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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第5章 新たな仲間と小さな正義
168/293

168 適正と模擬戦

俺たちは無事にルイエの街に到着することができた。

いつものように大量の魔物たちに襲われなかったのは単純に運が良かったのだろう。


「よーし!新しい街だね!!」


「ああ!新しい街だな。」

俺とノアは馬車から降りて一息つき、示し合わせたようにそう言い合った。

別に何か計画を立てていたわけではない。だが、今までの行動を振り返った時、街についてすぐにやることといえば決まっている。


「ということはさ、タクミ!!」


「ああ!今日は俺も一緒に初日観光に出ようと思う!なあノア、いろんなものを食べ比べに行こうぜ!!」

そう。新しい街に来たその日は俺たちにとって観光の日だ。と行っても今まで行っていたのはノアとリアーゼで俺は宿をとったりなんだりをしていてあんまり参加できていなかったけど。


でも今日くらいは羽目を外してもいいだろう。


なにせ前の街ではあんだけ頑張ったのだ。少しくらいはバチは当たらないはずだ。


「お!!いいねそれ!じゃあまずはーーー〜あっちの方から行こうよ!!ついてきて!!」

ノアが何かを見つけて走り出した。

俺はノアを追いかける。


「うふふ、あの子達ったら、はしゃいじゃって。」


「・・・私たちはどうする?」


「私たちも行きましょうか。勝手に行動してはぐれてしまったら大変だわ。」

普段ならあまり考えないことだが、今日は見知らぬ土地に来て地理感がない上に、ノアと俺が一緒に行動するという理由でリリス達も少し遅れてついてくる。

今は丁度昼時だ。

まずは腹ごしらえからだな。


いろいろなことがあってこの街にくるのが遅くなってしまった。

そのためもあってか俺はいつに増して乗り気だった。












まぁ、街を見て回るというよりは本当に食べ歩いただけだったが・・・・



街をパッと見て回った俺たちはその日のうちに宿をとった。

今回は前の街とは違い3部屋取ることができた。最近少し人数が増えて来たので、2部屋だと少し狭いと思っていたのだ。

ちなみに部屋分けはノアとリアーゼ、俺とシュラウド、リリスとエレナで分かれている。


リリスは一緒の部屋に泊まろうと言ってきたが、流石に慣れているとはいえ女性と一緒の部屋で過ごすのは心臓に悪い。

そんな理由があってその申し込みは却下した。


「タクミ様、明日はダンジョンに潜るという話でしたが、自分に何か準備ができるものはありますか?」

宿の部屋に戻り、ある程度のことを済ませて部屋の中を沈黙が支配していた時、シュラウドが突然そんなことを言い出した。


「いや?俺としては別にないけど・・・・そういえばリアーゼの弓とかエレナの武器とかどうなったんだろうな?」

結局馬車の中で議論しても仕方なかったし、エレナの武器はまだ決まってないんだよな。

シュラウドは何か知らないのだろうか?


