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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第4章   魔王の願いと蠱毒の少女
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114 世界の真理と・・・

説明回です。

図書館には知識が詰まっている。

そう言った人は誰だっただろうか。


特に覚えているわけではないし、俺はそもそも図書館になんてほとんど行ったことなかったからそれを聞いた時は何も思わなかったのだが、今はその言葉を信じたいと思う。



俺は先日見つけた図書館に来ていた。


「では、ごゆっくり。」

そう言って俺から遠ざかっていくのはこの図書館の司書だ。

メガネをかけた青年で使用上の注意などを教えてくれたのだ。


教えてもらったことについては元の世界のものと変わりないので割愛する。


ちなみにここに入るのには苦労はしなかった。なんでも入館料さえ払えば誰でも利用できるみたいだ。


俺が元の世界で行った図書館は何かカードのようなものを作らされたと思ったのだが、こちらではそんなことはないらしい。


そして当然というべきか貸し出しは行なっていないそうだ。

ここは読むの専用ということだな。


「さて、かたっぱしから見ていくとするかな。」

独り言だ。その声は小さいが、周りが静かなためそこそこ聴きやすい。


俺は目につく棚の本のタイトルを俯瞰していく。


『王国の歴史〜英雄オーベル』


『王国の歴史2〜帝国との戦』


『王国の歴史3〜魔の物との戦い』



ふむふむ、この棚は歴史書が置いてあるみたいだな。

この感じから判断するとこの場所は王国と言われている国なのかな?

というかその歴史書の第1巻にエリックの家名が見えたのにはびっくりしたな。


エリックの様子からは想像もできないがこの国では正しく英雄だったのだろうな。


俺は少しだけ気になってその本を手に取った。

古い紙の質感が俺の手に伝わってくる。


『彼の者の名はディスティニア=オーベルと言った。

聖剣を手に携え幾千もの魔物を屠り、そして最後にはかつてこの王国に脅威をもたらした魔王ベリアルを打ち滅ぼした者である。』


という、大まかなあらすじを先に踏まえてその男の物語が始まった。

これは歴史書というよりはその人物の伝記だな。


何を成し遂げ、どのように生き、そしてどのように最後を迎えたのかがこと細かく書かれている。

俺はその本を軽く流し読みして本棚に戻した。

残念ながら俺の欲しい情報はこれではないのだ。


時間は1日丸ごともらったためたっぷりあるが、だからといってムダ遣いしていいわけではない。

俺は同じシリーズの次の巻を手に取った。


これは帝国と呼ばれる国と戦争の話だ。


『我が王国は隣国である帝国と対立している。

奴らは領土的野心から我らの国を攻めおとそうとしているのだ。


流石に、魔物の対策も考えなければいけない中大量の戦力を投入するなどということはほとんどないのだが、それでも苛烈さは毎年増しているようにも思える。


これはその帝国と我が国との死闘の記録だ』


イメージ的な話になるのだが、やはり帝国は攻める側なんだな。

俺が聞いた限りではそんな話は出ていなかったのだが、どうやらこの国は隣国ともめているらしい。


というか一方的に攻撃してくるのに抵抗しているらしい。

その話を聞かないのはまだ今年の戦争が始まっていないからか、もしくはこの土地が田舎だという可能性もあるだろう。


なんにせよ、気をつけなければいけない事柄だった。


俺はその調子で次々と本を漁っていく。

この世界で生き抜くに当たって必要な知識が入っていそうなタイトルはとりあえず開いて見た。



そしていくつかわかったことがあった。

まずは物の話だ。

いつも思っていたのだ、木や石の装備は安いのに、金属製の武具になった途端高くなるのはなぜだろうという話。


これは考えてみれば当然なのだが、鉱山に魔物が出現するからなのだそうだ。

鉱石を手に入れるのにも冒険者を雇わなければならない。


その護衛料のことや加工費、人件費の兼ね合いであそこまで値段が跳ね上がるそうだ。


また、それでも防具は少し安めなのは国からの支援が入っているとかなんとか。



また食料、家畜はほとんど使われないらしい。

というのも家畜を大量に飼育するとそれだけで魔物に狙われやすくなるからだそうだ。


つくづくこの世界は魔物の存在が大きく人の生活を変えているのだなと思える内容だ。

他の本もそういう内容の本が多かった。


また、面白い本もあった。

『クラス一覧〜戦士編』

こういったどちらかでいえばゲーム寄りな本もあったのだ。


個人的にはこれをクラスを選ぶ前に読ませて欲しかったところだが、思えばクラスチェンジはランダムだから関係なかったな。


ちなみに〜戦士編というタイトルから分かると思うがクラスの分岐はかなりの量がある。

それこそ本を分けなければいけないくらいに。



興味本位でめくったノービスのクラスなんかは面白そうだった。

二次クラスでは賭博師やスター、はたまた取り立て人というのまであった。

そして一番分岐が多かった。



ちょっと後で詳しく読んで見たい気もしたがそれを読んでいる時間は流石になかった。



そして本を漁り始めてどれくらいたっただろうか?

