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国家紹介

*考えてはみたものの、本編中で詳しく記述する事は無いと思った設定をつらつら書いているだけですので、暇でどうしようも無い時にでもご覧下さい。

・エロハイム共和国


 バアル達が次元移動の果て、最初に降り立った国。様々な種族が混在して住み、宗教・思想に非常に寛容な国家である。



①国家の歴史概略


元々は千年前の悪魔大戦時に次元移動して来た魔族と天使の居住地として終戦後建国された。その後移民などが流入して多数の種族が居住するようになったが、その比率が跳ね上がったのが五百年前の竜大戦時である。神竜王国の侵略により多くの国家が壊滅し、多数の難民が発生した。それをエロハイム共和国が積極的に受け入れた為である。


また神竜王国の侵攻に恐怖した小国家、都市国家がエロハイム共和国に対し併合・保護を求め、エロハイム共和国周辺の土地、特に神竜王国側がエロハイム共和国に併合され、領土も同時期に一気に拡大した。エロハイム共和国には先の悪魔大戦時に活躍した魔族と天使が多数居住していた為、高い戦力を保有していたと考えられた為である。


多数の種族・移民の流入と領土の急激な拡大、更には神竜王国との戦争により、エロハイム共和国は未曾有の混乱に包まれたが、神竜王国に対する恐怖そして当時の人々の不断の努力によって徐々に国家はまとまり、一大強国になる。


そして神竜王国と対抗する為、北のドワーフの国『ガンザード』、南のエルフの国『シルヴェ・アールヴ』と同盟を締結し、神竜王国に共同で対抗した。結果として膠着状態に持ち込み、一部の領土の失陥はあれど神竜王国との停戦にこぎ付けた。その後、神竜王国から散発的な侵攻はあったが全て撃退してきた。


数十年前に神竜王国側と正式に終戦条約を締結し、現在は友好的な状態を醸成しつつある。



②政治体系


エロハイム共和国は議会政治を採用している。


エロハイム共和国の首都には大きな議事堂があり、街の一区画を占めている。議会は三つの院で構成され、1.三頭院、2.国議院、3.種族院がある。


1.三頭院

エロハイム共和国は、千年前の『悪魔』との戦争時に協力した別次元から来た魔族と天使への『報酬』として建国された。寄る辺無き民であった魔族、『悪魔』討伐の前線基地を欲していた天使達が集まって暮らせる土地として古代の魔法帝国の魔術師達が協力して国を作ったのである。

三頭とは、魔術師であった人間族、魔族、天使族の三族の代表者の事で、この三名だけで構成される院である。この三人は同時に『種族院』にも所属している(後述)。また、人間族の代表者はエロハイム共和国の魔術師ギルドの長も兼任している。

エロハイム共和国の慣例上の国家元首はこの三頭院であり、対外的には人間族の長が代表として対応する。しかし権力としては三者は同様の権利を持つ。


2.国議院

エロハイム共和国の各都市から選出された者達で構成される院。主に各都市の市議会議員の中から投票により選らばれる。都市内の代表的な組織(商業ギルドや工業ギルドなど)単位で誰がいいか多数決を行い、各組織単位で票が集められ、国議員を選ぶ。この投票権を持つ組織は政治的な影響力がある為、不正の温床になりやすい。また新たに組織が作られた際、投票権を得ようとすると既存のギルドから妨害工作が行われたり、議員から取り込み工作が行われるなどの問題も発生している。


法律の制作・改訂に関してはこの国議院で行われ、国議院と種族院の双方で協議された後に三頭院に提出されて制定される。


3.種族院

エロハイム共和国の各種族の代表者達で構成される院。各種族三名ずつが選ばれる(人間族、魔族、天使族は前述の三頭院の者に追加で二名が入る)。この議員の選出方法は各種族に一任されており、種族によってはユニークな選出方法を採用している事もあった。


例えばオーク族は、種族の代表的競技であるレスリングのチャンピオンが族長になるというシステムが元々あったので、その方法で種族院議員を選出していた。結果として脳筋の集団が議会に入ることになり議会が混乱したり、オーク族にとって不利な採決を行うことがままあった為、現在は専らいずれかの学術機関で成績優秀な者などが選ばれるそうだ。


種族院では各種族の面から現在在る法律及び新しく考案された法律に関して審議・議論を行い、問題が無いか判定するのが役割である。


*種族院こぼれ話

エロハイム共和国に多数の種族が住むようになってから長い年月が経過したある日、種族院に一つの重要な問題が提起された。


それは  『混血児の帰属問題』  である


この世界では各種族間での交配が可能である(種族紹介参照)。長い時間とエロハイム共和国の融和的な政策は多くの混血児が産まれる土壌を作り出したのだ。


その結果、『ハーフドワーフとハーフエルフの間に生まれた子供』と『ハーフオークと獣人の間に生まれた子供』、この二者の間に生まれた子供はどの種族に所属すべきか? という議案が持ち上がったのだ。


しかもその子供はエルフ特有の長い耳とドワーフの様な立派な髭、オークの如くがっしりした体格と牙を持ち、犬っぽい尻尾を生やした青年に成長していた。



議会は大揉めに揉めた。



「エルフ耳だから我らの子だ」、とエルフ族が主張すれば、「いやあの立派な髭はドワーフ以外有り得ん」とドワーフ族が反論し、「うちのレスリング部に入れるべき!」とオーク族が横槍を入れ、「尻尾は他の種族には無い特徴だから獣人だ!」と獣人族が声を張り上げる。「もう間を取ってリザードマンでいいんじゃない?」とリザードマン族が主張するとスルーされ、「ここまで混ざったならばもう魔族だ」と魔族が主張するとふざけるなと野次が飛び、「こんなに揉めるんならうちが引き取ります!」と人間族が締めようとすると、特徴無しは黙ってろ、と各種族からブーイングの嵐。議論に参加しなかったのは吸血鬼と天使族だけだった。


挙句の果てにはオーク族が、レスリングで白黒付けようぜと提案、頭に血が上っていた各種族の議員はこれにまさかの賛同。

オーク族の圧勝かと思いきや、決勝戦でドワーフ族の議員が意地を見せ、オークの議員を寝技に持ち込み勝利。壇上で腕を振り上げ勝利宣言をするドワーフ議員の姿は、後年絵画に描かれた程輝いていた。


その後運動して冷静になった議員達は、早々に避難してレスリングを観戦していた人間、天使、エルフ、吸血鬼の議員達からレスリングで決めたなんてどう国民に説明するんだと説得され、改めて冷静な話し合いが行われた。


結果、ハーフ種族の議席を増やし、他の少数部族もそこに統合する事でこの議案は決着した。




③特産物・産業


エロハイム共和国は南方に豊かな穀倉・酪農地帯を有し、それ以外の地域、及び他国に食料を輸出している。小麦や芋。牛、豚、鶏、羊などの他に、柑橘類や林檎などの果物、一部では砂糖も生産している。だがエロハイム共和国は海に面している都市が北方に一箇所あるだけなので、海産物に関しては余り出回らない。魚は専ら湖や川の魚を食す。


中部地域は昔から芸術・学問の面で発展している都市が多い。芸術分野ではアイウーズ市と首都サンクエロヒムが国内の二大巨頭である。

絵画や演劇も人気だが、吟遊詩人が歌う歌謡が他国でも広く認知されている。首都では最近何人かで複数の楽器を演奏し、音楽と共に一人の人間が歌う形式が広まっている。演劇の一部で壮大な音楽と共に劇の主人公やヒロインが自らの想いを歌い上げるという表現が元であると考えらているが、四、五人の小さなグループで演奏会を開く集団が多くなっており首都の酒場や路上では演奏会が繰り広げられている。

