ラ族姫、押し入れに転生参上
今日は母方の法事で両親は泊まりがけで出かけたから居ない。
僕も当然出席しご先祖様に感謝の念を示さねばならないけど、
試験があるから、実際は面倒くさいだけ、
と断って一人の我が家でなにを思うでもなくぼんやり過ごしていた。
数学は概念の理解だと入学後のオリエンテーションで言われたけど、
理解するまで待ってくれないから、段々に呪うことになるけど、
なんとなく踏ん張れているから、一応教科書と青色を開いていた。
一人の家でエアコンを使うことはなんとなく憚られたから、
女子なら裸になってしまうところを上はもう脱ぐものは無いからズボンを脱いで、
半そでTシャツとパンツというレトロな恰好でシャーペンをクルクルさせる練習をしていた。
女子はいいな、
外ではほとんど裸みたいな恰好で、
家に帰ればそれさえも脱ぎ捨て、
ブラジャーもとってパンティー1枚で過ごせるんだから、
男子は上半身裸ってイメージがあるけど案外裸にはならないし、
外で澄まして内で裸でデンと胡坐をかいて、
女子と男子のイメージは逆転させたほうが良いように思うけど、
なんと女子がそれを許さない、まったく理不尽だ。
なんか押入れがムンと大きくなったような気がする。
もちろん容積が変わったわけじゃないけど押し入れの中になんか空間が出来て異様な存在というか実体が居るような、へんてこな圧を感じがする。
布団が岩に変わったような密度が爆あがりして床が抜けるんじゃないかと、一体何が居るんだと恐怖に身が竦むけど
自分の部屋の押し入れに恐怖するなんて、今更お化けが出るなんてあり得ないから、
と言うのもそんなこと1㎜も思ったことが無い、押し入れにそんな力はないし、
でも明らかに異様な物体が存在を主張していて、
そっちがその気ならこっちも棒でも持って突ついてやろうと見回しても
バッドを部屋に置くような僕じゃないし何も無いから、
そのうちに納まるだろうと様子を見ることにした。
敵も様子を見ているのか、
まさかね、静かになった。
気のせいだと、わざわざ押し入れを開けるバカはしないと決めて机に向き直って、
一発クルクルを決めて、さあ、やるかと、不思議に意欲が出て、
おっ、今日はいつもと違う、出来るだけ進んでやろうと、
頭にハチマキが巻かれた感じで目は問題に落ちた。
なんだ、そんなことが言いたいのかと目から鱗が落ちで、馬鹿くせえ、とささーとシャーペンは動いて、
これならトップテンは狙えるなと
一気に50人抜きだ、
と問題が消失するほどににやけていると、
襖を押す、わずかだが、音が聞こえる。
やはり何かいる。
でも我が家の押し入れにこんないたずらをする奴は思いつかない。
ひょっとしてハクビシンが屋根裏に住み着いたのかな、
そんなニューを聞いたばかりだから、
結構面倒だな、どうしようと、
たぶん気が立っているだろうから、飛び掛かられる恐れは十分にあるから少し後ずさってしまった。
そのなにかは何度か襖を押している、出ようとしているのなら、押すのではなく引くのだよ馬鹿だな、
流石畜生だ、しかし畜生だからきっと突進してくる。
椅子で防ごうか考えていると、襖が引かれた。
うわ!畜生のくせに。
襖があいていく。
なにも見えない、畜生なら頭を突っ込んで開けるのではないか、
一体襖を引いているのはなんだ。
十分開くと、
なんと、なんと、
ぬっと女の人の顔が現れた。
うわ!なんで!
尻もちをついて、視線はそいつに張り付いて動かせない、
ただ茫然と身動きできない。
相手も僕を見て驚いているようだけど、
襖を閉めればいいのに、なんと出てこようとする。
徐々に腕が見え、肩が見え。
上半身が見えた。
えっ! はだか?
貞子の様に這い出てくる。
えー、ケツもはだか?
全身抜け出るとそいつはすっくと立ちあがった。
うへー、オールヌード、
日本語ならすっぽんぽんだ。
そいつは僕を睥睨している、
完全にマウントを取られている。
僕の部屋なのに。
犬・猫・ネズミを見る様に見下す。
何もできず受け入れるしかない。
すなわち反撃も攻撃も頭にも体にも浮かばない。
ただひっくり返って見上げるのみだ。
でも、頭より胸よりあそこの方が眼に近いのにそれは意識に上らなかった。
たぶんつるつるだったからかも知れない。
そいつは奴隷でも見る様に異物でも見る様に見下ろしている。
女王様!?
いや素っ裸の女王様なんていない、ならこいつはなんだ?




