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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
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177 律識の選択と異世界の洗礼

朝、俺はふと目が覚めた。

うっすらと目を開けて見える窓の外はまだ暗く、今がまだ俺たちが起きる時間ではないということが理解できる。


どうやら少し早く起きすぎてしまったみたいだ。


俺は体を起こして隣にあるベッドの上を見る。


そこには律識が眠っていた。

すやすやと寝息を立てて、幸せそうな顔だ。



「今日は早いですね。どうかされたのですか?」

そこにふと、シュラウドから声がかけられる。


睡眠が必要ない彼は、夜の間ずっと武器を作ったりなんだりの作業をしていた。

ただ、夜中ということもあってできるだけ物音を立てないようにだ。


だからこんな早い時間でも、彼は当然のようにそこに座っている。


律識を連れて帰った時、俺は床で寝るからベッドは2人で使ってくれと言ったのだが、シュラウドの方はそもそも寝る必要がないということで断られてしまったのだ。


あ、それと彼らの顔合わせはもう終わっている。


それはとても簡素なものだった。


俺が律識を軽く紹介した後、シュラウドが


「そうですか。これからよろしくお願いしますね。」

と言った後、律識が「あ、はい。よろしく。」と返しただけだ。

それはとても事務的な感じがして、一瞬元の世界ーーー日本に戻ったかのようであった。


「いや、ただ目が冴えただけだ。・・・・俺もこの時間に起きるのに慣れてきたってことなのかな?」


「そうかもしれませんね。」

そんな会話をしていると、隣の部屋から物音が聞こえてくる。

あ、そろそろあれがくるのか。


俺はゆっくりと立ち上がり、部屋の鍵を開ける。

そしてそのまま扉も開けて部屋の外を見た。




すると隣の部屋から勢いよくノアが出てくる。


彼女は即座に俺の方を向き、少しだけ驚いたような顔をしながら


「あ!タクミおはよう!早いね!!」

と言った。

「おはようノア、もう朝だよな?」


「そうだね。みんなを起こしにきたよ!・・・リツキだっけ?彼はまだ寝てる?」


「ああ、起こしてくれるか?」


「いいけど・・・それより、リツキはまだこのパーティに入ったばかりだし、ゆっくり起こした方がいいかな?」


お?ノアにしてはいい気遣いだ。

だが、今回はその必要はないだろう。


というかノア、お前この時間が異常に早いことの自覚はあったんだな。

「いや、どうせずっとこれでいくんだろう?だったら早く慣れた方がいいさ。ということで、今日は俺も手伝うよ。」


「お?そういうなら、遠慮はいらないね。」

俺はノアを部屋の中に招き入れた。

シュラウドは作業をしているため、そんな俺たちは気にかけない。


俺は再びベッドの方により、律識を見た。



彼は先ほどまで変わらず、幸せな笑みを浮かべて寝息を立てている。

まだ暗いこともあって、俺たちが普通に動いても気づく様子はない。


ふっ、律識よ。

その幸せそうな顔をしていられるのも今のうちだぞ。


俺は心の中でそんなバカなことをつぶやく。


「さてノア、この男に無慈悲な洗礼を食らわせてやろうぜ。そして教えてやるんだ。『俺たちの朝はこうなんだぞ!!』って。」


「無慈悲な洗礼って・・・・君はいつもボクが起こしに来るのをなんだと「むにゃむにゃ、リアーゼちゃん、、ダメだよそんなの。あ、あ、、、・・ぐーー」・・・無慈悲な洗礼を浴びせてあげるよ!」

