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04 理由と意地

 ――翌日、普段通りに登校すると校門の前でユーナが待っていた。

「隼人、おはようございます」

「うん、おはよう。僕を待ってたのか?」

 質問に頷くユーナ。新たな疑問が僕の中に生まれる。

「念のために聞くけど、いつから待ってた?」

 僕が登校する時間は、転校してきたばかりのユーナにはわからないはずだ。

 もしクラスメイトから聞いて知っていれば、校門前で待つ必要なんて無い。

「七時です」

 僕は自分の耳を疑いかけた。いくら何でも七時から待っているなんてありえない。

「………本当に?」

「はい、本当です」

「………」

 どうやら本当らしい。僕が教室に入るのは、予鈴が鳴る十五分前だ。彼女は一時間以上、ここで僕を待っていたらしい。

 そういえば、だいぶ前にゲームで待ち合わせた時も同じようなことがあったな。

「待たせて、ごめん。行こうか」

「はい」

 僕が謝って歩き始めると、その隣に寄り添うようにユーナが歩き始める。

 なんだかデートっぽい構図だな。と僕が思っていると、後ろから肩を叩かれて誰かに追い越される。

 それが誰かわかった瞬間、僕は思わず絶句した。

「ひゅーひゅー、まるで新婚カップルみたいだな!」

 猛は茶化しながら、そのまま走り去って行った。

 頬が熱くなるのを感じる。反論しようにも、すでに茶化した当人はいなくなっている。

「新婚、カップルですか……」

 そう呟く声が聞こえて来たので、僕は隣を歩いているユーナを見た。

 無表情な彼女の顔が、僅かに赤く染まっている。透き通った白い肌なので、赤なっているのがまるわかりだ。

 普段は落ち着き、無表情な彼女の浮かべた照れた表情。僕は不覚にも可愛いと思ってしまった。

 慌ててユーナから顔をそらし、僕はフォローを入れる。

「猛の言うことなんて、あまり気にするなよ。僕たちは付き合ってるわけじゃないんだ」

 確かにユーナみたいな女の子が恋人なら、男子なら誰でも嬉しいだろう。

 でも、僕はユーナに告白されたけど、その告白に対して返事をしていない。だから、付き合ってるわけじゃないんだ。

 それに、あのゲームに参加している間は恋愛なんてできない。ユーナも、それをわかっているはずだ。

「……そうですね。でも、……だったら」

 僕に同意したユーナが何か言っている。呟くように声が小さいので、よく聞き取れない。

「ユーナ、どうかしたか?」

「いえ、何でもありません。それより、早く教室に行きましょう」

 本人が何でも無いと言うなら、本当に何でも無いんだろう。それ以上の追及をやめ、猛に茶化されて止まった足を踏み出す。

 教室に着くなり、クラスメイトの視線が僕たちに集中した。昨日も似たようなことがあった気がする。…居心地が悪いなぁ。

 猛の姿を探して教室を見回すと、彼は他の男子生徒と話をしている。

「昨日、聞いた限りだと保留だったんだぜ? なのに、今朝は登校デートしてたんだよ」

 ……やっぱり、この状況を作り出したのは彼らしい。

 猛が僕たちを追い越してから、まだ三分ぐらいしか経っていないのに、すでに教室中に噂が流れていた。僕は怒るどころか呆れ、冷たい視線を猛に送ってみる。