俺はついにその本に行き着いた。


その本のタイトルはこうだった。


『渡り人への救済』

本当はその本のタイトルなんてすぐには思いつかなかった。

それでもそのタイトルを見て手を伸ばすことができたのは、何となく読まなければいけない気がしたからだ。



俺はその本を手に取った。


「おや?『渡り人』ですか、私も読んだことがあるのですが今一よくわかりませんでしたよ。」

後ろから、突然声をかけられる。

そこには始めに俺の案内をしてくれた司書さんがいた。


急に話しかけられて少し驚いている俺に、続いて話しかけてくる。


「どうしましたか?先程から何かを探しているみたいでしたので、お手伝いできたらと思って来たのですが。」

善意で俺に話しかけてくれたみたいだ。



「この本、よくわからないというのは?」

それよりも俺には先の質問が気になる。


「はい、それは本というよりは何か、誰かに当てた手紙のように思えたのですよ。捨てようかとも思ったのですが、図書館の外に出そうとすると勝手にどこかの棚に飛んでしまうので・・・」


司書はそういって苦笑した。

内容がわかる人間がいないから捨てようにも、気持ちが悪いから破棄しようにも、出来なかったと言って。


「そうなんですね。とりあえず探し物は自分で見つけるので結構ですよ。お気遣いありがとうございます。」


俺はそう言って本の表紙を開いた。

その本は他の本と明らかに違った。


本のページが異常にきれいなのだ。汚れひとつたりとも付いていないみたいだ。

他の本は少なからずどこか古ぼけた感じがしたのだが、この本は新品同然だ。



俺はそのほかとは違う本に期待を寄せてページをめくっていった。






『これを読んでいる、ということは君は注意深く進むプレイヤーということかな?この世界に来てまで図書館の本を進んで漁る人なんてそうはいないだろうからね。』


『さて、ではまず世界の話をしよう。』


『君が知っているかは知らないが、この世界は元の世界の神話や逸話などの要素が散りばめられている。』


『もし君が生き残りたいならそれを留意しておくことで少しは生存確率が上がるかもしれないね。』


『そして外への出方であるが、その方法は用意していない。ゲームクリアをトリガーに外に出れるということは確かなのだが、その肝心のクリアはおそらく存在しないからだ。』


『感づいているかもしれないが、これを書いているわたしはゲームの創造者である。そんなわたしがおそらく、なんて曖昧な言葉を使うのは次に話すことに関係してくる。』


『油断するな。これはゲームであると同時に現実なのだ。わたしが作ったのは土台だけだった。他の要素はこのゲームの完成と同時にわたしの手を離れたしまった。』


『もう一度言おう、このゲームは誰かが制御しているものではないのだ。つまりイベントなんてものは無い、君がイベントと思っている物はただ普通にそこで怒った出来事にすぎないということだ。』


『君がゲームを起動した時点で、決まっていることなどないのだ。それも留意してほしい』


『さて、では話題は次の話だ。気になっている・・・かはわからないが世界そのものの話だ。』


『この世界はゲームの中、というほど単純ではない。その証拠にゲームソフトを、メモリーを

VRマシンを壊したところでそこにいる君が死ぬわけではない』


『そこも一種の現実なのだ。』


『そうだなVRは日本語で仮想現実・・・ならその世界はさしずめ人工現実というべきなのだろうな。』



『それと、君の体についてだが転移、という形でその場所に存在している。』


『つまり元の世界に存在しないということだ。おそらく行方不明として処理されているはずだ。死体としてその場に残らないだけいいと思ってくれ。』


『そして最後となってしまうが、あまりその世界に怒りを向けないで欲しい。そこはあくまで楽しむために作られた場所だ。』


『君も、元はと言えば楽しもうという気持ちでこれを起動したはずだ。』


『と、いうことで長くなったがここで終わりだ。その現実と等しい永遠の世界を存分に楽しんでいってくれよ。』


『でっは、健闘を祈る。ーーー開発者 常世とこのせ 弘人ひろとより』






その本を読んだ俺は、当分の間何も考える気になれなかった。

そして・・・・


「ははっ、ひどい話だよな。」

必死に努力し、口に出すことができた言葉はこれだけだった。


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