「リアーゼさんの弓でしたらもう既に完成しています。問題はエレナさんの武器の方ですね。何を作りましょうか?」

彼も何を作ればいいかがわからなくて困っているらしい。

これは一度機器に行ったほうがいいかもしれないな。そう思った俺は一度部屋を出て、リリス達が宿泊している部屋に向かう。


場所はここの隣だ。

俺の部屋はリリス達の部屋とノア達の部屋に挟まれるように配置されているため、こういった移動は楽に行うことができる。


俺は部屋の扉を数度ノックして、

「リリス?ちょっといいか?」

部屋の中に声をかけた。


「ええ、どうかしたの?私が恋しくなったのかしら?可愛い子ね。」

全く見当違いな予想が立てられているのは無視するとしよう。リリスのこれはもう何をいっても無駄な気がしてきた。


以前彼女の血を飲んでしまってからその傾向が強くなっているので、俺はそういうものだと割り切って要件を言う。


「いや、エレナって結局何の武器を使うんだろうって話をしに来ただけだ。ダンジョン攻略は明日だから今のうちに聞いておこうと思ってな。」



「なんだ。そのことね。今丁度調べているところだから入って来てもらえるかしら?」

リリスの言葉に従い、俺は部屋の中に入った。

その中では床の上に行くつかの種類の武器が並べられており、エレナはそれを1つ1つ確認するように眺めている姿が見える。

並べられた武器は全て木製、これなら以前のように急に振り回されてもさほど危なくはないだろう。


最悪、壁に傷がついたり窓が割れたりするだけだ。

エレナはまず以前と同様に剣に手をかけた。そしてその場で数度ブンブンと振って見ている。


今とっている宿はこの前高額の報酬が入ったと言うことでそこそこいい宿だ。

そのため部屋は広く、何か物にぶつかると言うことはなかった。


「どう?」


「・・・まだ分からない。次はこれ。」

次に手に取ったのはリリスと同じ槍だ。それも数度確かめるように使用する。

だけどよく分からない様子だ。

それから先も同じようなことが続いて、そこに並べられている武器を全て使い終わった後も、どうしていいかは分からないみたいだった。


「・・・よくわからない。」


「困ったわね。どうしたものかしら・・・タクミ、何かいい案はないかしら?」

いい案、と言うわけではないがどうして決められないのかの理由を考えて見た。

エレナは現状、何もない場所で数回武器を振り回しただけだ。それはある意味、使っていると言えないのかもしれない。


「そうだな。やっぱり実戦で使って見るのがいいんじゃないか?」


「?実戦に出るために武器を持たせるって話じゃないの?」

俺の言葉を聞いたリリスの頭にクエスチョンマークが浮かび上がっている。

「いや、別に魔物を相手にする必要はないだろう?確かこの宿の裏には庭があったはずだしそこで俺に向かって攻撃させてみればいいさ。」

俺なら万が一当たっても少し痛いで済むから大丈夫だ。


そのことを告げるとリリスが納得したように頷いた。


「それもそうね。じゃあエレナちゃん、お外に行きましょうか。」


「うん。」

俺が先頭を歩き、その後ろに手を繋いだリリスとエレナがついてくる。

俺たちは宿を一度でてこの裏手にあった庭に向かった。


そしてそこで模擬戦と言うべきものを開始する。といっても、俺の方から攻撃するようなことはほとんどしない。

防御能力を見るのも大切だが、今日の目的は好きな武器を選ばせることだ。

好きにやらせるとしよう。



「エレナちゃん!!頑張るのよー!」

リリスの応援の声が開始の合図になった。

エレナは剣を片手に突撃してくる。その速度は結構速い。身体能力は落ちた、とは言われていたが相対的に見たときの話であって見た目より高いのは確かみたいだ。


だが、速いと言う言葉の前に「見た目より」と言うのが入ることから分かるように、俺に対応できる速度でしかない。

エレナは力一杯剣を俺に打ち付けてくる。右へ左へ、時には一度引いて助走をつけるなど、その攻撃手段は多岐に渡ったが、その件が俺に届くことはない。


