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鬼滅屋 本舗  作者: 閃天
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第8部 2話 遼の力 夏帆の怒り

 落ち着いた様子の夏帆は、楓の傷の手当をしていた。

 傷は大分広がっており、包帯が赤く染まっている。

 空間の裂け目から包帯と消毒液を取り出す夏帆は、楓の体に巻かれた包帯を解く。やはり傷は広がっていた。アレだけ激しい動きをすれば、傷が開いてしまうのは仕方ない事なのだ。

 黙々と治療を進める夏帆は、痛みに耐える楓に目を向け問う。


「沁みますか?」

「うぐっ……だ、だいじょ――ぐうっ!」


 問答無用で傷口にガーゼを当てる夏帆は、それ以上楓に発言させる事無く包帯を巻きつけていった。

 一分前後で包帯を巻き終え、夏帆は包帯と消毒液を空間の裂け目へと戻す。そして、代わりに饅頭を二つ取り出した。


「食べ……ますか?」

「――そうね。一つ貰うわ」

「どうぞ」


 夏帆が差し出した饅頭を、楓は受け取る。手の平に納まる程度の大きさの饅頭を、一口かじると、程よいあんの甘味が口の中に広がった。その絶妙な甘さに楓は思わず声を上げた。


「お、美味しい……」


 その言葉に夏帆が微かに頷いた。夏帆もこの饅頭が美味しいと言う事は認めているようだ。ついつい二つ目を貰ってしまう楓は、それを一口食べてハッとする。


「ウッ……まずいわ……」

「不味かった……ですか?」


 突然の楓の発言に、不安そうな表情で夏帆が問いかけた。しかし、ここでのまずいは決して味が不味いの不味いではなく、楓は半笑いを浮かべながら訂正する。


「違う違う。そっちじゃなくて、あんまり美味しいから食べ過ぎるとまずいって意味よ」

「そう……ですか」

「私太りやすいからね〜」


 そこで、会話が途切れ沈黙が時を支配する。気まずい雰囲気に、楓は眉間にシワを寄せた。どうするべきか考える。話し掛けてみるか、もう一つ饅頭を貰うか、はたまたこれからどうするかを聞いてみるか、色々考えた。だが、何故か声を掛け辛く、無意識にホルスターから銃を取り出し、弾を詰め始める。

 静かに時が過ぎていく。何事も無かったかの様な異様な空気だが、二人は忘れてはいない。ここにはまだ敵がいると言う事を。


「ようやくお出ましね」


 背後から聞こえた足音に、楓はそう言い放つ。饅頭を食べていた夏帆は動きを止め、静かに空間の裂け目から弓と矢を取り出した。

 二人の表情が僅かに強張る。背後から漂うこれまで以上の殺気に、頭で分かっていても体が勝手に畏縮いしゅくしてしまっていた。


「檄……まで倒しちゃうなんて――正直、驚いたよ。流石、数百年に一人の奇才だね」

「残念ながら、私は奇才何かじゃないわ。どちらかと言えば秀才の部類に属するわ」


 丁寧に答える楓に対し、遼が薄気味悪く笑い出す。


「フフフッ……。キミが奇才じゃなく秀才だって? まぁ、仮にそうだとしたら、僕は凡人以下と言う事になるのかな?」

「さぁね。知った事じゃないないわ。ただ、私は間違いを正しただけ。私は才能じゃなく、努力してここまで成長した。それだけよ」


 力強い口振りの楓は、振り返ると同時に引き金を引いた。

 銃声が三発響き、銃口から白煙が上がる。辺りは静まり返り、風が優しく吹き抜けた。


「クフッ……」


 楓の方が血を吐き、膝から崩れ落ちた。何が起こったのか分からず、楓の意識は次第に闇へと包まれていく。


「楓さん!」

「他人の心配よりも、自分の心配をした方が身のためだ」


 その声が耳元で聞こえる。振り返る間も無く、夏帆の体は吹き飛んでいた。顎の辺りに痛みがある事から、顎に打撃を受けたと思われる。しかし、何が起こったのかは全く目で追えなかった。

