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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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120 勘違いと不注意

誤解がないように記載しておきますが、勇者パーティのメンバーよりヴィクレアの方が身分が上です。

勇者一行を連れて早6日、明日はいよいよベイルブレアの街に到着する。


この馬車の中で勇者一行ともそれなりに親睦を深めることができたのではないかと思っている。

約1週間、馬車の中では明るい雰囲気が漂っていた。


「にしてもよ。その剣本当にいい剣だよな。」

いつも始めに話題を振るのはダミアンだ。

このパーティ内では彼はムードメイカーの役割を買っているのだろう。


彼は初日にも話した内容の話を再び蒸し返してくる。


「そうは言いますが、皆様の持っているものも相当では?」

私はその言葉にこう返した。


実際、彼らの持つ武装は素晴らしいの一言に尽きる武器だった。


まずはダミアン、彼が持っているのは装飾はほとんど施されていない、性能だけを重視した戦斧だった。


一見どこにでもありそうなものだが、見る人が見れば一目でわかる逸品だ。

この馬車旅の道中で一度、進行方向に魔物が出たということがありそれを振るうのを見る機会があったのだが、それはまさに圧巻というべきだった。


現れた魔物はリビングトータスと呼ばれ、巨体と硬さが特徴の亀だったのだが、その甲羅を一撃で粉砕してみせたのだ。


勿論これは装備の性能だけで引き起こした事象ではないのだろうが、それでもその強撃で刃こぼれ1つ起こさないその斧は見事であった。


「へへっ、そうか?これな、王国でも屈指の職人にオーダーメイドで作ってもらったんだぜ。」


そんな自分の武器が褒められたのが、自分のことのように嬉しいのだろう。


ダミアンは照れたようにそう言った。


「あー、その時ダミアン、少し見苦しくなるくらいに頼み込んでたわよね〜。」

リオーラが何かを思い出したのだろう。

くくく、と笑みを浮かべてそんなことを口走る。


「最終的に作ってもらえたからいいだろ!!?」

何か思い出したくないことでもあるのだろうか?

