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8.冒険者登録

お待たせしました、第八話の始まりです。

「では次の者!」


 門番の兵士達の声に控えていたバアル達は進み出る。


「どこから来た? 滞在目的は?」


「東のミッド村から来た。滞在目的は冒険者としての仕事を探すためだ」


「ミッド村? …ハラウェイ隊長が言っていたのはお前達か」


「ハラウェイ殿から何か言われているのか?」


 兵士は何やらメモを取り出すとそれを眺めながら答えた。


「ああ、岩巨人とゴブリンの盗賊団を捕えた優秀な冒険者だそうだな。えー、二本角の魔族でリーダーのバアル、ダークエルフ? のアナトー、剣士のマグナダインに…、眼鏡の魔術師カルニウェアン、なんだこの(大食い)の記述は? まあいい、で黒ずくめのファフニールか。人相、性別は合っているな。お前達のことで間違いないな?」


「ああ。間違いない」


「そうか、少し待て」


 そうして詰所に入った兵士は小さな皮袋を持ってきた。


「これは報奨金だ。お前達のおかげで任務が早く終わったそうだからな」


 そして皮袋をバアル達に渡す兵士。


「入市税は報奨金から引いてある。荷物にも問題無いな? なら通ってよし」


 荷車の荷物を確認していた兵士が問題無しと頷くと、兵士は横の道を指し示した。

 バアル達は門から中に入ってすぐ近くでアラン達を待っていた。しばらくするとアラン達も入ってきた。その頃にはリデロも立って歩けるまで回復していた。


「待たせたな。しかしあんたら凄いな!? 岩巨人とゴブリンの盗賊団を捕まえたんだって?」


 アランは興奮したようにバアル達に話しかける。しかし当のバアル達は今一歯切れが悪い。


「うーーむ…、いやそこまで凄くは無いと思うぞ?」


「そんなことないぞ。巨人族ってのはどいつもこいつもやたら強いんだ。普通は単独の巨人相手なら中級ミドルクラス冒険者二~三チームは必要だぜ?それがゴブリンの盗賊団まで一緒にいるとなると、上級ハイクラス冒険者が出て来なきゃ行けねぇ」


「ま、まあそこら辺の話も後で飯食いながらでも話してやるよ。それより冒険者ギルドに連れて行ってもらいたいんだが?」


 マグナダインの言葉にアランは頷く。


「ああ、分かったよ。だが後でしっかり話てもらうからな?」


 そうして一行は冒険者ギルドに向かった。


 ……


 冒険者ギルドは元々エロハイム共和国で生まれたものでなく、傭兵国家ヒッポリトと探求者の国エグリゴリとの間の連絡機関として発祥した。

 

探求者の国エグリゴリは知識の探求を国是としている国であり、遺跡の探索や科学技術の研究に留まらず、宗教の秘奥から国家機密まで貪欲に収集したため、周辺国とのトラブルが耐えなかった。その為、エグリゴリは傭兵国家ヒッポリトと専属契約と言う名の同盟を結び、他国を牽制していた。その後、行き過ぎた知識の探求により国家壊滅の危機に陥り、その反省から現在は主に科学研究や遺跡探索を主に行う国家となっている。

 

連絡機関もその頃から冒険者ギルドとして遺跡の情報共有や傭兵業の斡旋、果ては町の小さな依頼まで手広く請け負う現在の形に少しずつ近づいていた。そして、各国は便利屋兼傭兵斡旋所としての機能に目を着け、冒険者ギルドの誘致を始めた。冒険者ギルドの設置後、治安が改善や町のトラブルの低下が報告されてからは、瞬く間に全土に広まっていった。


 現在、冒険者ギルドはエグリゴリ国の手を離れ、各国間で相互に連携しつつどの国にも属さない独立した勢力として存在している。


 ……


「…、とまあ冒険者ギルドにはそんな歴史があるわけだ」


 冒険者ギルドに向かう道中、アランはバアル達に自分の薀蓄うんちくを語って聞かせていた。喋ることが好きらしい。


「ほう、中々歴史があるのだな」


「まあここら辺の歴史はあまり知られていないだろうな。俺も先輩の冒険者から聞くまでは全然知らなかった。町の便利屋って認識が一般的だろうな」


 アランが語り終える頃に、ちょうど冒険者ギルドに着いた。

その建物一見すると大きめの酒場のようにも見える。カウンターと複数の机に椅子の組み合わせは酒場と同じであるが、料理が提供されている様子は無く、カウンターの奥も酒瓶でなく書類や本棚が所狭しと並んでおり、数人の事務員が忙しそうに働いている。カウンター手前の机や壁にかかっている掲示板の前では数組の冒険者パーティーがたむろしていた。


