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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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116 魔王の仕事と奴隷の心

「ということで、俺は今日予定が入っているからそっちの方に行ってくるな。」


予定というのは言わずもがな、昨日の魔王が言っていた手伝いの話だ。

昨日はあの後もう遅いということで今日改めて待ち合わせをすることになったのだ。


ちなみにそこまで人手が欲しいわけではないらしいので、俺1人で行くことにしている。


あんまりぞろぞろと引き連れていっては迷惑かもしれないしな。


俺は早朝から1人街に繰り出そうとしたのだが、


「あの、タクミお兄ちゃんまって!!わたしも一緒に行く!」

リアーゼに引き止められた。

一緒に?


俺としては構わないがそれは危険ではないかという気持ちもある。

昨日接してみたときはそう感じなかったが、あれも一応は魔王だという情報が入っているのだ


この情報はマルバスが教えてくれたもののため信はそこそこ高い。

リアーゼもそこらへんは大体把握していると思っているのだが、・・・・


「一緒に来るのか?」


「う、うん!!行かせて!!」

いつもより一段と気合が入っているみたいだ


こんな彼女の気持ちを無下にはできないだろう。


「わかった。でも一応言っておくけど俺の指示にはちゃんと従ってくれよ。」

いざとなったら1人ででも逃げてもらうからな。


「はい!!了解です!」





街を出て少し歩いたところに、その男はいた。

例のフードは被っておらず、素顔を晒している。

見た感じ人間と相違ないように見える顔だが、一部分、頭にツノのようなものが生えているのだけが目立っていた。


「おう、これが気になるか?」

ジロジロ見ていたからか俺を見つけるなりそう聞いて来る魔王。


「やっぱり人間ではないんだなって。」

逆に魔王と言われた人物が人間だったらそれはそれで怖かったりするんだけどな。



「はっはっは、手伝ってもらうからには隠し事せずに行こうと思って見せたんだが、お前さんはビビらねえんだな。」


「ビビる?どうして?」

ツノがあるってだけだろ?それを見ただけでビビるのはおかしい。

俺が少し萎縮してしまっているのはあくまで目の前の人物が魔王だというタレコミがあったからだ。


今更ツノがあっても驚く要素にはなり得ない。


「そりゃあツノは魔族の証だからだよ、ちなみに教えてやるが俺はその中でもトップの存在だ。」


あ、はい。存じ上げております。

そう言おうとしたところをぐっとこらえて一応は驚いた反応を取っておくことにしよう。


「わっ!!そうだったんですか!!すみませんそうとも知らずにー。」


「なんか嘘くせえ反応だな。」

やっぱり俺は演技が下手みたいだ。一瞬でバレてるし・・・・


「知り合いに物知りな悪魔がいるんでね。あんたが魔王だってことも聞いている。」

隠し事はしない、と言っていたのでこちらも出して問題なさそうな情報はバンバン出していくことにしよう。


勝負に勝つために大切なことは手の内を隠すこと、これは常識だ。

しかしもう1つ、勝負に持ち込むために必要なことは出し惜しみしないこと、というのが俺の持論としてある。


ここは持っている情報を握りこんでいる場合ではないだろう。


「へぇ、そうなのか。なら俺にビビらねぇのも納得だな。ちなみにその悪魔ってのは?」

えらく食いついて来るな。


「見たことあると思うよ。最近街中を闊歩しているライオンだ。」

あの姿は街中では目立つため見たことないということはないだろう。

それに、俺が見ていたことに気づいていたなら華の序の姿も見えていたはずだ。


「あぁ、あれか。お前の知り合いとんでもねえな。」

ん?少しだが引いたか?

微妙な変化だったため捉えきれないな。


「っと、それより俺たちは何を手伝えばいいんだ?」

魔王の頼み事だ。何をされるかわかったものじゃない。


「おお、そうだったな。まぁそうかしこまるなよ。大したことじゃねえって、あのな・・・・・・」


魔王は今日、やってほしいことを大まかに説明する。

それによると居住をここら辺に持ちたいから手伝ってほしいとのことだった。

その内容たるや王ってなんだっけと思う内容だ。


別荘でも建てたいのか?という俺の質問に対してはそもそも家なんてものを持っていないのだと。


それでどうして王なんだろうか?

近所のガキ大将とかの方が似合ってそうな気がする。

俺たちに頼んだ理由も手伝ってくれる知り合いがいないからなんだそうな


なんだそりゃ。


まぁ、助けてもらった分は働くんだけどさ。


「家なんて不動産にいけば紹介してくれるんじゃないのか?別にでっかい奴が欲しいとかじゃないんだろ?」



「むうぅ、それはそうなんだが魔王が人間の街で暮らしているのってどうなのだという思いがあってだな。せっかくだし外に作りたいんだ。」

確かに、勇者パーティが宿屋で寝ている魔王めがけて冒険に行く、、、というのは格好がつかないかもしれない。


そこらへんは何かこだわりがあるのだろう。

その言葉にはしがった方が良さそうだ。



「でも外に家を立てるのはいいとして、誰が立てるんだ?」

建築学とか、そこらへんの知識は流石に持ち合わせがないぞ?


