マン・モース姫
今僕の頭に言葉が浮かんでいる。
それは、なにか?
答え。
マン・モース姫
さてマン・モース姫とは?
それはそれは遠い異世界に女人界の王国が有って、
王国というのは可笑しいから女王国と言い換えるべきだけど、
やっぱり王が付くのはおかしいから、
界の説明をすると、界は分類学の最上位で動物界と植物界に分かれる。
女人界は界の下位に位置する亜界だ。
男人界と同位の構成要素だ。
植物界と動物界が交流しないように、女人界と男人界も交流しない。
両界とも我が道を行くで、勝手に世界を営んでいる。
界を束ねる女人は婆と言って、婆は年寄りだから若い統率者は姫という。
その姫の名前がマン・モースなんだけど、界始まって以来の美しさらしく、
マン・モース姫と奉って、その血が続けば女人界はさらに美しい世界になる、と安堵している。
生殖のことを話さねばならないけど、
Y染色体は婆が管理していて、姫たちに注入して子孫を残すんだけど、
赤ん坊が1cmの大きさになると取り出して、
婆が育てるから姫たちは妊娠したことさえ気付かない。
すなわち生殖の事を知らない天使のような存在だ。
生殖に伴う生物的な欲求も無く人間の持つ業のようなものはない。
毒リンゴも存在しないから衣服は必要ないが美のためにある。
食住の住は、住居と云うものが無いから、女人界すべてが住だから、どこで休んでどこで寝るかは気分次第ということになる。
食は動物界・植物界から自然にもたらされ、排せつ物は還元される。
人間界からは想像が難しいかも知れないが、
女が女と意識せずに気ままに美を楽しんでいる、そんな世界と言える。
「マン・モース姫はどこに行ったのかしら」
仲間の姫たちが探していると、木にぶら下がって芋虫のように布を寄せ集め袋にして寝ていた。
「まあ、あんなところに。ちょっと脅してやりましょう」
姫たちの一人がするすると木に登り、紐をプチンと切ってしまった。
あれー、なにー? と小さな悲鳴と共に落下した。
袋は芋虫の袋と同様姫を守るから、眠気を邪魔された点にだけ、
なにすんのよう、と抗議してもそもそ這い出てきたが、もちろんすっぽんぽんの全裸だった。
「マン・モース姫、あなたちょっと太ったでしょう」
えー、そんなことないわよ、と否定するが、恐らく体重を計ったとしても僅かな増量に過ぎないだろうけど、人間の目で見れば、ふくよかで弾力があってしっとりしてる。
流行りの異世界転生で、男を一人放り込んだらどうなるだろう?
なんでもありの異世界転生でも毒リンゴを投げ込むようなことは出来ない、禁止されている。
アダムが毒リンゴを持ってのこのこ出かけていったらどうなるか。
人間界で証明されているから、女人界の創造主は断固許さない。
それはそれは恐ろしい報復を受けることになる。
水爆を数千発落として人間界の抹殺に動くだろう。
全ての国家、都市は数日のうちにこの世から消え、残った人類は放射能と飢えで息絶える。
それは他の生き物に類が及ぶから創造主は他の方法を使った。
それは男子12歳になると精巣・前立腺を摘出・去勢し、
女子は10歳で卵巣・子宮摘出・不妊処置を施した。
それはその時点で生きている人間が死ねば人類の消滅を意味するから、
大人たちは絶望し、やけのやんぱちで第2次世界大戦後の数百倍の子供を作ったが、孫が生まれることは無い。
人類最後の花火で子供天下と化し、可愛らしい笑い声に包まれた人間界は、天真爛漫で純な子供たちによってすべてのカルマは洗われたかのようだった。
しかし、成長すると自分たちの運命を知り、不妊を良いことに、性欲鬼とかし、ソドムは時・所構わず、あらゆるところで性欲魔が踊り狂うことになる。
このことから分かるように、女人界にY男を放り込むことは出来ないからマッスル・チンチン君がその任に当たる事も無い。
マッスル・チンチン君が意図せず女人界の破壊者にならなかったのは幸いである。
少女が10歳未満で子供を産めば人類の消滅は防げる、
と考えた人間がいるならその脳みそを呪うべきである。
ひょっとしたらそんなファンタジーを考える2・5次元おっさんが居るやもしれぬが狂コロジーと知るべきである。
従って女人界は、遥か下位のホモ属に侵されることは無いから、天真爛漫な美に浸る生活は安穏と続くのでした。
終わり
と書いても流石にこの時点で了とすることは出来ない。