 視線に気がついたのか、猛はこっちを見てニヤニヤと笑った。完全に、この状況を面白がっているらしい。

 そんな彼の様子に、僕はため息をついて自分の席へ行って座る。

「伊月君、ちょっといいかな?」

 蓮城さんだ。なぜか眉間にしわを寄せ、怒っているように見える。いや、実際に怒っているらしい。

 彼女の雰囲気から、僕はおとなしく従った方がいいと判断した。

「……何かな?」

「うん、さっき友達から聞いたんだけど。……ルシエルさんと登校デートしてたの?」

 やっぱり、そういうことか。僕は脱力して机に顔を伏せたくなった。

「いくら何でも恋人になったからって、他の生徒の目がある場所で、そういうことをするのはダメ」

 僕が答えを待たずに、蓮城さんの説教が始めた。

 普段の僕なら、あきらめて彼女の説教を聞くんだけど、今回は僕だけじゃなくてユーナも巻き込まれている。さすがに、弁解しないわけにはいかないだろう。

「それに、そもそも学生の本分は――」

 蓮城さんの説教がヒートアップしかけたので、誤解を解くために僕は慌てて止める。

「ストップ! 蓮城さん、ストップ! 誤解だから!!」

「……誤解?」

「そう、誤解なんだ。僕とルシエルさんは付き合ってないよ」

 僕は一昨日と昨日の放課後の話をした。

「――というわけで、返事は保留にしてるんだ」

「で、でも、登校デートしてるって……。友達が伊月君とルシエルさんが、校門の前にいるの見たって」

 ……見られていたのか。まあ、それは置いておくとして誤解を解かないといけない。

「それは――」

「何だ? ツンツン委員長、まさか転校生に嫉妬してるのか?」

 僕が誤解を正そうとしたところで、噂を流した本人が割り込んできた。

 また何かしたのか、頬に傷が増えている。

「ち、違うわよ!ただ、私は伊月君が勉強に集中できるように――」

 赤くなって怒る蓮城さんを、猛がニヤニヤと笑いながら茶化す。

「それって、ただの建前だろ?」

「だ、だから、ち、違――」

 顔を真っ赤にして慌てふためきながら、蓮城さんは反論しようとしている。

 ここで何か言うと僕に矛先が向きかねないので、黙って様子を見ることにする。

「…すみません、いいですか?」

 猛にからかわれ、だんだん涙目になる蓮城さんを気の毒に思っていると、話に入ってくる人物がいた。

 この状況を作り出した元凶は、その女子生徒を見てニヤリと笑う。

「おっ? 噂すればカノジョの登場か?」

 そう、話に入ってきたのはユーナだ。相変わらずのポーカーフェイスだけど、顔は少し赤くなっている。

「は、隼人と私は付き合ってません」

 ユーナが誤解を解こうとするが、声が上擦ってしまっている。これだと逆効果だ。

「へえ? でも、登校デートしてるの見たぜ?」

 ニヤニヤと意地の悪い笑みを深め、猛がつつき出した。ユーナが黙り込んでしまう。

 このままだと蓮城さんの二の舞になってしまうので、僕は猛の注意をユーナから逸らすために助け船を出した。

「友達と待ち合わせして、一緒に登校するのは普通じゃないかな?」

「でも男子と女子が待ち合わせするなんて、カップル意外に聞いたことがないぜ?」

「………」

 僕は黙り込んで時間を稼いだ。ずいぶんと騒がしい朝になったけど、その朝も次の言葉で終わる。

 視線を彷徨わせるように移動させ、時計を経由して猛へ戻す。そろそろ頃合いだ。