学術面でもやはり首都サンクエロヒムが高度な教育機関を有している。魔術師ギルドの本部、総合大学、軍事大学などが各種揃っており、エロハイム共和国の先進的学問と優秀な学徒は全て首都に集まるとも言われている。


北部地域は山が多く、金属資源が産出される鉱山とそれらから作り出される武具・工具などの生産業が主要である。また一部地域ではそこかしこで遊牧が行われており、食肉の生産はこの地域も担っている。


特産物として特徴的なのは洗練された文化・芸術であり、他国からも観光目的で頻繁に富裕層が入国して歌劇や絵画を楽しみ、風光明媚な中・南部地域を旅する。エロハイム共和国は多数の種族に対して寛容な為、本人が他種族に対してよっぽど嫌悪感を抱いてない限り、快適に過ごせるのも人気の一つであろう。



④軍隊


エロハイム共和国は三国同盟の中で最も軍隊の動員人数が多い。それは他の二国に比べて目立った特徴や技術が無い為人数で補う必要があったからだが、長い年月を経て部隊の編成を見直し、かなり特徴的な軍を作り出した。

その例として、エロハイム共和国の軍隊は多数の種族で混成される普通科の歩兵隊が主体であるが、一部の種族の中で特に優秀な者達を集めた特殊部隊を編成している。


Ⅰドワーフ重装長槍歩兵


ドワーフはその低身長と短足故機敏な行動が取りにくいが、頑丈でタフである。そこで動かない歩兵と言う逆転の発想で編成された。敵の騎兵隊や巨人の突撃などにも耐えられる重装備で防御し、長槍で押し止め殲滅するのが役割である。基本的に重要拠点や野戦場において『歩兵で作られた城』を形成する事に特化しており、素早い陣形構築能力と白兵戦闘能力を持つ。硬い鎧と盾のおかげで敵の矢の嵐を受けても平気と言われている。反面攻撃には全く参加出来ない。しかも重いので長距離の行軍も出来ない。防衛専門職である。


Ⅱオーク突撃隊


Ⅰとは逆に高い突撃・白兵能力を持つ歩兵、つまり攻勢に強い歩兵として編成された。オークはほぼ全員が逞しい体格を持っているが、反面知能面で難がある事が多い。突撃隊に選抜されたオークは全員が一定の知性適正検査をクリアしており、複雑な作戦行動や作戦目標も瞬時に理解できる知能を持つ。もちろん戦闘能力もトップクラスであり、戦場において相手側に効果的な打撃を与えて味方の士気を高めることも仕事の一つである。なお知性レベルが高い故か、体を清潔に保ちたい(オークの体臭は若干きつい)者が多数いるため香り付き石鹸や香水の需要が高い部隊である。


Ⅲエルフ特別狙撃隊


選抜されたエルフ、及びダークエルフで構成された部隊。秘密裏に敵の情報を収集し、場合によっては狙撃によって敵の大将格を排除する事も想定された部隊。弓術・情報処理能力・魔術技能と必要な要素が多い部隊である。魔術技能に秀でて魔力も多く種族として弓に馴染みやすいエルフやダークエルフがバランスとして最適のため選ばれた。一部優秀な人間や他の種族も混じっているらしい。またエルフの特性として特に森林に強いので、この部隊が潜む森は樹人ですら抜けられないと言われている。


Ⅳ吸血鬼夜戦強襲部隊


第一・第二世代の吸血鬼のみで構成された特殊部隊。エロハイム共和国全土でたった五十人しかいない部隊。その全ては首都の一区画に集められている。吸血鬼は日中弱体化する反面夜間ではその能力を最大限に発揮し、恐るべき膂力、長い年月で鍛えられた卓越した技量、膨大な魔力と魔術の技、驚異的身体能力によってあらゆる種族を凌駕する性能を持つ。この部隊は戦争を決定付ける決戦存在として編成されたエロハイム共和国の最強戦力の一つである。

ただし食料問題で維持に莫大な資金が掛かることから部隊解散の憂目に合いかけた。苦肉の策で、『吸血許可証』と言う合意の上なら誰からでも血を吸っていいよ、という許可証を部隊のメンバーに発行するという暴挙を政府が行う事で維持に成功した。

市民の貞操に関する問題が起こると懸念されたが、別の形で問題は発生した。この部隊のメンバーはいずれも絶世の美男美女でありまた紳士的に行動したので、市民が拒否するどころか積極的に血を捧げに行き、果ては部隊員に対するストーカー行為を行ったりして社会問題化もした。現在は概ね落ち着いている。


Ⅴリザードマン渡河攻撃隊


リザードマンは特殊な構造の肺を持っているので水中でも呼吸できる。また種族的に水泳が得意で沼の瘴気や毒虫に対する耐性があり、熱帯地域の密林や極限地帯での戦闘に強い。よって主に河に潜んで気付かれない内に敵の背面や側面に回りこむ時に活躍する部隊である。またリザードマンの中には稀に体色を変化させて周囲と溶け込む能力を持つ者もいるので(カメレオンみたいに)潜入任務なども行う事が想定され、訓練されている。

戦場が限定される上に仮想敵国の神竜王国はどちらかというと乾燥地帯が多いので、何故この部隊が作られたか疑問視する声も多い。種族的に仲間外れが出ないように、という政治的な意図があると噂される。


だが実は実動経験は特殊部隊の中でも一番多い。

主にエロハイム共和国の中・南部に点在する密林や国境沿いの地域は人の手が入り難く、しばしば魔獣や厄介な盗賊達の住処になり易い。担当地域の警備隊や冒険者ギルドでも手に余ると思われた事例で彼らは訓練と称して積極的に討伐を行い、犠牲は出すものの数々の武勲を立ててきている。


Ⅵ 獣人工兵隊


獣人の特徴は人より高い筋力とスタミナであり、戦場で戦う兵士として理想的な種族と言える。また、獣人と一括りにされているが、その内情は犬科、猫科、熊、牛、羊など多様な獣の要素を含んだ者達が居る。彼らは五感も鋭く普通に兵士として優秀であるが、それ故に危険な任務にも従事させられやすい。

獣人工兵隊は、獣人の筋力とタフさを利用して、危険な戦場、戦闘中に施設を建設あるいは移動、そして防衛もさせられる過酷な部隊である。

主に野戦病院や指揮所、防壁などの設営・解体・移動を行い、また場合によってはそこの最終防衛部隊としても活躍を期待されている。獣人達ならば一人で丸太一本担いで走る事も可能であり、専門的な工学教育を施された獣人の部隊員達は、驚くべき素早さで施設を設営、あるいは解体する。


ある戦場で、敵軍が丘の上に建てられたエロハイム共和国の砦に攻め込んだ。敵が多数の犠牲を払って頂上に辿り着くと、そこには防壁以外の施設が丸ごと消え去った空き地しか無かったと言う逸話もある。これも獣人工兵隊の活躍によるものである。


なお、この部隊の指揮官はドワーフである。建築・解体の総指揮を取るには、種族的にそれに長じたドワーフが良いとの判断からであり、現場の隊員も納得している。


関係無いが、この部隊の退役者は建築関係の仕事に限り、再就職率百%である。



Ⅶ 魔族特別魔術隊


獣人が肉体的に戦いに適しているならば、魔族はその魔術への適正によって戦いに適している。魔族は一般的に魔術への適応が高い。生まれながらに魔術を習得していると言う例も珍しくなく、本人は無自覚に魔術を行使出来るので、魔族の子どもは必ず魔術師ギルドかギルド員によるチェックを受け、魔術の行使が可能であるか調べられる。

