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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
189/293

189 足跡と発表


そこは一言で言い表せば、『白』だった。


あたり一面真白で、自分が今どこに立っているか、それを確認するのもおぼつかない。

ただ、なんとなくだがこの場所は前にだけ道がある。

そんな気がした。



俺は一歩ずつ足を踏み出した。


いくあてはない。ここがどこかすらわからないのだから、あるわけがない。

ただ、そうするのが正しいような気がした。


気がつけば、そこは白だけではなかった。

俺が歩いている道からふと、横を見ると白の中に何か別の風景が見える。


それは窓枠のような形で俺にその先を見せてくれる。

なんの風景だろうか?

俺は特に気にするでもなく歩き続けた。


俺の左右には変わらず何かの風景。


一貫性はないように思える。

だが、自然とどれも新鮮な感じはしなかった。

映し出される風景は、どこか見覚えがあるような気がしてならなかった。


俺は歩いた。


終わりがあるのかすらわからないこの場所で、ただただ前に向かって。






おや?



ある時を境に、左右にある風景が映し出される窓枠が減っているような気がした。


少し気になりながらも、俺は歩く。


気づけば俺の周りに見える風景は明らかに数を減らしていた。

少しずつ、また空白の割合が増えていく。


だが、俺はそんなことは気にしない。



俺は真っ直ぐと歩く。

どんどんと空白が増えていく。


そしてついに終わりが来た。

最後の1つの窓枠になった。


俺は最後だから、と通り過ぎる際、その風景をちらりと横目で覗いてみた。

その窓枠に映し出されていた風景は雪が降る街中の風景だった。


視点が動いているのだろうか?

その風景はどんどんと後ろに流されて行っていた。


それだけ見て、俺はその窓枠から目を離し、前を見つめた。

もうここから先には何もないように思えた。

だが、進む必要がある。そう思った。

たとえそれが虚構であったとしても・・・・



俺は進む。何も考えずに、まるで何かに流されるように。



どのくらい進んだだろうか?

やっと終着らしきものが見えてきた。


終着点にもまた、ひとつだけ風景が見える窓枠があった。

それの目の前まで来て、俺は立ち止まりふと後ろを振り向いて見た。


俺が今まで通って来た道はどうなっているのだろうか?

気になった。


俺はゾッとした。


それまでは左右に見せるだけだった風景たちが、遠くで俺の方をじっと見ているような気がしたからだ。

気のせいかもしれない。

だが耐えきれなくなった俺はとっさに視線を前に戻した。

そして、最後の風景をじっと見る。


そこには1人の女性が映し出されていた。

心配するような目で、こちら側を見ているような気がした。


俺は気づけばそれに手を伸ばしていた。


震える手がその風景に触れる。


触れた手から、暖かさのようなものが感じられた。

暖かいと感じた。安心感があった。

もっとそれが欲しいと思った。

愛おしく感じた。


次の瞬間、俺はその風景に向かって飛び込んでおりーーーーーーーー








目が覚めた。

見覚えのない天井だ。まぁ、それ自体は珍しいことではない。

そもそも王都に来て初めての朝だからそれは当然の話なんだが・・・・・



ん?何か手に暖かい感覚がある。


手を包み込むような感覚だ。

俺はそれが何かを確認しようとして起き上がろうとする。


「あ、起きた。」

その時、横からそんな声が聞こえた。

ノアの声だ。


俺はそのまま起き上がり、周りを確認して見る。


窓の外からは穏やかな日差しが差し込んでいた。

最近では珍しい起床時間だ。あれ?ノアはそこにいて起こしてくれなかったのか?


体を起こしたまま俺は視線を自分の体に向けた。

布団に横たわる自分の体、その手は包み込むようにノアに握られていた。


「ノアーーー手。」

先ほど感じたものの正体はこれだったか。

でもだったらなんで?


「あ、これは違うんだよ!!決してボクがこうしたかったわけじゃなくって、朝起こしに来たらタクミがすごくうなされてて・・・だから・・・」

ノアは捲し立てるようにそう言った。

しかし、うなされて・・・・・


何か、大切な夢を見ていたような気がする。

なんだったか?

思い出そうとしても思い出せない。

まぁ、夢なんてその人の記憶って言うし、特に大したもんを見るはずはないんだけど。


少しだけモヤモヤするな。


「そっか、ありがとうノア。でももう大丈夫だよ。」


「う、うん。どういたしまして。」

感謝の言葉を伝えると、ノアは慌てたように俺から手を離した。

朝特有の空気の冷たさが手に伝わってくる。


そこで再び俺は現状を確認する。


えっと確かーーーーーそうだ。


昨日は夕飯を食べさせてもらった後、もう遅いから泊まっていけってことになったんだったっけな。

それで空いていた部屋を使わせてもらってこうして寝ていたわけだ。

ノア父ーーー名前はカンヘルと言うらしいーーーが全力で反対していたのが印象的だった。


俺は体を立たせて軽く蹴伸びをした。


「あ、タクミ。もうそろそろご飯ができるみたいだから行こうよ!!」


「ん。わかった。」


俺はノアに言われるがまま、朝の支度を済ませて朝食に向かった。











朝食は特に変わったところはない。

ベーコンエッグに一切れのパン。それとレタスとキャベツのみのやサラダ・・・

少し突っ込みたいものがあったような気がするが大体普通だ。

ちなみに、カンヘルさんはまだ起きて来ていない。

昨日は遅くまで飲んでいたみたいだ。


「それであんたは今日は何するん?ここでゆっくりしていくやんな?」

食べている最中、エスリシアさんがノアに向かってそう言った。

質問、と言うよりは確認だろうか?


