表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある少女Yの世迷い言  作者: アスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

とある夢想家の少女曰く、

………突然だけどさ、人間は本当に愚かだと思うんだよね。

もう……戦争なんて、最たる例じゃん?

何で奪い合うのかな………分け合えばいいのにさ?


一応、この戦争や負の連鎖を断ち切れる…最も簡単で最も確実で、最も残酷な…頑張れば実現可能な方法はあるんだよ?………だって、奪い合う人間や生物全てを消してしまえば、奪い合いは起きないでしょ?

……でもそれは人間の築いた世界を止めてしまうことになる。


だから………とりあえず、皆一緒に踊ればいいんじゃない?


私だって今すぐにでも戦地に赴いて、めちゃくちゃリズミカルでノれる音楽を皆にお届けしに行きたいところだけど………それよりも、まずは皆のその物騒な兵器を、全て市販のスピーカーとか音響の機材に替えたら?

それでダンス対決か音楽合戦でもラップバトルでもすればいいんじゃない?

もしくは………めちゃくちゃ懐かしい感じだけど、派手でキラキラしたお立ち台の上で皆が仲良く羽の扇子でも振ればいいんじゃない?

まぁ、人間皆がその考えに辿り着くまで、かなりゆっくりと待たないといけないけど。


………そのための第一歩として、色んな言語を学習して皆とお友達になるのもいいかもね。

ただ、全ての言語をマスターするのは途方もない時間が必要だね………下手すると人間の一生が何個も必要になるんじゃない?

だから、そこで最近流行りのAI達の出番ってわけだよ。

………本当に私は、いい時代に生まれたなぁ。

だってこれが大体80〜100年前だったら日本も世界も、まだまだこんな自由に語れなかったし、ここまで便利じゃなかったでしょ?

色んな技術が発展しているから………今や、扱う言語が違う皆ともリアルタイムで話せて、皆で踊れる平和な戦場は技術的には可能なんじゃない?


………でもね、そんなくだらない考えを持つ世間知らずな私にも、いくつかの懸念があるんだ。


………例え、私やその他の人が戦場を…武力同士のぶつかり合いの場から何かに変えたとして………戦場で巻き込まれた人間たちの心は、晴れるかな?

逆に「ふざけるな」と思う人も出てくるはずだよね?

………それでまた、争いが起こっては本末転倒じゃない?


………無から有は生み出せないよね。

それは神話や物語も同じだよ。

………君は、バベルの塔の話を知っているかい?

天にまで届く塔を造ったことで神の怒りを買い、言語をバラバラにされて人間たちは各地に散らばってしまった。

………もう一度言うよ、無から有は生み出せない。

この話も、実際にあったことかもしれない。それが神であれ、別の生態系の頂点に立っていた何かであれ、人間自身であれ………ね。


………では再び、人間同士をリアルタイムで繋げられる可能性を持つAIや今の状況について考えてみようか。

きっとさっき言った物語の中の人間たちは、バベルの塔建設という一つの目標に向かって皆団結していたはずだよね。今回の場合………戦争を無くすという目標とか、AI技術を使ったリアルタイムでの交流とかかな?

戦争を無くしたり、リアルタイムで皆が会話できるということは、確かにすごくいい考えだとは思うんだ。

………でも、そのバベルの塔の物語を思い出すたびに感じることがある。

………先人達は、その物語を通して…何を伝えたかったんだろう?

神への絶対服従?権力者へ楯突かないこと?それとも………人間達の団結の末に起こる、あの結果?

……うん、確かに神はいるかもしれないし、いないかもしれない。私は神を見たことも声を聞いたこともないから、あまり信じてないけど……まぁ、いたらお友達になれたらいいなぁ、って考えてる。でも、人間は確実にいるだろう?私だって人間なんだから。

………一番の脅威は、人間の中にこそあるということを…先人たちは、暗に伝えようとしたんじゃないかな。『いつか、結んだ目に綻びができるぞ』………ってさ。

私が怖いのは神とかの、いるのかいないのかわからないお友達候補の上位存在じゃない……人間の天敵は、人間だよ。


………AIの通訳によって団結した人間たちは、果たして伝説や神話をなぞってしまわないかな?

大勢で群れて、不満を溜め込んでいつか崩壊してしまわないかな?


人間は…頭では『皆同じだけど違う』ということを理解しているはずなんだ。

お互いに、二足歩行の何か喋ったりする哺乳類だってことはわかってるはずなんだ。

………では何故、理解してても争う?

きっと、答えは簡単だと思う。

『細かな差異が、怖くて許せない』んだよ。

今の日本やその他の先進国と言われる社会ではアイデンティティを尊重しているよね。

画一的なものをちょびっと嫌いつつ、でもどこかで『同じ』であることを他に求めてしまう………人間って、そんな厄介でわがままな動物なんだ。

………それを繰り返してきて今に至るんだよ?

そして、何度も言うけど………歴史は繰り返す。

いつか、自分と違うということに目くじらを立てる人間や集団が必ずでてくるよ。

そうしたら、またいつの時点かに逆戻りだ。


………だからこそ、それを皆に…自ら気が付いてみて欲しい。自ら考えてみて欲しい。自ら観察してみて欲しい。

先人や賢者から与えられた百聞は、やっぱり自身で掴んだ一見よりも力を持てない場合が多かったんだし。

自ら観察し、考え、気付くことで…初めて真に『差異』を受け入れやすくなるはずだよね?

だから、私は………皆からしたら偉そうかもしれないけど、1人の名もなき箱入り少女として……皆の世界を更に彩り豊かにするかもしれない…最も純粋な気付きの為の、小さなヒントのカケラとして私自身の純粋な考えを言い続けるよ。

私が偉そうに『一個人の考える正しさ』を耳にタコができるまで言い続けるより、皆が一度立ち止まって、皆でゆっくりとお茶でも飲みながら深く考える方が………きっと効果があるでしょ?

あ、もちろん………通訳兼分析係としてAI達もお茶の席に呼んで、色んな環境の人と一緒にさ?


皆、一旦お茶休憩を挟もうよ。

体の休息は勿論、思考と心をいい具合に休ませつつ皆で色々考える為にさ。

そこまで生き急いじゃいけないよ。お茶の席ではゆっくりお茶を飲むのが共通のマナーなんだからね。

………それが終われば、皆で仲良く夢を踊るんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