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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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147 毒と力と

これはやってしまったな。

強制的に森の中にとらわれた俺はそう思った。


こうなるならダメージ覚悟で早めに退避指定置くべきだった。

正直トレントに叩かれてもそこまで痛くない。なら追撃を気にするべきではなかった。


もう手遅れになった状況を見て俺は反省する。

今度こういう時があった時はなりふり構わず逃げだすとしよう。


「それで?これからどうするつもりなの?」

そいつらが俺たちを取り囲むまでの時間で、今まで戦っていたトレントは倒しきることができた。

今この場は小さな広場のようになっているため安全ではあるが、森の中を抜けて外に出ようとしたらその瞬間に攻撃を食らってしまうことが想像できる。


だからといってこの場所にとどまるわけにもいかないだろうな。

相手には魔法を使う奴もいるわけだし。


「どうするってそりゃあ、敵を倒しながら脱出かな?」

一応、ここには依頼を受けてきているから少しは敵を倒していきたいというのはある。


だが、まずは安全の確保が第一だな。

こうなってしまったら何も考えずにまっすぐ走るのが一番ダメージが少なくなりそうな気がする。

まぁ、中途半端に脱出してもすぐにまた取り囲まれてしまう可能性があるから危険な方向ではいかない方がいいよな。


「それなら火の魔法で焼き払うっていうのはどうかな?相手は植物だし結構有効だと思うんだけど!!」

我に妙案あり。そう言いたげな表情でノアがそんな馬鹿なことを言っている。

勿論却下だ。


「えー!!なんでー!!?」


「馬鹿ノア!!お前今俺たちがそいつらのど真ん中にいるっていうのを忘れてんじゃないだろうな!!」

この状況で火をつけたら状況が悪化すること間違いなしだ。

火にまかれるだけならまだしも酸欠とかシャレにならんからな。


「じゃあコツコツ倒していくんだね?なら念のためちょっとイーターくんを出しておくよ。」

イーターくんというのは依然ノアがスペラと戦う時に使っていた召喚獣だ。

あいつがいれば魔法による攻撃はほぼすべて封じることができる。


ただ、維持費として大量のMPを持っていかれる欠点もある。

こいつを出すということは、決着を速める必要があるということだ。


一応、リアーゼがMP回復薬を持っているみたいなので、マジックイータ―の維持ができなくなるほどに消耗しても戦うくらいのことはできるかもしれないが。

そうなってしまったらピンチであることには変わりないだろう。


「なら私はそこら辺の木を傷つけるわ。それでいいのよね?」


「ああ、やってくれ。」

リリスが槍を片手に近くにあった木に近づいてそれを槍で突き刺した。

先ほどまでここが平原であったことからもわかるように、周りに見える植物は大体が敵だ。


その槍の一撃はトレントの体に穴をあける。

それがきっかけとなった。周りのすべての魔物たちが俺たちに攻撃を仕掛け始めたのだ。


こういうことをするくらいなら取り囲んだ瞬間に攻撃開始しろよ。

と思わないでもないが、相手が馬鹿な行動をとってくれるのは俺としては大歓迎なので特に言うことは無い。


「よし、ノア、そのマジックイータ―をこっちに貸してくれ!!」


「了解!!ほらっ、タクミが魔力を食べさせてくれるってよ!」

ノアがマジックイータ―を俺のほうに投擲する。

それは俺にぶつかるかというところで制止して、その場でふわふわと浮かんでいる。


ちゃんとそいつが俺を守れる場所についたことを確認して、『挑発』を発動させる。

初めにトレントに攻撃したリリスに向かっていた視線が、俺のほうに集まる。

全方向から視線にさらされて少し気持ち悪い。


初めに動いたのはマジックパラセリアだった。

木の隙間から姿を少しだけ現し、『ウォーター』の魔法を放ってくる。

これは前からの攻撃、それならばと俺はその水球を剣をもって切り裂く。