「僕とユーナは友達で、校門の前で待ち合わせしてただけなんだ。それ以上の関係じゃないよ」

 僕が言い終えるのと同時に、チャイムが鳴った。

 猛が茶化そうと口を開いたけど、それは鳴り響くチャイムに抑えられてしまう。


 ――放課後。僕は昨日と同じように、デパートの広場へ行った。

 昨日と同じベンチに座って本を読み始める。

「隼人、お待たせしました」

 一ページを読み切ることなく声をかけられ、顔を本から上げるとユーナがいた。

 別に待ち合わせをしていたわけじゃないんだけど、昨日と同じように彼女はここに来たらしい。昨日と違うのは、服装が制服だということと夕方じゃないことぐらいだ。

「隣に座っていいですか?」

 土曜日に再会した時と同じ質問をされ、僕は頷いて読書に戻った。

「何を読んでるんですか?」

 僕の隣に座りながらユーナが聞いてきたので、本を閉じてタイトルを見せた。

 僕が読んでいたのは『論理学入門』、いかにも難しそうな印象を受けるタイトルだ。

「面白いですか?」

「…なんとなく買って読んでるだけだから」

 何も考えずに買ったので、こればかりは面白い以前の話だ。

 僕の家にある本は、考えて買うよりも何も考えずに買った本が多い気がする。

「なんとなく、ですか……。隼人は、その言葉が好きなんですか?」

「…僕がゲームに参加してる理由、ユーナに話したことあったかな?」

 思い出した記憶が断片的すぎるので、僕がユーナに質問した。すると、彼女が首を横に振ったので話したことがないみたいだ。

「そっか。じゃあ、話しておいたほうがいいな」

 僕は本をベンチの上に置き、空を見上げるようにして話し始めた。

「あれは、四年前だったかな――」


 ――五年前、僕は始業式の後に妹と病院に行った。姉さんが入院している病院だ。

 病室に入ると、姉さんは体を起こして僕たちに笑いかけて言う。

「また来たんだ? 隼人と光、こっちにおいで」

 姉さんは生まれつき身体が弱く、一年前に発作を起こして入院していたんだ。

 だけど、病人には見えないほど明るい笑顔に僕は見惚れた。一瞬だけど、姉さんは病気なんかじゃないと思い込んだ。

「お姉ちゃん! あたし、今日から三年生だよ!」

 そんな姉さんに光が駆けより、飛びつくように抱きついたので僕は慌てる。

「光! 姉さんは病気なんだから、飛びついたりしたらダメだ!」

 僕の注意を聞いてるのか聞いてないのか、光は姉さんに頬ずりしている。相変わらずのスキンシップ好きだ。

 姉さんは姉さんで、光のスキンシップを笑顔で受け入れている。

 その様子を見た僕はため息をつき、発作が起こらなかったことを心の中で安心した。

 姉さんの病気は、ふとした拍子で発作が起こってしまう性質の悪い病気なんだ。心配しすぎることに越したことはない。

「よかったね。じゃあ、隼人は五年生か……」

 光の頭を撫でながら、感慨深そうに僕の方を姉さんは見た。それから僕に手招きする。

「隼人、そんなところに立ってないで、こっちに来なさい」

 姉さんの言葉に、僕は首を横に振った。

 僕も姉さんの傍に行きたかったけど、光に甘えさせてやりたかったからだ。姉さんも、そのことをわかっているはず――なんだけど姉さんは子供のように頬を膨らませ、拗ねたような声で言う。