そんな魔族の中でも特に魔術の行使に秀でた者が選抜され、この部隊に入る。彼らは攻撃魔術は勿論の事、占術、防御術、果ては転移魔術まで使える者達が揃っている。

主に首都に駐屯しており、普段は首都の魔術師ギルドに出向して魔術の研究、研鑽を行っている。有事には転移魔術で他の部隊を素早く戦場に送ったり、または他の部隊と組んで先制攻撃に当たったりもする。



・アル=ティンニーン神竜王国


かつてエロハイム共和国を含めほぼ全ての国に宣戦布告し、多くの国を併呑・属国化した強力なドラゴン達の国。金色に煌く鱗を持つ黄金竜を王と崇める。


①国家の歴史概略


ドラゴン達の国は千年以上前にあった魔法帝国の時期から存在していたが、そこまで魅力的な土地で無かった事、その割りに強力なドラゴン達が住んでいた事から帝国の侵攻を免れていた。また悪魔大戦では悪魔の侵攻は受けたが独力で撃退していた。悪魔達も何故か人間族に対してより積極的に攻撃していた事も理由の一つであろう。


千年前は魔法帝国とドラゴン達の国の二国しかなかったが、相互の交流は無かった。また国名も現在のアル=ティンニーン神竜王国とは異なっており、指導者も違う。

当時の国王は『白蛇竜・エンドルファ』という白銀の鱗を持つ竜であった。しかし五~六百年前にどこからか現れた黄金竜によってその地位を簒奪された。エンドルファの行方については諸説あり不明。新体制によって虐げられた、エンドルファ復活を目論む竜達の集団『白蛇の僕』と言う組織も存在する。


五百数十年前に国名をアル=ティンニーン神竜王国へと変え、黄金竜の指導の下で好戦的な竜達を中心に世界征服が開始された。驚異的な速度で周辺国を併呑・属国にしていった。残った国は連合して対抗したが黄金竜を先頭に立てたドラゴン達の侵攻を止められなかった。それを恐れた小国群はエロハイム共和国に合流し、エロハイム共和国は神竜王国と国境を接していた『ガンザード』と『シルヴェ・アールヴ』の二国と同盟、神竜王国と対抗した。

神竜王国側は黄金竜が攻める戦線のみ常勝無敗だったが、それ以外の戦線で逆侵攻を受けるなど苦戦を強いられた。次第に黄金竜は攻勢で無く取られた地域の奪還に忙殺されて行き神竜王国の国力は疲弊していった。そして開戦から約二十年を経て停戦と成った。


その後の約五百年間、各国と小競り合いや小規模な戦闘があったが、いずれも神竜王国側が撃退された。その影響で好戦的なドラゴンが数を減らして平和・共存を求む声が大きくなった。そして終戦条約が結ばれ、現在黄金竜の姫アウロラが三国を巡り友好通商条約を締結している最中である。



②政治体系


アル=ティンニーン神竜王国とあるように、王制である。国王である『カーディス・バルトアンデス・ゴールドケイブ・アル=ティンニーン』黄金神竜王を国家元首とする。なお、現国王は世代交代を行っておらず、五百年前からカーディス国王が統治している。カーディス国王には子が一人と孫二人が居る。この孫の一人が本編に出ているアウロラ姫。黄金竜は現状この世界に四体しかいない非常に数の少ないドラゴンなのである。


この王家の下に四大貴族が有り、その更に下に格大貴族に連なる貴族群が存在する。


Ⅰ 四大貴族


火竜、水竜、風竜、地竜の各竜の血統が『公爵』の位を保持している。神竜王国を五つの地域に分離し、その中で最も大きい部分を王家が、それ以外の四つの地域を各公爵家で分けている。神竜王国では公爵は単に王家に次ぐ大地域を治める貴族として称される。この公爵家は代々同一の竜で婚姻している純正の竜族である。

そして各公爵家の下に侯爵、伯爵、子爵、男爵と続いていく。


Ⅱ 戦士階級


神竜王国ではもう一つ特殊な階級がある。それは『戦士階級』である。神竜王国は竜族の治める国であり、竜は基本的に実力主義、戦闘力主義と言ってもいい力への信仰がある。


貴族の竜が地域の内政を担当し、戦士階級の竜がその地域の防衛や実動戦力を担当すると言う区分けがされていると考えてもいい。だからと言って貴族の竜が戦士階級の竜より弱いかと言うとそうでもない。そう言う場合下克上が発生する可能性が高いので大体戦士階級の竜に取って代わられる。

イメージとしては、貴族=腕っ節の強い不良の上級生、戦士階級=後輩の不良が最も近いかも知れない。戦士階級は要はパシリである。


戦士階級は本人の実力による階級と、仕えている貴族に由来する階級の二種類が存在する。


一:実力階級の称号(降順)


1.黄金戦士 2.天戦士 3.大戦士 4.強戦士 5.荒戦士 6.竜戦士


*竜戦士=一般的な成竜の強さ。成竜以降は強さは殆ど変化しない。

*黄金戦士=王家の黄金竜にあやかった称号。

*これ以外に『白蛇戦士』と言う称号もあるが、これは黄金竜に王位を簒奪された白蛇竜エンドルファにちなんだ称号で、『負け犬』とほぼ同義語で扱われる蔑称である。


二:仕えている貴族に由来する階級


称号名は『爵位名+士』である。例を上げると、男爵に仕えているならば『男爵士』となる。


実力階級の称号は御前試合や実際の戦闘で立てた武勲などから考慮され、上位の戦士階級の者がより下位の者に与える称号である。

これらの称号は戦時において主に尊重され、軍事作戦の立案や戦略・戦術に対する発言権を得る。平たく言うと将官の階級である。


仕えている貴族に由来する階級は宮廷や社交界での階級である。貴族に仕える戦士は準貴族として扱われ、主君の爵位次第では下位の貴族が出られない様な公の場所にも出席できる。例えば公爵家の園遊会が伯爵以上の爵位持ちしか出席できない場合、伯爵お抱えの戦士は出席できる(主君の許可は必要)が、男爵お抱えの戦士は例え天戦士でも出席できない。


戦士でも貴族でも無い竜も勿論居る。それらの竜は保護区とされる地域で自活する事が許可されており、自分で狩をして暮らしている。保護区で暮らしている者でも、稀にどこかの貴族から戦士としてスカウトされる事もある。

白蛇竜に忠誠を誓った竜達の子孫は迫害されている為、神竜王国の誰も通らないような荒地や別の国に生息していると言われている。



Ⅲ 奴隷・二等人民階級


神竜王国は多くの属国を抱えている。竜大戦の際に多数の奴隷を王国内に連れてきており、その子孫達が今でも農奴や採掘奴隷などの単純労働要員として働かされている。一部優秀な者や長く貴族に仕えた奴隷は、それらの奴隷を監督する立場として二等人民とされ、奴隷よりはましな生活をしている。それでも野良のドラゴンより扱いは下なのは言うまでも無い。



神竜王国は、種族によって区切られた厳格なカースト制が敷かれた国、と言っても過言では無いのかも知れない。



③特産物・産業


神竜王国に産業・特産品と呼ばれるものは無い、とも言える。何故なら神竜王国では、ドラゴン達の食料生産を農奴が行っている他は目立った産業が無いのだ。

そしてほぼ全ての食料品はドラゴン達が消費してしまうので、完全循環型経済、しかも最も単純で原始的な形である。主要産業は農業です、でも収穫物は全部自分達で消費します、では産業は有って無いような物だ。


その代わり、属国からの貢納品や収奪物が神竜王国と他国の交易を可能にしている。神竜王国は属領、属国から得られた付加価値の高い物品を、エロハイム共和国などに輸出し、外貨を得ている。


