↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/247

46.不測

あらすじ:タナリンの町から飛行魔術によって討伐隊の先回りが出来たバアル達。そこに居たのは祖国の政治の混乱に悩む一人のリザードマンドルマンだった。いっそ鳥になりたいと現実逃避していた彼を、バアル達は助ける事が出来るのか!? (ネタバレ:出来る)

「落ち着け、ク・クルカンの兵士諸君よ」


 よく通る声でスコットがそう宣言すると、驚愕の表情を浮かべた兵士達は、次に表情を消して静かに殺気を漲らせ始める。

 それに対して、スコットは自らの竜の気配を漏れ出させ、竜の瞳を以て周囲を睥睨する。それだけでリザードマン達は身を竦ませ、目の前の人間の真の姿を知った。


「落ち着けと言っているでしょう。私は神竜王国王女アウロラ様の近衛隊の一員、スコットと言う。お前達の所業、ここに居る理由はタナリンの東にある鉱山に潜伏していたお前達の仲間から聞いて既に知っている。本国にも連絡済みであるからここで我らを害する事に何の益も無い。大人しく武器を収めたまえ」


 スコットはそう宣言すると、ドルマンの顔を見つめて黙る。ドルマンもスコットの眼を正面から見つめて黙っていたが、しばし後部下達に指示を出す。


「皆武器を収めろ。ここで争う事に意味は無いようだ。して、我らをどうするおつもりで?」


 表面上は落ち着いた声で対応しているドルマンだったが、その手は微かに震えて自分達の絶望的状況を悟っていた。何しろ自分達の任務は神竜王国の姫の誘拐幇助である。まず斬首は免れないだろうとドルマンは予想し、せめて家族に累が及ぶ事は無いよう嘆願しようと腰を落としかけた。


 それをスコットの一言が止めた。



「私達はお前達の撤退を手伝いに来た」



 その一言は本当にク・クルカンの兵士たちの時を止めたかのようだった。兵士たちはスコットが発した言葉を頭の中で消化しきれずに身動き一つ出来ずに眼を見開くだけで、ようよう一言発せたのはドルマンだけだった。



「……は?」


「理由を簡単に説明するぞ、我が神竜王国は三国同盟との諍いは望まない。ここでお前達がエロハイム共和国側に捕縛される事は宗主国側の管理責任を問われかねない。既に終戦条約は締結されており、この条約によって属国であるク・クルカン側にも戦闘禁止の通達はされている。それなのにお前達が勝手に侵入していることが露見したら……、げふぅ!?」



 急に胃の辺りと口を抑えて蹲るスコットを、バアル達が囲んで励ます。


「スコット、頑張れ! もう合流は果たしたんだからここで倒れては苦労が水の泡だぞ!!」


「もうちょっとだ! もう少しの間耐えるんだスコット! 俺もお嬢の弁当作りとか頑張るから頑張れ!」


 主にバアルとマグナダインの励ましにより、ストレスの園から帰還したスコットは口の端から垂れる逆流した胃液を拭いつつ、フラフラと立ち上がってドルマンを指差す。


「え~~~、だから、お前達がいることがバレたら……」


「神竜王国の不利益になるということだな。分かった。……だがどうして我らを生かすのだ? ここで我らを処刑して地に埋めるなり灰にするなりすれば良かろう?」


「あ~~……」


 スコットはチラリとバアルに一瞬だけ視線を向ける。それをドルマンは見落とさなかった。


「そんな人手が存在するとでも? 埋めるのも灰にするのも手間だし、第一派手な事をやれば森を囲む者達勘付かれてしまう。それにお前達には『白蛇の僕』の者達と一時的にせよ接触し行動を共にしている。情報を得る前に殺すは下策だ」


 長ったらしく理由を上げているが、最も大きい要因はスコットの後ろに控える魔族の青年にあるとドルマンはにらんだ。だが表向きはスコットの説明に納得したフリをする。


「なるほど。では我々は本国に帰った後に尋問後、刑に処されるのですね。…私が頼める筋合いは無いと分かっていますが、家族だけは許して下さらないか?」


 スコットは大きく溜息を吐くとドルマンを見返し、眉根を寄せて淡々と続ける。


「私にその権限は無いが、お前達は実際に姫様の誘拐を行ったわけでは無いからな…、私の方から何とか口を聞いて減刑されるように取り計らおう。その代わり尋問には積極的な協力を頼むぞ」