よし、いいタイミングで最悪の寝言を言ってくれたおかげでこの瞬間、俺たちの心は一つになった。


これなら完璧な無慈悲な洗礼モーニングコールを食らわせてやることができるぜ。




「いくぞ・・・せーの・・・」












「「おっきろーーーー!!!!!!朝だぞーーーーー!!!!」」



俺たちは律識の耳元近くで大声を上げてやった。








「さて、今日は律識のレベルを上げたいと思います。」

俺たちは朝のギルドで今日の方針について話し合いをする。

と言っても今行ったことがほぼ確定事項なので、誰が何を行っても聞くつもりはなかったりする。



「ん?タクミの友達とか言ったからてっきりその子も強いのかと思ったけど、違ったのかしら?」



「うん、当然のように最低レベルだからな。これからは一緒に行動するんだから、最低限戦えるようにはしておきたい。」

律識を連れたまま今までのノリで行動するとすぐに死んでしまいそうだからな。


彼の安全のためにも、レベル上げは最重要だ。


パワーレベリングになってしまうが、この際どうでもいいことだろう。


「でも匠、俺あんまし戦ったりとか得意じゃないよ?そんなんで大丈夫なの?」


この大丈夫はどっちの大丈夫だろうか?

レベルが低いことによるレベル上げの困難さか?それともパワーレベリングによる技量の伴わなさか?


それに関しての答えなら。


「大丈夫だ。考えても見ろ、レベルが高かったらそれだけ死ににくくなるんだ。早めに数値だけでも稼いでいた方が後々安全なんだよ。」

通常、死んではいけないという条件が加われば街の中で最善の準備を行い、それで確実に倒せる相手を探してレベル上げを狙うものだ。


だから俺は最序盤は薬草を拾いに行ったし、戦う相手もゴブリンから始めた。


だが、今は違う。

そこそこ高レベルの仲間がいるなら、レベルだけでも先にあげてもらった方が後々楽なのだ。


「ってことは今日はダンジョンじゃなくて普通に外にいくの?」


「そうなるな。」

ダンジョンの敵は外に比べて比較的強い魔物が多い。

逆にただ街の外というだけなら、多少の地域差はあれどさほど強い魔物は出ないのだ。


「じゃあ俺は何をすればいいのかな?匠、経験値のシステムってどうなってるの?」

律識はいきなり核心をつくような質問をしてくる。

隠す必要もないので、俺は本で得た知識を迷いなくひけらかした。



「魔物を倒した時、戦闘に参加していた人間に均等に割り振られるぞ。戦闘に参加したかどうかはヘイトを稼ぐか、相手にダメージ、または状態異常を与えるとか、結構いろんなところで判定してもらえるらしい。」

細かい条件は分かっていないが、だいたいこんな感じだったはずだ。


「そっか、じゃあ俺は何をするべきなのかな?正直、いきなり魔物と正面衝突はハードルが高いけど?」


「律識は遠くから攻撃だな。別に攻撃方法はなんでもいいけど、弓でも使ってみる?」

それならリアーゼが使い方を教えられるかもしれないし、悪くはないと思うんだけど・・・


「いや、弓は昔使ってみて全くマトに当たらなかったからさ、無理だと思うんだよね。無難に石でも投げてみるよ。」

石投げで的にダメージが入るかどうかは微妙なところな気がするが、まあそれでレベルが上がらなければその時はその時か。


別に期限があるわけではないので、ゆっくりやってもいいわけだし今日はそれで行くことにしよう。


「決まりだな。じゃあ早速行ってみよう。」


「「「おー!!」」」

まだほとんど人のいない時間帯、俺たちは街の外に出た。






そして出会ったのはウルフの群れ。

またか、と思うかもしれないが、以前見た時より数は多くない。


ざっと数えて20匹くらい。

少し多いが、まあこれくらいなら普通にいてもおかしくない数だろう。いつもの大量発生にぶち当たっているということではなさそうだ。


ただ、こっちは代わりと言ってはなんだけど1匹明らかに強そうなのがいる。


あれがこの群れのリーダーか何かだろうか?

多分そうだろう。


「じゃあ、いつも通り行くぞ!!俺が引きつけてその間にみんなで叩く。ただ今日は律識がいるのを忘れないでやってくれ。」


「了解だよ!!リツキは僕の友達に守らせるよ!!」

ノアがそう言ってウンディーネを呼び出して律識の隣に配置した。

見た目はただの大きな水の玉。

それは律識の動きに合わせてついて行くようにしている。


ウンディーネが護衛につくなら、とりあえずは安心だろう。



「あ、そういえば聞いてなかったけど律識、お前クラスは何を選らんだったっけ?」

そこについては、彼がこの世界にきたときの会話では聞き取れなかったので俺は質問をした。

確か、少し悩んだ末に小声で何かを選んだってのだけは覚えているんだけど。


あの時はそれどころじゃなかったからな。


「言ってなかったっけ?ノービスだよ。」

律識はよりによってノービスだった。

確か、どこにも欠点はなく、どこにも秀でていないって感じのクラスだったっけ?

