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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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158 重なる悪と最終決戦

「ふふ、これで呼び出すのは最後、すこし面倒だけど今からは戦闘に参加するとしましょうか。」

魔王がそれを呼び出した直後、そんなことを口にする。


今まで呼び出した中でいちばんの詠唱時間に加えて出てきたのは一体だけ、それが今、上からこの場所に降りてきている奴のヤバさを理屈で教えてくれる。

加えて、魔王が戦闘に参加するというのだ。


このままでは、戦況が向こうに傾いてしまいそうだ。

それに、どうやらこういった悪いことは重なるらしい。


「はっはっはー、待たせたなベルフェゴールよ!!俺様が加勢してやるぜ!!」

今、この最悪の瞬間にエイジスまで戦闘に加わりやがった。

それも宣言した通り、魔王側として戦闘に参加するみたいだ。


あいつの能力は通常の冒険者には相性が最悪だ。武器はともかく、魔法も効かないのは卑怯というやつだろう。


「くそっ、リリス、ノア、お前たちはあっちの魔王の足止めを頼んだ!!リアーゼはこのまま周りのサポートを頼む!!俺はエイジスの相手をする。」

多分だけど、これが最善だ。


エイジスだが、俺はそこまで相性は悪くはない。

あいつの能力は確かに強力だが、基本ステータスで上回って仕舞えばなんとか一人でも勝ちを見ることはできる。

それより問題は上から降りてくる魔物と、それを召喚し終わって戦うつもりの魔王だ。


まずはエイジスを何とかする。

その間の足止めはみんなに任せるとしよう。


「タクミ、一人で大丈夫なの?」

リリスが心配そうに俺に声をかける。俺一人では勝てないと思っているのだろう。

確かに、前回勝てた時はみんなの力があったからだ。

ノアの召喚による攻撃回避、リリスの重い一撃、それらがあったからこその勝利。

それは俺だって忘れてはいない。


だが、俺は今回ちゃんと一人でも戦えるように準備はしてきた。

エイジスが的に回ることはわかっていたのだ。それならば、対策を立てておいて当然だろう。


「問題ないさ。あ、リアーゼ!!」


「はい。どうかしましたか?」


「朝、預けておいた武器を貰えるかな?」


「えっと・・・・これですね!!」

リアーゼが一振りの剣を俺に手渡した。

刀身と柄が本当に『繋がっている』と感じる独特な見た目の剣だ。


これが今回、俺がエイジスと戦うために持ってきた対策。

これがあれば、一瞬で負けるなどという無様な姿だけは晒さないはずだ。


「それで本当に大丈夫なの?彼の能力って確か・・・・」


「これでいいんだよ。大丈夫、俺を信じてくれ。・・・・というか、俺としてはお前たちの方が心配だよ。」

そっちは数がいるとはいえ、能力の全てがまだ明らかになっていない敵を相手にしないといけないのだ。

ある意味、大体の能力が見えているエイジスの方が戦い易い。


「そう、心配してくれてありがとね。でも大丈夫よ。」


「そうか、じゃあ作戦開始だな。」


「ちょっとそこの君!」

エイジスの方に行こうとした時、俺を呼び止める声が聞こえる。


「はい?どうかしましたか?」

時間はあまりないから早めに済ませてほしいものだ。

「いや、君はあの男を一人で止めるつもりなのか?見たところ、彼もおそらくかなりの強者だ、正直、今上から降りてきている奴と同じくらいには強いと思うわれるぞ?流石に一人では無理なのではないのか?」


