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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
184/293

184 試運転と誤発進

Fis「前回、次回は王都に到着すると言ったな。・・・・アレは嘘だ。」


思ったより戦闘描写って文量が嵩むんですよね。


野営の準備はつつがなく終了した。

辺りを見渡すと火は落ちかけているがまだ明るい。


空が赤くなり始めたくらいに準備を始めたと記憶しているので、結構スムーズに進めることができたみたいだ。

どうやら俺もこう言ったことに結構慣れたきたみたいだ。


また、まだ明るいからと言ってこれ以上進行するようなことはしない。


安全は安全に確保する。


これが勇者たちが一番気をつけていることらしいので、俺もそれに習うことにした。

だからもう既にいつでも休める状況だが、活動ができないかと言われるとそうでもないと言った時間帯だ。


では、何をするのか?


そりゃあもちろん食事の準備だ。

と言ってもこっちもこっちで手早く終わる。何せ保存食を並べることくらいしかやることがないからな。



「よし!できたー!!匠、ちょっと手伝ってくれ!!」

食事の準備をしようとしたところで、律識からお呼びの声がかかる。

はて?できたとは?


「どうした律識、何か珍しいものでもあったのか?」


「そうじゃないよ、単純にスキルの構成が今終わったんだ。」

あぁ、そう言えば律識、寝床の確保の時に働いていなかったような気がする。

彼はこういうことに慣れていないから特段機に求めていなかったのだが、みんなが準備をしている間にこいつはスキルの振り分けを終わらせたみたいだ。


「そうか、どんな感じになった?」

俺と違い律識は固有スキルを見てからの振り分けだ。

彼自身、頭は回るのでこれはかなり期待ができる。


「う〜ん、口で教えてもいいけどこれは実戦で見せたほうがいいと思うんだ。だからさ、匠、実験台になってくれない?」

ふむ、そうきたか。


「俺としては別に構わないけど、今から食事の準備だから手伝わないと・・・・」


「いや、やって見てもらおうよ。俺も見て見たい。」

律識と2人で会話をしていたと思ったのだが、いつのまにかライガがすぐそこまできていて俺たちの会話に入ってきた。


「お?何々?タクミたち戦うの?」

それにつられてノアも・・・・


「ほら、みんなもこう言ってることだし、ちょっと自分がどれくらい戦えるかも試しておきたいし、ね?ちょっと模擬戦やってみようよ。」


先ほども述べたが、今は夕方であって夜ではない。

だからまだ十分明るい。

模擬戦をやるのになんの支障もない。


「そういうならわかったけど、模擬戦でいいのか?そっちがスキルを使って俺が一方的に受けるーーーとかじゃなく。」

だけどスキルをどうこう、とかいうならそうしたほうがいいのではないか?


所詮確認作業なんだし、いちいち模擬戦の体を取る必要はない。


「いやいや、動かない相手に通用しても意味がないかもしれないだろ?いいから早く準備してくれよ。」

俺の意見に律識は呆れたようにそう言った。

それもそうだ。

戦えるように取ったスキル、いくら強力でも戦いの中で使えなければ意味がない。


「わかった。じゃあ俺も普通に勝ちに行くって形でいいんだな?」


「ああ、もとよりそのつもりでの提案だよ。」

俺と律識はそう言って少し距離を取る。

大体10メートルくらいか?

