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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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132 認識の差異と魔王システム

ノアと一緒に最後の魔物を倒し、とりあえずその場は収まった。

最後の魔物は影がつながっていればそれを通って移動できる、そんな能力を持っていた。


乱戦になった時などに使われると非常に厄介な能力だったため、ノアがこうやって戦場から引き離してくれたのは素直に助かったといえるだろう。

あれが戦闘に参加していたならば、結果は変わっていたかもしれない。


そのくらい面倒な能力だった。


だが、1体だけならそうでもない。

影がつながっている場所しか移動ができないということが分かってからは遠くからノアのウンディーネで削っていくだけでよかったからだ。


俺は相手を止めて時間を稼ぐ。

それだけで最後のやつを安全に倒すことができる。特に語るところもない。

で、ひとまず危険が去った俺たちは一度街に戻ることにした。


太陽を見てみても今は夕方よりは少し前、夕飯にはまだ早いだろう。

とりあえずここにいてまた魔物が集まってきても悪いから街に戻るのは確定だな・・・いや、エイジスがいたらなぜか魔物は近づいてこないから別にここでもいいんだけどね?


一応、一応安全確保のためには街に戻る方がいいだろう。


「さて、今から行くとしたら店のほうか?あ、ヴィクレア、お前たちはどうするんだ?」

ついてくるのだろうか?俺としてはどっちでもいい。

ヴィクレアは勇者の案内ということだったから、勇者が別の行動をとるということだったらそっちに行くのかな?


「俺たちも同行させてもらうよ。ちょっと話したいこともあるしね。」

ヴィクレアに言ったつもりだったのだが、その質問に答えたのは勇者だった。

彼らも俺たちの店に来るらしいな。

話したいことというのはさっき帰っていった魔王のことだろうか?


くるというのなら拒む理由はないし別にいいんだけど。

俺は黙ったまま店に向かう。

そこではいつも通りというべきか、そこそこの人が店に入っているのが見える。

これはスペラとシュラウドの2人じゃきついだろうな。


勇者が持っているという話を聞き終えたら手伝ってやったほうがいいかもしれないな。


俺たちは裏口から店に入る。

入ってすぐ、開いている扉からシュラウドの様子が見える。

彼が黙々と魔石を武器に入れているのが目に入る。どんな時でも仕事熱心な姿は見ていて引き込まれる。


俺は申し訳ないと思いながらもその部屋の中に入った。

後ろからぞろぞろとほかの人も入ってくるのが分かる。


「彼は何をやっているのだ?」

「えっと、あれは・・・」

部屋に入る際、後ろからそんな声が聞こえてくる。声からして勇者とヴィクレアの2人の会話だろう。

この光景は勇者にとっても日常的なものではないみたいだ。

シュラウドの邪魔をしてはいけない。企業秘密的なところもあるしここは俺は何も言わないようにしておいたほうがいいだろう。


俺はその部屋の真ん中に配置されている机につく。

そして他の人達にも座るように促した。ただ、この机はそこまで大きくはない。

少し長めの机のため、6人くらいなら普通に座ることができるがそれ以上になると場所も椅子も足りない。


椅子は1つシュラウドが使っているし実質5人、先に座ったのは失敗だったかもしれないな。


あ、そうだ。


「リリス、椅子が足りないみたいだからこの前の上に乗っかれるスライムとか、出せたら出してくれると助かるんだけど。」


「それもそうね。ちょっと待っててね。」

リリスが手を前に突き出す。そしてその直後、俺たちの目の前にスライムがあらわれた。

通常のものより一回り大きい、人が座っても大丈夫そうな見た目だ。

パット見バランスボールみたいだが、スライムの性質のためかあれに乗ると体がフィットするように形を変えてくれる。


「!!?こんなところに魔物が!!?おい、あんたら下がってくれ!!」

戦士が何か言っている。

さっきの話の何を聞いていたのだろうか?


