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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第1章 少女の陰と手にしてしまった罪
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11 強敵と仲間

あのオークを正面から倒すには、今の俺ではステータスが足りないだろう。


だが、慌てることはない。

俺は意識を目の前にオークにのみ集中させる。

制限時間はおよそ1分といったところだろう。それ以上はゴブリンの群れが合流してGAMEOVERだ。

それだけは絶対に避けなければならない。


俺は木の剣を正眼に構えたと同時にオークに突進する。

オークは先ほどこん棒を投擲してしまったため、今は素手だ。

背中は痛むが、少しの辛抱だ。俺は一足でオークの懐に入り、まずは足に向かってその剣を叩きつけた。


ガツン!!


おおよそ剣がぶつかった音ではないが、俺の一撃は確かにオークの足、それも膝に直撃した。

しかしそのオークはそれを意に介した様子もなく、こぶしを握り締めて俺に殴りかかってくる。

俺はとっさにその場を飛びのき攻撃の成果を確認する。


見るとオークは全くダメージを受けていないようだ。

それどころか、俺の攻撃をくらったからかその目には怒りがこもっている。


次に動いたのはオークのほうだった。

オークは怒りのままに俺に殴りかかってくる。俺はそれを何とか躱している。


出てきた相手が鈍重なオークで助かったと思った。

これが動きが速い相手だったら、もうすでに俺はやられているだろう。

力が強いだけの相手なら、その攻撃に当たらなければいいだけの話だ。


俺は剣を持つ手に力をこめる。

時間的に、次の攻撃で終わりにしなければならない。

そう思うと、俺の心臓がバクバクと音を立てているのが聞こえた。その上、足が少しだけ震えている。

どうやら、俺はかなり焦っているようだ。

考えてみれば当然だろう。

この世界はおそらくゲームのそれだが、現実のものと遜色ないのには変わりがない。

おそらく、この世界で命を落とせば、俺はそのまま死んでしまうだろう。


いつもとは違う戦闘に対するリスクに、俺は恐れているみたいだ。

緊張からか、力を込めている手にも震えが走る。


ここで失敗したら後がない。そう思うと緊張せずにはいられなかった。


だが、俺は無理やり自分を奮い立たせる。

その為にある光景を脳内に投影した。


それはここに来る前、直前にプレイしていたゲームの記憶。


これと同じく、中古のファンタジー物のVRゲームだった。

そこでの戦闘を俺は思い出している。

そのゲームは基本的に戦闘をしない前提のゲームだったため、敵の強さが通常では考えられないほどに強かったのだ。


しかし、俺は縛りと称してそのゲームの魔物を真正面から打倒した。

今のような装備で、今よりもずっと強い敵と戦ったのだ。


それを思い出すと、俺の視界が少しクリアになったような気がした。

それに、体が先ほどまで興奮状態だったからだろう。背中の痛みもだいぶ和らいでいるように感じた。


心なしか、心臓の音も収まっている。これならいけるかもしれない。

俺はオークの攻撃を丁寧に避けながら、次の攻撃の機会をうかがう。




それはすぐに来た。

オークの右の大振り、それに合わせて俺は手に持っていた剣をオークに向けて突き出す。


その剣はオークの顔めがけて、一直線に向かう。

相手の勢いも利用しているため、回避は不可能だ。そして――――



「ブモオオオオオオオオオォォォ!!」


俺の剣は見事にオークの目に突き刺さった。いくら攻撃力が低くても、弱点への攻撃は通る。

オークは苦しそうに叫ぶ。

だが、俺はここで攻撃の手を止めることはしない。

そのまま目に突き刺さっている剣を押し込むべく、体重を前に掛ける。


ズブ・・・ズブ・・


と、少しずつであるが、木の剣はオークの顔に埋まっていく。

このまま続ければすぐに脳に達するだろう。しかし、苦痛に暴れるオークがそれを許さない。


結果、俺の持っていた剣は中ほどで折れてしまう。


俺は折れてしまい手に残ってしまった剣の塚をその場に捨てる。

見るとオークがこちらを睨みつけている。片目はつぶせたが、まだもう片方がある。


まだ、逃げることはできないだろう。

だが問題ない。もう勝負はついている。


俺は近くにあったそれを手に取り、大きく振りかぶった。

それは先ほどオークが俺に向けて投擲してきたこん棒だ。

かなりの重量だが、振り回せないことはない。

俺はそれを振り下ろすようにに、手を離した。

先ほど、オークがやってきたのと同じ、投擲だ。


片目をつぶされ、こちらに襲い掛かろうと思っていたオークはそれをよけることができない。


俺の投げたこん棒はまっすぐにオークにたたきつけられた。

俺としては、これでダメージを受けて動きが遅くなってくれれば、逃げることができていいな、程度の攻撃だったが、それは運がいいことに先ほど突き立てた剣のあった位置に直撃する。


元々、ある程度刺さっていた剣が、さらに奥深くまで刺さる。


「ピギイィィィィ・・・」

それに対してオークが悲鳴を上げる。

しかし、その声は先ほどとは違って大きなものではない。

どちらかというと、少しずつ消えていくようなものだった。




少し経つと、オークの悲鳴は聞こえなくなった。

それと同時に、その体は灰となり、風によって空に運ばれていく。

どうやら、終わったみたいだ。


―――はっ、まだゴブリンが残っているのを忘れていた!!あいつらはどこに!?



そう思ってゴブリンたちがいた方向を見てみると、ゴブリンの群れは何故か俺のほうには向かってはいなかった。

というか、まったくの真逆の方向に向かっていた。

なんだ?

そう思って、ゴブリンが向かう先に俺は目を向ける。


その先には、


「うわああああああーーー、やっぱりやめときゃよかったああああああーーー!!」


と叫びながら逃げ惑う、ノアの姿があった。


状況から察するに、彼女は俺がオークと戦っている間、邪魔されないようにゴブリンを引き付けてくれていたらしい。

どうやら、俺は彼女に助けられてみたいだな。


やっぱり、一緒に戦う仲間がいるというのはいいものだな。


俺は涙目になりながら逃げまわるノアを助けるべく、オークの残したこん棒をもってゴブリンの群れを後ろから叩くのであった。

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