182 スキル習得と固有スキル
説明回的なやーつ
王都への旅路はそこそこ順調だ。
これも案内役として勇者がついてきてくれているからに違いない。
というのも、街道を塞ぐ魔物が出た時やらはほとんど彼らが倒してくれるのだ。
一応手伝いはしているのだが、ほとんど勇者たちが倒してしまっている。
初動の早さとかの話もあるんだろうな。
ともあれ、順調な旅路で少し退屈になってきた。
案内によると明日には王都に着くらしい。
だが、もうすぐ目的地に着くからと言って退屈な馬車の中というのは変わらない。
はじめの頃は外の景色を見て楽しむこともできのただが、今はただの平原。
見るところもないし、感じることもない。
だからやることといえば仲間内で会話をするくらいだ。
「そういえば律識、お前結構レベルが上がったみたいだけど、どんなスキルを取るつもりなんだ?」
確か律識はまだスキルを1つも撮っていない。
レベリング中は基本的に俺たちが戦っていたから、その必要がなかったのだ。
だが、もうすぐ2次クラスになるしずっとこのままスキルポイントを余らせてしまっていても仕方がない。
そろそろ何か取るべきではなかろうか?
「あー、それなんだけど、スキルって結構種類あるみたいだしさ、何取ればいいか迷ってるんだよね。何かオススメはある?」
そう言われてもノービスがどんなスキルを習得できるかは知らない。
というか、ノービスの知り合いとかいないからアドバイスとかはできそうにない。
「えっと、ノービスってどんなスキルを覚えられるんだっけ?ちょっと見せてもらってもいいか?」
「うん、大丈夫だよ。」
律識はスキルウィンドウを開き、習得可能なスキルを見せてくれる。
「うおっ!!なんだこれ、多!!」
そこには俺のとは比べ物にならないほどの大量のスキルが記載されていた。
自分のスキルだけでも確認するのには結構時間を取られた。
律識のスキルは俺のもの(戦士のもの)に比べて4倍近くの量があるように見えた。
そしてその中には自分のもので見慣れたスキルの名前もある。
「う〜ん、何か気になるスキルとかはあるのか?全く方針なしにこの量のスキルから選ぶのは流石に無理そうだろ。」
そのスキルウィンドウを見て俺がいえたのはそれくらいだった。
だってそうだろう。確認するだけでも何時間もかかりそうなのだ。
適切な意見なんて出せるわけがない。
そしてここで適当な意見を言ってしまったら後で後悔するかもしれない。
「方針ね。ちょっと考えて見るよ・・・あ、そうだ。こういうスキルが強力だから習得した方がいいよっていうのはある?」
取得した方がいいスキルか・・・・
俺からしたらステータス上昇系が硬い。
アクティブスキルとかは確かに強力かもしれないが、状況によっては使いづらいこともある。
また、使いこなせるかどうかもその人次第だ。
その点、ステータス上昇系のスキルは取った分だけ確実に強くはなる。
また、同じ理由で耐性スキルもオススメだ。
俺はそう思って律識に伝えようとする。
間違っているかもしれないが、俺はそう思うという意見は伝えるべきだ。
「強いスキルって言ったら固有スキルよね。それに合わせてスキルを構成するのがいいっていうのは聞いたことあるわよ。」
俺が言葉をかけるより先に、隣で話を聞いていたリリスが答えを告げた。
って、ん?
「固有スキルに合わせてって、あれは誰でも持っているわけではないだろ?」
あんなに強力なスキル誰でも持っていたら考えを改める必要がありそうなものだが?
「何言ってるの?固有スキルはみんな最低でも1つは持っているはずよ?2つ以上持っているかどうかはその人によるけどね。」
「え、でも習得済みスキルの欄を見てもそれらしいものは見当たらないぞ?」
俺は確認するように覚えているスキルがまとめられている場所を見る。
そこに書かれているのは
『筋力強化(並)』
『光属性付与』
『挑発』
『斬鉄』
『純闘気』
『白闘気』
『状態異常無効化』
『限界到達』
と、まぁ見慣れたものばかりだ。
それ以上のスキルを見つけることはできない。
「それは固有スキルはスキル欄に乗らないからよ。自分がどんなスキルを持っているかが知りたかったら、『精密解析』のスキル持ちにでも見てもらうしかないわ。でもまぁ、あなたには必要ないでしょうね。」
はえ〜、そんな秘密が・・・・って
「なんで俺には必要ないんだ?」
まだ自分の固有スキルとか自覚していないんだけど?
