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俺の壁探索。その1

俺たちは、ジープを先頭に1号、2号の順に隊列を組み、のどかな田畑の間の道路を東へ進んでいた。


―隊列ってか、普通に走ってるだけではあるが…気分は重要。


途中、峠道を抜けたり川の縁の道路を走ったり、コンビニに寄ったり…まったくもって緊張感のかけらもないのだが、楽しいので良しとする。


最後の峠を越えたころ、眼下の山あいに集落が見えてきた。


集落に入ると、四方を山に囲まれた田園地帯となっていた。西の山の向こうには巨大な山脈に擬装された「壁」がハッキリと確認できる。



その集落の外れの小高い丘の上にトウカの別荘があった。

これまた広大な敷地に、景観を損ねない為か日本家屋的な造りの巨大な母屋風であった。


気分を出すためと称して、別荘には入らず敷地に車を並べて、そこで過ごすことになった。

食事は、そこの使用人に車まで持ってきてもらうのだが…




その夜、食事の片づけを終えた俺たちは、そのまま1号のリビングにて打ち合わせを始めた。


壁に掛けてあるテレビにこの地域の航空写真の映像が映し出されていた。


この映像は、タケゾウが密かにトウカに集めさせた部品を使って「ドローン」を作り、それに搭載させたカメラで撮影したものである。


「現在位置がココ。で、この道路を使って極限まで壁に接近する。そして、このパーキングに1号2号を置いてベースキャンプとする。」


ハクが画面にポインターを当てながら説明している。


「そして、ここからが本番である。このパーキングを少し北上した位置に山を管理するための林道の入り口がある。そこからジープとバイク2台で進むんだ。ボタン、次の映像出せるかい?」


ハクに促されるように、ボタンはノート型の端末をカタカタ操作した。

すると画面が林道の経路図に変わった。


「このように複雑に入り組んだ道だが、このデータは各車両のナビシステムにも登録済みなので、多分迷子にはならないと思う。林道の入り口には、堅固なゲートになっているが…ボタンがハッキングして開けるそうだ。」


そこまで説明するとハクは、みんなの方を見回した。


「あのさぁ、この林道さぁ、ある程度西に行ったらぁ、道なくなってるけどぉ…」


「タケにゃん、心配いらないよー。タマキが道作って上げるからー。」


それは名案とタケゾウの目が輝いたが、


「今回それは無しだ!」


だって、困難が多い方が冒険っぽいだろ。ってのがハクの言い分のようだ。


「それに…この先って多分自警団が作った長い防壁かフェンスがあるエリアじゃないのか?」


アユハルは、相変わらず冷静に分析している。


「それなら、それも含めての偵察でいいんじゃないか?もし、フェンスがあって乗り越えれそうなら、その先も探検したらいいんだし。」



俺の意見に一同は賛成した。




次の朝、俺たちは目的地であるパーキングに向かった。


30分ほどで着いたその場所は、大変な賑わいを見せていた。

航空写真では、木々に邪魔されて見えなかったのだが…大きなドライブインがあり、広大なパーキングの入り口や周辺道路には「作用ドライブイン夏祭り」と大きく書かれたのぼりが無数に立てられていた。


「おいおい、どうすんだよー。」


頭を抱えるハクであったが、先頭を走るジープに乗っている女性3人の「楽しそうだし寄って行こうよ。」との無線であっさりと方針が決まった。


露店が所狭しと立ち並び、老若男女問わず楽しげに思い思いに立ち回っていた。


「きゃー。楽しそう!」


「にゃー。浴衣持ってくればよかったねー。」


君らは当初の目的を忘れすぎてないか…


ボタンは、決してジープから降りようとすらしてないが。


みんなが夏祭り会場に向かって行ったのを尻目に、俺はジープに乗り込んでいった。


ボタンは、既に冷房ガンガンに入れて毛布にくるまり後部の「おぺれーしょんるーむ」に籠っていた。

後部座席から引き戸になっている扉開けると、そこはボタンにとってのパラダイススペース。

その扉に「おぺれーしょんるーむ」と書いてあった。


「うわっ!さむっ!!」


俺もおぺれーしょんるーむに入っていった。一応3人くらいは座れるスペースがある。


何かしら作業をしているボタンの横で、俺も毛布を借りてくるまった。


「なあ、ボタン。あの壁ってどうなってると思う?」


「え?壁の向こう側に大きな空間があって、それがずっと宇宙船の前の方まで続いてるんでしょ?それがどうしたの?」


なんだか大事な事をサラッと言った気がしましたが??


「あ、え??ナニナニ??宇宙船の前の方??」


「あれ?フユくん…知らなかったの??てことは真面目に探検する気だったのね!?みんなが乗り気だったのでこの手の情報は伏せていたのだけど…フユくんには以前教えてあげたような…記憶があるんだけど…」


「…ん、もしかして、宇宙船の側壁内の多目的作業用通路のことかい??てか、教えてもらったのって…何世紀前!?しかもあの時は宇宙軍エリアに住んでたしね…」


俺たちは、どうやら相当気の遠くなるような時の中で生きてきているようなのだ。


「じゃあ、アユハルとタケゾウも気付いてる?タマキやハクも??」


「アユハルとタケゾウは、すべて知った上での行動だと思うよ。タマキちゃんとハクは…多分気付いてないと思う。」



軍と自警団との長きにわたる戦闘は、この多目的作業用通路にて行われているらしい。

それの現状を知るのが真の目的だったようだ…知らなかった。


ボタンが、現在調べているのは別ルートについてであった。

いくら一般居住区エリアと軍エリア、宇宙軍エリアで独立させているとはいえ、首脳部同士の横のつながりは途切れることなくあったであろうとの推測からの行動ではあるが、ある程度の核心はあった。


宇宙軍と軍も総司令本部を通じての交流があったからだ。

そして、この多目的作業通路の存在もそれらを裏付ける要因にもなっている。


作業通路の出入り口、ここでは壁に点在するであろう出入り口であるが、そこはそれぞれの上層部が管理し防衛している。もっと言うと、この森から壁までのエリアもその対象として含まれている。



「そこまで分かっていながらトウカを巻き込んで大丈夫なのか!?」


「平気よー。だって私がちゃんと守るもの。」




―他人を守るより…


―まずは自分自身を日の光から守る術を見つけて欲しいもんだ。

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