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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第1章 少女の陰と手にしてしまった罪
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19 後処理と掃除

「うぅ~、なんでボクがこんなことしなくちゃならないのさ~!!」


「つべこべ言うな!!お前がやったんだろうがよ!!」


俺たちは今、掃除をしている。どこを、なんてことは言う必要はないだろう。

壁に大質量をたたきつけ破損させ、その上に床を水浸しにしたのだ。それをとがめられないと思うのは、少し虫がいいという話だ。

喧嘩の後始末ぐらいは自分たちでしなければならない。


まあ、この店の店長と思しき人が言ったからやっているだけであって、何も言われなかったらそのまま立ち去ろうと思っていたのだけれど・・・

というか、これに関しては俺はあんまり悪くなくない!?だって俺はどこも壊していないし水も使ってないんだぞ!?

与えた損失といえば床に刃物が刺さって傷がついたくらいだろう。

壁に人をたたきつけたのも、水をまき散らしたのもノアなのだ。悪いのは彼女だ。


それなのに俺に話しかけてきたその男は、さもすべての原因が俺だと言いたげな表情で後始末をしろというのだ。

理不尽なことこの上ない・・・・


と心の中で初めは思ったりしていたが、考えてみれば俺が一番の原因といっても過言ではないのかもしれない。

思えば、あの三人は特別俺たちに何かをしたわけではない。ノアも、彼らにはかかわりたくないような雰囲気を醸し出していた。

放っておけば彼らは戦うことはなかっただろう。そんな状況に飛び込んでいったのが俺なわけだ。


これは悪いのは俺といわれてもあまり文句は言えないかもしれないな・・・

床のふき掃除を長々と続けていると、そう思うようになってきた。どうやら、床の汚れとともに俺の心に宿っていた陰りも落ちていっているみたいだな。

まあ、こっちのほうは気のせいだろうが・・・・


そんなこんなで、俺たちは今、せこせこと床のふき掃除をしている。


偉そうに俺に話しかけたその男は、どうやら濡らしてしまった部分をふき取るだけでは満足しないらしく、そのフロア全体をやらされているのだ。

これはさすがにどうかと思ったが、壊した壁などは弁償しなくていいというのだから、ある意味妥当なのかもしれない。


結局、俺たちが掃除を終わったのは夕方になった時だった。

午後になってすぐにあの騒動が起こったため、かなりの時間掃除をしていたことになる。


後始末を終えた俺は、念のために騒動が起こった場所を確認してみる。

しかし、暴行を受けそうになっていた女性は影も残っていなかった。それに、男たちの気絶した姿もなくなっている。


これは・・・失敗したか?


俺はそう思いながら、あたりを見渡す。

ここは商人ギルドということもあって、かなりの広さがある。そして、かなりの数の店が立ち並んでいる。

建物は一階建てのため、見たままの広さしかないが、それでも十分すぎるほどだ。


その為、先ほど助けようと?した女性を見つけることはできない。

まあ、容姿なんてものはほとんど覚えていないから、見つけはしたが見逃していた、ということもありそうだったが、とりあえずは見つからない。

どうやらこれは失敗したみたいだ。


俺の行動を不思議の思ったのだろう。あたりを見渡している俺に向かってノアが話しかけてくる。

「タクミ?さっきから何を探しているの?」


「あ、いや、さっきの女性は大丈夫だったかなって思ってな。」

そう思っての行動ではなかったが、半分は本心だ。

俺が下手に手を出してしまって、ひどい目にあってなければいいのだけれど・・・


「?それならボクたちが掃除をしている最中に、衛兵の人に保護されてたから、大丈夫だと思うよ」


「そうなんだな。掃除に夢中で気づかなかったわ。男たちのほうは?」


「これも同じく衛兵に連れていかれてたね。こっちは無事かどうかはわからないけど、彼ら自身何か悪いことをしたわけではないから、彼らの証言次第ではボクたちが衛兵に追われる羽目になるかもね。」


「それは・・・やめてほしいな。」

幾度となく同じような展開のイベントを見てきただけあって、反射的に助けに入ってしまったが、不味かったかもしれない。

この手のイベントは相手がはたからみてすぐに悪者だと分かるから、主人公の正当性が確保されているのだ。

だが、今回はなるべく暴行を加えさせないようにしようと、手を出そうとした瞬間に俺が先に手を出した。

これでは、はたから見た場合俺のほうが悪者扱いされてもおかしくない。というか、そのほうが自然だろう。あの男たちが俺を悪者に仕立て上げるようなことを衛兵なんかに話した日には、俺のほうが追われる羽目になる。

それは御免こうむりたかった。

なにせ俺はほぼ初期装備。防具は先ほどそこそこのものを購入したが、武器に至ってはまた折れてしまって持っていない状態だ。

そんな状況で、逃げ切れるとは思えない。だからそれだけは避けたいのだが・・・・


「でもまあ、たぶん大丈夫だろう。」


「そう?ボクはともかく、君は結構危ないと思うよ?」


「いや、俺の推測が正しければ、衛兵には追われないはずだ。」

俺はそれをほぼ確信していた。

こればっかりは理屈という話ではなく、完璧な経験と勘としか言いようがないので説明することは出いないが、とりあえず衛兵は俺たちを追ったりはしないはずだ。



さっきの女性の安否も確認できたことだし、俺たちは商人ギルドを後にする。

何かを忘れているような気もするが、忘れるということはそれほど重要ではないのだろう。思い出したら、また来るとしよう。


「じゃあ、やることはやったし今日は帰ろうか・・・予想外の労働があって俺はもう疲れた。」

誰に言うでもなく、自分に確認をとるようにそう呟く。


「そうだね。今日の夕飯は何かな?労働の後の食事っておいしいから楽しみだね!!」

その言葉が聞こえていたのだろう。ノアがそれにこたえるように声を上げる。

そして俺の前を歩き始める。彼女自身が言っていた通り、よっぽど夕飯が楽しみなのだろう。今日は何を食べるのがいいだろうか?

今から食べに行く気力はないから、宿に頼んで作ってもらうのがいいだろうな。確か追加料金を払えば作っておもらえたはずだ。

その際のメニューは完全な向こう任せなのだが、それはそれで何が出てくるかわからない楽しみがあっていいかもしれない。


「よし、今日は宿の飯をとってみるぞ。そうと決まったら早く帰宅だ!!」


俺たちはまっすぐにいつもの宿に帰る。


そしてその夜、俺は自分のミスに気が付いた。

ああ、どうして武器を補充しておかないかなあ・・・・

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