1 プロローグ
「では、クラスについての説明を始めますね。」
目の前にいる女性がそう言って何かを説明し始める。
しかし、俺にその言葉は届かない。
現在、俺の頭の中は別のことを考えるのに必死だったからだ。
あぁ、どうしてこうなってしまったのだろうか?
俺は何故今ここにいるのかを思い出すべく、記憶の海に飛び込んだ。
俺の名前は天川 匠で年齢は19歳、ごく一般的な大学生だ。
1つだけ普通の人ととは違うところを挙げろ、と言われたら、ゲームが人一倍好きだと答えるレベルだ。
その為、空いている時間があればずっとゲームをして過ごしていた。
俺の住んでいる家の近くには、大きめの中古ショップが一軒立っていた。
俺が今まで遊んできたゲーム達はここで買ったものだ。中古なだけあって大学生の懐事情でも大量に購入することもできた。
誇るわけではないが、俺はゲームの開始からクリアまでの時間がかなり早いほうだ。その為、かなりのペースでそれらを消化する。
たまに発売日当日に買ったゲームのクリア記事を書くくらいといえばどのくらいかわかるだろう。
その日も、俺はその店にゲームを買いに来ていた。目的の物とかは決まってはいない。
というか、有名どころはほとんどプレイしてしまったので、ここ最近はストレージの中から掘り出しものを見つけるのが主流になってきている。
外れも結構あるのだが、そこはストレージの物、俺には一切ダメージはない。
そう思いながら、ストレージをあさっていた俺は、一つのタイトルが目に入った。
『Eternal reality』
ふむ、直訳するなら永遠の現実といったところか?パッケージには永遠に遊び続けることができるゲームと書かれている。
キャッチコピーなんて宛にできないが、期待くらいはしてもいいだろう。
ハードは、VRか。それなら大丈夫そうだな。今回のゲームはこれにしようか。
そう思い俺はそれをレジに持っていく。
値段は500円、中古品としては普通の部類だ。
今回は当たりでありますように。俺は少し早足で家に帰ったのだった。
パッケージをあけると、カセットと説明書が入っている。
最近は説明書のほうは読まないという人のほうが多いらしいが、俺は一応目は通す派だ。
ふむふむ、舞台はありがちなファンタジーの世界、違うところがあるとするならば、明確な目的がないというところだろうか?
好きな道を歩み、好きなイベントを進める。そういうゲームみたいだ。
しかし自由度の高いゲームは辞め時が分からなくなるからなあ、、
そんな不安を抱きながらも、俺はカセットをハードに入れて電源を入れた。
その瞬間、俺は意識を失った。
そして目が覚めたらこの状況だ。
普通ならゲームが開始されたと考えればいいだけなのだが、それにしてはおかしな点がいくつもある。
それを確認するかのように俺は自分の指を小さくなめる。
うん、少しだけしょっぱい。
これが問題その1、味覚、嗅覚、そしてが触覚あるということだ。
本来VRのゲームが干渉できるのは、視覚と聴覚だけだ。ここはVR空間ではない可能性がある。
ふたつめはこの場所だ。
ここは、どこだ?少なくとも日本ではない。
まあ、ほかにもいろいろ挙げられるが、先に俺が導き出した答えを言っておくとしよう。
俺はゲームの中に来てしまったようだ。
気が向いたら、こちらもお願いします。
『怠惰の王は怠けない』
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