「隼人の頭も撫でたいから、こっちに来なさい」

「隼人君、お姉ちゃんの言うこと聞かないとダメだよ」

 姉さんだけでなく光にまで言われたので、僕はおとなしく従うことにした。せっかく気を遣ったのに、二人のせいで台無しだ。

 拗ねた顔から一変し、優しい表情で姉さんは僕に言う。

「隼人、さっきは心配してくれてありがとう」

「別に、大したことじゃないよ」

 僕が照れ隠しにそっけなく言うと、姉さんは頭を撫でてきた。三つしか年が違わないのに、完全に子供扱いされている。

 でも、これを跳ね除けることは姉さんの気持ちを考えるとできない。それに、こうやって頭を撫でられるのは嫌いじゃない。

 満足するまで僕たちの頭を撫でた姉さんは、光に花瓶の水を変えてくれるように頼んだ。

 光が病室から出て行ったのを確認し、僕はあまり妹に聞かせたくない質問をする。

「姉さん、調子はどう? 起きてて大丈夫なの?」

「相変わらず隼人は心配性ね。大丈夫だって」

 答えながら姉さんガッツポーズした。

 本人には言わないけど、ここまでガッツポーズが似合わない女の子は珍しい。

「……だったら、いいんだけど。さっき、光に飛びつかれて何ともなかった?」

 心配しすぎて損は無いので、姉さんに続けて質問すると苦笑された。

「飛びつかれたのは、さすがに驚いたわよ? まあ、相手が光じゃなくて隼人だったら別だったかもしれないけど」

 悪戯っぽく言う姉さんに僕はツッコミを入れたかったけど、病院で大声を出すわけにはいかないのであきらめる。

「元気そうで良かったよ。明日から見舞いに来なくても大丈夫かな」

 これは冗談のつもりで言ったんだけど、姉さんは本気で困った顔をする。

「それは困るかな。入院生活って検査ばっかりでヒマだし」

「いや、今のは冗談だって!本気にしないでよ」

 僕が慌てると、姉さんはクスクスと笑いだした。

「隼人は、相変わらず優しいね。隼人、今後のために教えておいてあげる。女の子は変幻自在なのよ?」

 またからかわれたのだと知って僕は脱力した。姉さんは病人とは思えないほど明るい人で、僕をからかって遊ぶのが暇つぶしらしい。

「そうそう隼人が貸してくれた本、すごく面白かった」

 言いながらベッドの枕元に置いてあった文庫本を僕に渡してきた。僕が一週間前に持ってきた本だ。

「じゃあ明日、次の巻を持ってくるよ」

「うん、楽しみにしておく」

 僕は受け取りながら姉さんと約束する。

 その夜、僕たちの知らない間に姉さんは静かに息を引き取った。

 姉さんが死んだという事実を聞かされた時、光は大きな声を出して泣いた。僕は事実を受ける止めることができず、ただ呆然と壊れた時計のように止まっていた。

 看護師さんたちの話だと、姉さんは僕たちと一緒に写ってる写真を大事に握りしめていたらしい。


「……これが僕のゲームに参加する理由だよ。死んだ姉さんの口癖が、「なんとなく」だったんだ」

 五年前のことを他人に話すのは、これが初めてだった。

 それだけ僕たちにとって、姉さんはかけがえの無い存在だったんだ。

「……隼人は強いですね」

 それまで黙って話を聞いていたユーナが、最初に言ったことに僕は驚いた。

 僕は自分のことを強いと思ったことは、今まで無かったからだ。だから、僕は否定する。

「そんなことない。本当に強い人間なら、ゲームに参加して夢を叶えようとしないよ」

 本当に強い人間なら、過去に囚われずに前を向いて歩いているはずだ。

「まるで徳の高い坊さんのようだ」と噂されれているけど、それは姉さんの死から自分を遠ざけるために、そういう行動をしているだけなんだ。

「じゃあ、あの時に何で私を助けたんですか?」

 この質問に僕は答えることができなかった。

 五年前のことを話したせいで、いつもの冷静で穏便な態度が取り払われていたからだ。

 あの時にユーナを助けたのは、確かに僕の意思だった。なのに、この質問に対して答えることができない。

「本当にゲームをクリアしたいなら、私のことを見捨てれば良かったはずです」

 そう、本当に夢を叶えたいなら他人を蹴落とせばいい。蹴落とした相手を踏み台にして、這い上がって行けばいいんだ。

「それなのに、隼人は何度も私を助けてくれました。私に話しかけてくれました」

 ユーナは次々と、僕に事実を突きつけてくる。

「ゲームから失格した時も、私のことなんて庇わなくて良かったはずです」

 最後に突きつけられた言葉に、断片的な記憶が反応する。

