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第一話「帰還の影」

朝霧が戦場跡を覆っていた。

年老いた元隊長は、かつて自分が指揮した戦場を静かに踏む。

戦争は終わり、もう武器を手に取る必要はない。しかし、自分の残した理念が、次の世代にどう受け継がれたかを確かめるため、ここに戻ってきたのだ。

新隊長率いる風走り隊の小隊が見える。

ジャベリンを手に、短槍を握り、間合いを微妙に調整しながら前進している。

元隊長は少し距離を取り、影に隠れるようにして観察する。

「…よくやっているな」

ぽつりと口を漏らす言葉は短く、しかし重みがある。

新隊長が気付き、ゆっくり歩み寄る。

「隊長、見ていただけますか。隊員たちは教本通りに動いています」

元隊長は視線を巡らせ、間合いを保ちながら頷く。

「間合いを、忘れるな」

短い言葉だが、命令ではない。理念の確認であり、教えの継承だ。

小隊はジャベリンを投げ、短槍を突き、回収する。その一連の動作を、元隊長は静かに見つめる。

新隊長は息を整え、間合いを見計らいながら報告する。

「隊員たちも、判断を意識しています」

「よい…風走り隊のやり方だ」

戦場跡を吹き抜ける風が、隊の動きを祝福するかのように揺れる。

元隊長はもう前線に立たない。しかし、思想は確かに生きていた。

生き延びるための判断、間合い、速さ――風走り隊の精神は、次世代に受け継がれている。

元隊長は背を向け、ゆっくり歩き出す。

遠くに残る隊の動きを最後に目で追い、微かに微笑む。

戦場に吹く風のように、影のように――理念は生き続ける。

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