ダミアンは赤くなって言い返している。


馬車の中には笑い声が飛び交った。


「でも見事な武器って言ったらやっぱりライガが持っている剣だよな。」

ダミアンは話題を別のものに移すようにそう言ってまじまじとライガの方を見た。


彼が座る馬車の座席には、いま話題に挙がっている剣が立てかけられている。


「そりゃあこれは国王様から直々に賜ったものだからね。そこらの品とは比べ物にならないさ。」

ライガの持って来た剣はダミアンのものとは対照的に装飾が施された剣だ。


美しい宝石が埋め込まれたその剣は、見る者全てを魅了してしまう。そんな魅力があった。


しかしそれでも実用性は失っていない。

魔物が前になればその力を遺憾なく発揮してくれるのだ。


「えーっと、その剣の名前ってなんだっけ?」

ダミアンはど忘れした様子だ。

何かを思い出そうとしている。


「エッケザックス、ダミアンはいい加減に覚えて。」

それを見たアイナが呆れたような顔をしている。


「おお!!そうだ!たしかそんな名前だったな。仕方ねえだろ。覚えにくいんだからよ。」

突っかかりが取れた。そんな感じのすっきりした顔だ。


エッケザックス・・・確かに少し覚えにくいかもしれない。

見た感じの性能は私の家に伝わる聖剣に匹敵するかもしれない。

いや、武器としての性能を見たらおそらくこちらの方が高いだろう。


私の家にあるものはあくまで悪魔退治に特化したものだから、基本性能は低かったはずだ。


「あなたねぇ・・・」

ため息をつくリオーラ、ちなみに彼女が持つのは杖だ。

魔法使いは自分の魔力を高めるために杖を持ち歩くのだとか。


魔法的な才能が一切ない私にはわからない話だ。

だが、ライガとダミアン、彼らの武器がそれだけ素晴らしいものだと考えると、彼女が持っている杖もいいものであるはずだ。


その期待を込めながら私はリオーラの方に目を向けて見る。


「あ?私の杖?これはねー。」

リオーラは私の疑問を汲み取ってくれたみたいだ。

自分の装備について解説を始める。



・・・・それはもう丁寧に、、、


「あー、始まっちゃったよ。俺知らねえからな。」

リオーラに魔法関係の話をさせたら長くなる。

それは勇者パーティの中では常識的なことであった。

だが、ヴィクレアは当然そのことは知らない。


ここ6日、それを知らなかったのは彼女が魔法に関しての知識がなく、下手なことを言わないように気をつけていたからだ。


ここ最近、リオーラは自分のこう言った話を聞いてくれる人が少なくて溜まっていたのだろう。

それを全て吐き出すように己の知識をひけらかした。


そしてその話が終わる頃、空はすっかり暗くなっており、馬車も止まっていた。













「さて、ここが目的の街だね。」

次の日、まだ昼にもならないうちに私たちはベイルブレアの街に到着した。


この場所は以前きたときとなんら変わりのない風景を見せてくれている。


「では、ここからは私が案内させていただくのですが、どこへ向かいますか?」


「う〜ん、みんなどうする?」

勇者であるライガはパーティメンバーの意見を仰ぐ。

初めてくる街でどこに行きたい?という質問は今思えば不親切だったかもしれないな。


「私はどこでもいいわ。でもお昼ご飯は食べたいわね。」


「俺もそれに賛成だな。あとヴィクレアの姉ちゃんが言っていた店ってやらも見て見たいな。」

ここ数日、タクミ殿の店の話はたまにしていたのだがそれがダミアンの気を引いたらしい。


「私はどこでも。」

アイナはあまり主張しないタイプみたいだ。


「そうだね。俺も腹が減ってきてた頃だし、ヴィクレアさんはどこかいい店知らないかな?」

街のことは案内人に、そういうことだろう。


彼は自分で探すのではなく、私に案内を求めている。

うーむ、どこかいい店・・・・

正直言うと私はそう言うのはよくわからないのだが・・・・っと、あそこなら大丈夫か。


「そうですね。1つオススメの店が、」

店・・・と言うか宿に備え付けられた食堂なのだけれど、食事ができると言う意味では変わりない。


「じゃあ早速案内してくれよ。」


「はい。ではこちらになります。」

私はまっすぐタクミ殿が止まっている宿に向かった。

あそこの食堂は量もあるし安価だし、味も結構良くてお勧めできるのだ。


かく言う私も店で働いていた時、昼休みとかによく行っていた。





私はその食堂に到着した後、そのまま食堂側の入り口から中に入った。


「へい!!いらっしゃい!!」

少し懐かしさを覚える声が私の耳に届く。

これはこの店・・・・じゃなく宿のオーナー兼料理長のイアカムの声だ。


