病気なの? って言われても
平然と見下ろしながら近づいて来る。
「うわー、寄るな、あっち行け」
なんか視線が変だ、パンツを見ている。
うわー、ハミチンだ。慌てて隠した。
そいつは腕を組み考えている。あほう・ばか、すっぽんぽんなんだぞ。
腰をかがめ、顔を近づけてきた。
うわー、迫力あるな。
また背を伸ばし、足を広げ、見下ろした。
脚を閉じろバカ。
顔を傾げ指を頬に当て考えている、
さゆりんごか、お前は。
くるくる歩き始めた、何だバカ、全身を見せびらかさなくてもいい。
ケツと腿の始まりのプルンが最高だな。
暫し全裸モデルをしたのち、また顔を近づけてきた。
目がバッチリ合って、何か聞きたそうにしている。
聞きたいのはこっちだ。
「誰だお前は、名を名乗れ」
一応威勢よく言ったけど、まだ腰を抜かしたままだった。そいつはようやく口を開いた。
「病気なの?」
病気なのはお前だ、すっぽんぽんバカ。
「なんで裸だ」
「これ! いつものことよ」
胸から腰を手でなぞりながら、くねっとして吐いた。
やっぱり、あほうだ。いかれている。
「それ、なに?」
と視線で僕の股間のものを尋ねる。見られたか。
「病気なの?」
病気かと問われても、他の人のを知らないから何とも言えない。
「違うわ、アホ」
「でもなんか付いている、私にはないでしょ」
と自分のあそこをつるんと撫でた。アホを通り越したマンモス・アホだ。
「病気なら、治した方が良いわよ」
病気だって決めつけるなトンマ。そいつは、そいつじゃないな、女は、病気と決めつけて、安心したのか部屋をくるっと見回し、観察を始めた。
「そういえば、ここはどこ?」
知るか! 知るかじゃないな、
「俺の部屋だよ」
「部屋? なにそれ!」
部屋を何それ、と問う人間はいない。
「僕の居場所だよ」
「なんでこんなところに居なくちゃいけないの? なにしたらこんなことになるの?」
独房のような物言いをするな。机の上の教科書と参考書とノートとシャーペンを見て、
「なにこれ?」
頭がおかしいんじゃないな、ドッキリかなんかだな、この徹底振りは大した役者だ。
「ドッキリか、誰に頼まれた」
「なに、ドッキリって」
そうか、いくらドッキリでも、
素っ裸にはならないな、
あれ!
ひょっとして、
異世界?
転生??
「だれだ、お前は」
「わたし? わたしはマン・モース姫よ」
うわー異世界転生だ。
「君はどこに住んでいた」
「女人界よ」
「女人界から、押し入れに転生してきたのか」
「言っていることが分からないけど、ここに来ちゃったのは確か見たいね」
「そうだよ、人間界に転生したんだよ」
「人間界?」
「そうだよ、ほら、僕にはおっぱい無いだろ」
「おや本当だ、今気が付いた」
やっぱりアホ女だ。
「おっぱい無いのに、変なものはくっ付いているのね」
なんだこいつは! 3歳の幼児なのか。
「でも病気のせいでしょ」
「揶揄うのはやめろよ、男はみんなついているよ」
男って何? 説明するのあほくさい。変わって女人界の事を色々聞いた。そういうことなのか、少し理解できた。
「同じになってくれない?」
「同じって?」
「だから着ているものを取って」
頼まれても、いや頼む方が可笑しい、けど女人界出だからな、どうしよう、と迷っていると、するっと近づいて、ぱっと引き降ろされてしまった。興味深かげにじっと見つめてくる。
うんわ! じたばた出来ないのはどうしてだ。じっとされるがままになっちゃうのはどうしてだろう。動けない! なぜ俎板の鯉になっちゃうのか。あれだね、2歳の幼児だと思えばいいか。手に取って熱心に観察している。手に取るな! そう思っても動けない、男はみんなそうなのか。
「へー形変わるんだ、やっぱり病気だね」
うへー、困った、どうしよう。
そうだ何か着せよう。形が変わったまま立ち上がって、Yシャツを出して、これを着て。と頼んだ。観察対象をジロジロしながらYシャツを着ている。取り合えず全部隠れた。隠れたけど胸のふくらみや腰のラインは色っぽいし、足は生足だし、あんまり変わらない。しかし、精神を統一して治まれと念じた。
「へー元に戻るんだ、やっぱり治療した方が良いよ」
治療法は有るんだよバカ。
「取り合えず今の状況を考える必要があるね」
ようやく股間のものから目を離し、同意した風の顔になって、
「君、名前は?」
「マモルです」
「マモルね、略してマッチンにしよう、いい?」
良くないよバカ。抗議しても聞いてもらえなかった。