少し遠いように思えるかもしれないが、このくらいが丁度いい。


俺は戦士だが、律識はノービスなのだ。

必ずしも近接をやってくるとは限らない。そもそも、ノービスとは戦闘することを前提にされてない節があるから、俺の間合いから始めるのは卑怯この上ないのだ。


「じゃあ、始まりの合図はボクが!!」


「審判は私とエレナちゃんが務めるわね。」

ノリノリのノア、いつのまにかいるリリスがそれぞれその役を買って出る。

審判とかいるのかどうかは疑問だが、そこは任せていいのだろう。



律識から距離を取り、俺は剣を構える。

ちなみに、俺が今持っているのはただの木の剣だ。流石に味方相手に黒牙の剣とかは使えないので、シュラウドにいって借りてきた。


「さて、魔王を倒したという実力、この目で見せてもらうよ。」

もうすぐ始まる、その空気が読み取れたのだろう。ライガがそんなことを言っている。

正直な話、魔王本体はリリスが倒したので俺は関係ないのだが、それについて今言っても仕方がないだろう。





「それじゃあ、始め!!!」

俺が剣を構えて少し間を開けて、ノアの宣言が聞こえた。

その直後に俺は真っ直ぐと突進する。


律識は武器らしい武器は持っていない。強いて言うならあいつ自身の固有スキルで生み出した鎖を持っているくらいだ。

それは撃ちあえるものではない。そしてこれは律識のスキルの試乗運転。


何かのスキルによるある程度距離が離れていても使えるスキルで攻撃してくる。そう予想した俺は最短ルートで突撃し、最低限自分の間合いに詰めることを優先した。

ちなみに、スキルによるバックアップは受けていない。ただの突進だ。



「まずはこれ。『紫電』」

俺がこうくることは読んでいたのだろう。

真っ直ぐ突撃している俺に対して、律識は真っ直ぐ飛んで行く雷の攻撃を繰り出した。



その雷の速度は速く、進行方向から飛んでくるため完璧な回避は難しい。


だが、進路上に剣を置いておくことはできる。


と言うことで俺は剣を縦に構えてそれを以って『紫電』を受ける。

そしてそれは俺の剣にぶつかると同時に霧散した。


忘れられがちだが、俺のスキルには『魔力切り』がある。

ステータスに差が開いている以上、大概の魔法攻撃はこれで防ぐことができるのだ。


「やっぱり簡単に防がれるよね。でも、次はどうかな?『土壁クレイウォール!!』」

俺の目の前の土が一瞬にして盛り上がる。

そしてそれは壁となり、俺の行く手を阻もうとする。


今度は魔法で形を変えはしているが、純粋な物質だ。

魔法が防がれるなら物理で、そう思ったのかもしれないが、俺は戦士のクラスだ。

むしろ物理の壁の方が早く壊すことができる。


回り込んでも良かったが、それを読まれて狙い撃ち。

とかされると少し面白くない。だから俺はこれも正面突破をすることにした。

『斬鉄』を発動させ、目の前に現れた土の壁を切り裂く。

刃は綺麗に通ったが、切れ込みが入っただけで壁自体はそこに残ったままだ。


俺は体の勢いはそのまま、土の壁に突撃した。


大きく切れ込みが入ったその壁は体当たりに耐えきれず崩壊する。

頭から土をかぶるような形になるが、どうでもいい。


俺は壁によって塞がれていた視界を回復させ、律識を確認しようとした・・・・が、いない。

