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俺の激闘地下迷宮。

爆炎と共に無数の砲弾が撃ち込まれ、シールドで弾けていく。


それに対してボタンも応戦する。


飛び交う砲弾と閃光の矢。


徐々に削られていくシールド。


「ボタにゃん、歩兵はタマキにおまかせー。」


タマキがシールドから躍り出て、敵歩兵の間を疾風の如く走り抜ける。

敵部隊の中央部分まで走ったタマキは、お得意の全方向アタックでなぎ倒してゆく。


それを視界の隅にとらえたボタンは、正面の戦闘車両めがけて大きな岩のような塊の群れを投げつけていく。

大きな岩は、戦闘車両の砲身部分を次々とひしゃげさせていった。



―まだ、理性は残っているようだ。


―敵に死者は出ていないようだな…



そろそろ、シールドも限界に達しかけたので新たにシールドを展開した。


「ハク!トウカを守ってやってくれよ!アユハル!タケゾウ!何か必殺技は無いのか!?」


巨大なシールドを連続で張った俺は、疲労困憊に陥ってきた。



ハクは、トウカを中心に小さなシールドを張り防御に徹する構えだ。


アユハルとタケゾウは、二人で何やら創っている最中であった。



俺はポケットからチョコを取り出し口に含みながら、ボタンの口の中にもチョコを放り込んだ。



タマキに目を移すと、孤軍奮闘で次々と敵兵士をなぎ倒している。が、やはり目に見えて動きが鈍くなってきている。



「タマキ!一旦シールド内に戻るんだ!俺が援護する!」


俺はシールドの外側に無数の光の矢を創り出し、上空に放った。

一旦上空に舞い上がった光の矢の束は、ある一点で反転し雨のように敵兵士の上に降り注いだ。


一瞬のすきを見てタマキは、シールド内に滑り込む。



さすがのタマキも肩で息をしながら倒れ込んだ。

その傍らに大量のチョコを積んでおいた。



「よし!フユ、敵の戦闘車両側のシールドに少し隙間を空けてくれ!!」


アユハルの要請に応じて、シールドの一部分に穴をあけた。



そこに巨大な大砲のようなものの砲身を突き出すようにセットして、タケゾウが照準を合わせだした。


「いっくよぉー!」


その大砲の砲身から激しい爆炎と共に閃光弾が打ち出され、敵の戦闘車両の群れの上で弾けた。

弾けた砲弾から、蜘蛛の糸のようなものが相手を覆うように広がり絡みついた。



「特製のトリモチさ。」


メガネのフレームを指で持ち上げつつ得意げにアユハルが言った。



ボタンも肩で息をし始め、ふらつきだした。


俺は、ボタンの体を支えながらもう一枚シールドを張った。



―万事休すか…



俺たちは、一か所に固まりつつ体制を整えようと試みた。


ボタンとタマキは、しばらく動かせない。


俺もそろそろ限界だ。



ハクとアユハル、タケゾウが光の矢で抵抗しているが、明らかに火力不足だ。



この戦いで明らかになったことは、ボタンとタマキは攻撃に突出していて、アユハルとタケゾウは大掛かりなモノを創り出すことに長けている。ハクは、ボタンとタマキの劣化版ってところか…


俺は、意外とマルチかもしれない。




とは言え、この圧倒的劣勢をどう切り抜けるか…


敵兵数百人が倒れ込みうずくまり、戦闘車両も50台ほど行動不能に陥らせた。

だが、それでも相手の3割ほどである。



そう言えば、トウカがやけに静かだな…失神してたりして…


振り向くとトウカは優雅に紅茶をたしなんでいた。



「トウカ。君は大胆だな。」


何だか肩の力が抜けた感じで和んだ。


「みなさんもお紅茶入れてあげたからお飲みなさい。砂糖を多めに入れてあげたわよ。」



未だ激しくシールドに砲撃を受けていたが、俺たちはしばしのティータイムを楽しむ事にした。



「それにしても、みなさんそれぞれでたらめな能力を持っているのねー。」


改めて驚いたようにトウカが言った。


「でも、みなさんそろそろお疲れのようですし…ここからは私が何とかしてみましょう。」


トウカの言葉に一同呆然とした。



トウカは、おもむろに胸のポケットから小型の無線機を出した。


「お父様、お願いします。」


「トウカ!無事だったんだね!?後はお父さんに任せなさい!」


そのやり取りの直後、敵部隊の後方で無数の火柱が上がり、敵は大混乱に落ちいたのであった。



敵のはるか後方より砂塵を巻き上げながら、戦闘車両の群れが次々爆炎をあげながら迫ってくる。



「近畿連合政府自警団兵庫支部って書いてあるぞぉー!」


双眼鏡を創り出しその方向を確かめていたタケゾウが、歓喜の声をあげた。




良く見ると、大阪支部や京都支部、和歌山支部と様々な国の自警団の連合部隊の様だった。



「内閣府が動いてくれたのね…戦闘の前に中央政府のもくろみをそれとなく内閣府に伝えておいたのよ。」


未だ疲労の色を隠せないボタンが不敵に笑った。



―そんな青白い顔でそんな風に笑うとヤンデレ風だぞ。




東京支部の部隊は、多少の抵抗を見せたものの圧倒的劣勢を感じて撤退を余儀なくされた。




近畿の自警団は、敵味方全ての負傷者を救護車に運び、撃ち捨てられた戦闘車両の群れの撤去作業に移っていた。



数人のスーツ姿の男たちが、俺たちの方に歩み寄ってくる。



「お父様!!」


トウカは、そう言ってその中の一人の男性の元へ駆け寄った。


トウカのお父さんは、ちょっと小太りな感じの人のよさそうな紳士であった。


「いやー、君たち。娘がいつもお世話になっているようだね。今回も守ってくれて感謝するよ。」


俺たちに深々と頭を下げてきた。


「い、いえ、俺たちの方こそ何かとお世話になってばかりで…」


ハクもしどろもどろだ。



トウカのお父さんと共に播磨総理も来ていた。


「ササヤマ ボタン君…だったね。君のおかげで我々としても重い腰をあげれそうだよ。」


「まだまだよ。もっと秘密を暴いてやるんだから。」


ボタンもちょっと照れているようだった。



俺の傍らを黒い影がスッと通り過ぎたかと思うと、タマキが総理の腕に絡みついていた。


「ねえ、総理にゃん。タマキもいっぱい頑張ったんだよー。褒めて褒めて!」


「おお。ネクタイピンくれたお嬢さんだね。よしよし、良くやってくれました。」


総理に頭をガシガシ撫でられて満足そうである。

更にネクタイピンをちゃんと付けてくれているのを確認したタマキは、上機嫌になった。




「近畿の各国で協力して、今回の事件を始めとした全ての元凶に対する対策本部を開くことになったのだが、君たちも参加してくれないか?」



願ってもいない総理の提案に俺たちは飛びつくように頷いた。



―これから忙しくなるぞ。

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