「あー、大丈夫だ。このスライムは悪いスライムじゃないから、っとでもこれに座らせるのはちょっとあれだな。」

余っている椅子は俺が今座っている者を含めて5つ、ここにいるのは俺たちのパーティの4人と勇者パーティ+ヴィクレアの5人、神官はまだ目を覚まさないから実質4人だな。


マルバスもいるけど、こいつは動物型だから今回はカウントしないものとすればいい。

エイジスは森の中に戻っていった。家の仕上げをやってくるというのだ。

こういう時くらい休んだほうがいいと思うんだけど、本人がやるというのだからそれはそれでいいのだ。


けがをしたらその時はその時だ。


「あんたたちは普通の椅子に座ってくれ。俺たちはこれに座るから。」

俺は椅子から立ち上がり、いましがた生み出されたスライムを抱えて机の近くに配置した。


こいつ、スライムと思えないほど何もしないな。

ほとんど動かないし、周りを傷つけるわけでもない。そういう便利アイテムみたいだ。


俺はそれにためらわずに腰を落とした。

あの時座ったものと同じもののようだ。いや、こっちのほうが少し座りやすいか?

大きさの関係だろうか?


「あ、あぁ。わかった。」

戦士は何がなんやらという風にそう言って近くの椅子に腰かけた。

それにつられるように勇者もだ。


「あの、この子を寝かせてあげたいんだけど・・・」

魔法使いは背負っている神官の身を案じているようだ。確かに床に放置するというのもだめな気がするな。

ここは街中なのだからちゃんとした場所に寝かせたほうがいいだろう。


「あー、あっちの扉の奥にベッドがあったと思うからそこを使ってもいいぞ。」

確かあったはずだ。

こういうこともあろうかと、というわけではないがここで寝泊まりするかもしれないからなんとなく家の購入時に設置したんだけど、役立つ時が来たみたいだな。


「ありがとう。少し失礼するわ。」

魔法使いはそのまま俺が指さした扉の奥に消えていく。そしてすぐにこの部屋に戻ってきた。

ずっと見てやったほうがいいような気もするが、傷も大体癒えていて毒も抜けているから大丈夫と判断したのかもしれない。


「お待たせしたわ、さぁはじめましょう。」

何か話があるということだったからそれを今から始めようということだろうな。

もうすでに魔法使い以外の全員は着席している。

彼女も急ぐように椅子に腰かけた。


「わー、前に見た時ちょっと楽しそうと思ったんだけどこれ、楽しいね!!」

スライムに座るノアは楽しそうに自分の下敷きになっているスライムを触っている。

前に見た時って、確かリリスと一緒に隔離部屋に逃げた時だよな?


結構緊迫した状況だと思っていたんだけどこいつの頭の中ではそんなことを思っていたんだな。


「それで、何か話があるということだったけど?」


「うん、その話なんだけどまずは礼を言わせてほしい。エイジスという魔王から俺たちを守ってくれたこと、うちのアイナを救ってくれたことを感謝する。」

勇者はそう言って頭を下げた。

本当に感謝している、そう伝わってくるような言動だ。


「エイジスとはもともといつかリベンジしようとしていたし、毒を抜くことに関してはそこのマルバスがやったことだからあんまり感謝する必要はないさ。」

俺は別に何もやっていない。完全にそう思ったわけではないが、俺はそう言ってその場を終わらせようとする。

なんというか、こういう雰囲気はちょっと慣れないな。


「もうタクミったら素直じゃないんだから。照れなくてもいいのに。」

リリスが何かを言っているような気がする。ここは無視しよう。


「えっとそれで?何か話があるってことだよな?」

俺は話題を変えようとそう言った。


「ああそうだ。短刀直入に言うが、あの魔王を倒すことを手伝ってはくれないだろうか?」

本当に直球で来たな。あの魔王・・・は多分途中退場したベルフェゴールのことだろうな。

勇者たちはあれは自分たちでは勝てない、もしくは勝てても犠牲が出ることを理解しているのだろう。

で、俺たちに手伝ってほしいと。


確かに俺には毒耐性があるからあの魔王に少しは有利をとれるだろうけど、それでも勝てるとは思わない。


「だってさタクミ!!ボクとしてはどっていでもいいよ!!でも勇者の頼みとあったら断れないんじゃないかな!!?」

ノアはいつだって楽観的だ。

魔王に挑むのに一緒に来てくれと言われてそんな簡単に引き受けようとするのはこいつくらいしかいないんじゃないだろうか?


