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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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142 栓とトロール

リリスの説明の内容を要約すると戦闘は免れないということだった。


滝の裏では一定数のトロールが常に見張りをしている。

またそれらの体は大きく、気づかれないように横をすり抜けるようなことも難しそうなんだとか。


変に小手先の技で攻略するより正面突破したほうが楽だとも言っていた。


「じゃあとりあえずは俺が戦闘で気を引き付けてその間にノアたちが横からつつくってことでいいんだよな?」


「そうね。いつも通りで行きましょう。」

作戦・・・というほどではないがこれからの方針は決まった。

それならば突撃は早いほうがいいだろう。

洞窟の中ということで暗くなる前とかいうのは関係ないが、できれば早く帰りたいしな。


「ということで、とつげきー!!」

ノアの掛け声とともに、俺はトロールの集落へと突入した。


流石に騒音を立てながら突撃したため、相手も俺たちの存在にすぐに気が付く。

対応の速度もかなりのもので、俺たちが戦闘にいるトロールの前につく前にはもうすでに手に持っているこん棒を前に構えていた。


今見えて居るトロールの数は4体、数の上では互角の戦いだ。


「まずは俺と戦ってもらおうか!!」

とりあえず『挑発』だ。

前衛壁職は相手の樹を引くところから始まる。


『ヴヴォオオオオオオ!!』

正面のトロール2体が雄たけびを上げて俺にこん棒を振り上げる。

どうでもいい話だが、巨体の魔物でこういったデカい武器を持っている場合どうして初めは振り下ろしから始まるんだろうか?


カウントはしたことは無いけど結構な確率でこれな気がする。


いつもは横に避ける攻撃だが、今回は正面からぶつかり合ってみる。

ステータスが大きく上がったからそれがどのくらいの効果を及ぼしているかを調べておく必要があるからだ。


どれだけのことができるかがわかっていれば今後も楽だろうしな。


とりあえずは『斬鉄』と『純闘気』の両方使ってみよう。

初めから手加減したら怪我をする可能性が高い。


俺が振る剣と、トロールのこん棒が交差する。

と、同時にトロールのこん棒は切断されてその場に落ちてしまった。

それだけを確認した俺は時間差で落ちてくるもう一つのこん棒をよける。


こん棒を切り落とした感覚はほとんどない。

一切の抵抗なく寸断された。武器の性能差もあるのだろうが、ステータス上昇も大きいだろう。


今のでわかったのは威力が高すぎて正確な威力が分からないということだな。


今度はスキルを一つも使わずに切ってみるとしよう。

地面にたたきつけられたこん棒に、俺はすかさず剣をたたきつける。


それは少しの抵抗とともに真っ二つになった。

俺の想像以上に俺は強化されているみたいだ。


こん棒を切り落とした俺はその場から退いた。


「あなた、ぶくぶく太って可愛さが足りないわね。」

俺と入れ替わるように、リリスが後ろから出てきた。

今俺たちのいる通路は狭い。

そのせいで一度に戦闘ができる人数が限られているのだ。


トロールが2体並べば通路はもう塞がれてしまう。


先ほどの攻撃、時間差で落ちてきたのもそれが原因だ。

相手は全く数を活かせていない。

本能に従った攻撃しかできないみたいだ。4体のトロールがいるが、そのうち2体は前の2体が邪魔になって戦闘に参加すらできない。


対してこっちはノアは後ろから攻撃できる。


こういう通路で戦っている限り、トロール相手に数の有利はとられることはなさそうだ。


リリスは槍の穂先で器用にトロールの足を切り裂く。

正面からの攻撃にもかかわらず、リリスの槍はトロールのかかとを傷つけている。


重いからだ、それを支えていた足を大きく傷つけられたトロールは後ろに倒れる。

後ろにいた2体のうちの1体はそれを受け止めて支える。

だが、この場においてその動作は大きな隙だ。


「ノア、後ろのやつだ!!」


「わかってるよ!!」

ノアがその仲間を支えるトロールに向かってウンディーネに攻撃を支持する。


高圧で発射される水、それはトロールを2体同時に貫いた。

見た目は完璧に水鉄砲のそれだが、威力は強力の一言に尽きる。


「次は俺の番だな。」


「あとは任せたわよ。」

俺とリリスは再びその場所を入れ替える。

この場所では俺たちの武器は同時に振ることはできない。

その為いちいち攻撃の際には入れ替わるのだ。


あ、もしかしてあまり仲間の動きを阻害しない為に横に広がらない振り下ろしだったのかな?


