ピノを食べさせたら体が冷えたようだ 暖めてやろう
「それはなに?」
女人界には教科書は無いのか。羨ましいが、姫みたいに阿呆になるのは御免だ。でも数学は無くても国語は有るんじゃないか。
「なにって言うのはなに?」
「だからそのなにはなに?」
「女人界には文字はないの?」
「あるわよ、それと一緒よ」(異世界転生はご都合主義のオンパレードだから)
「それじゃこの記号のこと?」
「そう、記号とカクカクの文字みたいなもの」
女人界は漢字なしのひらがなだけの世界なのか、国語も無しか。ひらがなだけ覚えれば必要十分なのか。源氏物語か。
勉強がひらがな覚えるだけで済んでしまうとは恐ろしい。
まあ、裸で生活しているポンカラリンの世界だからな、それも女だけ!
でもそんな世界があり得るだろうか。
衣食住は平仮名だけじゃ営めないだろう。それに阿呆でバカだけど、知的に思うし。
「トイレ大丈夫? お腹すいていない?」
そうだ! 突然大声を出すから驚いた。
「君! 全然、おもてなしをしていないね」
すっぽんぽんの女におもてなしなんか出来るわけないだろう、とむっとしたけど、果物100%ジュースくらい出そうと、下に降りると着いて来る。
「なにこの階段、チョウ要らない」
意味不明は無視しよう。
台所その他全て興味深か気にジロジロする。
冷蔵庫を開けると、なに? と聞いて来るから、食品を冷やして保存するんだよ、と教えると、
下等界は面倒くさいねと仰る。
でも、同じヒトの繋がりはあるから、直ぐに理解したようだ。
「なにこれ! 冷たい!!」
「女人界には冷たいものは無いのか?」
「全て人肌よ」
と、想像するとなんかパンチの無い世界を自慢げに言うけど、言われてもそうですかなんて言えない。
「大丈夫? お腹下さない?」
女人界にも病気は有りそうだ。
「そのくらいの量なら大丈夫だよ、それより気に入った?」
まあまあね、と言って礼は言わない。
次はなにを食べさせようか。
ひょっとして果物しか食べていないのかな、それじゃサルだ。
冷たいついでにピノを食べさせた。
ポイと口に放り込んでポイと手のひらに吐き出した。
汚ねえ女だな。ふふ、冷たいを通り越しているだろう。
「冷たいだけだよ、ちゃんと食べろよ」
手のひらが冷たくなったようで、またポイと口に放り込んだ。
阿呆は見ていて飽きないな。
ポイと口に放り込んで手に吐き出してまた口に放り込んでを繰り返し一箱を食べてしまった。
気に入ったようだけど、体が冷えたようだ。ブルっとした。
「冷たいものをそんなに食べたら体が冷えちゃうよ、暖めてやるからこっち来い」
と抱きしめてやったら大人しくして、感謝もしているようだ。
しかしである。姫は僕よりちょっと、背が高いようだ。
従って小柄な女子を抱いている図とはちと違って、見ようによってはあまり絵にならない。
僕が情けなく抱きついて姫は超然としているそんな図だから僕があやされているようにも見える。
たちまち病気になってたちまち治ったから、常温の水と雑菓子をもって部屋に戻った。
戻ると寒いのかベッドに横になってタオルケットにくるまれている。
「寒い? じゃ人肌で暖めてやるよ」
そういうとタオルケット開けて僕のスペースを造った。
やや後ろめたかったけど、お言葉に甘えて横に寝て向き合った。
凄く窮屈だけど体を密着させると、確かに姫の体は冷たかった。
僕の体は暑いままだったから姫はやや安心したようだ。
暫くすると姫は寝てしまいそうに静かな息をしている。
不味い、寝ている場合ではない、
両親が帰ってくるまで二十数時間がタイムリミットだ。