ドラゴン達に労働の概念は薄く、野の獣に近い行動原理である。


しかし他国との交流が深まるにつれ、他国の絵画、詩集、本などの文化財に注目するドラゴン達も増えてきた。それに伴い、ドラゴン達自身でもその様な文化物を創造しようという動きも近年見られる。


専ら第三次産業が発展しそうな気配が濃厚だが、その内鍛冶や木工などの第二次産業に手を出すドラゴンも増えるかも知れない。



④軍隊


神竜王国の軍隊は、竜族を指揮官として奴隷が下士官・兵士を務める。


戦闘時は竜族も兵士達も入り乱れて戦う。奴隷達は下士官以上にはなれず、例え頭が良くても参謀になるという道も無い。(参謀は専ら白竜が務める事が多い)


奴隷は人間、エルフ、ドワーフ、リザードマン……、およそドラゴン以外の殆どの種族で構成されている。いないのは吸血鬼と天使族くらいだろう。


奴隷達は主である竜族の機嫌を損ねぬよう必死で戦う。その為、何かしらの失敗があった場合それを他者に擦り付けようとするし、功があったら何とかして自分のものにしようとする。功績があれば二等人民としてまだましな生活を送れるようになるからだ。

軍隊内部で足の引っ張り合い、功績の奪い合いが起こり、また略奪によって財貨を得ようとする者も多いので、神竜王国の軍隊は大体士気が低い。


それが顕著なのが火竜が率いる軍である。火竜は激昂しやすく、失敗などがあれば即座に兵士を処刑してしまう。その為、兵士達はより一層責任の押し付け合いで互いに疑心暗鬼になり、戦闘力も落ちる。

火竜にとっては自らの闘争こそが重要であり、その他の瑣末ごとは兵士達に任せているので、戦場では兵士達の生存率は高いものの、局地的戦後処理の段階でへまをして火竜に処刑される事が多い。一説によると、火竜は敵より多く味方兵士を殺しているともされる。


それに対して他の竜達が率いる軍、特に地竜の軍は好対象である。

地竜は家族意識が強く、部下である兵士達に対しても極めて人道的な配慮を行う。失敗には寛容で、次のチャンスを用意してくれる。また戦闘においても、場合によっては地竜が兵士達への攻撃を受け止める事もあり、それがまた兵士達の士気と意欲を向上させる好循環になっている。

地竜が兵士達を子や兄弟と扱うならば、兵士達は地竜を親と見立てて心の底から仕えている。


水竜や風竜の軍でもそこまで奴隷兵士達は過酷な扱いは受け無い。水竜は陰気ではあるが、道理は弁えているので無茶な裁定はしない(個人差はある)。

風竜はそもそも兵士達への関心が薄い。風竜の行軍に兵士達が追いつけない事情もある。風竜が戦場から本陣に帰って来るまでに、飯の用意さえしっかりしていれば、風竜は基本怒らない。ただし限度はある。


この様に、軍隊の扱いの差も竜達の間の力関係を偏らせた一因かも知れない。



・近衛隊


近衛隊は神竜王国、王家である黄金竜直属の軍である。その規模と数は少数ながらも、各竜族、奴隷達から選りすぐられた精鋭達で固められた、神竜王国最精鋭部隊である。


近衛隊は竜族が五十体程、兵士達は千~二千人前後で構成されている。竜族、兵士問わず魔法の武器や防具が支給され、その扱いも特別の扱いを受ける。例としたは、兵士ですら他の竜族へ直接伝令を伝えられる程である(普通そんな事をしたら怒った竜に殺されてしまう)。


彼らは主である黄金竜の為ならば、その命を投げ出す事も厭わぬ強い忠誠心を持っている。

しかしその殉職率は低めである。なぜなら、好戦的な主人の黄金竜が先に立って戦い、大体の場合敵兵どころかぺんぺん草すら残らないので、戦う事が余り無いのだ。決して口にする事は無いが、隊の中にはそれを残念がる者も居る。



・シルヴェ・アールヴ


エロハイム共和国と同盟関係にあるエルフ達の国。大陸南方にある大森林の中にあり、女王の統治の下で平和を享受している。しかしその内情にはきな臭い部分もある。


①国家の歴史概略


シルヴェ・アールヴの建立はかなり古く、悪魔大戦より昔である。まだ悪魔達が次元の果てからこの世界に飛来していない千年以上前、千から千二百年前には既に国家の基礎が出来ていたと考えられている。当時はまだ魔法帝国によってこの大陸は支配されていたが、現在のシルヴェ・アールヴがある大森林地帯は開発の手が伸びておらず、この地域に魔法帝国の支配から逃げ出した者達が密んでいた。

その中のエルフの一団が大森林の最奥に集落を構え、その集落がシルヴェ・アールヴの元となったと言われている。

当時その集落は母系社会であり、酋長も女性が担っていた。その伝統が受け継がれたのか、現在のシルヴェ・アールヴも王制ではあるが、女王が統治している。


現在の女王は『アレンダ・エルダヴェン・シルヴェ・アールヴ』と言い、アレンダ女王と略される。名前の意味は『シルヴェ・アールヴで最も古きアレンダ』と言う。『最も古き』は実際に最長老と言う意味でなく、単に尊称の一つである。『最も古き』は『最も偉い』とほぼ同義語で認知されている。


閑話休題。悪魔大戦開始時期には帝国の軍勢とも渡り合える程の国力を有していたが、悪魔達との戦いでその国力も衰退した。

悪魔大戦後は防衛の観点を見直し、当時相互不干渉による共存関係にあった、大森林に住む樹人トレント達との防衛同盟を模索した。


樹人達は当初かなりその同盟を渋っていた。と言うのも、樹人達は基本的に自身の領域が侵されない限り動く事を極端に嫌った。隣の森が焼けても平然としているのが樹人達である。

しかし悪魔大戦の爪痕は樹人達の間にも深く残っており、長期の交渉の末、防衛のみという条件付きでシルヴェ・アールヴと軍事同盟を締結した。


この条約が活きたのが、五百年後の竜大戦である。当時、神竜王国は侵攻の邪魔になる森林を焼き払い、伐採しながら進んでいたが、これに対して領域を侵された樹人達が激怒した。樹人達はシルヴェ・アールヴに対して防衛同盟の履行を要求。シルヴェ・アールヴもこれに即座に呼応して戦争を開始した。


単純戦闘力ならば竜にも劣らぬ樹人とエルフ達は森林を巧みに利用して神竜王国を苦しめた。またシルヴェ・アールヴはエロハイム共和国側から提案されたガンザードも含めた三国同盟にも同意し、援軍によって非森林地帯でも強気の攻勢に出る事が出来た。


戦後、シルヴェ・アールヴが失った国土はゼロである。また都市部は戦火を免れたので、逸早く内政を立て直す事にも成功した。


現在のところ、三国内でエロハイム共和国とほぼ同等の国力を持っている。しかし人口増加に伴い、徐々に土地が乏しくなってきた。大森林地帯はエロハイム共和国の領土より狭く、またその狭い範囲を樹人達や他の森に住む者達と分け合っている為に、人口密度が年々上昇し続けている。


平民達の間には、冗談の域を出ないものの、大森林の外に領土を求める声も出てきている。


三国同盟の中では若干不穏な気配も漂わせているエルフ達の国家、それがシルヴェ・アールヴである。



②政治体系


シルヴェ・アールヴの政治体系は少々複雑な形式である。先にも書いたが、国家のトップを戴くのは女王であり、王家は存在する。が、神竜王国の様な貴族がいない。

変わりに存在するのが、豪族である。


何が違うかと言うと、神竜王国の貴族達が、トップである黄金竜から領土を与えられて貴族と言う地位に座するのに対して、シルヴェ・アールヴの豪族達は、元々その土地を治めていた有力者・代表者に当たる。

