16 今回の報酬と新しい防具
3日も空けてしまってすみませんでした。
なるべく毎日投稿するようにいたしますので、これからもよろしくお願いします。
「はい、では、この石板に触れてください。」
「わかりました。じゃあ、今回もノアからやってくれ。」
マタンゴの討伐を終えた俺たちは、依頼達成の報告をするために、ギルドに戻ってきていた。
「はーい、じゃあいくよ!!」
ノアが石板に向かって手をかざした。すると、今日討伐された魔物の記録があらわれた。
マタンゴ×31
今回表示されたのは、それだけだった。
昨日表示されていたゴブリンの情報は表示されていない。おそらく、毎回表示するたびに情報がリセットされるか、あの石板内に移動しているのだろう。
それか、日にちごとに管理されているかのどれかだな。
「おぉ!!今日は結構倒してたよ!!みてみて!」
ノアが両手を挙げながら喜び、俺のほうに明るい顔を見せてくる。
「まあ、前回は足止めに注力してもらったからな。普通はこんなもんだろうな。」
「む~、もっと褒めてくれたっていいんだよ?」
「あの、普通はこんな数討伐しては来ないのですが・・・」
あ、それもそうだな。
連日に大量発生に出くわしていたから、少し感覚がマヒしていたみたいだ。これからもこの調子で行けるとは思わないほうがいいだろう。
「じゃあ、次は俺の番だな。」
俺も、ノア同様に石板に手をかざした。
そして俺の討伐数が表示される。
マタンゴ×82
ふむ、俺とノアの合計討伐数は113体か、結構いたんだな。
森の中で密集していたから昨日より多く見えたのだと思っていたのだが、実際に多かったみたいだな。
数にして約2倍はいたということだ。
それでも一切苦戦しなかったのは、それだけ新しいスキルとレベルアップによる恩恵が多いのだろう。
「う、ダブルスコア以上だよ・・・」
ノアが変なところで落ち込んでいる。
思うのだが、先ほどからのこの対抗意識はなんなのだろうか?
考えても答えは出ない。
そもそも、序盤の戦士と魔法使いで討伐数を競うこと自体が間違っているのだ。
ゲームにおいてある程度レベルが上がってしまえば範囲攻撃で一気に敵を焼き払うことができる魔法使いのほうが、討伐数は稼げるだろうが、序盤では詠唱時間やMPや威力不足のせいで長時間のかりや殲滅戦に向かない。
それがゲームにおける魔法使いの基本なのだ。そしてそれはこのゲームのシステム上でも同じのようだ。
このゲームの初期における魔法というのは単純に遠距離から安全に敵を攻撃できる手段としてしか機能していない。
その為、魔法本来の多様性に欠けているのだ。
まぁ、そんなこんなで今回の結果は順当なところであるといえる。
「それじゃあ、報酬をもらってもいいですか?」
俺は何故か呆けている受付嬢の人に対してそう言った。ノアも同じような顔をしているが、そちらは放置だ。
どうせすぐに復活するだろう。
「えっ!?あ、はい!!少しお待ちくださいね。」
彼女はそう言って、カウンターの下のほうをまさぐるような動作をする。
そしてその場所から、大量に硬貨の入った袋をカウンターの上に置いた。
「はい、こちらが今回の報酬の45200Gになります。ご確認ください。」
彼女はそう言って袋の中をこちらに見えるように開いてくる。
俺が確認しようと思ったが、隣からノアが顔を出し、
「あ、じゃあボクが数えるね。ひーふーみーよー、」
と俺がそうするよりも先に数え始めてしまう。
まあ、どちらが数えてもそれは同じなのであまり気にすることはないのだが・・・
そして少し時間がたった後、
「うん大丈夫だね!!ちゃんと言われた額用意してあったよ!!」
と、満面の笑みのノアがこちらに報告に来る。
「あ、じゃあ今回の個人の取り分はこれだけな。」
そしてそれを俺が二等分して、分配する。今回は一人につき22600Gだ。
前回と比べてかなりの額になったことに、内心俺は少し喜んでいた。
◇
「では、今日は防具屋に行こうと思う!!」
「おー!!」
依頼の報告が終了した俺たちは、今日は防具屋に行くことにした。
理由は簡単、そろそろ布の服は卒業したいのだ。それに、今日もかなりの収入が入ったからな。
俺たちは少しウキウキしながら街の中を進む。
そしてすぐに防具屋にたどり着いた。
「いらっしゃい!!」
元気で野太い声が店のドアを開けると同時に飛んでくる。
初日にも聞いた声だ。
「こんにちわー。約束通り、防具を買いに来ましたー。」「こんにちはー!!」
俺はそのおっちゃんに挨拶をしながら、目的の品の場所まで歩いていく。
実は、もう買う品は決まっているのだ。
俺はそれの前に立ち、それを確認のため注視した。いつものアイテム詳細を開く動作だ。
そしてすぐにそれは現れる。
名前 冒険家の服
効果 物理防御力+10 魔法防御力+10
説明 冒険に行くならこれだよね。
価格 20000G
冒険家の服、一見すると布の服とはあまり変わらないが、その性能は天と地ほどの差がある。
価格もそれなりにするが、物理防御だけでなく、魔法防御も同じだけあげてくれるというのは、魔法防御にマイナス補正がついている俺としてはかなりありがたかった。
俺はその服をもって、店のカウンターに立っているおっちゃんに声をかける。
「あの、これが欲しいんですけど・・・」
「お!冒険家の服だな。それなら20000Gだぜ。」
「あ、はい。これでお願いします。」
俺は言われた通りの代金をカウンターの上に置いた。
普通なら、10000G紙幣を2枚置けばいいのだろうが、ギルドの受付が気を利かせたのか知らないが、今日の支払いもすべて硬貨であったため、1000G硬貨20枚だ。
彼はそれを一枚一枚確認した後、満足したような顔で、
「毎度あり!!兄ちゃん前回は全く金持ってないような風だったのに、なんだよ結構持ってるじゃねえか!!」
といって俺に冒険家の服を手渡してくれた。
まあ、昨日の今日で大量にモンスター討伐をこなしたからな・・・・
本当は今日マタンゴの大量発生に出くわさなければ革の鎧をかっていただろうし・・・
さて、これで俺の買い物は終了だ。
そういえばノアは何をやっているのだろうか?まあ、ここは防具屋だし防具を見ている以外はやることはないだろうが・・・
俺はそう思いながら、店の中を見渡した。
すると彼女は店の端のほう、布の服が大量に置いてある場所にいた。
――なにをしているのだろう?
俺は彼女に近づいてみる。すると、ノアのほうもこちらに気づいたのだろう。
はねたような声を出しながら、こちらに近づいてくる。そしてその手には二着の布の服が握られている。
「ねえねえ、タクミ!!これ、どっちのほうがかわいいかな!?」
ノアは俺の目の前に来て、開口一番にそう言ってくる。その目は期待に満ち溢れている。
こいつは防具屋を服屋か何かと勘違いしているのではないだろうか・・・?
思えば、同じ布の服でも、見た目が違うものがあるんだな・・・
初めて来たときは、性能のほうばかり気を取られていて気付かなかった。
しかし、そんなことはどうでもいいな・・・
「あまり店の商品で遊ぶんじゃないぞー」
俺は答えを求めているノアを放置して、彼女の買い物が終わるまで外で待っていようと店の外に出た。