18 小物と女性と話しかけ方
「てめぇ!何しやがる!!」
俺に殴られた男が振り返りながらそう言った。
「何って、イベントの消化だけどって、言ってもわからないか・・・」
反射的に質問に答えはしたが、こいつらはそれを理解できるはずがない。言っても無駄なのだ。
「はぁ?何分けのわからねぇこと言ってやがる。お前、覚悟はできているんだろうな?」
俺はそう言ってくる男を、適当に眺めている。この手の相手は会話の途中で下手に言葉を発すると、会話が長引く傾向があるからだ。
数々のイベントを効率よくこなすことを重視する俺は、男の怒声を話半分に聞き流す。
そしてその時が来た。
俺が殴った男が残りの2人に向かって、
「お前ら!!やっちまうぞ!!」
と声をあげると同時に、腰に差している剣を引き抜いた。俺のものとは違い、金属製のものだ。
どうやら、会話は終わったみたいだ。ここからは戦闘に入るのだろう。
俺も釣られるようにして握ったまま下げていた剣を前に構える。
「へへ、こいつの武器見てくださいよ。」
3人のうちの1人、手斧を持ったいかにも下っ端な感じの男が、俺の武器を見てそう言った。
そして他のものは今気づいたのだろう。俺の方を見てニヤニヤと笑い始める。
「へい、ニイちゃん!今ここで土下座して謝るってんなら、奴隷として命だけは保証してやるぜ?」
ナイフを構える下っ端二号が挑発するように言う。
ーーー流石にそろそろうざくなって来たな。
思えば、こんな奴らの話を聞く理由なんてものはどこにも無いのだ。
騒動が起きたタイミングやテンプレを貼り付けたような展開から、ゲーム内のイベント処理ぽいから話を聞いていたのだが、考えてみればここは現実だ。
律儀に付き合わなくたって、イベントは進むだろう。
そう思った俺は、剣を構えながら前に出た。
男たちは、依然ニヤニヤした表情でこちらを見てくる。
武器の質でしか敵の強さを判断できない雑魚敵の反応だ。
「はあああああああああ!!」
俺は全くの遠慮無しに木の剣を振るう。今は向こうがこちらを舐めきっているため、それ相応の動きを見せた。
そこら辺の子供でも出来るような大ぶりの上段だ。
そしてそれは簡単に回避されてしまう。
「くくく、実力の差を見せてやるよ。」
それを見た男たちは、もう俺に対する警戒など全くしていなかった。
これからどうやって俺を調理するかと言うことしか頭にないのだろう。
始めに動いたのはおそらくこの3人のリーダーと思える奴だった。
そいつは手に持った剣を先ほどの俺と同じように上段から振り下ろさんとする。
同じ技を見せつけることで、尊厳ごと切りにきたのだろう。まぁ、俺のものより少しマシ程度でしか無いが、、、
ーーーこの手の輩は単純で助かるな
俺の攻撃を模倣するかのような攻撃だ。
それ故に軌道が読みやすい。
俺はその攻撃に合わせるように木の剣を向かわせる。
その時、男の顔にさらなる笑みが見られた。
おおよそ、剣を叩き切られて慌てふためく俺の姿でも幻視したのだろう。
そして俺たちの剣がぶつかり合うーーー瞬間に俺は《斬鉄》のスキルを発動させた。
キィンーーーーーーーーーーーーーーー
俺たちの剣から、通常ではありえないような音が鳴り響いた。
そして何かが回転しながら宙を舞っている。
当然、相手の男の持っていた剣先だ。
それは中程から綺麗に切り取られ、空中を数秒間舞った後、床に突き刺さった。
「ーーえ?何が、、」
予想した結果とは真逆のことが起きた為か、男は呆けたような声をあげる。
その隙を俺は見逃さない。
俺は男を剣で男の鳩尾を殴りつけた。
まだ《斬鉄》の再使用はできない為、力任せの一撃である。
まあ、人の体に《斬鉄》を使って斬りかかるなんて事はしないから関係ないのだけれど、、、
「あ、兄貴!!?おのれ、よくも、、、」
人体の急所にモロに強撃をくらったせいで、うずくまっている男を見て、下っ端一号が手斧を構えて斬りかかってくる。
6ー7ー8ー9ー10、ここだ!!
俺は心の中で10秒数えきった後に、先ほど同様に相手の攻撃に自分の剣をぶつける。
そして《斬鉄》を発動、先ほど同様に向こうの武器を壊してぶん殴るーーーとしようとしていた。
しかし、それは叶わない。
俺の剣は確かに男の手斧を叩き壊したのだが、同時に俺の剣も限界を迎えてしまった。
お互いの武器はバラバラになってしまった。
そこだけ見れば互角のように思えるが、向こうはまだ1人残っている。
バカなのか律儀なのかは知らないが、今までは同時に掛かってくるような事はしなかったが、味方の武器が壊れたのだ。
すぐにでも戦闘に参加するだろう。
流石に武器を失った状態で2対1の戦いはしたくない。
そう思った俺は武器を失った方の男に、もはや用済みとなった剣の持ち手を投げつけた。
急に投げた事、距離が近いこともあってか、それは狙い違わず命中する。
そしてそれと同時に、俺の蹴りが炸裂した。
その一撃で、下っ端一号は吹き飛び倒れ伏す。
そして下っ端二号がナイフを俺に向かって突き出した。
俺はそれを身をよじってかわす。
「よくも2人をやってくれたなぁ、、でも、もうあの変な武器もねぇ、、これでもう戦えないだろう?」
あの変な武器、と言われてもただの木の剣なんだけど、、
そう言っても良かったが、あまり刺激して予想外の行動をとられても困る。
「ああ、そうだな。剣がなくては戦えない。」
「だろう?だったらさっさと降参して頭を地面に擦り付けな!!」
「そう、戦えない・・・俺はな」
最後の呟きは聞こえないように言った。
そして、どうやら最後まで気づかなかったみたいだ。
俺は横に大きく飛び退いた。すると直後に、俺がいた場所の後方から、大きめの水球が飛来した。
「あ、え!?、、、ぎゃっ!!」
体の中央にそれを受けた男は、大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
これで戦闘終了だ。意外にも、?いや、想像通りあっけない勝利だ。
俺は戦闘が始まってからずっとうずくまって頭を抱えている女性に声をかけようとする。
しかし言葉が浮かばない。
こんな時、どうやって話をかければ良いのだろうか?
うーむ、と唸りながら頭を抱えてうずくまっている女性の前でどう話しかけるか悩んでいると、
「キミ、ちょっと良いかね?」
後ろから俺の肩にポン、と手を置いて話しかけてくる男性の声が聞こえた。
あぁ、なるほど、こうやればいいんだな!
パソコンが本格的に仕事しなくなったので今日からスマホで投稿します。
このままでは、ペースが著しく落ちるので、スマホ用のキーボードかったほうがいいですかね?