つまり豪族は女王から領土を貰ったわけではなく、地位も与えられたものでなく、元から持っていたものである。


この豪族達は『邑長むらおさ』と呼ばれる。


邑とは言っているが、街や都市と同規模の人口を持つ場合もあり、これも慣例的な呼び名である。シルヴェ・アールヴの政治は、女王と邑長達の合議制によって運営されている。


運営とは言うものの、各邑は経済的にほぼ独立しており、相互依存の関係が希薄である。他国に近い地域にある邑などは、自国内での取引より他国との取引が多くなる有様である。


女王の領地が国内で一番大きい事で一番発言力が高いこと、国軍の殆どが女王の管轄下にあること、邑が所有する私軍の規模が低く抑えられる法律が存在する……などの理由から、王家の影響力はかなり強い。


だが王家は各邑の意見や要望を可能な限り尊重するように計らい、調整を買って出るので、王家に対して叛意を示す邑は無い。他の邑の規模は似たり寄ったりで、経済的にも軍事的にもそれぞれの邑に差が無いのも政情安定の要因だろう。


現在の国主『アレンダ女王』は、民に優しく、豪族間の調整も上手くこなす理想的な君主と言われている。

だが同時に、配下の者達に各国の内情を探らせており、同盟国であるエロハイム共和国やガンザードとも距離を置く動きを見せている。その代わりに神竜王国とは積極的に友好通商条約を結ぶなど、その態度は各国に小さな不信感を芽生えさせている。


女王の考えは何なのか? その目的は? それは女王だけしか、まだ知らない。



*以下、◆まで長いわりに大した内容では無いので、読み飛ばし推奨。


シルヴェ・アールヴの各邑が経済的に独立していられる理由。これは、シルヴェ・アールヴ内での資源や物資がほぼ均等に存在している事に起因する。


通常、主たる交易品は食糧の他に、生産・加工場所が限定されがちな金属製品または金属そのもの宝石など、そして各地域独自で発展した文化物(染料、陶器、芸術品など)などが考えられる。


シルヴェ・アールヴ内では、これらが遍く、均等に存在している。


シルヴェ・アールヴは国全部が森で覆われており、また植生がどこもかしこも似たような状態という非常に奇妙な構造をしている。これは数百年前からエルフ達が、各邑での不公平を無くそうと森を魔改造しまくった結果であり、多少気候や土壌が変わろうとも元気に生育できるようになった各植物の力による。


故に、各地域で食べられる農作物に変化が無い。どこもかしこも似たような果実や穀類を食べている。


そして金属製品は、女王の軍隊や一部金属を産出できる地域の邑以外では使われていない。なぜなら使う必要が無いからだ。


金属製品は農具、工具の作成にほぼ必須であると考えられるが、シルヴェ・アールヴ内ではその殆どを魔術によって代替可能である。


農具は木製の鍬、鎌などに魔術を付与して硬度や切れ味を増せばよく、その木製品を作るための工具は石を魔術で加工して作る。


この加工技術を持つ者達は、各邑に数十人規模でおり、また後進の育成も積極的に成されているので途切れることは無い。


そして材料の木や石は無限と言えるほど大地から取れる。壊れても魔術で修理するので、シルヴェ・アールヴ国内の道具はエルフ並みに長寿が多い。金属製品をわざわざ作ったりする必要性が無いのである。


それでも一部軍隊では使用されているが、金属製品への魔術の付与は余り得意ではなく、魔術を付与された木剣や木槌に負ける程度の金属加工技術しかないので、そこまで有用でもない。敢えて利点を挙げると燃えない事だが。


鍋やフライパンは? という方もいるだろう。土鍋がある。陶器製作技術も各地域で似たり寄ったりなので、これも余り交易品にならない。


シルヴェ・アールヴ国内は、地産地消の原則が各地域でしっかり根付いているのである。


また貨幣も木製である。


元々ある邑で外部からの客人が、その邑の問題解決に貢献した見返りとして、「この木片を持っている者にはある一定の便宜を図る」と、衣食住の保障を約束した手形として豪族の紋章が刻まれた木片を下賜されたことが発祥とされる。


その後、木片を手形代わりにする風習が他の邑にも拡散し、様々なデザインの木片手形が流通し、規格や保障内容の画一化が整備され、ついにそれらの元々の意味を超えて通貨として信用されるに至った。


今日では、シルヴェ・アールヴ内での商取引は、各邑が発行する小木貨、複数の邑が共同で発行する中木貨、王家の発行する大木貨が、それぞれ銅貨、銀貨、金貨の位置付けで流通している。


木貨は全て安定性と保存性の高まる魔術が付与されており、そうそう破損することはない。ある意味紙幣の先駆けでもある。(燃えたら終わり、という点も含めて)





③特産物・産業


農業・林業、そして意外に思われるかも知れないが、水産業が挙げられる。


シルヴェ・アールヴの南方はほとんど海に接しており、その地域では海洋での水産業が盛んである。だが、消費先は主にエロハイム共和国である。エルフ達はそもそも魚を余り好まない。海に面している地域のエルフは普通に食べるが、内陸部では半ばゲテモノ扱いされる。これが元で、王家と邑の合同会議において不和が生じることもある。


エルフの漁師達は、普通のエルフもダークエルフに見えるくらい真っ黒に焼けながら、温暖な南の海の魚を釣り上げ、乾燥させて干し魚にしたり、あるいは塩漬けにしたりしてエロハイム共和国まで送っている。


農業は主にフルーツが名産である。柑橘類、林檎、葡萄、バナナ、ナツメグから苺や各種ベリー。季節感も地域も無視してどかどか収穫される。基本邑内で消費されるが、余った分は他国へ輸出される。


林業の担い手は、樹人が多い。何を言っているか分からないかも知れないが、樹人は他の普通の木々に対してそれ程愛着は無い。むしろ、場合によっては自分達の生存圏確保の為、積極的に伐採することもある。伐採と言っても、折って倒すか引っこ抜くかであるが。


それをエルフ達が二束三文、あるいは只で買取り、加工して材木にする。が、割りと余剰に出来てしまうことが多く、自分達で使い切れなかった分は他国に輸出している。

シルヴェ・アールヴ産の木材は丈夫でしなやか、また長持ちしやすいので建材としてエロハイム共和国やガンザード、その他の国で人気が高い。


また、国家全体で余剰在庫が生じ易い代物でもあり、シルヴェ・アールヴの主要な輸出品である。木材に関しては、全国的に流通が(主に国外に対して)成されている物品である。



④軍隊


シルヴェ・アールヴの軍隊は、その国力に対して少なめである。常備軍の総数はエロハイム共和国の半分にも満たない。


これは国土防衛の役割を樹人トレントに依存している面も影響している。また、樹精霊や森に住む動物や魔獣達も、外敵に対する防衛網として機能するので、最小限の戦力で良いのだ。


邑単位での私軍の保持は低く制限されているが、王領ではこの制限が無く、国軍の殆どが女王膝下である。

国軍は戦闘力よりも統率力の保持に重きが置かれている。常備軍の数は少なく、仮に攻勢に出る場合は徴兵しなければいけない。人口は十分だが、徴兵された者達を指揮する士官、下士官が大量に必要になる。


