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祖国の様子を知るそうですよ?

 「エルフィーナ!! 良かった、元気そうで」

 目の前にはお兄様が居る。久しぶりに見たお兄様は、私の姿を見てそれはもう嬉しそうにはにかむ。その笑顔、異性が見たら即落ちしちゃうんじゃないかと思うぐらいの満面の笑みなの。私は見慣れているけど。

 「はい。お兄様もお元気そうで嬉しいです」

 両親はまだ色々忙しくて、こちらにこれなかったみたいなのだけどお兄様だけでも来てくれて嬉しい。私は家族の事大好きだわ。

 お兄様を迎えに来たのよ。シンラと一緒に。あまりにも長居するとドラゴンがやってきたって騒ぎになるから、お兄様と一緒にシンラの上に乗せてもらったの。

 お兄様は「乗っていいのかい?」とシンラに聞いていたけど、シンラは「エルフィーナの兄なら構わない」って言ってくれて、何だかうれしくなったわ。

 ドラゴンの里にたどり着くと、里の皆がお兄様を歓迎してくれたの。皆が私のお兄様を受け入れてくれるのが嬉しくて、「皆、大好き!」って口にしたら子竜なんかは嬉しさに雄たけびをあげてたわ。可愛い。

 お兄様を私の家へと案内する。シンラは人の家の中には体の大きさから入らないから、家の隣に腰かけて、窓ごしにこちらを見ている。シンラもお兄様とお話をしたいみたい。

 「エルフィーナ、会いに来るのが遅くなってすまないね」

 「いえ、お兄様たちもお忙しいのは知っていますから。久しぶりにあえて嬉しいです」

 「ああ。俺も嬉しいよ!!」

 お兄様は私の事を可愛がってくれていて、私の言葉に笑った。

 「それにしてもお兄様がそれだけ忙しいとは、何かあったのですか? 私、ずっと里で過ごしているので国がどうなっているか全然分からなくて」

 「ああ。王宮がばたばたしていてね。一人の女狐のせいであやうく戦争になる所だったよ。王太子も変わって、今は第三王子が王太子になったんだ。後見人は王妃様と父上になった」

 「……ええっと? 私が国を去って一年しか経過していないと思いますが、結局何があったのですか?」

 王太子が変わった? それにしたって第二王子のグラ様を飛ばして第三王子が王太子というのも疑問である。あと王妃様とお父様が後見人になったとは、どういう経緯でなのかしら?

 一人の女狐というのもよくわからないし、戦争になる所だったというのを軽く言うお兄様にもわけがわからないわ。

 「あの女狐……第二王子が惚れてた男爵令嬢はね、エルフィーナの葬儀をした後に王宮に男爵令嬢を連れ込んだのだよ。エルフィーナが死んだのは、第二王子と男爵令嬢を守ってという事に彼らはしていたからね。男爵令嬢が白々しく「エルフィーナ様に守られたこの命をエルフィーナ様の代わりに使いたいのです」などといって第二王子の婚約者に収まったのだよ。王も、なんという心意気だと感心してそれを許してね。殴り倒したくなったよ。王もあれだけ馬鹿だとは思っていなかったのだけど。王もね、子が可愛いのはわかるけれども、私たちのエルフィーナが死んだ事になっているのは第二王子のせいだというのを信じてくださらなくてね。ちゃんとエルフィーナが生きていて、何でそんなことになったか言おうとしたのだけれども、第二王子と男爵令嬢が嘘をつくわけがないと盲目的になられてしまって。結果的に王妃様はエルフィーナを可愛がっていたのもあって私たちの話を聞いてくれてね、怒っていたよ」

 自分で魔物がはびこる地に放り出して、死んだことにしておいてそんなこと言っていたのかと呆れた。陛下は元々子供に甘い一面があったから、流石にグラ様がそこまでするとは信じられなかったのだろう。

