最終話:立ち上がれ、ボウエイジャー!
パーティが終盤に近づいた頃。
突然、非常ベルの音が鳴り響いた。
『モンスターが出現しました。係員が誘導します。速やかに館外へ避難してください。繰り返します——」
繰り返される館内アナウンスに、会場内が一気にざわめいた。
「……これ、手を出していいんだっけ?」
「居合わせたボウエイジャーが参戦するのはよくある話だろ」
「ただし仕事じゃなくてボランティア扱いだけどな」
「迷惑になる場合もあるよね」
戸惑いが広がる中、再びアナウンスが流れる。
『お客様の中にボウエイジャーの方がいらっしゃいましたら、ご協力をお願いいたします』
その瞬間、会場の空気が一変する。
アナウンスの声色は明らかに先ほどより緊迫したものだった。ホテル在勤のボウエイジャーだけでは手に負えない事態が起きている。
即座に貴久が席を立ちホテルスタッフの元へ向かった。
「……そういうことなら、行くしかないな」
大和が静かに言う。
「ここで黙ってたらヒーローじゃないでしょ!」
広夢が拳を鳴らした。
「何度かこれ聞いたことあるけど、まさかこのタイミングで来るとはね」
涼介の口調は静かだが、その目には闘志が宿っている。
「あんたも当然行くわよね?」
初音が皐を見据える。
「もちろん。ここで逃げる方が危険でしょ?」
皐はさらりと答えた。
「よっしゃ! E-Guardersの初仕事だっ!」
麗奈が高らかに腕を突き上げる。
さっきまで和やかに語り合っていた彼らの表情は、もう完全に切り替わっている。
全員が、“プロのボウエイジャー”の顔になっていた。
戻ってきた貴久が数名のメンバーを招集した。そのうちの一人が昴に視線を送る。
「お前達も出られるか?」
「はい」
昴も短く答え、部員達に向き直った。
「いけるな」
全員が頷きを返す。
「若葉くん、頑張ろうね!」
「おう!すげぇドキドキするけど……なんか、感動してる」
会場全体が一体感に包まれているのを感じる。
そんな若葉に、千代が冷静に言葉を返した。
「気持ちは分かりますが、感動するのは敵を倒してからにしましょう」
「……はい!」
若葉は真剣な顔で頷いた。
貴久が手を叩いた瞬間、ざわついていた会場が一瞬で静まり返った。
その沈黙は、ただの静けさではない。
無数の視線と鼓動が一点に集まる、決戦前の“静寂”だった。
「複数のモンスターが同時に出現した。——しかも、連携して動いている」
貴久の声が、低く、はっきりと響く。
「上級モンスターの指示のもと、中級が四体。ここ数ヶ月、各地のホテルを狙って襲撃を繰り返している集団だ。現在、ホテル所属のボウエイジャーが交戦中。発生地点はいずれも高層階——ただし、過去の例からしてこれで終わりではない。今後も増える可能性が高い」
会場の空気が、わずかに張り詰める。
「それに伴って、ヤダモンの群れも確認されている。エレベーター付近や客室フロアにも出現するおそれがある」
貴久は一瞬だけ全体を見渡し、続けた。
「まず、交戦中のヤムヤムとヤダモン討伐に向かう支援チームを編成する」
支援チームは口頭で発表された。いずれも活動歴の長いベテランのメンバーだ。
「他のメンバーはフロアごとに小グループで配置。宿泊客の避難誘導と、モンスター発生への備えを頼む」
その指示と同時に、全員のボウエイデバイスに通知音が響いた。
画面には、ホテル全体のフロア編成とメンバーリスト。
E-Guardersの共通チャンネルからの配信だ。
続いて新しい通信チャンネルの通知も届いた。
「ホテル内の全ボウエイジャー用に、臨時の連絡コードが発行された。各フロアの状況報告や救援要請は、このチャンネルで共有するように」
防衛部では部長のボウエイウォッチのみ、緊急応援要請や夏休みの見回り依頼のためにE-Guardersとの連絡用ネットワークがある。
それを通して、昴にも編成リストと連絡コードが届いた。
昴は画面を確認し、防衛部内のチャンネルで共有する。
経験年数や戦闘スキルを考慮し、防衛部員はそれぞれ別フロアに配置されていた。
「焦らなくていい。やることはいつも通りだ」
少し心細そうに顔を見合わせる若葉と六花に、昴は落ち着いた口調で安心させるように言う。
「プロの先輩達が一緒だよ。もし何かあっても、ここにはみんながいるから」
泉が言葉を重ねた。
その言葉に、二人の表情が少し和らぐ。
(……みんなで戦う)
それぞれの胸の中に、同じ想いが宿った。
数秒の間を置いて、貴久は短く告げた。
「全員、準備はいいな」
全員が迷いのない目で頷きを返す。
OBも、現役部員も——その場にいる全員が同じ方向を見ていた。
緊張感と高揚感を胸に、誰もがリーダーの号令を待っている。
防衛部は、時代ごとに違う姿をしてきた。
騒がしくも賑やかな代もあれば、真面目に鍛錬を重ねた代もある。
新入部員の決め方も、運営の仕方も、代ごとの性格も様々だ。
だが、やり方は違っても、ひとつだけ変わらないものがある。
”人々を守るために、仲間と共に戦う意思”
それは、途切れることなくずっと受け継がれてきた。
会場を見渡し、貴久が声を張り上げる。
「E-Guarders!叡徳高校防衛部!——いくぞ!!」
次の瞬間。
世代を超えて受け継がれた意思が一つになり、会場中に声が響き渡った。
———「ボウエイチェンジ!!!」
(完)
ボウエイジャーの物語は、これで完結です。
ここまで読みに来てくださって、本当に嬉しかったです。
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そして、9月11日から新しい作品の連載を始めます。
またぜひ、遊びに来てください。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!