「俺達は依頼の達成報告と処理をしてるから、バアル達はそっちの受付で登録しておくといい」


「分かった。ではまた後でな」


 おう、と応えてアラン達は奥のカウンターに進んで行った。


 そしてバアル達は目の前の『冒険者登録』と書かれた受付(こっそりカルニウェアンが翻訳魔法を皆にかけていた。)に進んだ。受付には三十代位のショートヘアの女性が柔らかな笑みを浮かべながら待っていた。バアル達の会話を聞いていたのだろう。


「こんにちわ。冒険者登録をされるんですね?」


「うむ、五人分頼む」


 受付の女性は既に用紙を五人分用意していたようで、すぐに手続きに入る。


「では順番にお願いします。まずはあなたから」


 そしてバアルに視線を向ける。バアルは前に出る。


「では、お名前、種族、生年月日、出身地、特技や得意な戦闘術を教えて下さい」


 ピタリとバアルの動きが止まる。


「生年月日…?」


「ええ、年齢がいくつであるかは重要ですから。その人の才能にもよりますが、あまり高齢の方ならば事故の起きない内に引退をお勧めする場合もありますし」


「ええーと…、…誕生日は今日だ! 歳は25になる!」


「あ、汚ねぇ! 俺もその手でいこうと思ったのに…」


 後ろからマグナダインの悲痛な囁きが聞こえてくるがバアルは無視した。なおバアルの年齢は2500歳位である。


「そうなんですか? おめでとうございます。今年が共和国歴832年だから…、807年の…、萌葉の月15日生まれ、と。ではお名前などその他の事項を」


「ぬ…、名前はバアルだ。種族は魔族。出身地は…言わなければダメか?」


「別に秘密でも構いませんが、あなたが亡くなられた時に死亡連絡等ができない可能性もありますよ?」


「ああ、問題無い。連絡先は無いからな」


 バアルの言に何か勘違いしたのか、少し沈んだ表情で受付の女性は謝る。


「ごめんなさい…。話しづらいことを聞きましたね」


「いや…。残りは特技や戦闘術だったな。俺は素手で戦うことが得意だ」


「素手ですか? 格闘僧の方には見えませんが…?」


「む、格闘僧? 何か知らないが俺はただ単に武器を使うより素手が得意なだけだ」


「そうですか…。素手の戦闘に習熟していると…。特記事項の所は『拳闘士』としておきますね」


 そしてバアルの情報を素早く紙に書いていく女性。書き終わると書類を後方の別の事務員に渡す。


「では後ほど規約の説明と簡単な検査を行って登録は終了です。その時に冒険者証明書をお渡ししますので忘れずに受け取って下さい。…では次の方」


 するとするりとカルニウェアンが前に出る。


「はい、でわバアルさんと同じ様にお名前、生年月日等を教えてください」


「名前はカルニウェアンです。生年月日は花吹きの月の4日で今年で20歳です。種族は魔族です。出身地はバアルと同じです。特技として魔術を使えます」


「あら、魔族の方でしたの?」


「ええ、よく勘違いされますが」


「…はい分かりました、特記事項には『魔術師』で登録しておきます。ではバアルさんと一緒に待っていてください。次の方」


 カルニウェアンがバアルの方に移動して来るとバアルは声を潜めて問いかけた。


「よくこの世界の暦を知ってたな?」


「そこにカレンダーがありましたので」


 カルニウェアンが示した先には一年分の暦が貼ってあった。


「…早く教えてくれ」


「言う暇がありませんでしたので」


 涼しい顔で流すカルニウェアン。


 その前ではマグナダインが四苦八苦と答えていた。


「あっと、名前はマグナダイン。生年月日は…。萌葉の月の1日。歳は28だ。種族は…人間。出身地はバアルと同じだ。てか俺ら五人とも出身地一緒なんで。戦闘術は剣が得意だ」