「…貴方は本当にドラゴンか? 余りにも、その、穏やかというか優しいというか……、ああ白竜の方か」


「そうだが…、この髪で分からなかったか?」


 スコットは自身の象牙色の髪の毛を指差す。ドルマンは言いにくそうに視線を彷徨わせながらポツリと呟く。


「その、苦労性のようだったので白髪の類かと…」


「っ!? ……否定出来ない」


 一瞬何か反論しかけたスコットだったが先ほどの自身の醜態を思い出して押し黙る。その姿を見てカミラがフォローしようとしどろもどろに会話に参加する。


「あ~~、あれですよ、こんな苦労性で神経質な性格なんて白竜くらいしかいないじゃないですか~。も~隊長さんったらドジなんですから~」


「そ、そうだな。失礼した。……ところでそちらの方々も近衛隊の方ですか? さっき魔王だとかおっしゃってましたが…」


 ドルマンも慌ててカミラのフォローに乗っかり、話しを変えるついでに先ほどから気になっていた事を質問する。スコットは俯いていたはっと顔を上げると二、三度咳払いしてバアル達を紹介する。


「魔王と言っていたのは、この人の持ちネタで洒落の一つだ。見た通り魔族の方で近衛隊では無い。冒険者として活動されており、今回の撤退の支援をしてくれる。他の方々も同様に冒険者だ」


 ちゃっかり駄洒落として魔王発言を誤魔化すスコット。背後ではエミリーがこっそりとバアルに、迂闊な発言をするなと叱っており、バアルが恐縮していた。


 その光景を見て一段階バアルの評価を下げかけたドルマンだったが、一つ気になる事実に思い至る。


「…冒険者の様な根無し草、しかもエロハイム共和国の人間にこの様な重大な機密を晒したのですかな?」


 ドルマンの指摘にスコットは髪をかき上げるふりをして、手で顔を隠しつつ頬を歪める。


「緊急事態故仕方あるまい。彼らならば撤退の支援が出来る。その後の機密保持については私の仕事だ。お前達が気にする領分では無い」


「失礼しました。そうであるならばお任せします」


 ドルマンは頭を下げてスコットのその行動に全く気づいて無いように振る舞いつつ、その脳内ではスコットがバアル、あるいはバアル達に何らかの価値を見出していると考えていた。そしてそれはク・クルカンにとっても小さくない価値であるとも。



 ……



「ではここからは俺が説明しよう。脱出先はそちらが当初予定していた通り、西の密林から脱出してもらう。そこまでの移動方法は俺の仲間のカルニウェアンの転移魔術によって行う」


「転移魔術!? しかもこの数を!? ……どれほどの実力者だ…」


 ドルマンの他、周りで話しを聞いていたリザードマンの魔術師なども戦慄していた。バアルは空を手で押さえるような動作でそのざわめきを静める。


「まあ待て話しは終わっとらん。問題点としてカルニウェアンはその密林の入口の場所を知らんのだ。だから今からそこを探し出す必要がある」


「一つよろしいか?」


「ん? ああいいぞ」


 バアルの話しを遮ってドルマンが手を上げる。バアルは首を捻りつつも発言を促す。


あれ・・はその転移場所を探すのに必要な行動何ですかな?」


 ドルマンの指差す先ではちょっとした修羅場が展開されていた。


「くそ! ホールチーズが丸々一つ無くなるなんて…。げ、干し肉も切れかけかよ!? おい、兵糧管理責任者はいるか!? 余ってる食材何か無いか!?」


「マグナダイン様、キャベツが残りひと玉です!」


「マグナダイン殿、パンも残り少ないぞ。というか作り過ぎでは無いか?」


 荷台の上ではマグナダインがブリジットとアインを助手に凄まじ勢いでサンドイッチを増産していた。バスケットにはぎゅうぎゅう詰めのサンドイッチが並び、入りきれ無かったものはエミリーとカミラが共同で油紙に包むか、カルニウェアンの胃袋に消えていた。


