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俺の最後の反攻作戦。その1

雲一つない晴れ渡った空に心地よい風が谷間を吹き抜けていた。


ここが戦場であるということを忘れさせるような穏やかな午後の光が心地よい。



そんな中俺たちは、各部隊長を集めて協議を繰り返していた。


「ここはやはり俺が責任をとる形で投降しよう。あがいてみてもこの状況からの逆転は難しい。」


俺はうなだれながら言った。


「閣下。弱気になりませぬよう。我々にはまだ3個師団ほどの兵が敵を挟撃せんと集結中であります。ここにも未だ戦える兵が1個師団分ほどおりますぞ。」


部隊長たちにそう励まされるのだが…


明らかに時間的に厳しそうだ。


「こうしよう。現在のこの残存部隊の中に敵に投降したい者がおれば、今のうちに投降させてあげるんだ。残ったもので最後の抵抗を試みて時間を稼ぐ。うまい事いけば南北から来る増援によって事態が好転するかもしれないぞ。」


アユハルが諭すように言った。


「そうだぞぉ。フユ、俺たちに降伏なんてあってはいけないんだぞぉ。この戦いの目的を忘れちゃったのかい?」


タケゾウの言葉にハッとなった。


―そうだ、負けちゃいけないんだ。


―これは俺だけの問題ではないのだ。



「フユよ、このハク様の力を信用しろよ。俺が敵兵をなぎ倒してやるからよ。」


「フユにゃん、フユにゃん。タマキもがんばるよ?フユにゃんも頑張ろうよ。」



「お前ら…」


俺はうなだれていた顔をあげ皆を見渡した。


ボタンも大きくうなずいていた。



「そうだな、王手はかけられたが…まだ負けたわけではないよな。みんなすまなかった。」


俺の言葉に一同安堵した様子であった。



「そうだ、ボタン。このエリアの情報って出せるかい?ここのエリアにも地下の運搬用リニアの地下通路があるはずだ。調べてくれないかい?」


「お、もう調べてあるでござるYO!でも、この近くだと盛岡になっちゃうのよね…」


久しぶりに聞いたぞ…


初体験の各部隊長たちは、ポカーンとしていた。


「そ、そうか、俺たちは利用できそうにないな…その他の都市はどうだい?」


「えーっと、仙台、山形、秋田、青森ね。で、エレベーターのある八戸、能代、酒田、いわきにもあるよ。」


「ほう…」


俺はニヤリと笑い、ある作戦を思いついた。


―これしかない。


―だが、俺たちが勝てる見込みは1%ほども無いがね…



「アユハル。敵に傍受されにくい通信手段ってあるかな?」


「…ないぞ。あ、でも…タケゾウ、この前一緒に研究していたアレはどうだろう?使えるかな?」


「え?ああ、電波に指向性持たせるって奴かぁい?うまくいくかわからないけどぉ…試してみるかぁい?」



「よし、南北の友軍への通信手段の件は任せたぞ。用意が出来たら教えてくれ。」



アユハルとタケゾウは、地図とにらめっこしながらなにやら創り始めた。



「みんな、トウカに貰ったサプリメントはまだ残っているか?」


確認をとると、1人5つ程度は残っているようであった。



ボタンには煙幕装置を創るように指示して、俺は部隊を囲むドーム状のシールドを張るために部隊配置を確認していた。


ハクとタマキにもある指示を出した。



20分後―


アユハルとタケゾウに依頼していた通信装置が完成した。


そこで、八幡平に集結している部隊には、密かに北から迂回させて田沢湖脇を抜けるルートから仙北市に向かい、その後は雫石を経てこちらの救援に入るよう指示を出した。


仙台を二方向から攻撃を仕掛けている部隊には、そのまま西に転進して山形のリニア用の地下道より仙台をスルーして盛岡に向かい、盛岡を内から陥落せしめた後に南下して花巻から西に入り、こちらの救援に入るように指示を出した。



敵の本拠地である仙台を先に陥落させた方が良いのかと迷ったが、そんな事では攻撃が収まらないとの判断であった。



一応、現在の状況を中央政府対策本部宛にも送信しておいた。





そろそろ、約束の時間が迫ってきていた。



敵に投降を志願する者は皆無であった。


そして、覚悟を決めたそれぞれが穏やかな表情でその時を待っていたのであった。



静寂に包まれていた谷間に、再びピリピリとした殺気が充満し始めていた。




「ボタン!煙幕を!この谷中に目隠しをしてやれ!」


部隊の各所に置かれた装置から、真っ黒い煙幕が急速に谷中を覆い始めた。


「ハク!タマキ!両翼の兵の指揮は任せたぞ!」


「他の各員は、所定の位置につけ!シールドを張るぞ!」






「…愚かな。」


異変に気付いた秋山は、総攻撃の命令を下した。


雨のように降り注ぐ砲弾やミサイルが各所で閃光と爆音を轟かせ始めた。



「みんな!頑張れよ!5時間程この攻撃を凌ぐことが出来たら、きっと加勢が来てくれるはずだ!」



俺たちは光の矢を放射線状に断続的に放ち始めた。


目くらましの攻撃とは言え、相手に少なからずの被害を与えることだろう。




さすがに敵の攻撃は凄まじい。

丈夫なシールドも轟音を響かせながらミシミシと軋む。


秋山自身の攻撃も加わっているようだ。



―例え、倒れようとも仲間たちを守り抜かねば…




激しい攻撃は煙幕を吹き飛ばしたが、自身の爆炎によって視界は悪いままであった。



―敵の戦闘ヘリだけでも無効化できれば、チャンスはあるのだが…








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