「う〜ん、それでもいいかなぁ・・・したいお話とかもあるし。」


「え、でもノア。みんなはどうするんだよ。」


「あ、それなら昨日の時点でリリスに言っておいたから大丈夫だよ。リリスも数日はゆっくりして来なさいって言ったから。」


「そうなのか。」

多分俺がここに引っ張られる前にしていたこそこそ話の際に言ったんだろうな。

それならそれで安心だ。


ノアも数ヶ月ぶりの家族との再会、自分の家だ。ゆっくりしたいのだろう。

ならば俺はその意を汲み取ってやればいいんだな。


「あ、それならうちはノア、あんたがどれくらい成長したかを見て見たいわぁ。口だけやないんやろ?」


「うん!!家を出た期間は短いけど、それでもボクは強くなったんだからね!!」


「そうかぁ・・・じゃあ今日は一緒にお出かけやな。ちょっと準備しとくわ。」

エスリシアさんは食べ終わった食器を持って立ち上がった。


「お手伝いしますよ。」

それにつられて俺も立ち上がる。俺はとっくに食べ終わっているからな。


「ええって。お客さんは座っとき。」


「このくらいはさせてくださいよ。ずっとお世話になってばかりだとこっちの気が晴れないんです。」


「そうか?ならお願いしようかな。」

俺は無理矢理にでも何かをしようと説得をする。

寝床を提供してもらって、ご飯も作ってもらって何もやらないのは流石に気が引けたからだ。


といっても朝の食事で出る食器は少ない。

だからすぐに終わるだろう。

そう思って俺は食器を台所に持っていく。


この世界は大体中世くらいの文明レベル。

だから水道なんかは当然ないと思われがちだが、それに似たものなら存在する。


魔道具的な何かで水を出すのだ。


俺はそれを使って食器を洗っていく。

こう見えて俺は結構家事が得意だ。だから慣れた手つきで素早くその作業を終わらせた。



「ありがとうな。また頼むわ。」

終わった時のそんな言葉が少し嬉しかった。









そして家の仕事もある程度終わったエスリシアさんの声がかかり、俺たちは街の外にでて来ていた。

ちなみに、まだカンヘルさんは寝ていた。


2人曰く、あれは昼まで起きてこないらしい。

「笑うやろ?」とか言われたが、俺としてはそう言う人は結構見て来たからあんまり違和感は感じなかった。



「それでノア、成長を見せるとかいっても何をするんだ?いつもみたいに魔物を集めてそれを殲滅でもするのか?」


「いやいやタクミ、それだとボクがいつも狙って魔物の大群を呼んでるみたいだからやめてよね。」


「あはは、冗談だって。それでどうするんだ?」


「それに関してはうちが直接見よう思っとるよ。」

エスリシアさんが直接?