そんなどうでもいいことを思いながら、俺はトロールに向かう。

相手はもうすでに武器を失っている。

唯一武器を持っている奴も、今は味方のトロールが邪魔になって戦闘に参加できない。


俺は剣を下から上へと振りあげた。


俺の剣はトロールの大きな腹を大きく切り裂いた。

トロールの体がその場から消え失せる。というよりは灰になってその場に落ちる。


大きな体がすべて灰になったが、その量は他の魔物と同じくらいだ。


よかった。これ全部倒したら通れなくなるとかならなくて。

ここら辺の法則はまだわかっていないから気を付けるとかできないんだよ。


「よし、次!!」

俺は剣を振り上げた勢いのまま、体を前に倒して進む。

残るはこん棒持ちのトロール1体。

今までの戦闘を考えて1体だけなら敵ではない。


トロールは見た目通りというか動きが重い。

こうやって味方がやられて狼狽している間なら安全に攻撃できる。



「ふぅ、とりあえず侵入には成功したね。」

入り口の敵を殲滅することには成功した。

それならばあとは奥まで進んでトロール王を倒せばいい。


そう思ったノアは前に進むことしか考えていないようだ。


「いや、これはこの場所で待っていたほうがよくないか?」


「それはまたどうして?他の巡回とかに気づかれて増援を送られる前に一気に目標までの距離を詰めたほうがいいんじゃないかしら?」

リリスが頭にはてなを浮かべたような表情でそう問いかけてくる。


「だからだよ。さっき俺たちを見つけた時にトロールたちが何か雄たけびを上げていただろう?いくらこいつらが馬鹿でも俺たちの侵入はもう気付いている。それならここで待っていたほうが安全に数を減らせるんだ。」


「えーっと・・・解説してタクミ。」

ノアはさらにわからなさそうな顔だ。


「じゃあまず初めに、敵の侵入を察知した組織は何をする?」

見張りを用意しているくらいだ。

トロールは知らないがトロール王は知恵くらいは持ち合わせているだろう。


「とりあえずは戦闘準備だね。」


「そうだな。まずは集落の守りを固めるだろうな。じゃあ次は?」


「次?敵が来るまでで待ち構えるんじゃないの?」


「そうするかもしれないな。じゃあ敵が来なかったら?」


「それなら私たちを発見するために数名、斥候か何かを送り込んでくると思います。あ、もしかしてそうやって送られてきた奴から倒していくつもりですか?」

トロールは集落の場所的に入り口であるこの場所さえ押さえてしまえば逃亡ができない。

というか補給も難しいだろう。

それならこうやって送られてくる敵を少しずつ倒していくだけで事足りる―――――というのも一応作戦としてはあるけど時間がかかる。


出来るだけ早く戻りたい俺からしたらそうはなってほしくないものだ。


「半分正解だな。別にこっちに来る奴は倒しても倒さなくてもいい。とりあえずは俺たちがこの場所、外との唯一の入り口を抑えているというところにあるんだ。ここを押さえておけば俺たちの討伐隊を組むしかないだろう?」


「うん?まぁそうだね。」


「じゃあこの場所で少し待ってみようぜ、敵が来なかったらまた別の方法を考えるということでさ。」


「あ、成程ね。この場所なら道幅が狭くてトロールの大きな体では一度に戦えるのは多くても2体まで、それなら安全に勝てるというわけね。」

単体で戦った場合、絶対に勝てるという確証がある場合、相手の拠点が閉鎖的な場所にある場合に有効な手段だ。

抑えられると補給ができない、それを理解している統率者はその場所は何としてでも奪還したがる。


それも厳重に固められるといけないから早めに対処しなければいけない。


しかもトロールの集落は洞窟の中、とても農業などをやっているようには思えない。

肉なども外に出て取りに行かなければならないだろう。


「うわぁ、タクミって性格悪いって言われたことないかな?」

俺の作戦概要を軽く聞いたノアが少し引き気味だ。

失礼な奴だな。少なくとも負けたら命を落とすという勝負をしている以上、少しでも勝ちの目が大きい作戦をとるのがパーティリーダーの俺の務めだ。


まぁ、洞窟相手だからそれなら煙とかで燻したほうが早いのかもしれないが、この中結構広いらしいしな。


「あ、もう次のやつが来たみたいだぞ。」

洞窟の中を、ドスン、ドスンという音が反響して聞こえてくる。

そしてその音は次第に大きくなる。敵は近いみたいだ。


足音の主は、少しずつ近づいてきてそこの角を曲がり俺たちの前に姿を現した。


『ガアアアアアア!!!』


そいつは俺たちを目視すると同時に、大きな声で吠える。

それを皮切りに洞窟の中が騒がしくなってきた。


うん、どうやら狙い通りここにトロールが集まっているみたいだな。


「リリス、ノア、やるぞ。」



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