話しかけてきているのは、この冒険者たちのまとめ役、俺がエイジスと一人で戦うのには反対している・・・と言うよりかは不安を持っているみたいだ。


「大丈夫ですよ。むしろ俺としては上からのやつが怖いので、そっちの足止めと情報取集を頼みたいところです。その為に、この場所に残る人数は少ない方がいい。」

能力の特徴さえわかれば、エイジスと同じくらい危険と思われているあいつも案外簡単に倒せてしまうかもしれない。

正直、強いやつが出てくるだろうとは思っていたけど偽魔王クラスがくるなんて全く思っていなかったからな。


他の冒険者には時間稼ぎがてら情報収集をして貰えると助かる。


「む?そうか。本当に一人で大丈夫なんだな?」


「はい、むしろあれを相手にするときに数を当てると痛い目見ますよ?」

怒りの咆哮レイジ・ロア』とか人が密集している場所で撃たれたらとんでもないことが起こりそうだしな。


「そうか、信じていいんだな?」


「任せてくださいよ。」

リアーゼから受け取った剣を片手に俺はこちらに向かってくるエイジスの方に向かった。

それまで使っていた黒牙の剣は鞘に納める。


これはあいつとの戦いには使えない。

邪魔になるのでそこらへんにおいた方がいいのかもしれないが、そんなことして失くなってしまったら困る。

これから先戦えないのはともかく、これはシュラウドからもらったものだから大切にして行きたいのだ。


「おう、やっぱり俺様の前に立ち塞がるのはお前さんなんだな。」

接近し、剣の間合いギリギリ外の場所でエイジスは立ち止まってそういった。

彼はいつものように何の防具もつけていない。

自分の能力に自信があるのか、はたまた何か理由があるのかはわからないが到底戦いにくるような格好ではなかった。


「そりゃあ、俺とお前は1勝1敗、といっても前回のは1対1じゃあなかったから実質0、5勝1敗くらいなんだよ。ここで勝って、勝ちを増やしておこうと思ってな。」


「はっ、俺様もだがお前さんは負けず嫌いみたいだな。でも別に前回のは1勝と数えていんだぜ?そんな小さいことを言う俺様じゃねえしな。」

彼は陽気に笑い、そして拳を握りしめた。

会話もほどほどに、そろそろ戦闘が始まりそうだ。


俺は剣を構える。


お前は俺の能力のことを忘れたのか?そう言いたそうな顔をしたエイジスだが、真剣勝負の場所でそんなことを聞くやつではなかったみたいだ。

俺が剣を構えたのを見て、こちらに向かって突撃を仕掛けてくる。


どこまでもまっすぐに、それがエイジスの戦闘スタイル。

小技といったことはほとんどなく、どこまでも王道を貫き通そうとする戦いかただ。

それ故に、どこからどうくるかは事前に察知できる。


突撃からの、左からの回し蹴り。

それがまずはじめに彼が選んだ手だった。

剣を構えている俺が何を考えているのかはわからないが、それを全て踏み越えて勝利を手にするつもりだ。


俺はその攻撃を避ける。


リリスのおかげで敏捷の値が大きく上がったからだろうか?その攻撃を避けるのに全く苦労はしない。

そして俺は回避をすると同時に、剣をエイジスの体に叩き込んだ。

エイジスの固有スキル『漢なら拳で語れステゴロ』の能力は武器による攻撃と魔法による攻撃のダメージをゼロにする。


かなり強力な能力だ。


だが、・・・・・完璧ではない。


俺の剣はエイジスの体に大きな傷をつけた。

彼は剣で斬られて傷がつくわけがないと言う絶対の自信があったのだろう。

だからこそ、その攻撃を全く警戒せずに受けた。


「お前、何をしやがりやがった。」

エイジスは大きく跳びのき一度俺から距離を取る。

そして自分の体についた傷口を見て、それから俺の方に睨むような視線を送ってきた。


「何をしたってそりゃあ、ただ剣で斬りつけただけだよ?お前も見ただろう?」


「嘘をつくなよ。俺様が剣で傷つくはずはねえ。」

随分と自分の防御に自信がおありのようで。まぁ、種明かしをしてあげるほど俺も親切ではない。

種を明かしたところで別に、と言う感じのものでしかないのだが、相手に握らせる情報は少ないに越したことはない。


「うーん、そうだな。ちなみにこれ、なんだと思う?」

だがそれは正しい情報に限った話であって、嘘情報はいくら相手に持たせてしまっても構わない・・・訳ではないがこの場合は構わない。


俺がそう言って指差したのは、1本の魔法の杖。


ノアから貰った1日3回限定で魔法が使える便利な杖だ。

俺はこれに何かがありそうな感じで指をさした。

特に意味はないが、何か勘違いしてくれると助かる。


「はっ、その杖がどうしたって言うんだ?見たところ魔法の道具なんだろうが、魔法は俺には効かねえんだぜ?」

自信満々のエイジス、俺の主張をハッタリだと笑い飛ばそうとしている。

実際あっているんだが、それだと少し面白くはないな。


「馬鹿言うなよエイジス、お前の能力、結構穴だらけと見たぜ?ほぼ全ての魔法は効かないんだろうが、場合によって話が別なんだろう?」


「ちっ、その杖は『神聖魔法』杖なのかよ。」

ん?エイジスって『神聖魔法』と言うカテゴリの魔法は効くんだな。それは知らなかった。


俺が言ったこととしては、彼本人ではなく周りに影響を与える魔法やらは使いようによっては効果があるだろう?って言うことだったんだけど、新しい情報が出てきたな。

今更手に入れても意味のない情報だが、次の機会があるかもしれないから覚えておくことにしよう。


「まあ、そういうことだ。じゃあ、そろそろ再開しようか。」

自分の絶対的な優位は通用しない。それどころか、自分の弱点を突かれて攻撃を受けている。

そう思わせることで、こいつの意識を本当になんでもない杖に向かせることができたから、この舌戦での勝利は俺ということになるだろう。


少しでも優位が残っているうちに、決め切ってしまおう。


早く終わらせようとは考えてはいけない。だが、なるべく急いだほうがいいに越したことはない。

リリス、ノア、リアーゼ、絶対に怪我とかしないでくれよ・・・。


第4章は今戦闘が一通り終わったら終了します・・・と予告だけはしておきます。


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