今までノービスの冒険者は見たことがない。

というよりかは、ノービスの人間は基本的に冒険者にはならないみたいだ。


この世界の人間は俺たちとは違ってクラスは選べない。生まれ持ったものらしい。

そして彼の選んだノービスというクラスは、大多数が一般市民として一生を終えるクラスみたいだ。


基本的には魔物とは戦わず、アイテムの生産なんかを行うクラス、俺たちのパーティで言えばシュラウド枠だ。

ただ、ノービスも悪いところだけではなく、生活のアクションで少しずつだが経験値がたまって行くという、他の系統にはない能力も備わっているみたいだ。


っていうか、これを先に聞いていれば無理にレベリングにくる必要なかったのでは?

そう思ったがもう後の祭りだ。

今、丁度ウルフの群れに気づかれたし、逃げることもできなさそうだな。

向こうは警戒してまだ近づいてくるには時間がかかりそうだけど、逃げでもしたらすぐにでも追っかけてきそうだ。


「なんでノービスなんだよ。魔法使いとか戦士とか、他にも色々あっただろ。」


「いや、俺の見立てだとノービスとは可能性の獣。きっとこのクラスを極めた先に何かあると思うんだよ。そしてそのクラスをとった俺もその瞬間、可能性の獣とかしたのだ。」

そうかもしれないけど!!でも、全く知らない未知の場所でそんな賭けに出るとはどういう了見だ?

そう言いたくはなったが、そもそもクラスとは選べないものなのだしあんまり言っても仕方ないかもしれないな。


その可能性の獣とやらが、今日の律識のようにさっさと目覚めてくれることを祈ることにしよう。


「タクミ、おおかみさんたちが近づいてきたわよ。何を話しているのか知らないけど、早く準備しなさい。」


「わかったけど、念のため律識のガードをもうちょっと強めときたいと思ってな。」

俺たちのパーティにノービスの人間はいない。

だからそれのレベル1がどのくらいのステータスを持つかわからない以上、少しでも保険をかけておきたかった。


おそらく、ウンディーネだけでも十分だろうけど念のためだ。


「そう。それならエレナちゃん、あの人を守るように戦ってあげてもらいたいんだけど、できそう?」


「・・・大丈夫、できる。やる。」

ウンディーネに追加してエレナが律識の護衛についた。

これならとっさのことでもなんとか対処はできそうだ。


「あ、律識。念のために言っておくけど、エレナに何かしようとするなよ?リリスが怒ったら俺でも逃げ出す程度には怖いからな?」


「ふっ、匠は俺のことをどう思ってるんだい?この俺がYESロリータNOタッチの紳士協定を破るような獣に見えるのかい?」


「お前さっき自分のことを獣だなんだとか言ってたじゃねえか!!」

まあ、何か信条があるなら大丈夫なんだろうけど、少しだけ不安に思えてしまう。

「それとこれとは話が違うから、とにかく、そこらへんは安心してくれよ。」


まだ律識が何か問題を起こしたわけではないので、とりあえずは信じることにする。

元の世界でも我慢はできるやつだった。

ふざけたようにしているが、大丈夫だろう。



そんなやりとりをしていると、もうすぐそばまでウルフの群れが迫っているのが見えた。

俺は接近され切る前にこちらからも距離を詰める。


ここまで来られたら乱戦になってカバーがしにくくなるからだ。


俺は一足先にウルフと接敵してすぐに『挑発』のスキルを発動させた。


直後、別々の獲物を狙っていたウルフたちの視線が俺に向けて殺到する。


「さて、レベル上げの始まりだ!!」

俺は剣を片手にウルフの群れに突っ込んだ。



次回更新はーーーー大体3日か4日か、そのくらい後かな?

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