「ふむふむ…、では特記事項の所は『剣士』としておきます。次の方」


 マグナダインが額の汗を拭いながらバアル達に向かって歩いてくる。


「ヒュ~…、危ねぇ、助かったぜカールお嬢。うまい答え方を用意しておいてくれて」


「あなたを先に行かせたらどんなボロが出るか分かりませんでしたからね」


 そんな会話が交わされる中、アナトーが登録していた。


「名前はアナトー、生年月日は萌葉の月の2日です。歳は25歳。ダークエルフですわ」


「え?ダークエルフやエルフの方は成人体型になるのは100歳前後と聞きますが?」


 ワタワタと慌てるアナトー。


「ま、間違えましたわ! 歳は125歳ですの。ちょっとサバ読んでしまいましたわね、オホホホホ…」


 苦しげに笑うアナトーを見て受付の女性も苦笑する。


「はい、分かりました。出身地はバアルさんと一緒で…、特技はありますか?」


「ええ、私は魔獣使いですの」


「魔獣使いですか? 動物を使う方はいらっしゃいますが魔獣となると…、聞いたことがありませんね」


「我が家の秘伝ですの。最も今使える魔獣はおりませんが」


「なるほど…、では特記事項は『魔獣使い』で登録しておきますね。次の方」


 胸を抑えながらアナトーはバアル達に向かって歩いてくる。


「あ、危なかったですわ。この世界ではダークエルフの成人年齢は100歳ですのね…」


「以外な落とし穴でしたね。…ところでアナトーっていくつでしたっけ?」


 声を落として問いかけるカルニウェアン。


「そうですね、100歳位かしら? ついバアル様と同じ年齢にしてしまいましたわ」


 頬を赤らめて、せめて歳だけでもペアで登録したかったですわ、と言いながらモジモジするアナトーをカルニウェアンは半眼で見つめた。アナトーの後ろではファフニールが登録を始めていた。


「はい、ではどうぞ」


「…名前はファフニール。生年月日は…分からん。歳は…2000から先は数えてない。種族はドラ…」


 ゴン!


 ファフニールの横手から伸びてきたバアルの拳骨が後頭部を殴る。


「失礼、ちょっとこいつは頭が緩いのだ。ちょっと説教するので待て」


「は、はぁ…」


 そう言ってファフニールを引きずっていくバアル。連れて行った先では、


「生年月日は覚えやすい日にしろ…!」


「歳は二十でいい…!」


「種族は人間にしとけ…!!」


 などの会話が微かに漏れ聞こえてくるが、受付の女性までは幸いな事に届かなかった。


 しばらく後にファフニールが戻ってくる。


「失礼した。名前はファフニール。生年月日は萌葉の月の3日。歳は20だ。種族は人間」


「はい。…では特技は?」


「む…?」


 ここでファフニールは困った。ドラゴンであることは明かせないし、口下手なファフニールは端的に自分の役割を説明できない。

 周りを見回してヒントを探していたファフニールは通りを馬に乗った兵士が通るのを見た。


「あれだ」


 その兵士の乗る馬を目線は受付から動かさずに指さす。ファフニールは自分がバアルの乗騎であると言いたかったのだが…、


「え?」


 それに一拍遅れて受付の女性が指の先を見る。その時偶然にも騎乗する兵士を隠すように商人に連れられた荷馬が通る。


 それを訝しげに見つめていた受付の女性に電流が走る。


(そ、そうか。この人は自分の事を『荷物持ち』と言いたいのか!)


 荷物持ちは冒険者の中でも重要である。長旅に必要な物資や遺跡から持ち帰る宝物はどうしても運搬しなくてはいけないものであるが、戦闘に関わる冒険者にはその重い荷物は致命的な足枷となる。馬などを使えば運搬量も多くなるが、洞窟などの狭い所には入れないことや、逃亡時に必要な道具だけ残すなどの応用もできないことから、人間の荷物運びは需要があった。…しかし、冒険者としては下に見られる傾向にある。


(この人は頭が緩いとも言われてたし、あんまり特技と呼べるものが無いんだわ…。だから荷物持ちとしてくっついている。でもそれを直接言うのは恥ずかしいから察してくれ、と言うのね…。)


 不器用だが、それでもパーティーに貢献しようとしているファフニールの姿を想像して、受付の女性はホロリときた。しかし、特記事項に虚偽を書くわけにはいかない。


「分かりましたわ…。大丈夫です規約の説明を受けて下さって結構ですよ」


「…分かった」


「あ! ファフニールさん!」


 受付の女性の声に振り向くファフニール。


「その…、強く生きて下さいね!」


 サムズアップで見送る受付の女性に首を捻るファフニールだった。


 ……


 次にバアル達はカウンター奥の個室に通された。個室といってもそれなりに広く、10人程は余裕で入りそうだった。奥には事務机があり、そこには中年男性の職員が座っていた。仕立てのいい服を着ており、穏やかな表情をしている。彼の後ろにはギルドの紋章が刻まれた大きな旗が掛かっていた。