あの一瞬でどこかへ行ってしまったみたいだ。


普通に移動しては間に合わない時間しか視界を切れていなかったことを考えると、スキルによる移動。

そしてこう言う場合、大概はーーーーーー



俺は見もせずに後ろに向かって剣を振った。


ジャリ、ジャリンという音が俺の後ろから鳴り響く。

その音の鳴り止まぬまま、俺は体を反転させた。


そして見たのは手を振り切った姿勢のままの律識、彼の手からは金属製の鎖が伸びており、それは今しがた俺の剣によって弾かれた。


「へえ、よく気づいたね。」


「そりゃあ、移動系スキルは大体対象の後ろ、もしくは前方に数メートルが相場ってもんだ。そもそも前方に見えなかった時点で大体後ろにいるだろうしな。」


「そっか。まあ、これは防がれちゃったけど、まだこっちにも手はあるよ。『粉砕』」

律識が鎖を振り上げ、そして振り下ろす。

しかしそれは俺が横にそれたことで空振り、地面に叩きつけられた。

俺は次にその鎖が俺の方に飛んでくるだろう、そう予測していつでも回避行動を取れるようにしておく。


だが、結果は俺の予想とは違っていた。


律識の鎖が地面を叩いた後、その周辺の地面が砂のように柔らかくなったのだ。

軸足の近くの足場が不安定になったことで俺は一瞬だけバランスを崩す。

その一瞬の間に、今度は先ほど予想されたように律識の鎖が俺の方に飛びかかってきた。


体からそこそこ離れた場所の鎖をこうも的確に素早く動かせるとは、器用なやつだ。


だが、それだけだ。

俺は敏捷のステータスを存分に使い、強引に鎖と俺の体の間に剣をねじ込んだ。

鎖を弾くようなことはない。『斬鉄』は前回発動時からまだ10秒経過していない。だからそれは攻撃でも防御でもなく、一時しのぎのようなものだ。


俺は剣を即座に手放した。

そして新たに掴むのは今しがた圏に叩きつけられたばかりの鎖。これを操っているのは律識、ならばこれを思いっきり引っ張ってやればあいつもこっちにくるだろう。


俺と律識の距離は大体4メートルまで縮まっている。

そのまま詰めてもいい距離だが、何かまだ突き放す手段は持っていそうだ。だから向こうからきてもらうことにしよう。


「うわっと!!?」

彼は体制を少し崩し驚いたような声を上げる。


「よっしゃ、大物が釣れたぜ!!」

ちょっと乗り気で鎖を引っ張る俺。当然だが俺の方が力のステータスが高いので、余裕で引っ張れる。


「なんてね。鎖を起点に考えてスキルを取ったんだよ?鎖を触るのは悪手なんじゃないかな?」

だが、次の瞬間律識が得意げになった。

そしてーーー


「『紫電』!!」

鎖を伝って電流が流れてきた。


「あばばばばばばば、、、」

俺はたまらず手を離してしまった。正直、『紫電』のダメージ自体は大したことはなく、あのまま引き切る事もできたはずなのだが、つい反射的に離してしまった。


そしてそれがまた悪手、手が話された事で自由になった鎖が俺に襲いかかる。

今度は最初から電流が流れているみたいだ。

それを掴んだままの律識本人は大丈夫なのだろうか?自分のスキルだからダメージがない、ということはないと思いたい。


あ、もしかしたら『電撃耐性』スキルでも取っているのかな?