「とりあえず食べ溜めしてますけど何が起こるか分かりませんからね、出来るだけ多く作って下さい」


「分かってるよ! くそ、ジャガイモ丸のまま食べて魔力回復とか出来たらいいのに…」


「それはよっぽど魔力減ってる時の急速回復の際くらいにしか出来ませんよ。しかもその時は回復に集中する為に魔術使えませんし」


「あ、あの~、斥候が取ってきた兎肉なら余ってますけど…」


「助かった! スコットが金払うからそれ分けてくれ!」


 おずおずと兎肉の塊を差し出すリザードマンの兵士から、マグナダインはまるでひったくる様な勢いで肉を回収すると手早く下処理をして焼き始める。火は焚き火を起こすわけにもいかないので、『いくさ丸』の刀身から弱い火を出してコンロ代わりにしていた。



 そんな様子をじっと見ていたバアルとドルマンは、ふと視線を合わせる。ドルマンのもの問いたげな視線をバアルは真っ直ぐ受け止めて宣言する。


「必要だ」


「ピクニックですか、私達の撤退作戦は」


 若干怒気も滲ませながらドルマンが皮肉を言う。バアルは掻い摘んでカルニウェアンの『暴食』の性質をドルマンに説明する。


「はあ、食事を取ることで魔力回復ですか…、聞いたこともありませんね。バアルさん達のご出身はどちらで?」


「それは秘密だ。それより密林の居場所を把握している者を一名借りたい。カルニウェアンに同行させて密林までの道案内をさせたい」


 ドルマンが探りを入れてくるが、バアルはそれを強引に無視する。ドルマンもその点について食い下がっている場合では無いと考え、バアルの要請を受け入れた。


「了解しました。して、脱出までに何れ位の時間がかかりますかな」


「普通に歩いて行軍すると数日かかる距離にその密林、大樹海だったか? があるらしいな。空を飛行していけばそんなに時間はかからんと思うが」


「バアルその事なんですが」


 サンドイッチを片手に持って食べながらカルニウェアンが近づいてきた。近づいてくる間にも顔くらいの大きさのサンドイッチが小柄なカルニウェアンの口によってみるみる小さくなっていき、ドルマンはそれを見て不気味さを感じてほんの少し遠ざかる。そんなドルマンの様子をカルニウェアンは横目で見つつバアルの前まで来ると足を止める。


「とって食ったりはしませんよ。…バアル、無いとは思いますが転移魔術の痕跡を調べられる可能性を除くため、転移先の方で隠蔽の準備をしたいんです。その為多少時間を頂きます」


「具体的な方法とかかる時間は?」


「魔法陣による受け入れ先の指定と魔力の保存を…ええと要は向こうとこっちを繋ぐ門を魔法陣で作って、私が一度に運ぶのでなく、皆に門を潜って移動してもらおうと言うことです。これに『魔力隠蔽マジック・マスキング』を組み合わせればほぼ魔力の残滓から転移先を割り出される可能性は無いですし、多少魔力の省エネも出来ます。時間は向こうの状態次第ですね、うまく魔法陣が描けるような地形があれば早くて二時間遅くて三時間、無かったらその地形を探す時間も足されます」


 実際に転移魔術の転移先を調べる事が出来るような魔術に長けた者はこの世界には殆どおらず、討伐隊の中にも無論居ない。その為カルニウェアンの心配は杞憂なのだがそれが分かる人物エミリーは今サンドイッチと格闘していて聞いていなかった。


 バアルは空を仰ぐ。日は頂点から少しずつ下がり始めており、大体午後二時前後だった。


「場合によっては夜に差し掛かるな。分かった、なるべく急げよ」


「はいはい」


 そう言ってカルニウェアンはマグナダイン達の所に戻っていった。そこにはバアル達の会話の背後で、ドルマンの指示を受けてカルニウェアンに同行する事になったリザードマンが、大量のサンドイッチを持つ羽目になって青い顔をしていた。




 そして数分後、大量のサンドイッチを抱えたてヨロヨロのリザードマンを連れてカルニウェアンは空に飛び立っていった。勿論幻惑魔術と『魔力隠蔽マジック・マスキング』によって姿と魔力を隠しながら、である。