その為シルヴェ・アールヴの国軍の構成は、一般兵=下士官≧士官>将校というとても独特の人数構成になっている。

一般兵に対しても、教育に時間と手間をかけ、即座に下士官として働けるような練度を保っている。


そして、エロハイム共和国に倣い、シルヴェ・アールヴ独特の特殊部隊も存在する。



・『女王の操人形クイーンズ・マリオネット』』


シルヴェ・アールヴの最精鋭特殊部隊の名称で、隊の紋章には、武装した人形が描かれている。女王の意図(糸)に沿って踊る人形であり、部隊員は人形の部位の名前を関する。



戦闘能力、魔術知識、魔術行使能力、そしてある一芸に特に秀でた者が人形の一部になれるのである。



戦闘能力に秀でた者として『剣』、『弓』、『矢』などが居る。


諜報に優れた者は、『耳』、『目』、『声』など。


変り種として、『足』が居る。シルヴェ・アールヴでは自国の通信魔術が解析されて、通信を傍受される危険性を鑑み、重要な報告書を紙媒体で届ける事にしている。『足』は伝令役として、最も忠誠心が高く、移動力の高い(転移魔術が使える)者が選ばれる。



他にも、『剣』や『弓』を統括する『腕』、全体を統括する『頭』、トータルバランスに優れ、各部署に任意に助っ人に入る『指』なども居る。


そして近年、最も特殊な人材が『女王の操人形』に入隊した。


その名は『時』。凄まじい魔力を有し、高度な魔術を使いこなすという以外に情報が殆ど出ていない、謎の隊員である。

人形の部位を冠する名前は、そのまま役割に直結する安直なものである。だが『時』とは何か? 真相を知るのは、女王と『頭』だけである。




・ガンザード


エロハイム共和国、シルヴェ・アールヴと同盟関係にあるドワーフの王国。大陸北方にある山岳地帯に囲まれた国家であり、三国同盟の中で最も苦難の多い歴史を歩んでいる。それでもドワーフ達は持ち前の根性と努力によって少しずつ、国を良くしようと頑張っている。だが、彼らの未来が明るいかどうか、それは誰にも保証出来ない。


①国家の歴史概略


ガンザードの歴史は千年前の悪魔大戦後、二百年程経ってから始まる。当時、悪魔対戦によって大陸の大半を占めていた魔法帝国が瓦解し、領土的空白地帯が多方面にかなり多く存在した。そんな中、あるドワーフの一族が、悪魔大戦の傷痕の大きい北方の山岳地帯を開拓し始めた。それが現在のガンザード王家の祖である。

元々、現在神竜王国領になっている、山岳地帯西南の土地の大地主だった彼らは、他の勢力が台頭して周辺を固めて行く中、勢力争いに負けぬように次なる入植地を模索していた。そこで目を付けたのが、誰も手を出そうとしなかった、北方山岳地帯である。

山岳地帯は悪魔大戦中において上位に入る激戦地であり、戦いの余波は地形を変え、呪われた大地を残し、とても人の住めるような状況では無かった。

その代わりに、豊富な鉱物資源が埋蔵されており、有望な鉱山となり得る土地が非常に多く存在した。更に、大戦中に使用された魔術道具や兵器などの遺物、悪魔の屍骸という動力源、温泉地帯、なども存在した。

調査の結果、それらの事実が判明し、ドワーフの一族、後のガンザード王家は入植を決定、私財を投じて山岳地帯の開発を進めていった。

その最初の入植地が、現首都のガルザックである。ガルザックに入植して程なく、その地が宝の山であることにガンザード王家は確信が入った。金銀銅鉄、宝石、鉱石何でもかんでも、ちょっと掘るだけで山ほど入手出来た。更には魔法帝国時代の遺物も見つかって失伝技術の再構築も進み、様々な分野での研究がどんどん進んだ。

周辺の勢力との小競り合いも、圧倒的なまでの経済力と生産力、帝国時代の技術を応用したゴーレム軍団や装備の質によって終始優位に立ち、いつしか北方の盟主とまで呼ばれるほどの勢力になっていた。その頃には山岳地帯全域に入植が終わり、ガンザード王家の樹立が宣言され、その一族と特に貢献したドワーフに爵位が与えられ、現在の王家の原型が出来上がった。

そのまま発展を続ければ、恐らく世界一の大国になったであろう国家は、その成熟期に予想外の大戦に巻き込まれた。


竜大戦である。


王家の樹立から約二百年、突如全世界への征服戦争を布告した神竜王国が、破竹の勢いでガンザードに迫った。

周辺国家が次々と併呑される中、ガンザードは北方の盟主として神竜王国の侵攻を止めるべく、大軍を以って当たった。だが結果は惨敗であった。

巨大な黄金竜の前には、最新式の鉄のゴーレム軍団も、壮麗な具足に身を固めた戦士達も成す術が無かった。国軍の実に六割を投入した戦いは、八割近い損失を出して敗北。ガンザード西南の、貴重な食糧源である穀倉地帯を失陥した。そのまま黄金竜が山岳地帯にまで侵攻してきたなら、栄華を誇ったガンザード王家も幕を閉じていただろう。だが、不幸中の幸いが王家の首を繋いだ。

黄金竜は山岳地帯への攻撃を面倒に感じ、火竜の一軍に後処理を任せて他の戦線へ移動したのだ。この火竜の一軍は、大敗したガンザード王国軍など鎧袖一触、と大した策も無く兵を突撃させた。

しかし天然の城塞に坑道や塹壕や防塁などを多数設置し、難攻不落の城を作り上げていたガルザックは、逆に拍子抜けする程の大勝を得る。

焦ったのは火竜軍である。任された軍は何度突撃させても一向に戦果を上げず、一切進まぬ攻勢に火竜は苛立ち部下に八つ当たり。そんな状態で士気が上がることも無く、神竜王国ガンザード方面軍の侵略は完全に止まった。


ガンザード側に都合の良い事に、火竜軍はその事実を黄金竜に伝えなかった。むしろ順調に侵略しているとの嘘の報告を上げ、そのため黄金竜が飛来することも無かった。

『七度攻めて、七度落とせぬ』と語り継がれる防衛戦は、それらの運も絡んでいるのだろう。

その後、エロハイム共和国とシルヴェ・アールヴの間に三国同盟を結び、一時は逆転攻勢によって失地回復した時もあったが、真実に気付いた黄金竜の攻撃によって敗退。最終的には、停戦後、ガンザードは国家の命脈の一部である西南の穀倉地帯を失った。


その後の歴史は、特筆できることは無い。ただ辛い時期であり、今もそうである事だけは記せる。食糧問題から発生した飢餓。ゴーレムの動力部に悪魔の屍骸を使っている事による対立から天使族の離別が発生。度々起こった神竜王国との小競り合い。神竜王国への恨みから自然発生した国家主義者達との争乱。


同盟関係にあるエロハイム共和国の援助が無ければ、空中分解していた可能性もあった。しかし、ドワーフ達はそれらを乗り越え、次なるステージ、神竜王国との和解に踏み出している。それが吉と出るか凶と出るか、国内でも賛否は分かれている。だが、それもきっと乗り越えるだろう。そう魔王は願っている。



②政治体系


国家の歴史概略にも記載したが、政治体系は王政であり、地方を貴族達が治めている。基本的に、首都ガルザック周辺を王家が治め、そこから近い土地を血筋の近い公爵が治め、首都から遠くなるほど爵位が低くなる傾向にある。

王家と貴族の力関係は王家の方に分がある。これはガルザック近辺が最優良鉱山地帯であり、各種精錬施設や研究機関が最も整っているのもガルザックであるため。ガルザックだけで、ガンザード全体の総生産に対する割合は、およそ一割半から二割とされる。