 闇よりも暗い漆黒、それが銀髪の少女を塗りつぶそうとしていた。それを見ていた僕は魔法陣を展開し、自分と彼女の位置を入れ替える。

 闇が体に触れた瞬間、すごい勢いでHPとMPのゲージが減っていく。ユーナの代わりに僕は闇に呑み込まれ、何かが砕ける音と共に意識を失った。

 意識を失う前に僕が見たのは、鉄の仮面をつけた少女。怪物ではなく人間――ゲームに

参加するプレイヤーだ。

「くっ……」

 突然の頭痛と共に映像は途切れて霧散した。背中と額に嫌な汗をかいている。

 今のは、たぶん僕が失格した時の記憶だ。僕は他のプレイヤーからユーナを守り、ゲームから退場した。

 本当に願いを叶えたいなら、鉄の仮面をつけた女の子みたいにユーナを倒せばいい。

 だけど、そのやり方に僕は嫌悪を感じる。自分の願いのために誰かを犠牲にし、這い上がるなんて僕にはできない。

「隼人! どうしたんですか!?」

 荒い息をつく僕を心配して、ユーナが顔を覗き込んできた。

「…なんでもない。記憶を取り戻しただけだから」

 僕は言いながら汗を手で拭おうとすると、ユーナが手を掴んで止めた。彼女はハンカチを取り出して僕の汗を拭き始める。

「なんでもないはずありません。隼人、どうしたんですか?」

 質問してくる彼女の表情は真剣だ。僕は少し躊躇した後、思い出した記憶についてユーナに話した。

 僕の話を聞きながら彼女は、痛みに耐えるかのように唇を引き結んでいる。

「…確かに、願いを叶えるためな他のプレイヤーを蹴落とせばいい。あの鉄の仮面をプレイヤーみたいに」

 それがゲームをクリアする最短のルートで、それを通った方が早いのは頭で理解している。

 だけど頭でしていても、心は感情は否定する。

 あの世界がゲームの中で、そこで死んでも本当に死ぬわけじゃない。だけど、実際に死ぬのと同じなんだ。

 姉さんが死んでから、僕の中では死に対しての恐怖が渦巻いている。自分以外の誰かが死んで、悲しむ人間を作るのは嫌なんだ。

「あの世界はゲームの中だし、実際に死ぬわけじゃない。でも、誰かを殺したり死なせたりするなんて僕にはできない」

 これが僕の答えだった。いつもの雰囲気を捨て、嘘や偽りの無い思ったままの言葉。

 ユーナは黙って僕の顔を見つめている。

 矛盾しているのはわかっている。彼女に呆れられても、失望されても仕方がない。でも、考えを曲げるつもりはない。

「…やっぱり、隼人はお人好しです」

 ため息交じりに苦笑し、ユーナはベンチから立ち上がった。

 いったい何をするつもりなんだろう。と僕が思っていると、ユーナは振りって顔を覗き込んできた。

「やっぱり隼人は、私の好きな人です」

「なっ…!」

 完全に不意打ちだった。火がついたように頬が熱くなるのを自覚してしまう。

 頭がフリーズして動かない僕に、ユーナは追い討ちをかけてきた。

「私は隼人のことが好きです。…今朝の噂、嘘でも嬉しかったんですよ?」

 素直すぎるぐらい素直な告白に、僕は開きかけた口を閉じることができなかった。

「隼人、そろそろ行きましょう」

「い、行くってどこに?」

 呆気にとられたままの僕は、普段なら理解できるはずのことを聞き返してしまった。

「〈リバース・ワールド〉にです」

 昨日と同じように僕は手を引かれ、彼女について行った。

 デパートの裏まで来るとユーナは手を放し、ケータイを操作し始めた。僕は慌ててポケットから指輪を取り出し、右手の中指に着けた――ところで、僕の中に疑問が生まれる。

(……そういえば、この指輪はどうしたんだ?)

 本来、ゲームの参加者に与えられる指輪は一つだけだ。それ以外はゲーム内のクエストをクリアするか、レベル上げのために溜めたポイントと使ってショップで購入するかだ。

 だけど、どんな手段を使ってもプレイヤーのリングは手に入らない。

 クエストで手に入れるのは、魔法を強化するリングだ。ショップで購入できるリングは種類が多いが、その中には含まれていない。

 それなら、どうやってプレイヤーのリングをユーナは手に入れたんだ?

「……ールド〉にアクセス。〈ゲート〉オープン。ログイン」

 思考の中に入ろうとした瞬間、ユーナが〈ゲート〉を開いた。そして、僕の手を引いて走り出す。

『ログインを確認しました。識別名〈閃光〉と〈空隙〉。ランクはA‐1とA‐2』

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