 当座のやる事が無くなったバアル達は一旦集合し、カルニウェアンが戻るまでの間の撤収作業を手伝う事をドルマンに申し出た。


「カルニウェアンが戻るまでの間はやる事が無いからな。何か手伝う事があるなら言ってくれ」


「暇だし掃除とかでもいいぞ」


 バアルとマグナダインの冒険者らしからぬ申し出にドルマンは若干面食らう。


「そう…、ですね…」


 ドルマンは周りを見渡しながらバアル達に何か手伝って貰う事があるか考えてみた。テント等の宿泊用具のまとめはほぼ終わりかけ。焚き火の跡の隠蔽作業も終わってる。簡易便所にしていた穴の埋め戻し作業は……さすがにさせられない。


「いえ、特にありませんな。バアル殿達は何かあった時の為に待機していて下さい」


 結局何もさせないと言う無難な選択肢を選んだドルマン。一応自分達の存在そのものが機密なので、下手に物を触らせたくないとい本音もあった。

 ドルマンはまだバアル達を信用出来てなかったので何かあっても自分達で対応しようと考えており、バアル達に待機を願ったのも、バアル達との情報交換によって、討伐隊本隊の到着は早くて明日の朝方と予想していたので、カルニウェアンの帰還までの間に不測の事態が起こる事はまず無いだろうという考えからであった。



 だが不測の事態は予測できないから不測と言うのである。



「ドルマン隊長、緊急事態です…!」


 押し殺しながらもその顔と語気からただ事では無いと分かる声でドルマンの部下が報告を持ってきた。ドルマンは心中で大いに焦りながらも努めて平静に聞き返す。


「緊急事態とは何だ」


「はっ、東より百人程度の武装集団が到来。騎兵と身軽な軽戦士、斥候、それに魔術師が主です。討伐隊と思われます」


 ドルマンはバアル達に顔を向け目を細める。その目の中にはバアル達を疑う色が強く現れていた。バアルはそれを真っ直ぐ見返すと口を開いた。


「俺達の調べた限りでは討伐隊の人数は二百五十人前後と聞いている。兵の内訳を見るに足の速い者のみを集めた構成のようだ。俺達が見つけた集団の混成具合と比較すると妙ではあるな」


 バアル達が見つけた集団は様々な兵種、雑多な役職の冒険者達の他に物資運搬の為の馬車や牛車も含まれており、機動力があるとは言えない構成だった。


「それに加えて魔術による速度強化か……。何故今更行軍速度を上げたのだ? ……まさか!?」


 ドルマンは部下に命じて通信魔術のアイテムによってタナリンの町に潜伏させていた諜報員に連絡を取らせる。


「反応がありません…」


「捕らえられたのか……」


 ドルマンが絶望的な表情を浮かべ、近くで状況を聞いていたスコットの気が遠くなりかけた時、応答があった。


「こちら潜伏班副長ゼル。応答願う」


 応答があった瞬間、ドルマンは部下の手から魔術アイテムを奪い取り、直接語りかけ始める。


「! 無事だったか! 潜伏班の周囲で異常は無いか? 監視されている可能性は?」


 ドルマンの矢継ぎ早の質問に対して、帰ってきたのは苦しげな声だった。


「……現在潜伏班はエロハイム共和国の衛士隊と交戦後、目下逃亡中。隊長は戦死しました」


 返ってきた言葉はドルマンの予想を裏付け、そして希望を打ち砕いた。


「既に我らの存在は露見していたと…?」


「いえ、我々が正規軍であるまでは向こうも分かってはいません。連絡をする暇も無い程急に捜査の手が伸びてきましたが、ギリギリのところで証拠隠滅は出来ました。向こうは我々を『西の森のリザードマンの集団に情報を送っていたリザードマンの斥候』と認識しているはずです。しかし代償として潜伏班の三名が戦死、あるいは自害しております。現在我々はタナリンの町から脱出し、南周りで国外への脱出を図っております」