「、、、むぅ、どうして当たらない?」

エレナは不思議そうに小首を傾げた。強いて言うなら、ステータスの差が開きすぎているのだ。

『白闘気』を使うまでもなく俺の方が速い。それが一番の原因だ。

エレナの動きは直線的だ。

ステータス的に勝る相手を前にした時、なんの工夫もなしだとその力の差は埋められないのだ。


「大丈夫よエレナちゃん!次、次に行きましょう!!」

リリスが後ろから次の武器を手渡し、今持っていた剣を引き取った。

使う順番は先ほど部屋の中で使ったのと同じ、つまりは槍だ。


エレナは少しだけ俺から間合いを取り、俺の手が届かない場所から槍を突き出してきた。


武器の扱いはまだ慣れていないみたいだが、彼女の戦闘におけるセンスはいいみたいだ。

俺がエレナに近づこうとすると、彼女はその分離れて常に自分の間合いを取ることを心がけている。

それに、うかつに近づこうとする相手をすぐに叩けるようになるべく小回りの効く動きをしている。

下手すればエレナはリリスより槍の扱いが上手いかもしれない。

いや、そもそもリリスは槍を力一杯叩きつけるのが基本で技術と言ったものは最低限しか持ち合わせてないんだけど・・・・


「・・・これも、だめ。次はーー斧?」

槍も俺に届かないと見るや、エレナは次の武器を持ち出した。

手に持っているのは大型の斧だ。

材質は木製だが、あれはあれでそこそこ重い。エレナは両手でそれを抱え、その重さを利用して速度を増した一撃を放ってきた。


結構鋭い一撃だ。たとえ木製であっても、あれを受けたら怪我しそうな雰囲気はある。

だが、大振りな分その軌道を読むことは簡単だ。振り下ろし始めた時には、攻撃の軌道から離れることはできる。

それが見えているのだろう。エレナは前の2つとは違い斧は案外早めに諦めてしまった。


そして次に取り出したのは巨大な鎌だ。

ゲームとかでは結構見る武器種ではあるが、実際に武器として扱うとなると難しい武器である。

インパクトの位置がずれると威力がガタ落ちするのだ。


だが、その広い攻撃範囲は単純に脅威だ。

油断はできない。

エレナは鎌を一度振りかぶり、それを大きく横に振った。

小さな体ながらもその巨大な武器の遠心力に振り回されることなく、しっかりとその足で地面を踏みしめている。

案外様になってはいるが、やっぱり取り回しが難しいのだろう。

その動きはどこかぎこちないように感じた。


「・・・これはさっきと変わらない。」

エレナはこれも早々に諦める。

彼女が次にリリスから受け取った武器は短剣だった。

小さな手を両方使い短剣を握りしめたエレナは俺に向かって急接近してくる。

俺はなんとか懐に入らせないように、またエレナに怪我をさせないように軽く剣で凪いだ。


俺の剣も一応木の剣だが、そこそこ長い期間これで戦っていた実績があるので下手に使うと大けがをさせてしまいそうで怖いのだ。


だが、そんな俺の心配も杞憂に終わった。

エレナは俺の振った剣を短剣の刀身を使って綺麗に受け流した。

そしてその場で1回転、勢いを殺さないままそれを俺に向かって一突き。


「っとと、、今のは危なかった。」

俺はそれをなんとか身をよじることで回避し、引き戻した剣を使って一度距離をとった。


「惜しかったわよエレナちゃん!!もう少しでタクミお兄ちゃんに勝てそうだから頑張って!!」

リリスの応援が飛び交う。

それに釣られてそっちの方を見て見ると、なぜか少しだけギャラリーが集まっているのに気がついた。


「おう!頑張れちっこい嬢ちゃん!!なんとしてでも一発入れてくれ!!」


「そっちのにいちゃんも負けるんじゃねえぞ!!お前に今日の飯代がかかってるんだ!!」


「タクミ!!攻撃を受けたら承知しないからね!!!」

なんか、賭けか何かが始まってないか??っていうか今ノアの声が聞こえて気がするんだけど、あいつは何をやっているんだろうか?


多分だけど、賭けの内容は俺に攻撃が当たるか否かって感じだろうな?

オッズはどのくらいなんだろうか?


