第三話「試される判断」
森の小道に、かすかな物音が響く。
新隊長率いる風走り隊の小隊は、日課の訓練を終え、隊列を整えていた。
だが元隊長の目は、森の奥の気配に鋭く向けられている。
「…敵かもしれぬな」
短く呟き、影に身を潜める。戦うためではない、判断力の確認のためだ。
小隊はジャベリンを手に、短槍を握り、慎重に前進する。
一歩前、半歩後――間合いを常に微調整しながら、隊員たちは動く。
元隊長は目を細め、距離感と隊の反応を静かに見守る。
突然、敵の小規模な斥候が姿を現す。
新隊長は隊員に指示を飛ばす。
「焦るな。間合いを保て。突く必要はない」
ジャベリンが飛び、短槍が突き、回収される。
敵は予想通り押し返され、隊は無傷で距離を保ったまま進行する。
元隊長はゆっくり歩み寄り、間合いを保ちながら新隊長を見つめる。
「判断は間違っていない。呼吸と距離も良い」
新隊長は小さく頭を下げ、隊員たちの動きを確認する。
「ありがとうございます。隊長。隊員たちは私たちのやり方を理解しています」
元隊長は短く言葉を残す。
「覚えておけ。生き残ることが全てだ。判断が命を分ける」
敵が後退し、森に静けさが戻る。
小隊はそのまま訓練を続け、ジャベリンの投擲と短槍の突き、回収の動作を繰り返す。
その間、元隊長は微動だにせず、静かに隊の成長を見守った。
間合い、判断、呼吸――風走り隊の理念は確かに次世代に受け継がれていた。
元隊長の目には、教えたすべてが形になった小隊の姿が映る。




