俺の神頼みからの奇跡。その2
うっすらと日が陰りだし、肌に感じる風も心地よくなってきていた。
しかし、裏腹に俺の体温は上昇し、心臓の鼓動は速くなってきていた。
深く深呼吸をして、体を鎧のようなシールドで包んだ。
左腕の盾を大きくし、右腕の機関砲を銃剣のようなに造り替えた。
―てゆうか、俺って肉体派じゃないよな。
地面を蹴って秋山が一気に距離を詰めてくる。
そして右足を踏み込んで剣を振り下ろした。
盾で受けても腕が痺れるほどの衝撃が走る。
―こんな時に余計な事を考えるのは俺の悪い癖だ。
大きくしかし素早く打ちだされる攻撃にもようやく慣れてきた。
俺は、盾や鎧でそれを受けつつ右手の機関砲を小さく構え反撃を加えていた。
秋山も全身にシールドを展開しているようだった。
とは言え、俺同様に体には攻撃のダメージが蓄積されていっている。
お互いに肩で息をしながらにらみ合う。
お互いジリジリとにじみより、今にも飛びかからんとした時―
俺たちの頭上に1機のヘリコプターがホバーリングしながら静止した。
「フユくーん。スサさーん。私からのプレゼント受け取ってー。」
ヘリの拡声器から聞こえてきた声は、まさしくトウカのものであった。
するとヘリから何かが落下してきた。
途中でパラシュートが開き、ゆっくりと降りてくる。
俺と秋山は、お互いを警戒しつつもソレを目で追っていた。
何やらカプセルのようなソレは、俺と秋山の丁度真ん中あたりに落ちてきた。
すると突然、カプセルの隙間から物凄い勢いでガスのようなものが噴き出されて来た。
「!?」
俺も秋山も避ける隙も無く、あっという間にそのガスに包まれてしまった。
辺りのざわつきが徐々に大きく聞こえるような感じがして、目の前が真っ暗である事に気が付いた。
―目をつむっているのか?
うっすらと目を開けると、白い清潔そうな天井が見える。
かすかに香る消毒用のアルコールの匂い。
清潔なシーツをかけられたやわらかな布団と枕に包まれていた。
―病院?
簡素なパイプベッドの上に俺はいた。
周りを見渡すと個室であるらしい殺風景な病室を確認できた。
「あれ?俺って…そうだ!秋山と戦っていたんだ…!?」
扉の向こう側の廊下をパタパタと人が走ってくる音が聞こえてきた。
扉がスーッと開いて、一人の看護師が入ってきた。
「あ、お気付きになられましたか?」
俺と目があって一瞬驚いた風であったが、すぐに平静に戻り訊いてきた。
「ああ…はい。てゆうか、ここはどこですか?」
「ここは盛岡の病院ですよ。すぐ先生を呼んできますのでもうちょっとお待ちくださいね。」
俺に計っておけと言わんばかりに体温計を渡し、彼女はまたパタパタと出ていってしまった。
何もかもが良く分からない。
秋山はどうしたのか?
―そう言えば、ヘリから何かが落ちてきて…
そんな事を考えていると、再び扉がスーッと開いて年配の医者が入ってきた。
「えーっと、イヤ フユキくんですね。お加減はいかがですか?」
「あ、えーっと…体中痛むこと以外は特に…でも、どうして俺がここにいるのですか?」
「おや。まあ、仕方がないかもですな。あなたは催眠ガスで眠っておられたのですから。」
医者の話によると、あの落ちてきたカプセルから催眠ガスが噴き出して、俺たちは眠らされていたとのことらしい。
で、俺はこの病院に運ばれ、秋山は軍関係者から宇宙防衛軍へ引き渡され何処かへ連れて行かれたらしい。
他のWD機関のメンバーもこの病院にて怪我の治療を受けているらしいこともわかった。
なんともあっけない幕引きであったが…
一件落着であったのかな。
その後、トウカが大きな花束を抱えて見舞いに訪れた。
「フユくん、体の具合どう?」
「ああ、この通り…ボロボロさ。」
努めて冗談っぽく振る舞った。
「それはそうと、トウカ。君はどうして空軍や海軍と行動を共にしていたんだい?」
トウカが言うには、あの作戦の前後から、ボタンの構築した通信のネットワークから空軍と海軍とに根気強く交渉を重ねてきたらしい。
現状のままでは、自分たちも反逆者の一味として扱われてしまう事を恐れた彼らは、いろいろな条件を付けてはきたが、こちらへの助力を約束してくれたらしい。
戦闘機は航空用通路から、軍艦は船舶用のエレベーターというのが存在していたらしく、そこからこのエリアに侵入してきたとのことであった。
一通りのお礼をトウカに言った俺は、彼女と共に他の仲間のところを訪れていった。
ハクとアユハル、タケゾウの3人は、比較的軽症で談話室にて暇を持て余していた。
ボタンは、結局軽い熱中症の症状で倒れただけで特に怪我はなかったのだが、病室でおとなしく寝ていた。
タマキは、俺より余程重症であった。
肋骨を始め複数の骨折に内臓損傷等…
のはずなんだが…かなり元気に見える。
差し入れの大量のお菓子に嬉しそうに貪りついていた。
何はともあれ、皆が無事でよかった。
これから各エリア共に復旧作業等に追われることになるであろう。
近々、この船の総司令本部も再建される見通しとのことで、俺たちは宇宙防衛軍や総司令本部に戻らなければならなくなりそうだ。
そうなると…
コマチ姉さんの所に戻って、いろいろと報告しないといけないな。
気が重いな…
大きなため息をつきながらも、現在遠征中であるナグモ提督の事を案じていた。