「と言うことでタクミ、審判お願い!!初めのコールもよろしくね!!」

ああ、なるほど。ここで模擬戦を行うということか。

お互いが剣士同士とかなら街中でも広めの空き地を探せばできないことはないかもしれない。


だが、ノアは魔法使いだ。

街中で全力を出すには少し被害が大きくなりすぎるだろう。

だからこそ、こうして外まで出て来たというわけだな。


2人は距離をとった。

その距離は俺と律識がやりあった時より少しだけ広いくらいだ。


「ふふっ、実の娘やからって油断も手加減もせんからね?」

エスリシアさんは二本のダガーをそれぞれ持って構えた。

というか、当然のようにいってるけど戦えるんですね。


それに関しては昨日の時点で予想はできていた。

だって、平手打ちやらローキックが綺麗すぎたんだもの。


「そんなことしなくてもボクが勝つから大丈夫だよ!!」

あ、ノアが慢心している。

それを見た俺はなんとなくだが結果が予想できたような気がした。


俺は2人が準備が終わったと判断してから大きめ声で一言。


「はじめ!!!」

と叫んだ。


同時にエスリシアさんは風邪を纏って前に出る。

予想はできていたが彼女はどうやら近接タイプみたいだ。

距離をいかにして詰めるか。

それが勝負の鍵になりそうだ。


「あいかわらず疾いけど、、まずはウィルちゃんたち!!時間を稼いで!!」

ノアが火の玉を次々と生み出して飛ばす。

昨日手に入れた『ソロモンの指輪』の効果も使い、一度に3体ずつと言うハイペースでどんどんと供給してく。


あと、ノアは知らないうちにあれにウィルちゃんとかいう名前をつけていたみたいだ。


「おお!!いっぱい飛んで来とるな・・・でも、こんなにハイペースで飛ばせるいうことは威力はないんやろ?」

エスリシアさんは止まる様子はない。

二本のダガーを器用に使い、自分に確実に当たるやつだけを切り裂いていく。

それ以外の進路を塞ぐために配置されたものは完全に無視だ。


だが、今回はそれが裏目に出たみたいだ。


「ウィルちゃんたち!!今だよ!!」

ノアの指示によって空中を漂うだけだった火の玉が一斉に爆発した。

そして爆発を中心に土埃が舞い視界を遮る。


そうだ。あれはどっちかというと生き物に近い。

ノアの召喚の怖いことは決まった挙動をしないことなのだ。


当然、その爆発は近くにいたエスリシアさんに直撃する。

実の親に容赦のないやつだ。


爆発によって巻き上げられた土埃が晴れる。


「触れんと爆発せんおもっとったけど、違うみたいやな。」

その中から元気なエスリシアさんが現れた。

どうにもダメージを受けた様子はない

だが、爆発の前後ではひとつ違うところがあった。

それは彼女が纏っていた風、それがなくなっていたのだ。


どうやらあの風は速度補正ではなく、防御効果があるもののようだ。


彼女は再び風を纏う。

なるほど、あれがあるからこそ躊躇うことなく突っ込むことができるのか。


「ふふ、今のじゃダメなのは想定済みだよ!!」

ノアはそれを知っていたみたいだ。

爆発からの少しの時間で次の一手を打つ。


呼び出されたのはウンディーネだった。

呼び出されたウンディーネは即座に行動を開始する。

高圧の水が打ち出された。


「おぉ!!これは水の精霊やな!久しぶりに見たよ!!」

エスリシアさんはそれに動じた様子はない。

打ち出された水を最低限の動きで回避した。


ウンディーネの攻撃はどんなに強力でも所詮は点の攻撃だということだろうか?

当たる気配またったくない。


「炎よ・・・」

そして回避しながら次の一手を打った。

彼女は右手に持っていたダガーを投擲したのだ。

どうして?ウンディーネに普通の物理攻撃は効かないのに・・・

そう疑問に思ったが、その答えはすぐに出た。


投擲されたダガーがウンディーネに接触すると即座に炎上したのだ。

何かを発動したのだろう。


「うっ、これでもダメなら・・・・」


「もう次の手は打たせんよ?」

次の手を打とうとするノア、だがそれは叶いそうにない。

もうすぐそこまでエスリシアさんが接近しているからだ。


ノアの召喚魔法は詠唱時間は少ない。だが、一部を除いて全くないとは言えないのだ。

そして詠唱時間の少ない火の玉ことウィルちゃんだが、それは先ほど効かないことを確認されている。

これは勝負ありだ。


エスリシアさんは手を伸ばせばギリギリ届きそうな距離に接近し、そして走りながら右手のダガーを腰のベルトから補充した。


「うわっと、危ない!!」

振り抜かれるダガー。

ノアあそれを大きく後ろに飛んで回避する。

エスリシアさんはそれを追撃することなく距離だけを詰めて話しかけた。


「どう?降参した方がええんやないの?もうここから魔法は使えん、使わせんよ?」


「降参はしないよ!!ボクには奥の手、近接戦闘で最強の魔法があるんだから!!」

はて?ブラフだろうか?

そんなもの彼女が持っていたはずはないんだが?


俺の知らない間に新しいスキルを覚えた可能性があるから一概には言えない。

何か面白いものを見せてくれるかもしれない。


「なら見せてもらおうか?その魔法いうのを!」

エスリシアさんが前に出る。

ここからノアに攻撃が完了するまで1秒もかからないだろう。

先ほどみたいに何度も攻撃を回避できるとは思えない。

魔法使い的にはもう詰んでいる状況だ。

俺がそう分析しながらその光景を見ていると・・・・


「ふふっ、行くよ!!『タクミ召喚』!!」


突然、視界が別の場所に切り替わった。


えっ?ちょっとまさかこれって・・・・



目の前を見ると、今にも切りかかってきそうなエスリシアさんの姿があった。


「くっそぉ!!ノアああああ!!」

咄嗟に俺は『白闘気』を発動させてノアに飛びついた。

今現在、俺の『白闘気』の効果はスキル調整の結果敏捷が倍になる効果がある。

実を言うとベルフェゴールの黒い糸繭を壊した時から変えていないだけだが、とにかく圧倒的な速さは手に入るのだ。


だが、それを使っても間が悪すぎた。


ノアに飛びつき何とか直撃は避けたが、ダガーの攻撃が左のふくらはぎを切り裂いた。

深い傷、と言うわけではないが浅いわけではない。


「へぇ、それがあんたのとっておきってわけやな?」


突然の乱入者にエスリシアさんは楽しそうに笑っていた。



意見、感想お待ちしております。


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