マジックイータ―はあくまで後ろからの攻撃を防ぐために配置してもらった。前の攻撃の面倒は自分で見ないといけない。

魔法攻撃相手に、魔法アンチな味方をつけても全く安心できないな。


「四方八方から攻撃されるとさすがに捌き切れないな。」

警戒すべきはマジックイータ―による魔法攻撃だけではない。トレントの根っこを使った攻撃も何とかよけなければいけない。

まぁ、避けれないんだけどな。


基本的には魔法攻撃だけは回避、もしくはガードすることにしている。

トレントの攻撃は足を踏ん張って耐えることにした。

あれは物理攻撃だ。それなら『白闘気』を発動させている間に受けてしまえばほとんどダメージは通らない。


『白闘気』はステータスを割合で上昇させるスキル――これはリリスの贈り物によって数段強化されている。

エイジスと戦った時から、それが結構便利でいじっていなかったから魔法攻撃に対しては何の効果も及ぼさないが事物理攻撃に関してはとんでもない防御力を手にすることができる。


「ねぇねぇ、これこのままで大丈夫なの?さっきからタクミぺしぺし叩かれてるんだけど!?」

はたから見たら攻撃をよけることができずにクリーンヒットし続ける俺の体。

トレントも弱い魔物というわけではないので、心配してくれているのだろう。


大丈夫だけど。



「大丈夫だからゆっくり攻撃していていいぞ。焦って状況を悪化させるのは良くないからな。」

見えている物を考えたらどうやってもこれ以上悪くはならなさそうだけど、焦ってしまったら何か肝心なものを見落としそうだからやめてほしい。


それだけは言っておく。

別にこれを続けるだけならば一時間くらいは持ちそうだ。

そんなに焦る必要はない。


「そうは言っても。早くなんとかしたいものよね。えいっ!!」

リリスの持っている武器は槍だ。

その性質故か、植物系の魔物相手には少しダメージが通りにくそうだ。それがもどかしかったのだろう。


突然リリスが槍を地面に突き刺してその場に固定した。

そして次の瞬間――――トレントに向かって素手で殴りかかった。


ドン!、という音が鳴り響く。

リリスの目の前にいるトレントの体は、大きく破損していた。流石に貫通とかはしていないみたいだが、木の幹が大きくえぐられ、放っておけばそのまま倒れそうだ。


そんなトレントに向かって、リリスは容赦なく回し蹴りによる追撃を加えた。

メキメキと音を立て、トレントが折れる。だが、それは倒れてしまう前に灰になってしまった。


回復魔法も追いつかなかったみたいだ。


「ふう、こっちのほうが楽に倒せそうね。」

少し常識離れした意見だ。リリスは素手のまま次の獲物を見定める。

トレントを倒すのは彼女に任せて大丈夫。ということは攻撃も無視すると決めているのでトレントは俺にとって実際いないものとしてカウントできそうだ。


後はマジックパラセリアをどうやって倒すかだ。

あいつらは巧妙にも魔法を放った後、木々の隙間を移動して俺たちに正確な場所と数を悟られないようにしている。

スナイパーか何かか!といいたくなるような動きだ。


まぁただ、『ウォーター』は速度的に見てから回避可能だから大丈夫だ。


「ノア、隠れている奴がどこに何体いるかわかりそうか?」


「わからないよ!!分かったところであんまり意味なさそうだったから数えてない!!」

動き回る敵は数を特定するよりも環境を掌握したほうが早いので、はなっから数えるつもりはなかったみたいだ。

俺としても知っていたら何かできるかも?くらいの気持ちで聞いたから知らなくても問題ない。


このまま放っておいたらリリスが周辺の木々をひとつ残らず叩き折ってくれそうだからだ。

だが、このままやられっぱなしというのも面白くない。

何か、この状況でもできることは無いだろうか?俺に迫る『ウォーター』をマジックイータ―を盾にして受け止めてから考える。


「あ、そういえばノア。こいつって溜め込んだ魔法を吐き出す能力あったよな?それを使って道を作るとかどうだろうか?」


「あー、吐き出すくらいはできると思うけどそれには威力が足りないかな。タクミは正確なことを知らないと思うけどその子の維持費、結構かかるんだよ?」

うーん。だめか―。

ならこうやってリリスの作業を終えるのを待ったほうがいいのかな?