とにかく、距離は詰めた方がよさそうだ。

武器は手放したままだが、懐に入れれば素手の方が動きやすい事もある。あんまり気にすることでもないだろう。


ここは多少我慢してでも律識に近づく。


鎖の射程は多分だが5メートルくらいなら届きそうな長さをしている。

そう考えたら引くという選択肢はない。


「うおおおおおおお!!」

俺は手を頭の前にクロスさせて律識に肉薄する。

途中何度も体に、腕に、鎖が打ち付けられる感触があったがそれは無視だ。


「もらったぁ!!」

我慢の甲斐もあってか、俺は拳の届く距離まで近づくことができた。

俺は拳に力を込め、そして渾身の一撃を繰り出そうと地面を踏みしめる・・・・・が、何かを踏み抜いたような感じがした。


そして次の瞬間俺の体は想定より前のめりになり、拳は虚しくも空を切った。


何をされたのか?考えるまでもない。

足場が不安定だった。それだけの話だ。ただ、それは偶然ではなく律識のセッティングによるものだった。

何にも不思議なことなどない。


ただ、1つ問題はある。


最接近した今の状態で、大きな空振りなどと言ったスキを見せればどうなるか。

その答えが今の俺だ。



「へへ〜、やりぃ。匠、ゲットだぜ!!』

おい、俺はポケットに入るモンスターじゃねえぞ。


・・・俺は鎖でぐるぐる巻きにされていた。


まだ扱いに慣れているとは思えないのだが、あの大きな隙を撮り逃すようなことは無かったらしい。


「はぁ・・・とりあえず律識、これで全部か?」


「いや。まだあるけどそれのお披露目はまた今度にしよう。じゃあ今回は俺の勝ちってことで・・・」


「そうか・・・・・」


「えっ?」

俺は体を大きく捻った。

それだけで律識の体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。


「ぐえっ、」

律識は突然の出来事に対処できず、受け身も取れぬまま地面に叩きつけられてしまった。


「阿呆かお前。押さえつけられない相手を捕まえても何の意味もないことに気づけ!!」


「あー。」

そうだった、と言った表情で彼は俺を見上げた。

いつもそうだ。こいつ、頭はいいけどよく何かが抜けているのだ。

今回の場合それは人間同士ならふん縛れば勝ちとでも思ったところだ。いや、分かるよ?元の世界なら大体さっきので俺が負けだっただろう。


元の世界では俺と律識の腕力にはそれほど差がない。

だが、この世界では違う。


俺は力が取り柄の戦士で、律識はそもそも戦うことを想定されていないようなノービスだ。

そしてレベルも俺の方が圧倒的に上で、その上ドーピングまで行なっている。ここまで力が隔絶して仕舞えば、縛っただけでは安心できない。


例えるならば、中学生がヒグマを縛って勝ち誇っていたようなものだ。

いくらそこに至るまでの過程が完璧でも、そこで油断してはいけないのだ。


「判定出ました!!今のは一本とみなしてこの勝負、タクミの勝ちとなります!!」

肝心なことが頭から抜けていることを思い出し、脱力したまま倒れる律識をよそに判定が出た。

何のノリだろうか?とにかく楽しそうだ。


リリスが俺の方を指し、エレナがどこから取り出したのか旗を揚げている。


最後の一コマだけ見れば柔道の試合をやっていたみたいだな。





とにかく、勝負は終わったので俺は体に絡まっていた鎖を丁寧に解いた。


「おつかれ律識、最後はアレだったけど、途中は存外悪く無かったぜ。」


「そうかい。今度はそこらへんに気をつけて戦略を立てるようにするよ。」

俺は律識を引き起こし、ノアたちがいる方に戻った。




「お疲れ様!!律識も結構やるんだね!!今度はボクと戦う!!?」

先ほどの戦いを見て火がついたのだろうか?ノアがウズウズしている。


「遠慮しときます。」

律識は即断った。

「なんで!!?」


「まあまあ、律識も疲れてるだろうから無理させてやるなよ。あ、なんだったらリリスとやれば?」


「それは無理だよ〜、リリスと殴り合ったらボク死んじゃう。」


「あら失礼ね。あなた私のことをどう思っているのかしら?」

殴り合ったらって、まさかと思うけどこいつもし仮にリリスとやりあうことになったら魔法を使わないつもりか?

正直な話、リリスと正面きってグーでの殴り合いなら俺だって無理だと言って逃げるからな?


実際、勝負にならないわけではないが如何せんあのアホみたいなHPが削りきれる自信がない。

だからこのパーティでリリスと殴り合いができるやつなんていないだろう。


「じゃあ匠、俺はちょっとここで休ませてもらうよ。」

律識はそう言って座ってしまった。


「あ、じゃあもう審判はいらないかしら?・・・タクミは私とはーーー」


「断ろう。」


「え〜、そんなに拒絶しなくてもいいのにぃ・・・」


「なら、俺と戦ってくれないだろうか?」

またも話に割り込む形で、ライガが入ってくる。


「え?今なんて?」


「いや、だから俺とも模擬戦をやってくれないだろうか?」



彼ーー勇者ライガがそう言った時、みんなが集まってきた。

あ、もしかしてこれ、逃げられない系のやつかな?

興味深そうな顔をして集まってくるみんな(主に勇者パーティのメンバー)を見ながら俺はそんなことを思ったのだった。

スキル紹介その2『紫電』

アクティブスキル

習得に必要なスキルポイント 2

威力5 消費MP20


魔法使い系、およびノービス系が習得可能。

詠唱は必要ないがその分燃費が悪い。連続使用も可能で、かつ詠唱不要のため連射することで低い威力を補うことも可能。

だが、それをやってしまうと一瞬で数百とかMPが減るので注意

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