リリスには俺が何を持っているかがわかっているのだろうか?
「だってタクミ、もう自覚があるじゃない。」
リリスはそう言ったが、いまいちぴんとこない。
俺が持っているもの・・・
あ!!!
少し考えて俺はその答えに行き着いた。
「まさかスキルの内部数値を俺だけがいじれるのって・・・」
「ええ、多分それがあなたの力でしょうね。あ、でも他にも何か持っている可能性はあるから調べてもらった方がいいのには変わりないかもしれないわね。」
なるほどなぁ。
いつも何気なく使っていたスキル調整だけど、これは固有スキルによるものだったんだな。
この世界にきたばかりに気づいたからずっとそういうものだと思ってたよ。
「へぇ〜、固有スキルってあれだよね?リリスとかエイジスとかが使ってたあのすごいやつ。でも今の話ならボクにも何か凄いスキルがあるのかな!!?」
ノアもこの話に関しては初耳だったみたいだ。
リリスがこれを知っていたのは単純に生きた年月が長いとか、そういうので溜まった知識なんだろうな。
「そうかもしれないわね。あ、でも固有スキルだからって必ずしも強いわけじゃないわ。それに、必ずしもプラスというわけでもないしね。」
リリスが言うには、固有スキルというのはスキル欄に載ってないものというだけでその効果はまちまちなのだそうだ。
そんな中、固有スキルが強いものとして人間の間に伝わっているのは今まで倒してきた魔王がみんな強力なものを持っていたからだと。
「そうなんですね。でもそれじゃあ固有スキルを調べるのには『精密解析』とかいうスキルが必要なんですよね?それじゃあリツキさんはそれを使って調べるまでスキルを覚えないんですか?」
リアーゼの素朴な質問だ。
「でもそれだと解析かけてくれる人を探すまで律識がこのままってことになるよな?」
流石にそれはやめた方がいいんじゃないか?
「そうね。『精密解析』なんてスキル取る人はほとんどいないし、ここで適当に決めちゃっていいかもね。」
おい、
「そんなに便利そうなスキルなのに覚えている人が少ないんだね〜。」
ノアの言い分も最もだ。固有スキルなんて普段は伏せられているステータスまで見ることができるスキルが弱いはずがないんだけど、どうして誰も覚えてないんだろうか?
「あ、それは単純にノービスしか覚えないのと必要スキルポイントが高いからね。便利だけどこれを取るよりは他の便利なものを3つ4つ取った方がいいと考えるもの。だから適当に決めちゃいなさい。」
そもそも固有スキルの話を振ってきたリリスがそれを調べずに決めろというのか。
まぁ、解析できる人が少ないならいつになるかわからないし正しいんだろうけど。
俺はそう思い律識の方を見た。
「あ、そうだね。とりあえず話に上がった『精密解析』とかいうスキルを取ってみたからちょっとこれ試してみていい?」
「ちょっ、おまっ、、」
彼はいつの間にか話に上がった習得する人がほとんどいないとかいうスキルをもう既に習得していた。
止める間もなかった。
「ん?何か問題でも?」
「いや、別に弱いスキルってわけでもないだろうし、っていうか俺もいつか鑑定系のスキルは欲しいと思っていたからいいのか。」
特に俺と律識はこの世界の人間ではないということで、この世界にある物の正確な知識がない。
普通の人ならぱっと見でわかるものも、俺たちにはわからないという可能性があるのだ。
だから俺もいつかは解析系を取ろうとしていたのは嘘ではない。
ただ、図書館で図鑑とかもみてあまり必要性を感じなくなっていたし、ちょっと優先順位は低かった。
だが、この世界にきてまだ数日しか経っていない彼に取ってはこのスキルは確かにとても心強いものであるといえた。
「あ!!じゃあさ、まずはじめにそのスキルを使ってボクを見てよ!!」
「うん、わかったよ。じゃあ、行くよ!!」
律識はノアに向かって『精密解析』を発動させた。
「ふふ、今こそボクの隠された力が覚醒する時なんだね!!」
結果の出る前にノアははしゃぎまくっていた。
よし、あれが終わったら俺も改めて見てもらうことにしよう。
アイテム紹介その1『鎮痛剤』
名前の通り痛みを和らげる薬。
「鎮める」という文字を使ってはいるが、効果としては脳を興奮状態にするもの。
つまり痛みを抑えているのではなく、痛みを忘れさせているだけである。
また、街の薬屋等で購入可能だが、割と高価だったりする。