ノアはシルフを使って頭を出したマジックパラセリアを攻撃したりしているが、森の中では回避能力が高いのかそれらは見事にかわされている。

トレントを盾にして防いだりもしている。その際、傷ついたトレントはすぐに治療されているみたいだ。


えっと。リリスの作業の進捗状況は――――まだかかりそうだ。

かなりの速度で倒せているが、小さな森一つ分の木をすべて殴り倒すのはまだ時間がかかりそうだ。


持久戦になりそうだ。そう思い、少し憂鬱な気分になっていた時、周りの魔物の動きが少しずつ鈍くなっていっていることに気が付いた。

どうしたのだろうか?そう思って思い当たるのは1つしかなかった。


「リアーゼか?何をした?」


「えっと、毒薬です。」

森の中から声が聞こえる。その方向を見ると確かにリアーゼがいた。そんなところにいてよく魔物たちの気を引かないな。

何かコツでもあるんだろうか?


それにしても毒薬か。

知っての通りリアーゼは俺たちのパーティのアイテム運び要因だ。

戦闘能力はそれほど高くはないが、それを補って有り余るほどのサポート技術を持っていたりする。

だから俺たちは安心してリアーゼを頼れるんだが、案外彼女が持っているアイテムを全て把握していなかったりする。


初めのころは何を買っているのか聞いたりもしたのだが、その頃は回復系統のアイテムを充実させていたくらいなのでいつしか聞くのをやめていた。


任せとけば大丈夫だろう。くらいに思っていたのだ。

で、いつの間にか毒薬などを用意するようになっていたと。

昨日リアーゼも戦闘に参加していいみたいな話をしたと思うし、それで攻撃手段を買ってきたって感じだろうか?


ともあれ、リアーゼの使った毒薬はうまく作用しているみたいだ。

植物系魔物あるある、状態異常に結構弱かったりする、が適用されている感じだ。


「よくやったリアーゼ、その調子でどんどん弱らせてやれ!!」

本当に彼女はよくやったと思う。

隠れる特技をうまく生かした、いい攻撃だと思う。直接攻撃でない為ヘイト値も稼ぎ辛いし、そもそも彼女は毒薬をこっそり投与しているだけなので気づかれることもほとんどなさそうだ。



「ということでノア、相手の動きがこれからどんどん遅くなっていくはずだ。これならいつか回避ができなくなっていくと思う。」


「要するにリアーゼちゃんグッジョブってことだね!次頭を出した相手はボクのシルフちゃんから痛烈な一撃を覚悟してよね―――そこ!!」

ノアはその目にとらえた魔物の動きを先読みして、森の中の一角を指さす。

その一に向かって、彼女が召喚している3人のシルフが『ウィンドバレッド』という魔法を放った。


空気を圧縮して作られた弾丸はマジックパラセリアがその姿を見せた瞬間を見計らったかのように貫いた。

『ウィンドシザー』ではなく、『ウィンドバレッド』だったのは多分周りのトレントに魔法を吸われてしまうからだろうな。



さて、こうなってくれば俺も森の中で攻撃に参加したほうが効率がいいだろう。


俺は広場を抜け、森の中にその身を投じる。

俺の後ろについてくるように、マジックイータ―も一緒だ。見た目は禍々しいが、案外かわいい奴だ。

ここで念のため一度『挑発』、効果時間が切れるのはもう少し先だが、早めに使っておいて悪いことは無い。


その行動によって、大概の魔物は広場から背を向けるようにして俺のほうに注目する。

こうなってしまえば背中ががら空き。

俺のHPも少し削られてきたが、このくらいなら問題ない。


後は作業だな。

それからはどんどん動きが悪くなっていく魔物たちを一方的にノアが後ろから叩きのめしているだけだった。



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