私はまとまって空いている席を探し、そしてそこに勇者達を案内する。


「意外ね。貴族が勧める店っていうからもっと高価そうな場所かと思っていたわ。」


「あっ、俺も俺も。」


席に座った時、そんなことを言われたが文句を言うような声は出なかった。

まぁ、まだ何も食べてないから当然か。


「で?ヴィクレアの姉ちゃん的にはどれがお勧めなんだ?」

オススメの料理・・・・思えばここにはそんなものないわね。


「ここは厳密には店じゃなくて宿にくっついた食堂なの。だからこっちから選んで注文はできないのよ。もう少し待っててね。」

すぐに運ばれてくるはずだから・・・と言おうとした時、ちょど料理が運ばれてきた。


ウェイトレスが2人がかりで器用に5人分の料理を運んでくる。


ちなみに、この食堂はメニューはランダムだけど値段はいつも同じだ。

そこはいつきてもいいように、というイアカムのこだわりなんだとか。


「おぉ!!美味そうだし量も申し分ねえな!!」


「今日は私が全て払いますので、遠慮せずに食べてくださいね。」


「良いのですか?」

心配したような目で、ライガは聞いてくる。

それに関しては大丈夫だ。

今回、この街に来る前に王都の家からお金を持ってきたから余裕はある。


それに、


「大丈夫ですよ。この食堂、安いのも売りですから。」

いくら食べられても私の財布的には全く痛くない。

ここは案内役ということだし奢らせてもらおうと思う。


私はにっこりと笑ってそう答えた。



「とにかくライガも食えよ!!結構うまいぞこれ!!」

もう既にダミアンは肉を一切れ食べ終わっている。

この調子行けばすぐに完食してしまいそうだ。



「本当、美味しいわね。ここ数日が野宿と携帯食だった、というのもあるのでしょうけどそれを差し引いても美味しいわ。」


「案内人が勧めるだけはある。」

みんなの反応も概ね良いみたいだ。


私も自分の分を食べるとしよう。


うむ、変わらない良い味だ。

そういえば、今はちょうど昼時くらいか?


街についたときはそうではなかったのだが、ここに来るまで少し歩いたからな。

私の知り合いの誰かが来てもおかしくなさそうだが・・・・・今日は誰も来ていないみたいだな。



この食堂は実は時間が過ぎると閉まってしまうため、このくらいの時間に来ていないということは今日はこないと見て良さそうだな。


「ヴィクレアさん?何かありましたか?」

周りを見渡しているのを不審がったのだろう。

ライガが気にしている。



これ以上は探しても無駄ね。


「いいえ。なんでもありません。」

私はそう言って午後の予定を軽く整理した。












そして食後、今からはダミアンの提案によってタクミ殿の店に足を運ぶところだ。


私たちが食事をとった場所からその店までは大した距離はない。

少し歩けばすぐに着くくらいだ。





「ふむ、いつも通り繁盛しているな。」

遠目から店を目視し、その様子を見て私は独り言をこぼした。

そこにはいつも通り客が入っているのが見える。


私が働いていた時と変わらない光景だ。


「お?ならあれがタクミって奴の店ってことか?」


「はい。そうです。」


「結構盛り上がってるみたいだな。何かやってるのか?」

基本的に、武器屋は物が高いため客が入りにくい。

それにもかかわらず人がそこそこ見えてそう思ったのだろう。


「いいえ、この店ではこれが普通なんですよ。」

だが、タクミ殿の店は金属製相当の性能を誇る武器が安価で売られている。

値段を比べた時にこっちが圧倒的に安いから、みんな買いに来るし、そこまで高くないので大切に扱われづらい。


耐久性に欠ける・・・というわけではないだろうがみんな結構無理な使い方をしているのか早い人では1週間で新しいのを買いに来るのだ。


私達はそんな武器を売っている店に入る。


「いらっしゃ・・・・・あー!!」

入店直後、私を指差してそんな反応をする者がいた。

確か彼女は、私と入れ替わりに入ったスペラって名前の人ね。


彼女はこの店の女性用の制服を身にまとっている。

だが、サイズがあってないのか少しだけぶかぶかだ。


「久しぶりで悪いのだが、タクミ殿はいるだろうか?」


「そんなことよりちょっと聞いてよ!みんな私とシュラウドだけ置いてどっかで何かやってるっぽいのよ!!そのせいで私の仕事量はとんでもないことになってるのよ!!」

仕事そっちのけで愚痴をこぼすスペラ。


「ということは、タクミ殿は今この場所にいない?」


「そうよ!!あんたの置いて言ったエリックって人も直ぐに来なくなっちゃうしぃ!!」


あれ?エリック?あなた何をやってるのかしら?