政治体系については一般的な王国と大差は無い。なので、一つの逸話を載せる。

百年ほど前から、王家と貴族の力関係は徐々に拮抗状態に移り始めている。その理由は、王家が推進するある巨大事業による。三百年前の国王が、ドワーフを作り出した大地の神カリムヒから夢の中で啓示を受け、その製造を決め、国家事業として勅令を出した。


『巨大ミスリルゴーレム』の製造である。


夢の中の啓示では、『いつの日かガンザードに未曾有の混乱が生じる。それらに対抗するために、ミスリルで出来たゴーレムを造り、備えよ』とあった。


当時の国王も最初はお告げを無視していたが、その夢を何度も見る内に次第に未来に恐怖を覚え、折りしも公共事業による経済振興策が部下から提案されたため、強引にミスリルゴーレムの製造を公共事業として始動させた。


だが、巨大なミスリルゴーレムの製造は研究面でも資金面でも課題が山積みであり、三百年経過した今でも完成には至っていない。湯水のように使われた資金は王家の力を弱体化させ、インフラ整備を後回しにされた市民からの感情も悪い。


だがそれでも、外見は形に成ってきたミスリルゴーレムは、一部の市民からそれなりに人気があり、国家防衛の象徴として語られ、立ち上がる日を夢見させている。



③特産物・産業


特産物は、何と言っても豊富に取れる各種金属資源である。金銀銅鉄、ミスリルや硝石、宝石なども採掘され、ガンザードの主要輸出品目の一部である。

しかし、多くを占めるのは、ドワーフ職人謹製の工業品である。

武器防具だけで無く、工具や銀食器、宝飾品や細工物、貨幣、建材に至るまで、ありとあらゆる金属加工品がガンザードで生産され、輸出されている。

主要な取引先はエロハイム共和国だが、ガンザード製の質の高い武具を求め、小国家群やヒッポリトなどからも商人がやって来る事もある。シルヴェ・アールヴに対しては、金属製品を余り使用しないお国柄もあって取引の量も少ない。


農業・畜産業もあるにはあるが、食糧の国内消費を賄える程の生産力も無く、専らエロハイム共和国から輸入に頼っている。肥料の開発や連作の研究、農業ゴーレムの開発や畜産の効率化などに相当の労力と時間を払って、徐々に生産高は上がっているものの、輸入が途切れることはまず無いだろう。


意外な事に、観光業もガンザードの主要産業の一角を担っている。ガンザード国内は、全国的に天然温泉が広く分布しており、それを目当てにした旅行者や湯治に来た冒険者などから、各地で一定の収入を得ている。一番人気がネブルドームで、特徴的な都市構造もあり、エロハイム共和国の富豪や遠くシルヴェ・アールヴから物見遊山に足を運ぶ者も多く居る。



④軍隊


軍隊は、ドワーフの兵士で構成された戦士軍団と、戦闘用ゴーレムとその整備兵で構成されたゴーレム軍団の二種類が存在する。

前者は主に貴族達の私兵が該当し、後者は王家直轄のゴーレム軍団が相当する。

だが貴族が一切戦闘用ゴーレムを持っていないわけでは無く、小~中規模の部隊で運用するか、極めて強い一体のゴーレムだけ保有するなど、先祖伝来の武具のような扱いでそれぞれの貴族の事情に合わせて所有している。

戦闘力としては主力級であるが、維持費が決して安くない為、王家程の規模で保有できる貴族は居ない。


ガルザックには、王家と首都を守る鋼鉄のゴーレム五千体が常駐しており、度々侵攻してきた神竜王国の軍勢を跳ね返してきた。鋼鉄のゴーレムは各種魔術道具や機械で固められ、軽い矢など受け付けず、竜族のブレスにも耐える事が出来る。

だが、複雑な命令は実行出来ない、落とし穴などの罠に嵌ったら自力で脱出できないなど、融通の利かない部分もあり、決して無敵の存在では無い。型に嵌った戦いでは強いが奇策に弱いのが難点である。そこを補うのがドワーフ戦士軍団の役割でもある。


近年、機械技術を組み合わせ、瞬間的な出力を飛躍的に向上させた新型のゴーレムも製造され始めた。


だがいずれにしても、動力の大部分は『悪魔の屍骸』に頼らざるを得ず、ゴーレムを主力にする限り、天使族との和解が難しいのは変わらないのであった。



・小国家群


「小国家群は、五百年前の竜大戦以前の世界の有り様、それを留めた貴重な地域である」


歴史あるいは地政学の研究家は時にそう述べる。小国家群は竜大戦以前の、世界がまだ混沌とした群雄割拠の時代の名残を残した地域であり、国家同士の紛争や小競り合いの耐えない鉄火場である。


だが戦乱の炎は燃やし尽くした物を灰に変え、その灰は肥料となって実りをもたらす。


突発的に燃え上がっては消える戦争の火は経済活動を活発化させ、古き文物を焼き尽くし時に新たな概念や創造的な建築物を生む事もある。


経済としての新陳代謝が活発な地域。原初の混沌を思い起こさせる破壊と創造が共存する場所、それが小国家群である。



①地域の歴史概略


小国家群の様な形態は、五百年前の世界情勢そのままである。竜大戦以前は、北のガンザードと南のシルヴェ・アールヴが主に大国家として認知され、エロハイム共和国ですら中堅規模の国家とされ、同程度の大きさの王国や国家は幾つかあった。それらの間を縫うように多数の小国家や都市国家が存在していた。


現在小国家群の内情は以下の状態である。



Ⅰ.三都市保有:王国1、共和国1、大公国1  計3国


Ⅱ.二都市保有:都市連邦2、王国2、公国1  計5国


Ⅲ.一都市のみの国家:都市国家9、自治領3、騎士団領1、 計13国



総計21の国家や自治領、同盟が混在している。

五百年前には大陸全土で、上記の数を倍以上にした数字の国家が入り乱れていたのである。


竜大戦の際、エロハイム共和国が周辺の国家を併合吸収して大きくなったのは前述の通りである。そしてエロハイム共和国、ガンザード、シルヴェ・アールヴと言う防波堤に守られて、小国家群は竜族の脅威に晒される事無くその形態を維持できた。


しかし、竜大戦時にぬくぬくと平和を貪っていたかと思えばそうでも無い。彼の国家群は、竜以外の全種族の尊厳が失われようとしていた大戦の真っ只中に合っても、ずっと内輪揉めを続けていたのだ。



その戦争の理由は諸々あるものの、当事国になるのは分類Ⅰの三都市を保有する比較的大国家(笑)が大半であった。



その中の一つ、王国の名前は『カーンズ麗王国』。

王国の祖は魔法帝国時代の貴族と言われるが定かでは無い。魔術に秀でる者が多く、魔術師隊を中心にした強力な軍隊を有する。しかし白兵戦を担う兵隊の数が少なく、専ら冒険者ギルドや傭兵国家ヒッポリトから兵隊を募って戦う。

王族や貴族は揃って華美な貴族趣味的建築や文化物を好み、それらの購入費用で国庫が圧迫され、放漫財政が元で借金が嵩む事もしばしば。その解決の為に、他国に難癖付けて戦争を吹っかけては賠償金をせしめる、などのはた迷惑な借金返済方法を取る事もある。国家名に対し全く華麗でない行いが皮肉である。