 「それにあの男爵令嬢はね、第二王子だけではなく他の子息たちもはべらせていてね。その連中がこうもう潰したくなるようなことを言っているのよ。エルフィーナが男爵令嬢に嫌がらせをしていた。男爵令嬢がまた嫌がらせをされるかもしれない。だから傍にいなければならないって、婚約者のいる女性のもとに侍るのはなんなんだろうね? 後から分かった事だけれども、体の関係があったそうだよ。全員と」

 「はっ!?」

 私はそれを聞いて赤面してしまった。

 身体の関係を、全員と……って。赤くなるのも仕方がないでしょう。私は貴族の令嬢としての教育で、夜の教育をされていましたけれど、それを全員と……いやいや、貴族の令嬢としてそれは駄目ですわ。

 というか、第二王子の婚約者と体の関係を持つ側近とは駄目ではないか。

 「加えてね、その後の展開がアレなんだよ。なぜか王太子殿下までね、彼女に惚れたようでね」

 「はっ!? 王太子殿下には隣国の王女様が婚約者として王宮に滞在していたと思いますけど」

 「そうなんだよね。本当に意味不明な事なんだけど、王太子殿下まで彼女に惚れちゃってさ、王太子と第二王子で彼女を巡って対立が起きてね。理由もバカバカしい上に、王太子には婚約者がいて、隣国の王女様からしてみれば、格下の男爵令嬢に夫になるはずの存在が惚れたわけだよ。注意をしたのだけど聞きもしない。挙句エルフィーナの時と一緒でね、王女様が嫌がらせをしたとなっていて。隣国と戦争が起きそうになるし、色々大変だったんだよ」

 「そ、それは何ともまぁ……」

 「とりあえず王女様を説得してね、隣国との戦争は事なきを得たよ。あと王が王太子と第二王子に甘くて動かなくてさ、父上と王妃様と一緒に王太子と第二王子たち一味をどうにかしようと動いて、全員まとめて静粛した。王はそのままだけどこれだけやらかした王太子と第二王子を放置したっていう事を責めて、王妃様と宰相の許可がなくは動けない状況になっているよ。第三王子はまだ十歳だからね、数年たってから王位を継ぐことになっているけど、実質今は王妃様が一番の権力者だね。あの男爵令嬢、色々な男と関係を持っていたし、私にも迫ってくるし本当にアレな子でね、ついでに嫌がらせの自作自演も発覚したし、エルフィーナを殺そうとした罪も暴露させたよ。そんなわけで全員死刑。生かしてしても争いの種にしかならないし、私も父上もエルフィーナを死んだことにしたような馬鹿達を許す気もなかったし」

 本当に大変な事になっていたんだなとお兄様の言葉を聞きながら思った。というか、王太子様も婚約者を放っておいて誰かに現を抜かす方ではなかったのだけど、恋は盲目ともいうけどこんな結末を迎えるとは……。

 「そんなわけでエルフィーナが生きていることも暴露されているから、いつでも遊びに来ていいからね。本当はかえってきて欲しいけどエルフィーナはここで生活したいでしょう?」

 「ええ。お兄様ごめんなさい。帰れても私はここで暮らしたいわ」

 「うん。いいよ。でもいつでも来ていいから。それと私たちも来るから。あ、そうそう私も結婚したんだよ」

 「結婚? お兄様は婚約者もいらっしゃらなかったはずですが」

 「ああ、さっき話に来た王女様と恋仲になってね、この国の筆頭公爵家の長男に嫁ぐならってことで私に嫁ぐことになったんだよ」

 「そうなのですか!?」

 「第三王子はまだ十歳だしね、年の差も考えてという事になったんだよ」

 驚いた。義理の姉が出来ているとは。お兄様は年頃だけど、まさか王太子様の元婚約者がこちらに来るとは思わなかった。

 「それとね———」

 そうして私はお兄様から私が去った後の祖国の話を沢山聞いた。




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