意外に脳筋に見える目の前の魔王が覚えていたりするのか?


「家を立てるのは当然俺たち全員でだ。言っただろ、手伝ってくれって。」


はぁ、つまり1人では建てられないからこうやって人を集めたわけだな。

まあ結局そうやって集めた人間も役立たずだったわけなんだけど。


「それならシュラウド君を呼んできた方がいいかもですね。」


あ、成る程。モノづくりに秀でた彼ならなんとかしてくれそうだ・・・・けど。

店を中断させてまでこさせるのはちょっとあれだな。


そうするくらいなら別にもっといいやついるからそっちにお願いした方がいいよな。


「シュラウドは忙しいだろうし今回はゴブリンに頼もう。あいつも放っておくと何を作り出すかわかったものじゃないからな。」


若干分野は違いそうだが・・・・まぁなんとかしてくれるだろう。

あいつなら基本的に街の中に入ることはできないから暇してそうだしな。


「むっ?お前にはゴブリンの知り合いまでいるのか。面白いやつだな。」

魔王は笑みを浮かべている。


「じゃあ早速今から呼びに行くとするか。」

工場まではそこまで遠くないとはいえ、少し面倒だな。

こんなことなら予めノアにゴブリンを召喚できるようにして貰っておけばよかったな。


それなら街に戻るだけでいいんだけど。

今度やって貰っておくことにしよう。


「俺も一応ついて行くぞ。ここにいても暇だからな。」

あ、魔王さんもついて来るんですね。


俺たちはゴブリンが研究施設として独占している工場へ向かって歩き出した。

道中、たまに魔物は出てきたのだが魔王がいるせいか襲って来るということはなかった。



成る程、魔王と一緒に行動するとそういう特典とかもあるんだな。

これはリリスやマルバスと言った悪魔では効果がなかったから魔王の特権みたいなものなのだろうな。


そんなことを思いながら優雅に歩いているとリアーゼが話しかけてきた。


「あ、あの。」


「どうしたリアーゼ、気になることでもあるのか?」


「そうじゃないんですけど、昨日のお礼を言い忘れてたなって・・・助けてくれてありがとうございます。」

彼女はそう言って俺の服の裾を軽く掴んで来る。

昨日の出来事は俺は聞かないことにしている。

リアーゼにも思い出したくない過去があるはずだと思ったからだ。最近の彼女は楽しそうだったため、あまりそういうことを掘り返さない方がいいと考えたのだ。




「結局俺は何もできなかったからな。お礼ならそこの人にするといいさ。」

俺は横を歩いている魔王を指してそう言った。

実際彼がいなかったらリアーゼは怪我をしたかもしれない、最悪の結果だって怒ったかもしれないのだ。


それを無傷でやり過ごすことができたのは一重に魔王のおかげなのだ。


まぁ、その見返りとして今よくわからないことを手伝わされているんだけど。


「あのっ、ありがとうございます!!」

俺に言われて、リアーゼは頭を下げた。

お礼を言われた当の本人は特に気にした様子はない。


「なに、言っただろ?当然のことをしたまでだって。それに今は俺が助けて貰ってんだ。お互い様ってやつだな。」

出会ってからずっと思ってるのだが、この男はつくづく魔王という感じではないな。


ただの近所の優しいおっさんみたいな感じしかしない。


「で、でもっ、」「お!!工場ってのはあれか?」


リアーゼが何かを言おうとしていたところを魔王が遮った。

もう必要ないということだろう。


ともあれ彼のいう通り工場は目の前に見えている。

あれが今夏の目的地だ。

俺は目的地が見えたことで少しだけ早足になりながらも、言いたいことを言えなかったリアーゼに向かって声をかける。



「まぁ、気にすんなよリアーゼ、ちゃんと伝わってるだろうからさ。」


助けるというのは不思議な現象だと俺は思う。

というのも助けられた側はものすごく意識するのだが、助けた側はさして何かあったと思わないのだ。


割とそういうものなのだ。

これに関しては諦めた方がいいだろう。


「でもっ、、、」


「ほら、リアーゼ、助けてくれたお返しに今俺たちがこうやっててづ大をしているんだろう?ここで頑張ればいいさ。」


「う、うん。」


そう頷きは下がリアーゼはどこか浮かない顔をしていた。

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