二つの自治領の宗主国であり、実質5都市を保有する小国家群の中でも大きな国家である。

だが同時に、二つの都市に対して自治を認めなければいけない程弱体化しているとも言える。



同じく三都市保有する共和国の名前は『ラ・トスカット共和国』。

元は独立した三つの都市国家だったが、ある時その都市の一つで、『人間種至上主義』と言う、人間以外の種族を排斥して人間だけの国家を作ろう、とする思想を政府に提言した思想家が出現した。その思想にあろう事か別の二国も同調してしまい、一つの共和国となった経緯を持つ。小国家群内では程度の差はあれ、別種族の生存権は認められているが、ラ・トスカット共和国内ではそれが無い。国民は排外思想によって一致団結し、産業や軍事における士気は高めである。軍隊は強力な常備軍が存在する。また人間種であれば他国との交易は認められるので、一応他の国とも付き合いはある。しかしその苛烈な思想が他国との軋轢を生むことは決して少なくない。

ちなみに天使族だけは排斥の対象外であり、むしろ強い尊崇の念を以って迎えられる。

一つの都市連邦と同盟関係にあり、三つの都市国家を庇護国として抱える。カーンズ麗王国には庇護国や同盟国へ宣戦布告され、事を構える事が多い。逆にこちらから宣戦布告をする事もある。



最後の三都市保有国の名前は『ナゼム大公国』。

この国の首都に当たる部分は、元々カーンズ麗王国の治めていた地域だった。その昔一人の庶子にあたる王子ナゼムが政争に敗れ追いやられた地であり、他国との諍いの最前線の地でもあった。要は厄介払いのついでに、他国との戦争で謀殺してやろうとされたのである。だがナゼム王子は諦めず、無我夢中で戦争に明け暮れ、何と二国家を打ち破り国家を併呑した。それらの地域を王国に差し出せと言う兄弟からの脅しを拒否すると、攻めて来た兄弟の軍を返り討ちにして長兄を捕えた。そして当時の王に『後継ぎを返して欲しければ独立を認めろ』と脅しをかけたのだった。自分を王にしろとか言わないあたり、王国に愛想が尽きてたのかも知れない。

晴れてナゼム王子は大公国の祖となった。一応カーンズ麗王国とも血縁関係はあるのだが、その関係はかなり冷え込んでおり矛を交えたことも何度もある。

カーンズ麗王国と同じく精強な魔術師隊がいるが、それ以上に強力な騎馬軍団を有しており、平地での戦いではかなりの勝率を誇る。小国家群に唯一ある騎士団領の宗主でもある。



竜大戦以降は、大体上記三つの大国家の諍いにその下に着く国家が加わり、残りの国家が蝙蝠の様にあっちこっちと共闘するか、あるいは傍観もしくは軍需物資を卸すなど商売する戦争の図式が多い。

竜大戦以前においては、国家の入れ替わりが激しく、正確な歴史は残っていない。

長い歴史の中で国家は変遷してきたが、その様な争いを五百年、いや千年間変わらず続けていた地域。それが小国家群の歴史だ。




②政治体系


小国家群の政治体系は各国家で無論異なるが、一定の傾向はある。


政治が議会制の場合はエロハイム共和国、王制の場合は主にガンザードを参考にした政治体系を模倣する傾向が強い。


これは、小国家群内で国家が興る際にそのモデルとなる国家がこの二国くらいしか無いからだ。ガンザードは八百年、エロハイム共和国に至っては千年もの間国家として存続しており、入れ替わりが激しい小国家群の国家に対して、統治や法整備の歴史が深く充実している為である。


その為、小国家群の官僚や貴族はエロハイム共和国やガンザードに留学して、それらの制度を学ぶ者が多い。


歴史の長さではシルヴェ・アールヴも相当長いが、シルヴェ・アールヴは排他的な地域も多く、また統治方法がやや特殊な部分もあって参考にし難い。なので余り留学する者も居ない。



③特産物・産業


小国家群は大体どの地域も食糧生産能力は高い。

平地が多く、川や湖などもそこそこあり、春夏秋冬の気候もほぼ安定している。耕作にしろ酪農・牧畜にしろそこまで困る事は無い。


北部と南部は耕作に向いていないが、海が近いため海産物による食糧供給を行っており、北部の冬季以外は飢饉もほとんど無い(冬場は海が凍って漁に出れないから)。



でも、そのふんだんな食糧で増えた人口は戦争に消費される。



第一次産業以外の産業では、地域によって偏りがある。


北部:鉱山開発、武器防具や工具の作成、鉄鋼業が主。山がちな地形であり、鉱山も豊富。燃料となる材木が不足しがち。


中部:燻製肉や乳業、ソーセージ、パン、ワインやエールなどの食品加工業が多い。他に毛織物、革製品も生産される。綿の生産が近年増えている。


南部:林業、建材となる材木加工、薪や木炭の生産地。主にシルヴェ・アールヴから木材を輸入し、それを加工する。自国で林業を営む国もあるが、温暖な地方なので最近は南国フルーツなどの果樹園に徐々に移行している。また染料の生産・加工も行っている。



これらを小国家群内で循環させ、余剰分はエロハイム共和国やガンザードに輸出される。シルヴェ・アールヴも、国境付近の邑とは交易する事が多い。



④軍隊


小国家群内で強い影響力を持つ準軍事組織がある。


それは冒険者ギルドである。


常備軍を備える余裕の無い国家は多く、戦争時や軍事行動の必要性に迫られた時は、まず冒険者ギルドに頼る必要がある。常備軍がある国家でさえ、戦力増強や補強の際は冒険者ギルドに依存する事も多々ある。


冒険者ギルドは傭兵ギルドとしての側面も持つが、小国家群ではそれがより顕著に現れている。


また平時においても、雑用やちょっとしたいざこざの処理、行商人やキャラバンの護衛として冒険者の需要がとても多い。

また貧しい村から増えすぎた人口の口減らし、あるいは野望を胸に村を飛び出した青年などが冒険者ギルドに流れ着く事も多いので、人員の供給も十分釣り合っている。



冒険者や傭兵も、次はどこが稼げそうか(戦場に成り易いか、揉め事が多いか、護衛を欲しがっているか、など)の情報を得やすいので、情報交換の場として冒険者ギルドをよく利用する。



その為、この地域の冒険者ギルドは特別な存在感を持っている。国家の趨勢すらギルドの胸先三寸で決められるとさえ言われているが、飽くまでも冒険者ギルドは中立の立場を崩していない。



例えばA国とB国の戦争時に、両国の町で冒険者ギルドが募兵したとする。冒険者ギルドはどちらの町の労働条件も公平に記し、冒険者達に選択の機会を与えている。


もし仮に、A国の資金が少なく、虚偽の労働条件を出したり、嘘の労働条件を書けと脅したら……?


冒険者ギルドはその国の都市から即座に撤退する。もっと酷い場合は、冒険者ギルドから、『A国殲滅作戦』の依頼が各都市の冒険者ギルドの掲示板に貼られる事になる。スポンサーはB国と冒険者ギルドで、報酬も大目に設定されるので、冒険者はこぞってA国を攻める戦に参加するだろう。



なので、戦争の際は冒険者の競りが大賑わいになるのだ。金が無い国は武勲次第で爵位を与えるなど、地位や名誉を餌に冒険者を集める事すらある。なので、小国家群の王国の貴族には冒険者出身の家系も偶に見られる。



また中級冒険者が上級冒険者を率いる例も見られる。


歴戦の中級冒険者は指揮官として優れるので、個人の武力はともかく統率力においてぽっと出の上級冒険者を上回るのだ。そんな中級冒険者は、大体の場合『特級・指揮官』のクラスを持っている。初級冒険者は何回も戦場を生き抜けば試験免除で中級冒険者に上がれるので、特級獲得と同時に中級にランクアップできるので、あまり特級・指揮官持ちの初級冒険者は居ない。



・ヒッポリト


<未記載>


・エグリゴリ


<未記載>



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