 地面に体が叩きつけられる。右手に持っていた弓が、衝撃で吹き飛び地面に転がった。


「うっ……」

「くっ……」


 夏帆も楓も動く事が出来なくなっていた。


「つまらないなぁ。やっぱさ、僕を楽しませてくれるのは、彼しかいないのかな?」

「まさか……洸の……」

「そうだよ。彼なら、僕の求めているモノを――」


 楓の頭を踏み付ける遼は言葉を止める。視線の先には夏帆が立っていた。俯き右手に刀を握る。茶色混じりの黒髪が大きく揺れ動く。それが不自然で、遼は顔を顰める。


「洸兄とは……戦わせない」

「夏帆……ちゃん?」

「私が……あなたを――」


 突如夏帆の体から殺気が放たれる。大量の氣が放出され、突風が夏帆を中心にして吹き荒れた。

 吹き荒れる風に、遼は楓の頭から足を下ろす。その口元には不適な笑みが浮かんでおり、楓は何か嫌な予感がした。

 夏帆と遼の二人が向かい合ったまま動かない。

 両者が対峙し、数秒。風が変わり、二つの氣の流れが激しくぶつかり合った。

 一つは夏帆の怒りを纏った氣。

 もう一つは遼の殺意と憎悪を纏った氣。

 色で例えれば、夏帆の氣は赤で、遼の氣は青。

 両者の氣が激しくぶつかり、間で巨大な渦を巻く。


「クッ!」


 夏帆の体勢が崩れる。大量の汗が額から溢れていた。氣を放出し続けた為、体にかなりの負担が掛かっている様だ。それでも、夏帆は氣を放出し続けた。そうしなければ、遼の氣に取り込まれてしまいそうだったからだ。


「睨み合っているだけでは、勝負は付きま――」


 遼が言い終わる前に、夏帆が視界から消える。だが、放出する氣が夏帆の居場所を告げており、遼は瞬時に視線を空に向けた。夏帆のスカートが揺れ、髪が揺れ、頭上に構えられた刀の緒が揺れる。

 二人の視線がぶつかり合う。奥歯を噛み締める夏帆は、遼の放出する氣を真っ二つに切り裂く様に、頭上に掲げた刀を振り下ろす。

 鋭い刃が遼の放出する氣に触れ震える。それでも、刃は真っ直ぐ遼に向って下ろされた。

 だが、刃は遼を掠める事も無い。必要最低限の動きでかわされたのだ。


「遅いよ」

「一閃!」


 振り下ろした刀の刃を寝かせ、横一線に振り抜く。これには遼も反応が遅れ、切っ先が僅かに服を掠めた。


「チッ」


 小さな舌打ち。それは、本当に小さな音で、夏帆にも楓にも届かない程の音だった。

 二人の距離が開き、また氣がぶつかり合う。だが、今回は少しだけ違った。

 夏帆の放出する氣が、徐々に遼の放出する氣に呑み込まれ始めていたのだ。しかも、明らかに夏帆の氣を取り込み、大きく強大なものへと変って行く。


「私の……氣が……」

「僕は人の氣を取り込む事が出来るんだよ」

「いつ、そんな力を」


 横たわる楓がボソッとそう呟いた。その言葉に遼は微かに笑みを浮かべると、楓を見る事無く答える。


「初めから使えたよ。ただ、使わなかっただけだよ」

「どう言う……事?」

「この力は、滅破にとって危険な力。もし、使えたと知ればあの人も、僕を弟子にはしなかっただろうしね」

「あんたって人は……」


 唇を噛み締める楓は、遼を力一杯睨んだ。それが、楓に出来る精一杯の抵抗だった。


「それじゃあ、終わりにしよう。彼が来る前に、無駄な消耗はしたくないからね」

「ふ…ざ…けるな!」


 いつもは冷静な夏帆が感情をあらわにし、遼に向っていく。だが、遼は表情を変える訳でもなく、右手をゆっくりと夏帆に向って伸ばした。

 遅くなってすいません。

 もう物語も終盤と言うのに、更新が遅れてしまって本当に申し訳ないです。

 出来る限り早めに更新できる様頑張ります。最後までよろしくお願いします。

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