俺の中央政府対策本部。
俺たちは、耕作地エリアから戻ってすぐに京都の国の「近畿内閣連合本部」に出向いていた。
ここには、兵庫を始め大阪、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重の7つの国の内閣府の閣僚たちが集まっていた。その中で俺たちは、顧問と言う形で招かれていた。
様々な状況証拠や今回の事件などを考察しながら、中央政府の思惑を探ろうとしていたのである。
俺たちの証言から、宇宙防衛軍や総司令本部に対する軍の攻撃は、熾烈を極めたと言うのに対して、一般居住区への攻撃は、まるで戦っているというポーズをとっているかのごとくであった事についての疑問があったのだが…
一般居住区とそれらでは、戦力が格段と違っている上に、軍の目的はこの船の中枢部を抑えることにあるからでは?との意見も多く出されていた。
ただ、今回の事件で中央政府と軍との間に何かしらの繋がりがあるであろうとの認識は共通していた。
軍が中央政府をそそのかしたのでは?との問いには、その場合においては中央政府におけるメリットがあまりにも少なく感じられるとの意見も多く。
推理の限界に達していた。
各人、腕を組みうなだれながら低く唸り声をあげていた。
「中央政府のエライ人が軍をそそのかしたんだよ。きっと。」
一同ハッとして声のした方へ視線をむける。
タマキが、ジュースをストローで飲みながら悪びれる様子も無くしゃべり続けた。
「軍の目的は、単に自分たちの能力をどっかで試したかっただけでしょ?中央政府のエライ人たちも、自分たちの手で最初から国づくりをしたかったんじゃないのー?」
皆も一度は頭に浮かんだが、あまりに突拍子も無く子供じみた馬鹿げた事だと思考の片隅に追いやっていた思考であった。
それをさも自然に飄々と言うものだから、一同口をパクつかせるだけで反論するものはいなかった。
「エライ人の頭の中が立派って決まっているわけじゃないでしょ?むしろあれじゃない?能力や力のある人って理性で抑え込んでるだけで、普通の人よりそのやってみたいって衝動が大きいのかもしれないよ?」
皆、心の中では「ああ…」と思い当たる節があったのだが、その「エライ人」に属する自分たちであるから簡単には認めたくないという思いもあり、またもや腕を組んでうなだれ唸り声をあげた。
そんな中で、播磨総理があくまでも仮定での話と念を押して、そうであった場合の対応を協議しようと持ちかけたのであった。
「まず、あの規模の自警団をこの彼ら「Will Diver」へ差し向けられたという事実についての私なりの見解を申し上げます。中央政府の直轄の自警団の規模は確かに我々よりも遥かに大きいですが、あれでは多目的通路への防衛がままなりません。」
「我らは虚を突くことで寡兵にて勝利を得ましたが、まともにぶつかりあえばとてもかなう規模ではなかったと思います。」
「結論から申し上げますと、彼らはそもそも通路防衛をしていない…むしろする必要が無いとの考えに至っても不自然ではないと思われます。」
「確かに軍の方から、中央政府に対しての攻撃を行わないとの条件で何らかの密約がなされた…との考えも捨てきれませんが…それなら多目的通路を遮断し、耕作地からの食糧供給ルートも遮断するぞ。と脅しをかける方法もあったと思います。」
「うーん、確かに不自然な点が多いですな…」
「多目的通路の隔壁操作の権限も中央政府一任でしたからな…」
皆、口々に言い始めた。
「いずれにしてもです。中央政府が我々と反対側の立場にあるという事実だけは疑いようがありません。そこで、私は航空ルートがエマージェンシーモードにて遮断され使えないので、耕作地に立ち寄った際に他のエリアに物資を送るリニアの内部に私のメッセージを入れたICチップを手紙を添えて乗せておきました。宇宙防衛軍行きのリニアにも一応は。」
と言うのも、各リニアのトンネルにはそれぞれのエリアの認識コードを備え付けた車両しか通過できないようになっているからである。宇宙軍と軍に関しては、各種武装を持ち込めない仕様にもなっていた。
「あ、それについてなんだけど…私、勝手に中央政府側のサーバーに中央政府の自警団の認識コードではトンネルを通過できないようにハッキングをかけておいたわよ。」
ボタンが手を挙げて発言した。
「これはありがたい。ありがたいついでに、各エリアとの連絡手段が全て中央で遮断されている件についても解決お願いできるかね?」
播磨総理は嬉しそうに訊いた。
出来れば事前に教えて下さいね。と釘は刺されたが。
ボタンは肩をすくめて了解した。
ともかく、今回の会合はこれでお開きになったのだが、各国の内閣府のテレビモニター付きホットラインを二十四時間体制で繋いでおくと言う事で、何かしらの展開があれば逐一連絡を取り合い対策を練るとの見解で一同一致した。




