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俺の地下迷宮探索ツアー。その2

どこまでも続くのどかな風景の中、縦横に走る農道の一つを俺たちは車列を組んで走っていた。



俺たちが降り立った駅以外にも、他の地域行きのリニアの駅が点在している事が分かった。

それによって他の地域との連絡及び連携が取れているらしいことも、ボタンが調べた資料によっても明らかだ。


このエリアで収穫されたものが、この船全体に行き渡っている事は明白なので、軍や宇宙防衛軍のそれぞれのエリアに送るための通路があるはずだと思い至り、調べた結果。資料等にも載っていて、あるにはあるのだが…曖昧な書き方をしているので直接行って確かめることにした。


寧ろ、そんな経路があるなら軍に制圧されかねない事態も懸念されるからだ。


もっとも、18年間も無事な訳ではあるが…その理由も気になっていた。



そういう訳で俺たちは、まず宇宙防衛軍エリアへの搬出口と思われる3つのポイントの一つに向かっている。



そのポイントは、このエリアの南端に東側、中央、西側と数十キロ間隔で存在している。



2時間くらい走った場所にそれは有った。


何の変哲もない我々が利用したのと同じ感じのリニアの駅があるだけであった。

「宇宙防衛軍行き中央搬出駅」と書かれていた。


「なんだこりゃ!?普通の駅じゃねえかよ!この警戒のかけらもない感じは、宇宙防衛軍は味方だからって事なのか!?」


あまりの普通さに思わずハクが声を荒げた。


「確かに普通過ぎるね。次は軍を含むこのエリアの上層階への搬出口を調べに行ってみよう。」


アユハルも少し動揺しているようにも見える。



上層階への搬出口は、このエリアの四隅に設置されているようである。


「ここからだとぉ…南東口と南西口がほとんど同じ距離だねぇ。どちらも2時間くらいでいけるよぉ。」


タケゾウの言葉に何かしらピンときた様子のタマキが掌を光らせ何かを創り始めた。



「よーし!これで行先を決めちゃおうよー。」


ビシッと体の前に突き出された右手に握られていたのは…



何の変哲もない棒きれであった。



「これをねー。こうしてねー。棒が倒れた方に進むの!」


棒きれを地面に立たせながら、何を興奮しているのやらタマキの鼻息は荒い。



やれやれといった面持ちで、俺たちは棒きれを囲むように集まり注目した。



「さあいくよ…ハクにゃん準備いい?タケにゃんもフユにゃんも?ボタにゃん…は車の中か…」


なんだか俺たちもドキドキしてきた。



「トウカちゃんも恨みっこなしだよ!アユにゃんも…」



「早くやれ!!」


総ツッコミである。



「にゃー…ほいっ。」


ほんのり凹みつつもタマキは、パッと手を放した。




ゆらゆら…ふらふら…


棒きれは揺れる。


一同固唾を飲む。



パタン…


目の前の駅の方を向いて倒れる棒きれ…


一瞬の静寂。



「…今日の雑誌の占いで東の方角に吉って出てたの。なので東の搬出口にしましょう。」


「そうだね。それでいこう。」


トウカの意見に皆賛同し、車に乗り込んでいく。





「タマキ、置いていくぞ?」


棒きれと共に固まったままのタマキにアユハルが呼びかけた。





ともかくも俺たちは、東に向けて再び走り出した。


2号の助手席に座っていたタケゾウが、せっせと小型ドローンを3つ創り出した。


「これでぇ他の3箇所も同時に確認できるでしょぉ。」


そう言って、それらを窓から飛ばしていた。


「ボタン、聞こえるぅ?今さぁ、ドローン3つ他のポイントに飛ばしたからぁ。アクセスコード教えるからさぁ、そっちの端末でぇ操作と情報処理引き受けてくれない?」


無線インカムの感度は良好のようだ。

ボタンからの返答も良好のようだ。



途中で休憩をはさみ、少し遅めの昼食にした。



アユハルが1号のキッチンで、手際よく次々とホットサンドを焼きあげていく。


タマキが、それを対角線上に包丁を入れ三角形の形に切り分けていく。


俺がそれらを皿に盛りつけていく。


トウカはレタスを千切り、ボタンはトマトときゅうりを切っていく。


タケゾウがテーブルを拭くと、ハクが皿とコップを並べる。



何とも素晴らしいチームワークを発揮している。



あっという間にホットサンドとサラダの出来上がりである。


ホットサンドには、バターとハムとチーズしか使っていないのだが、これはこれで非常にうまそうである。




楽しい団欒が過ぎて行く。


まあ、俺たちにはこういった雰囲気の方があっているのかもしれんな。



後片付けを終え、再び東に向かって走り出した。

時計の時刻は、既に夕方であることを知らせているのであるが…


辺りは以前昼間のような明るさである。

夏真っ盛りだからだろうか?



目的地近くまで来てもその状況は変わらない。


どうやら、このエリアには夜というものが存在しないらしい。

夜と言う概念を無くして、植物に年中無休の24時間営業をさせているようだ。



俺たちが楽に暮らせる理由は、こういった犠牲があっての事なのだろう。




―ありがとう。そして、ごめんよ。植物。

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