「初めまして。私はセプロン市冒険者ギルドの新人課課長のハサン・ノックです。これからあなた達に冒険者ギルドへの規約を説明します」


 それには答えずバアル達はじっとハサンの後ろの旗を見つめていた。


「…? ああ、ギルドの旗が気になりますか?」


 ハサンは後ろを振り返ると、城のマークの下に剣と本が描かれた紋章を指す。


「これはですね、城のマークが国を、剣と本が冒険者ギルドを表しているのです。つまり冒険者ギルドは武力と知識を持って国家を支える役割を果たしているという意味ですね。これは冒険者ギルドの設立に由来し…」


「いや、そうじゃないんだわ、ハサンさん」


 ハサンの説明をマグナダインが遮る。いつの間にかバアル達は警戒感を滲ませていた。


「では何ですか?」


 ハサンの疑問にバアルが答える。


「その旗の後ろにいるのは何者だ?」


 バアルの言葉に顔色を変えるハサン。しかし、驚いた顔は徐々に笑みに変わっていった。


「おやおや…、これは将来有望な新人が来ましたね。エミリーさん、出てきてくださって結構ですよ」


 ハサンの指示に答えるように旗がめくれ、一人の赤毛の少女が現れる。見た目から、十五から十六歳位に見える。エミリーと呼ばれた少女はすその長いローブを纏い金属製の短杖ワンドを持っており、どことなく勝気な印象を受ける釣り上がった目には鳶色の瞳を宿していた。


「『消臭デオドライズ』と『消音サイレント』を使って匂いも音も消してたのに…よく気づいたわね?

 ま、動物並のその勘の良さは褒めてあげるわ」


 エミリーは肩口より少し長い、ウェーブのかかった赤毛をかき上げながら胸を張ってそう言った。


「いや、魔力ダダ漏れでしたよ?」


 しかしふんぞり返ってバアル達を見下していたエミリーはカルニウェアンに一瞬で切り捨てられた。


「な!? …あ、『魔力隠蔽マジック・マスキング』使うの忘れてた…」


「エミリーさん…」


「ご、ごめんなさいーー!!」


 ハサンに平謝りするエミリーをバアル達は珍妙な生物でも見るかのように観察していた。


「何かこちらを探るような魔法の波動を感じたので警戒しましたが…。なんだったんですの?」


 アナトーは眉根を寄せつつハサンに問いかけた。


「ああ、すいません。説明を受けたでしょうが、これが検査なんですよ」


 ハサンは困り顔で答えた。


「冒険者ギルドとしては、お尋ね者や悪行を働くつもりで冒険者になろうとする者は極力除きたいんです。その為、その人の本質が邪悪であるかを魔法でチェックする必要があったのです。また、私はほとんどの賞金首の顔やその他のデータを把握してます。ここは規約説明の場であると同時に、あなた達が犯罪者、あるいは犯罪者予備軍で無いことを確認する場だったのです」


 ハサンの説明に納得がいったのか警戒感を緩めるバアル達。


「それで彼らは冒険者として相応しいですか?」


「ええと、『邪悪看破イービル・ペネトレイト』の魔法によると邪悪であるという反応はありませんでした」


「へーそうなんだ」


 ファフニールが呟くがアナトーに頭を叩かれて黙る。その行動にハサンは少し疑問を覚えたようだが、それを飲み込むと話を続けた。


「なるほど。では適正は問題無いして、規約の説明に移ります。あ、エミリーさん、今日はもう帰っていいですよ」


「え! …分かりました。失礼します…」


 最後にカルニウェアンをキッと睨んでからエミリーは退出した。


「やれやれ…、彼女ももう少し落ち着きがあれば優秀な魔術師なんですが。あ、失礼。愚痴を言ってしまいましたね」


「構わん。それより規約とやらの説明を頼む」


「はい。まず第一に、依頼に関してです。冒険者ギルドに所属する者は最寄りの冒険者ギルドから依頼を受ける事ができます。旅先の冒険者ギルドが無い町や村でギルドを通さずに依頼を受ける事も可能ですが、必ず報告義務があります。また、そのような場合は依頼が失敗しても冒険者ギルドに責任が発生しないことを依頼人に明確に言っておかなければいけません。これを忘れる人が多いので注意して下さいね」


