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俺の作戦開始。その1

二日後の正午前、今までの静寂を破るかのように各所慌ただしく動き始めた。


3層の森林地帯に待機していた陸戦隊の各隊は、それぞれエリアの四隅にある搬入用エレベーターに乗り込んでいった。


エレベーターといっても、直径が150メートルもある筒状のシロモノで一度に大量の人員車両を運搬できるのである。


それぞれ5千人程の兵と150両の機動戦闘車を搭載させていた。


行動開始5分前―


エレベーターはゆっくり動きだし、徐々に上昇の速度を増してゆく。


ガタッと僅かな衝撃を感じつつエレベーターは止まり、その扉は大きさに似合わない速度で大きく開かれた。


刹那、兵たちの眼前に思わず手で顔を防ぐほどの閃光と同時に無数の破裂音が断続的に響き渡った。


「やはり待ち伏せてたか。」


指揮官がそう言いながら周りを見渡す。

しかし、こちら側に被害は無い。


事前にWD機関の面々が、エレベーターの扉の内側に強力なシールドを張っていたのだった。


「シールド解除と同時に前進し展開せよ!」


各隊動き出した。



前面には、こちらを半包囲する形で軍の部隊が既に配置されていた。


砲撃を開始しつつエレーベーターより躍り出た各隊は、散開しつつ機動戦闘車に積んでいたシールドで防壁を築き始めた。



その際にも敵方からの容赦ない砲撃により破壊され阻まれていたが、一つまた一つと陣を築いていった。

そこを拠点にして一進一退を繰り返しながら徐々に膠着状態に入っていった。


「踏ん張れよ!ここで我らが駆逐されると全体の作戦に響くぞ!」


雨あられに降り注ぐ砲弾の中で命令が飛び交った。



相手側も突破されまいと必死である。

包囲を二重三重と強化していった。


敵は各エレベーター前に1個師団ずつ配備して、その後方に予備戦力として半個師団ずつを布陣させていた。



北東のエレベーターは、青森の国の八戸市郊外に。

北西のエレベーターは、秋田の国の能代市郊外に。

南東のエレベーターは、福島の国のいわき市郊外に。

南西のエレベーターは、山形の国の酒田市郊外にそれぞれ通じていた。



激しい閃光と硝煙の匂い。

幾筋もの銃弾の飛び交う風切り音。


そして、耳をつんざくような爆発音の中、両軍の兵士たちが次々と倒れていった。



「隊長!こちらの戦線持ちこたえられません!」


「踏ん張れ!小隊を応援に回す!」


悲鳴にも似た怒号が飛び交う。


「我々も厳しいが、敵にとってもそれは変わらない!弱みを見せれば付け入られるぞ!」



しかし、陸戦隊の各部隊は5千。それに対して敵は各々1個師団1万人である。更に後方には半個師団5千人が控えているので、圧倒的不利な立場であった。


「これも作戦の内だ!この圧倒的劣勢も予想通りではないか!」



兵たちの不安感は拭い去りようがないが、今は新たな局面を信じて踏ん張るしかなかった。




事前に用意されバリケードとして活躍しているシールドもいつまでもつか分からない。


それに引き替え敵は、塹壕に防壁と万全の備えであったので、打ち崩すどころか突破口さえつかめない状況であった。


「それにしても、敵方の500式戦車の姿が見えないな。その分助かっているのだが…」



大型の500式戦車が投入されていれば、こちらの機動戦闘車の砲弾では正面からその装甲を突き破ることは、ほぼ不可能であった。


砲兵隊から数個小隊を念のために編入していたのだが、それでも防ぎきれるか微妙な所ではあった。


「ここまでは、あの新しい司令官閣下の読み通りだな。」


「このまま作戦通りに事が運んでくれることを祈るのみでありますな。」








俺は2個師団と共に静寂に包まれた多目的通路にいた。


「閣下、戦闘が始まって3時間程経過しました。そろそろ次の段階に入るころかと…」


「そうだな。そろそろ頃合いか…近畿内閣連合本部に連絡せよ。第二段階とな。」




目の前に重く閉ざされていた防壁が、大きな音をたてながら開いていった。


部隊と防壁の間には、大きな物体が鈍い光を放ちつつ佇んでいた。


この物体は、事前にタケゾウに創らせていた反重力装置を内蔵した通路いっぱいのサイズの大きな氷の塊であった。その後ろには同じく反重力装置内蔵の板状の物体が、氷の塊に連結される形で横たわり、俺を含め全ての部隊と車両を乗せていた。



俺たちを乗せた物体は、ほんの数ミリ浮いたかと思うと、急加速しだした。


時速にして数百キロは軽く出ているであろうその物体の質量は計り知れず、途中途中で大きな音と共に何かを弾きながら走り続けていた。


質量が大きくなっているためにその衝撃は微々たるものに感じたが、おそらく通路を警戒していた敵の部隊であろう。



目標まで数キロの地点で先頭の氷の塊は切り離され、そのまま突き進んでいった。


程なくして、俺たちを乗せた板状の物体がスッと止まり部隊は戦車を先頭に各通路より出口へと殺到した。


その付近を警備していた敵部隊は、混乱に陥りながらこちらの砲火に倒れていった。



出口にある大きな扉に対して戦車の砲弾を大量に打ち込み、大きな衝撃と共にそれを外に向かってはじけ飛ばした。


更に奥にある扉を外壁もろとも吹き飛ばし、一気に視界が開けた。



そのまま部隊は、壁の内側になだれ込んでいったのである。



「先発隊は、陣地を構築せよ!」


各隊に命令が飛び交っていた。



外になだれ出した部隊めがけて激しい爆音とともに大量の砲弾が撃ち込まれてきた。


これを先頭を走っていた戦車に取り付けていた巨大なシールドで防いだ。


敵の火力が非常に強く、重たい戦車が数十メートルほど後方に弾かれてしまうほどであった。



砲撃を交えつつ押し出し、陣を構築している俺たちの眼前には、敵の大型戦車を始めとする主力と思しき部隊が展開していた。



―ありゃ…これは壮観だなー。


―だが、これも計算通りだ。



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