両親が帰る前に
しかしこれは一大事だ。明日の午後には両親が帰ってくる。
慌てて考えだした答えは漫画だった。
尻を押して押し入れに突っ込むことだった。
ピシャッと閉めて、まったくパンツくらい履けよ、と呪った。
暫く中を窺った。
女人界に戻ったかな。音はしない。
やれやれ、と思ったけど、少し淋しい。
けど、どれどれと襖をそっと開けた。
ケツではなく頭をこっちに向けてまだ居た。
落胆と安堵が半々だ。
姫はまた貞子になって這い出てきた。
目の前にすっくと立った。
嬉しさが襲ってきて姫に抱きついた。
両手を背に回し、背中や腰や尻をなぞって力を入れて抱きしめた。
姫はなんの抵抗もしない。
そのままベッドにダイブした。
ベッドのポヨンと姫のポヨンが重なって僕の体は1mも跳ねた。
落下する寸前姫はさっと除けたからベッドを突き刺してしまった。イテエ。
「病気の体で抱きつかないでくれる」
抗議された。
「帰れなかったら君も困るだろ」
「まあね」
そう答えるけど、深刻なところはない。ポンカラリン女だ。
「へんな人間がいるし、ちょっと面白そう」
「明日には両親が帰ってくるし、君をここに置いておくわけにはいかないよ」
「両親って?」
両親が分からないのか、マンモス阿呆だ。
「親だよ」
「親って?」
顎が外れて目が点になっても平然としている。
「あっそうか、動物界の事を言ってるの」
目が点の上にクエスチョンマークを灯してまじまじ見てしまった。
「動物界のことを言っているんだ。でも女人界にはそういうのないからね」
疑問を持たずそのまま受け入れよう。
「そうするとマッチンは動物界の下等生物なの?」
紅顔の美少年を下等生物なんて許せない。ぎゅっと力を入れて抱きしめた。どうだ、男の方が力は強いんだよ。
「やめてよ、痛いから。それに病気の体で抱きつかないでって言ったでしょ」
バカに何言ってもしょうがないけど、
「安心しなよ、うつらないから」
「本当?」
「本当だよ」
と言ったものの、今人間界は色々だからひょっとしてうつるかも知れない。
「なら良いけど。でもそれより病気になったり治ったり忙しいの何とかして」
無茶言う女だな。まあ存在自体が無茶だからしょうがないか。
姫は小柄ではなく玉林とかゆう茶味みたいにいいガタイをしている。
さわり心地たっぷりだ。
そんな無茶な存在だ。
で、今の状態は病気だから、姫を解放した。
で、取り合えず隠そうと机に逃れた。
しかし姫は遠慮が無い。体を密着させて顎を肩に乗せ覗いて来る。




