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俺の壁探索。その2

一通り出店の巡回を終えた一行が戻ってきた。


片田舎のドライブインの夏祭りにしてはなかなか良かったと口々に言っていた。

その手には、フランクフルトやら焼きそばやらソフトクリームなどなど数々の戦利品が握られていた。


「フユくんも来たらよかったのに。」


と言って俺の腕に絡んでくるトウカに苦笑いしながらも、俺とタケゾウは迷彩柄のTシャツに肘から先と膝から下に同じ柄のプロテクトと同柄のヘルメットとグローブを装着して、濃い緑のつや消し塗装されたバイクにまたがった。


ジープの方には、残り4名が乗車したのだが…トウカが林道の運転やだー!って言ってきたのでハクが運転することにした。


バイクとジープには、それぞれナビシステムが付いており目標地点が既にセットされていた。


ヘルメットには、インカム付きの無線通信機が内蔵されており走行中でも会話が可能になっていた。



ジープを先頭に走る事10分で林道への入り口ゲートに到着した。

ゲートは思った以上に厳重そうである。扉横にはパネルがあり認証コード的なものを入力するシステムになっているようだ。


するとジープから、真っ黒いコウモリ傘を厳重に被ったボタンが出てきてゲートのパネルにスタスタ向かって行った。そして、手にしたノート型端末とパネルをコードでつないで何やらしてるかと思った途端にゲートが開きだした。



「このまま進むと、途中で二股に分かれるんだがジープは右に進むので、タケゾウは左をいってくれ。そして、さらに先にも分岐があるのだが、そこはフユが左に進んでくれ。どの道を通っても最終的には同じところに着くので心配は要らない。」


仮に途中で通行が不可な事態が起こった場合、別々の道を通っていた方がいちいち調べまわらなくて済むだろ。とのアユハルからの指示であった。



ゲートの内に入ってから、元通りゲートを閉めてから出発した。このゲートからフェンスがある場所までは、直線距離で約10キロ。そこから壁までは、ボタンの情報では約5キロであった。



道中は、やはりというか当たり前だが…何も起こらずに目的ポイントに着いたのだった。


林道脇の木と木の間にジープとバイクを草木などで隠し、ジープにはトウカとボタンを残して、俺たち5人は林道から逸れる様に森の中を徒歩にて進んだ。


腕時計型端末に地図情報をあらかじめダウンロードさせていたので、それを頼りに道なき道を進むことになる。


程なくして、林道入り口のゲートよりも立派なゲートとその左右に伸びる高さ20メートルはあるであろうフェンスが見えてきた。


「アカシさんもいないことだし、そろそろ本題に入るぞ。」


インカムのスイッチを切ってアユハルは言った。


事前に聞いていた俺としてはピンとくるのであったが、ハクとタマキは小首をかしげた。


手短に壁についての説明を2人に話したアユハルが、タケゾウに目配せをした。


するとタケゾウの手がボウッと淡く光り、掌の上に超小型のドローンを創り出した。



それをフェンス内に飛ばして、警備状況と壁自体のゲートを確認させた。


壁のゲートはカモフラージュされていて、どこにあるかなど一切不明ではあったがボタンのおかげで場所は特定できている。少なくとも数キロ圏内には警備員の類は確認できなかった。


「こんなところにまで人数を割く余裕がないのだろうな。」


「そうだねぇ。でもセンサーの類とかぁ、監視システムが充実してると見た方がいいねぇ。」


俺の言葉に賛同しながら、タケゾウは補足を入れた。


タケゾウは、先ほどのドローンに各種センサーを取り付け再び飛ばした。

あらかじめ、ボタンに作成してもらった監視システムの配置図を参考に位置を確認しながら侵入ルートを探るのだ。


しかし結果としては死角なしであった。


唯一の死角である上空からのアプローチを試みることになった。


その方法とは、足元空間の力場のベクトル変換であった。要するにジャンプした後の重力による失速を上方向の力に変換し続けることではた目から飛んでいるように見えるのである。


そして、ゲート上の壁に張り付いて、そこから監視用センサーにちょいと細工を施し侵入するのである。


ただ、ここから壁のゲートまでは5キロ…

訓練によってうまく飛べるようにはなったが、この距離は初体験である。



―だが、やるしかないっ!


5人は、上空に飛びあがった。


向かい来る空気の抵抗も無効化しつつ速度を上げていった。みるみる壁が迫ってくる。50メートルまで近づいたところで減速に入り、無事に5人とも壁に張り付くことが出来た。


なんだか妙に疲れた。


急な疲労感と頭が重たくなる感覚でふらついていると、タケゾウが胸ポケットを指さしていた。


そういえば、車とバイクを隠していた時に渡されて着たこの迷彩柄のベスト…ポケットになにやらいろんなものが入っているなと思いつつ胸ポケットをまさぐるとチョコレートが出てきた。


「能力を使うと腦を始めとした神経を信じられないほど働かせるからね、糖分がすぐ欠乏するんだよ。」


アユハルは、メガネのフレームをクイッと上げながら言った。


良く見たら、高砂屋のいちごミルクチョコではないか。


チラッとタマキの方を見ると、目を光らせ貪るように食べていた。



「さてとぉ。」


そう言いながら、タケゾウは監視用センサー一つ一つに意識を集中し始めた。


一時的に無効化させているようだ。監視カメラの動きも止まった。



俺たちは、ゲート前に降り立った。と言ってもただの切り立った山肌にしか見えないが…


そう思っているとアユハルが、付近の大きめの岩に手を当て何やらしていると、山肌だと思ってた壁がゆっくり左右に開いていった。


間口が30メートルほどで高さは10メートルほどの奥行きが数十メートルある空間が現れた。その先に更に大小2つのゲートがあるようだ。


俺たちは小さい方の人間用のゲートまで歩き、そこでもアユハルがロックを解除して中に入ることが出来た。


その先は更に広くなっており、幅が50メートル高さが30メートル、奥行きは500メートルほどであろうか、その先は左右に分かれるT字路のようになってる。



そこで、ジープと連絡を取り無事に侵入成功を果たした旨を伝えた。

ハクのインカムに取り付けてあるカメラを始動させた。この映像はリアルタイムでジープの元に送られるのである。




―それにしても人っ子一人いないな…


―いくら監視システムが優秀だからって、手薄すぎだろ。

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