「賞金首などに関しては?」


「冒険者ギルド以外の国家や都市の公的機関から賞金が掛かっている者に関しては自由に討伐して構いません。報告義務もありません」


 ま、大体の冒険者は誇って宣伝しますがね、と言いつつハサンは続ける。


「二つ目はクラスについてです。冒険者は上級ハイクラス中級ミドルクラス下級マイナークラスの三つに分類されます。そして特級スペシャルクラスという先ほどのクラスに付随するクラスもあります。新人は下級から始まり、依頼を達成していくことでクラスが上がって行きます。依頼の難易度によってそれぞれ受けれるクラスが異なります」


「具体的には?」


「例えば、荷物運びや物探しなどの簡単な依頼は下級冒険者しか受けれません。これはギルドからの信頼度が新人の冒険者に対しては低いので、その人が信頼できる人物かを簡単な依頼を使って見極めているのです。ですからどんなに簡単な依頼でも真面目にこなして下さいね?また実力不足の冒険者でもできるような依頼を通してレベルアップを図って貰おうという意味も持ちます。それに中級などの実力ある冒険者はもっと難しい依頼を受けて貰いたいですしね。ただし、異なるクラスの冒険者で構成されるパーティーの場合、ギルドの判断によって別のクラスの依頼も受けれます。下級冒険者一人と中級冒険者三人のパーティーならば、場合によっては中級の依頼を受けれます」


「昇格の条件とかはあるのかい?」


「ある程度依頼を受けてギルドから信頼度を得られたら、一つ上のクラスの冒険者と一緒に依頼を受けてもらい、一緒にその依頼をこなしてもらいます。そして上のクラスの冒険者が問題無しと判断したら晴れて昇格です」


「特級てなんですの?」


「魔物退治に特化していたり、遺跡探索に慣れているなど、特定の事柄に特化している冒険者には特級の称号が与えられます。先ほども言いましたが、これは上~下級のクラスに付随するもので、この特級を持つ者は現在のクラスに関係なくそれぞれ特化した依頼を受けることができます。特級・魔物退治を持つ下級冒険者は上級の魔物退治の依頼は受けれますが、中級の護衛の依頼はできません。特級を得るには既に何らかの功績を上げていたり、信頼できる機関からのお墨付きなどの特殊な条件が必要になります」


「そう言えばミッド村で聞いたんだが、腕試しとして冒険者が勝手に遺跡に潜ったりしてもいいのか?」


 マグナダインの疑問にハサンはうーんと唸りつつ答えた。


「あまり良くない事なんです。何が起こるか分からりませんからね。下手に強力な魔物を出現させてしまったり、天変地異が起こったりする可能性もありますから。ギルドとしては冒険者のレベルアップのための努力は奨励したいところなんですが…。最近では冒険者としてのレベルアップに使えそうな遺跡の情報収集も行っており、それを提供したりしてますが、勝手に未調査の遺跡に足を踏み込む冒険者が後を絶たないんですよ。ギルド側としては冒険者の自己責任の上で黙認と言うかたちですね、今のところ」


「では三つ目ですが、この冒険者ギルドは傭兵斡旋も行なっております。冒険者はギルドを通さずに傭兵として雇われることを禁止しています。これに違反した場合は冒険者としての登録が抹消されます」


「何でまたそんな規則があるんだ?」


「どの国だって優秀な冒険者つまり優秀な傭兵が欲しいですからね。より高値を付けてくれる国を冒険者に紹介するための措置と考えて下さい」


 実際は個人で傭兵になられると中間マージンが取れないというギルド側の都合によるものだが、ここでは説明されなかった。


「後は、冒険者同士での喧嘩はいけないとか依頼達成後はちゃんと報告するなどの細々したことですね。今から冒険者証明書と一緒に規約書をお渡しします。口頭で説明が必要なことは以上です」


 そして手のひらに収まる位のカード型の冒険者証明書と、規約書の小冊子をバアル達に渡すハサン。


 配り終えたハサンはバアル達に向きあうと、しわぶき一つ吐いた後、高らかに宣言した。


「では…、ようこそ冒険者ギルドへ。私達はあなた方の登録を歓迎します!」










「おい…、なんで僕の特記事項の欄が『荷物持ち』になってるんだ…?」


 ファフニールの呟きが場の空気をぶち壊した。

今後は二日に一回位の投稿ペースになるかも知れません。遅筆で申し訳ありません。


話の中の暦は、

萌葉の月=5月位のイメージです。この世界は1年は12か月です。設定はいつかまとめて公開します。

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