彼には少しだけ説教が必要のようだ。


「それならシュラウド殿にでもこれを渡して貰えないだろうか?」

私はこの前のドラゴン討伐の褒賞を手にそう聞いてみる。


「はぁ?自分で持って行きなさいよ。」


断られた。

それもそうだ。忙しいとぼやいている人に頼むべきではなかった。


「あの、ちょっとこれをこの店の者に渡して来るので自由に店の中を見て回っていてください。」

私はそう断りを入れてカウンターの奥、店の裏側に回る。


今は客だからこう言った行為を取るのは不適切だと思いもしたが、店員から許可が下りたしよしとしておく。




「シュラウド殿、少しいいだろうか?」

いつもの場所に彼はいた。

彼の目の前には2つの木箱、1つは魔石が、もう1つには木製の武具が入っている。


「ヴィクレアさん、帰って来られたのですね?どうなさいましたか?」


「これを、ブラックドラゴンの討伐報酬だ。」


「ありがとうございます。」

彼は私の手からそれを受け取り、それを机の上に置いて作業を再開する。


「そういえばシュラウド殿、タクミ殿がどこにいるか知らないか?できれば教えて欲しいのだが、」

何をやっているのか、少しきになるから知っていればそれも教えてもらいたい。


「タクミ様ですか?彼らなら近くの森に出かけておりますよ。」

近くの森・・・と言われてもこの街の周辺には森が複数あるのでわからない。

できれば時間が取れた時にでも会いに行きたいから正確な場所が知りたいのだが、、、



「あの、できればこの地図に記してくれると助かるのだが。」

私はこの周辺の地図を机の上に広げてそう言った。

するとシュラウドは近くにあった炭を使い1つの森を丸で囲む。

大雑把だが、大体の場所は分か・・・・・・ん?・・・んん!!?


私は受け取った地図を持って即座にその場所を後にする。

そして店頭スペースで興味深そうに商品を眺めている勇者一行の元へ向かった。



「みんな!!少しいいだろうか!?」


「うわっ、どうしたんだよそんなに血相変えて。」


「ちょっとこれを見てくれ。これは今、この店の店主がどこに行ったのかを聞いた時に付けられた印だ。」

私は先程印をつけてもらった地図をカウンターで開く。


「これは?」

ライガはどういうことか分からないみたいだ。

またダミアンも・・・・


リオーラは何かを思い出しそうで思い出せないと言った様子だ。


だが一名、アイナだけはその意味を理解していた。


「これ、魔王の出現場所と同じ?」


そうだ。

タクミ殿がいると言われた場所と、魔王がいると言われた場所が一致しているのだ。



「へーってそれ、やべえんじゃねえか?聞いた話によればその男もそこそこやるようだが、魔王相手は部が悪いだろ?」

ダミアンはアイナの指摘を聞いてそう答えた。


「ということで、知り合いが危ないかもしれないんだ。少しだけ外してもいいだろうか?」


本来なら、この案内は任務であり、それを放棄してどこかにいくというのは場合によっては国家反逆罪に問われる可能性がある。


だが、知り合い・・・いや、友人が魔王の脅威に晒されていると知ってじっとしていられる訳がない。


ヴィクレアはすぐにでも飛び出していこうという勢いだ。


「待ってくれ、俺たちも一緒に行く。そもそも俺たちはその為にここにやって来たんだ。」

どうやら勇者たちも戦ってくれるみたいだ。


それは非常に心強い。


「ありがとう。では、こっちだ!!」

私は街の外に向かって全力ではないがかなりの速度で走った。

それに遅れることなくぴったりと勇者一行はついて来た。


戦士であるライガやダミアンはともかく、体力面で劣るとされる魔法系のリオーラやアイナまで。


その速度で走っているおかげもあってか、目的地は直ぐに見えてくる。

街からそこまで離れていないというのも幸運だったことの1つであろう。


「あ!!みんな、あそこを見るんだ!!」

走りながらライガが何かに気づいて遠方を指差した。


その方向には森・・・または木が見えるだけなのだが?


そう重い目を凝らして森を見ていると、そのうちの木の一本が唐突に倒れた。


今、天気はすこぶる良くて、強風が吹いているわけでもない。

明らかに何か外的要因で倒れたのだ。


「おー、結構激しくやってるみたいだな。だが、まだ生きてはいるみたいだぜ。」


頼む!!タクミ殿、私たちの到着まで耐えてくれ!!


ヴィクレアは心の中でそう祈りながら、森に向かい一直線で走っていた。




区切るところを間違えた・・・気がついたら想像以上に長くなってた・・・・



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