「・・・うん、がんばる。」

エレナは距離をとった俺に対して再び距離を詰めるーーーのではなく、一度リリスの方に戻った。

武器の交換だろうか?そう思ったが少し違ったみたいだ。


戻ってきたエレナは短剣を二本持っていた。

それをキュッと握りしめると、俺に向かって走ってきた。俺は先ほどと同じように軽く横薙ぎを放つ。

だが今度はそれは空振りに終わった。


限界まで姿勢を低くしたエレナによって躱されたのだ。

だが、まだ距離を詰め切られたわけではない。俺は慌てることなく剣を引き戻し、迎撃態勢に入る。


距離を詰めた後エレナは俺を翻弄しようとまず横へ飛んだ。

流石に何もせずに回られるわけにはいかない。それに合わせて俺も体を回転させる。

そこでエレナが片方の短剣を俺に向けて振った。

下から上に突き上げるような攻撃、視界を回している最中のためそれの対応が難しい。


俺は迷わず剣を使ってそれを受けた。

だが、今度は横からの攻撃。

今俺の剣はエレナの短剣を止めるために下にやってしまった。今度の攻撃は受け止めることはできない。

俺はこれに対してはのけぞることでの回避を選択する。

短剣の動きは速いが、その分長さが足りない。

少し間合いを離されるだけでこうやって届かないことがよくあるのだ。


飛んだ姿勢のままの攻防、それを終えた直後、着地したエレナは着地した足を軸足として後ろ回し蹴りを放ってきた。

エレナは先ほどからついた勢いは無駄にすることはしない。

まるで加速機でもついているかのような動きで俺を狙う。


流石に速い。


先ほど下手にのけぞるように回避したせいで、俺の方の体勢はまだ整いきっていない。

ガードはできる。やろうと思えば回避もできるだろう。

だが、対応が一瞬遅れてしまった俺はこの後も少しずつ対応が遅れて行くだろう。

そうなればいつかは俺にその攻撃が届く。


だからここは余裕を持って回避をしたかった。


「・・・もらった。」


「残念、まだ届かない。」

直後、『白闘気』を使い俺は大きく後ろへ飛んだ。特に不自由もないしそれはそれでかなり強いため敏捷値上昇に全振りした『白闘気』だ。

単純計算で敏捷が2倍。通常時の俺に攻撃が当てられないエレナに、この状態の俺を捉えることはできない。


「・・・むぅ、」

なんとかついてこようとしているが、エレナの攻撃は虚しく空を切るだけだった。



「おお!!あの兄ちゃん急に動きが速くなったぞ!!」

「うわぁ!タクミってば大人気ない!!」

俺に賭けているであろう奴らが歓喜の声をあげ。


「嬢ちゃん、頑張ってくれ!!後少しだ!!」

「エレナちゃん、落ち着くのよ!!」

エレナについた人は残念そうな声を上げる。



「・・・はぁ、はぁ、・・疲れた。」


「そうだな。そろそろ終わりにしよう。」

エレナの体は小さい。そのため、今回のような短剣の運用を長時間続けるとすぐに体力の限界がくる。

同じ距離を動く場合、体が小さいほうが体を大きく動かすということになるからだ。


その上、今回は素早さで劣る状態でなんとかそれを捉えようと少し無理した動きもしていた。

それが原因で疲れてしまったのだろう。

エレナは諦めたようにそう言った。


「それで?どの武器がいいか決まったか?」


「・・・とりあえずは、これにしたい。」

エレナは力なく持っている短剣を指した。

俺も異論はない。エレナと一通り戦った結果、短剣を持っている時が一番危なかった感じがする。

他の武器では余裕があったのだが、短剣を2つ持たれた時はスキルを使ってまで回避したのだ。

まだ試すべき武器は残っているが、本人が疲れているのでこれ以上はまた今度の機会だろう。


「お疲れ様エレナちゃん、さて、戻りましょっか。」

リリスはそう言ってエレナをおんぶして部屋に戻る。俺もこの結果をシュラウドに知らせるべく、彼女に続くように部屋に戻ったのだった。


ユニークpv(この作品を触ってくれた人の数)が10、000を突破しました!!

10000人みんながみんなここまで読んでくれているわけではないでしょうが、ありがとうございます!!

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