「理由を聞いても?」


「うん、恥ずかしながらあの魔王には俺たちだけでは勝てない。しかし君は違う、あの魔王の恐ろしい能力を受けても効果がないのだろう?」

恐ろしい能力、まぁ確かに恐ろしいけどそれを封じたところで感はありそうだ。

それ以外に何かないとは限らない。


エイジスだって圧倒的防御性能のほかにダメージを蓄えるという能力も持ち合わせていた。

毒が効かないという理由だけで魔王討伐に行かされたらたまったものじゃない。


「確かに、毒は効かなかった。こうしていてもいつまでも症状が出る様子はないし事実そうなんだろう。」

固有スキルによるものだったら耐性貫通とかもしてきそうだったが、その心配ももうなさそうだ。

だけどそれだけだ。

「だろう!!?だから・・・・」


「まあでも当然断るよ。」


「どうして!?」

むしろどうしていけると思ったのだろうか?

魔王討伐、図書館に行く前の俺なら喜んで引き受けただろうけど今は行く意味を見出せない。この勇者たちには悪いが行くならお前らだけで行ってくれ。


まぁ、あの魔王がそもそもどこに行ったのかがわからないだろうからそれ以前の問題か。


「いや、どう考えても危険だからだよ。別に好き好んで人を襲う魔王ってわけでもなさそうだし放っておいてもいいんじゃないか?」


「正気か兄ちゃん!!?あれは魔王だぞ!!?放っておいていいわけがねえだろうが!!」


・・・・あれ?戦士がそう言っているのだが、何か違和感を感じる。

えーっとこれは・・・?

確か俺がエイジスを一方的に見ていた時、ノアが何か言っていたような気がするな。


「なぁノア、魔王ってどう思う?」


「どうって、魔王だねってくらいにしか思わないよ?別に倒しても倒さなくてもって感じだし。」

だよなぁ、お前はずっとそう言っているよな。だからこそエイジスの家建設計画にも快く手を貸してくれていたわけだし。

あれ?まさかと思うけど勇者たちと俺たちで結構魔王に対して認識が違ってきているのか?


原因がどうであれ、そうであるような気がする。


「ちなみに、そっちは魔王についてどう思ってる?」


「そりゃあ、人間の命を日々脅かす魔物の王だ。放っておいていいわけねえだろう?」


「でも魔王って結構なペースで増えるんだろう?その辺りってどうなってるかわかる奴いるか?」

魔王のシステムはよくわからない。

エイジスは宣言して認められたらそれでいいといっていたが、それだけでは魔王は増えすぎてしまわないだろうか?

それとも認められるのって結構難しくてほとんど増えないとか?


あ、でも確か誰かが倒すと増えるとか言っていたような気がするな。


「魔王は実は一定数以上増えないんだ。でもその一定数っていうのが魔王が人間に殺されるとたまに増えるのさ。」

マルバスが横から補足を入れてくれる。

魔王が人に殺されると増える?って?


「魔族たちも人に殺されるのを嫌っている。あんまり殺しすぎると自分たちのスケープゴートとして魔王の数を増やしていく。だから大半の魔王は弱い。」

っていうと?


「本当の意味での魔王はあんまりいないってこと、でも名目だけでも魔王を名乗れるから調子に乗って人間を襲いに来るやつもいる。」

はー、そういうシステムなんだな。


「じゃあエイジスはどっちのパターンなんだ?魔王って言っていい奴なのか?」

彼はいったいどっちだろうか?

エイジスの場合はそういう問題じゃなく魔王じゃないような気がしないでもないけど・・・


「エイジス・・・というと最近君がつるんでいた奴だね。あれは一応囮用だよ。まぁ、囮用にしては圧倒的に強いけど、で、今話に出ていた奴は普通の魔王だ。」

うわぁ、エイジスでも通常魔王より弱いのかよ。

なおさら今回の頼みは聞けないな。


なにせエイジス1人でも結構苦労したのだ。

それより強い相手に今、勝てるはずがない。


「ということらしいけど、これでもあの魔王は倒すべきだと?」

俺は勇者たちの反応を伺うようにそう問いかけてみた。




きりが悪いですが長いので今回はいったんここで切ります。

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