 最悪の事態は避けられたとドルマンは考えたが、状況が厳しくなった事に変わりない。


「分かった。無事の帰還を祈る」


「潜伏班、了解」


 今までのエロハイム共和国側の動きから無事に帰れる事はまず無いと思いつつ、ドルマンは通信を切ろうとした。それを横からバアルの手が止める。


「待て。タナリンの町の南に森がある。道を真っ直ぐ進めばその森の中に製材所跡地の宿泊施設がある。その付近に隠れていろ」


「誰だ、お前は…!?」「バアル殿!?」


 ドルマンとゼルの困惑した声が響くがバアルは意に介さず続ける。


「そこならば仲間のカルニウェアンが転移魔術で迎えに行ける。そこで隠れていろ」


 バアルの言葉に天啓を受けた神官の様にドルマンは身震いする。そして早口で命令を出す。


「この方は協力者だ。詳しい説明は後でする。今は指示通りに動いてくれ」


「……了解した」


 ゼルは半信半疑だったものの、ドルマンを信用する事にしたのか、他に有効な手も無いと考えたのか特に反論せずに命令を受諾し、通信を切る。


 ドルマンはほっと息を吐き出すとバアルに向き直る。


「感謝します、部下をこれ以上死なせずに済みそうだ」


「良い。それより状況を確認しよう」


 ドルマンは緩んだ意識を表情ごと引き締める。対するバアルには悠然と構え、ほんの僅かに微笑を浮かべているようだった。何か違和感を感じたドルマンだったがそれを押し殺して状況説明を始める。


「まず、潜伏班は監視されていて本隊である我らが討伐隊の接近に気づいたと向こうに知られたのでしょう。その連絡が討伐隊まで届いた為に足の速い者達で構成された部隊を先行させた」


「それが今さっき聞いた武装集団だな。この後の動きはどうすると考える?」


「強行軍で来たでしょうし、向こうも状況確認が必要でしょうから、約三十分から一時間の休憩を取った後に我々の捕獲を開始するでしょう」


「つまり、それまでの間に迎撃準備を整えつつ、相手を攪乱して時間を稼ぐ必要があるな」


「その通りです。しかし、迎撃準備と言っても…」


 湿地や沼地のある密林ならばドラゴンすら驚く程の力を発揮するリザードマン達だが、今いる普通の森の中では人間や他の種族と大差無い。


 城攻めは三倍の兵力差が必要と言うが、城も無いのに三倍強の数を揃えられた状況では有効な策も考えられなかった。罠を作るにしても心得のある者はそう多くない。長くて一時間の短時間では大した物が作れるとも思えなかった。


 そうやって悩んでいるドルマンだったが、ふと目の前のバアルの顔がさっきより緩んできた様に感じて、少し心がささくれだった。


「楽しそうですな、バアル殿。今は大変切羽詰った状況なんですが」


「ああそうだな、確かに高揚はしている。何しろ暇だった俺達に仕事が出来たんでな」


「は?」


「さっき言ってたでは無いか、『バアル殿達は何かあった時の為に待機していて下さい。』とな。今がその何か・・があった時では無いか?」


「…!?」


 思わず自らの口を押さえて目を見開くドルマン。事ここに及んでもまだ自分達で何とかしようと考えていたのだが、言質を取られていた事に気付く。

 尚も何か言い訳してバアル達を止めようと口を開きかけたドルマンだったが、それもバアルに止められる。


「それに、討伐隊と対応するのにリザードマンが目撃されては不都合だろう? 俺達が対応すれば少なくともリザードマンの目撃情報は相手に伝わらない」


 つまり最初からリザードマンの集団は居なかったということに出来る可能性が残る、とバアルは締めくくった。確かに『正体不明のリザードマンの武装集団』では無く、『正体不明の武装集団』では意味合いが違ってくる。ク・クルカンとの関連を想起させる要素をなるべく省くバアルの方針は理に適っていた。


 ここまで言われてはドルマンはグウの音も出なかった。最後にスコットの方をチラリと見ると、むしろより安心した様に表情が穏やかになっていた。その表情からスコットはバアル達を信用していると判断したドルマンはついに諦めて降伏の言葉を紡ぐ。




「…どうか助力をお願いします」


「うむ、任せるがいい」




 してやったり、とバアルの吊り上げられた口の端が語っていた。



かっとなってやりました。今は反省してます。


何の事かと言うとあらすじのネタバレの事です。たまに友人とかから漫画のネタバレとかされるとテンション下がりますよね。こっちは単行本で追いかけてるのに雑誌読んでる奴は情報が早いから…。


次回は日曜位に投稿できたらいいなと考えてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。