ちゃんと元気そうだったのだ。それを喜ぶべきだったのに、なぜか苛立ちを隠せなかった。


その日ボクは、タクミを連れ去った悪魔と一緒の部屋で眠った。

悪魔の名前はリリスと言った。







その次の日、冒険者が来た。

有名な対悪魔の専門家も一緒だった。タクミはリリスと一緒に戦った。

悪魔祓いの専門家たちはリリスが、冒険者たちは全てタクミが請け負った。

ボクはどっちにつくべきか、わからなくなっていた。


昨日までだったら確実にボクは冒険者側についてリリスを倒すために行動していただろう。

だけど、リリスのことを実際に見て見て、それが正しいのか、不安になった。








迷った末、ボクは冒険者側についてリリスを倒すことに手を貸した。

その時にはタクミがいつの日か見せてくれた、スライムいっぱいの部屋に逃げ込んでいた。

そこからでてくる大量のスライムは冒険者たちを襲う。

だけど、どういうわけかボクには見向きもしなかった。


それ幸いとボクはタクミたちに追いついた。そして、彼と対峙した。

リリスの盾になるタクミ・・・・本当はボクがその場所に居たかったのに、、、、場違いな想いが頭をよぎった。


彼はボクにどうして戦うのかを問うた。

ボクは思い直すように言った。


「戦う理由?そんなの、タクミがボクの仲間で、そいつが悪魔でって、それだけで十分でしょ?」


ボクのセリフを、タクミは鼻で笑った。

リリスは確かに悪魔だが、悪いことはしてないだろ?と強く主張して引かなかった。


ボクはそれを聞いて、自分も同じなんだなと思った。

悪魔だから、敵。

穢れた血だから、いじめる。



おんなじだ。

タクミの言っていることは、そこにいる誰のものよりも正しい。

ボクはそのことをちゃんと理解していた。

だって、、、ボクもずっとリリスの位置で、今のタクミのようなお母さんとお父さんに守ってもらって居たのだから。



・・・・で、でも、それでもタクミはあげないからね!!それはボクのだから、だから戦うんだ!!














リリスが仲間になった。ボクは彼女が気に入らなかった。

悪魔だとか、本当はどうでもよかった。

ただ、タクミにボクを見て欲しかった。



ボクは家出した。

あてもなく


逃げるように街の外に飛び出した。



どこに行くのかは、誰にも告げて居なかった。

だからタクミは来てくれない。

お腹が空いた。

暗くなった。

寒くなって来た。






寂しくなった。


その気持ちを紛らわすように、ボクは眠った。寝て目が冷めれば、もしかしたら全部夢だったのかもしれない。

その展開に少しだけ期待した。







だが、現実は期待した以上のものだった。

目が覚めたら、タクミがいた。

火を焚いて、冷えないようにしてくれた。

食べ物を差し出してくれた。






そして、ボクを連れ戻しに来てくれた。

嬉しかった。でも、素直にはなれなかった。だってどうせ戻っても君はリリスと、新しい人形のことにかまけてるんでしょ?

ボクは思ってもいないことを言った。


ボクを探しに来てくれた人に、なんて酷い言葉をかけたのだろうか?

嫌われたかもしれない。

見限られるかもしれない。


また、1人になるかと思った。


タクミはそんなボクに怒った。その態度、初めは当たり前だと思った。だが、その口から告げられる言葉は、どれもボクを大切に思ってくれている。

そんな感情が伝わって来た。


タクミはボクに夜空に輝く星の話を切り出した。脈絡のない話だった。でも、自然と話を聞く気になった。

彼はどうして星が綺麗なのか?と問いかけた。


ボクは周りが暗いからだと答えた。

彼は自分で光っているからだと答えた。


そして月を見た。

彼は星より月の方が綺麗だと言った。ボクもそう思った。多いな月、大きな光。

ボクはそれに憧れた。


そんなボクにタクミは真実を告げた

月は輝いてはいなかった。あの光は貰い物で、大きさは近いからだと言った。

そしてボクの方を見て笑った。

それを見たタクミは、ボクを月だと言っているように感じた。

夜の空にひときわ大きく輝く月、そう言われたような気がした。


そして、無理をしなくてもいい、と言われたような気がした。

彼は悪魔だからと差別せず、リリスと接して来た。

だからきっとボクのことも、ボクの出生も笑い飛ばしてくれるはずだ。

いつか、彼には本当のことを伝えよう。でも今は、無理をせずに眠ることにするよ。




ボクの心は、救われた。


システムメッセージ


『エイリノアの好感度が一定値を突破しました。これによりルート【ノア】が解放されました。』


・・・的な?


ということで、次回はノアと激甘な展開を書く予定です。

作者「私だってやろうと思えばまったりいちゃいちゃな話をかけるんだってこと、見せてあげます」


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